Side:ジャック


遊里め、即興で俺の『フィールバニッシュ』に相当するフィールを編み出すとはな…
あくまで即興の付け焼刃故に精度と強度は格段に落ちるが、あの状況でフィールを防御に使う事をドレだけのデュエリストが思いつくか…

ふ…俺の前に立つのは矢張りお前か遊里――そうでなくては楽しめんがな。



…それにしても、ボマーの言っていた事は一方的に『嘘』と断する事はできまい…特に俺からすればな。
俺は絶対王者となって以来、随分と長くゴドウィンと付き合って来た…其れだけにゴドウィンの表と裏は誰よりも知って居る心算だ。

奴は表向きには人格者を装っているが、一度裏の世界に入れば途端に冷酷で非情な本性を現すからな…

いや、本性と言うのは適切ではないな…恐らくは何方も真のゴドウィンなのだろう。
表と裏がハッキリと分かれすぎているだけでな…ある意味で二重人格かもしれんなコイツは。

だが、尚の事、裏のゴドウィンがボマーの村に牙を剥いたとするならば、村1つを焼き崩す事くらいは平気でしそうだな。


「…なんですキング?」

「いや…何でもない。」

何にせよ、コイツは油断ならん相手だ…
今のボマーの一件で起きた会場内の混乱も、話をすり替えて誤魔化してしまったからな。
この大会が終わった暁には、コイツと手を切る事を考えておいた方が良いかもしれん…









異聞・遊戯王5D's Turn18
『決闘、蒼海と蒼天!』










Side:遊里


後味の悪いデュエルになっちゃったけど、取り敢えずは決勝進出ね。
ゴドウィンは信用するな……勿論分かってるわよボマー…アイツは信用するに値しないからね…今のところは。

ともあれ、今は第2試合に集中しますか。
このデュエルの勝者が、決勝戦でアタシと戦う事になる訳だからね。


「麗さんと良哉さん……実際にデュエルした私の感想だと良哉さんが勝つと思うんだけど…」

「一概にそうとは言えないわよ龍可。
 梶木は確かに強いけど、麗だって世界レベルの実力者――このデュエルは可成り盛り上がる筈よ?」

海と空の大決戦ってだけでも結構盛り上がってくれるだろうしね。
それ以前に、此れだけの実力者同士の準決勝が盛り上がらないなんてのは嘘でしょ?


「確かに言えてんなぁ?
 質の高いデュエリスト同士のデュエルは、見てるだけで手に汗握って来るからな?」

「そう、そんな感じよ牛尾!
 本物のデュエルは見る者を魅了してナンボでしょ!?この第2試合は其れが期待できるじゃない!」

「貴女と、ボマーのデュエルも……すごく盛り上がってた。」


其れは其れとしてよ、恵。
其れにこのデュエルの勝者が決勝戦でのアタシの相手になるんだから、アタシだって楽しみなのよ。
何方が出て来ても、魂が震えるくらいの楽しいデュエルが出来るだろうしね。

空を舞う風か、荒波の大海原か…決勝戦でアタシと戦うのは果たしてどっちかな〜〜?




『それでは準決勝第2試合を始めるぞ〜〜〜〜〜!!
 第2試合を戦うのは『美しき天空の舞姫』孔雀麗と、『荒海の支配者』梶木良哉〜〜〜!!
 既に決勝戦へのイスの1つは上条遊里がその手にしている!!
 この第2試合を制し、残る1つのイスをもぎ取るのは果たしてどちらのデュエリストだ!?
 其れじゃあ盛り上がっていこうぜ!!準決勝第2試合、孔雀麗vs梶木良哉、デュエル………
スタートォォォォォォォォォォォ!!!』


「「デュエル!!」」


麗:LP4000
梶木:LP4000



「私のターン!『ハーピィ・チャネラー』を守備表示で召喚!」
ハーピィ・チャネラー:DEF1300


「そして、手札の『ハーピィ・レディ1』を墓地に捨てて効果を発動。
 デッキから『ハーピィ・チャネラー』以外の『ハーピィ』を守備表示で特殊召喚するわ。来なさい『ハーピィ・ストライカー』!」
ハーピィ・ストライカー:DEF1000


「私はこの2体のレベル4風属性モンスターをオーバーレイ!
 空を翔け抜ける麗しき鳥人よ、風を操り美しく舞え。エクシーズ召喚、射抜け『ハーピィ・アーチャー』!」

『はぁぁぁぁ!』
ハーピィ・アーチャー:ATK2200



初手からランク4のエクシーズで来たわね。
今の言い方だと、多分素材に風属性の縛りがあるんだろうけど…そうなると効果面で強い可能性があるかな。


「ハーピィ・アーチャーの効果発動!
 このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除き、自分のデッキか墓地から『ハーピィ』1体を特殊召喚するわ。
 さぁ、出番よ『ハーピィ・ガードナー』!!」
ハーピィ・ガードナー:DEF1800
ハーピィ・アーチャー:ORU2→1



「カードを2枚セットしてターンエンド。そして、エンドフェイズにハーピィ・アーチャーの効果発動!
 エンドフェイズにハーピィ・アーチャー以外の『ハーピィ』が表側表示で存在する時、墓地の『ハーピィ』1枚をオーバーレイユニットに出来るのよ!」

「何じゃその効果は!?」


ハーピィ・アーチャー:ORU1→2


ホントに如何言う効果よ此れ!?
自身の効果で展開出来て、其れが同時にオーバーレイユニットの確保にも繋がるって!
墓地にハーピィがあれば、事実上オーバーレイユニットを消費する事なく展開できるのと同じじゃない…!

此れは、速攻で自分の舞台を作る心算よね麗は……其れに対して梶木は如何応えるんだろう?


「いきなりトンデモナイ奴ぜよ…俺のターン!!
 俺はカードを1枚伏せ、マジックカード『手札抹殺』を発動じゃあ!!」


えぇ!?いきなり手札の入れ替え!?……って違うか!1リバースで手札抹殺って言う事は…


「コイツで互いに捨てた枚数と同数のカードをドローする。俺は4枚!」

「私は2枚…だけど行き成り手札の入れ替えなんて、よっぽど手札が悪かったのかしら?」

「いや、良すぎたんじゃ!そいつを見せてやるぜよ…リバースマジック『死者蘇生』
 コイツで、今しがた墓地に捨てた『超古海竜王フレジアス』を蘇えらせるぜよ!!来い『超古海竜王フレジアス』!!」

『キシャァァァァァァァ!』
超古海竜王フレジアス:ATK2800



やっぱり蘇生コンボ!
速攻展開してきた麗に対して、梶木は最上級モンスターの召喚で対抗してきたか…でも此れだけじゃないわよね?


「フレジアスの効果発動じゃ!!
 手札を1枚捨て、デッキか墓地からレベル4以下の魚族モンスターを可能な限り攻撃表示で特殊召喚するぜよ!
 但し、この効果で特殊召喚したモンスターの攻守は0になり、アドバンス召喚の為のリリースには使えんがの。
 俺は手札を1枚捨て、墓地から『艦隊クジラ』『シシャモの大群』を、デッキから『蒼海のブラックマンタ』『キラー・ジョーズ』を呼び出すぜよ!!」
艦隊クジラ:ATK0
シシャモの大群:ATK0
蒼海のブラックマンタ:ATK0
キラー・ジョーズ:ATK0



やっぱり大量展開!
しかも、この布陣――一気に決める心算だわ梶木は!!


「艦隊クジラの効果発動!このカードをリリースし、俺はデッキから『要塞クジラの誓い』と『要塞クジラ』を手札に加える!
 更に、シシャモの大群は水属性の儀式モンスターを儀式召喚する場合、コイツ1体で必要なリリースになるモンスターじゃ!
 行くぜよ!儀式魔法『要塞クジラの誓い』!シシャモの大群をリリースし、現れろ『要塞クジラ』!!!」

『ゴォォォ!!』
要塞クジラ:ATK2350



「マダマダ行くぜよ!!レベル4のキラー・ジョーズに、レベル3の蒼海のブラックマンタをチューニング!
 大海原を切り裂く海神の咆哮よ、今此処にその姿を示現せよ!シンクロ召喚、『黒海のシーサーペント』!!」

『がぁぁぁ!!!』
黒海のシーサーペント:ATK2500



「1ターンで7つ星モンスターが2体ですって!?…やるわね。」

「おぉっと此れだけじゃないぜよ?
 俺はこのターン、まだモンスターを通常召喚しとらんからな?チューナーモンスター『波打ち際のフジツボ』を召喚じゃ!!」
波打ち際のフジツボ:DEF0


「レベル7の要塞クジラに、レベル1の波打ち際のフジツボをチューニング!
 深海より出でし、大海原の守護者よ、その力を全力で揮え!シンクロ召喚、出撃じゃ『超弩級要塞戦艦クジラ』!!」

『ガァァァァァァン…!』
超弩級要塞戦艦クジラ:ATK2700



うっわ〜〜〜…容赦ないわね。
麗の速攻が可愛く思えるわよ、この超高速展開は……てか水属性って此処まで高速展開可能だったかなぁ?
其れだけ梶木の腕がデュエリストとして凄いって事よね…


「ふっふっふ、更に要塞戦艦クジラの効果発動ぜよ!1ターンに1度、デッキか手札から水属性モンスター1体を特殊召喚出来るぜよ!
 俺はこの効果で、デッキから『超古代魚ダンクルオステウス』を特殊召喚じゃぁ!!」
超古代魚ダンクルオステウス:ATK2800


これ、デュエル開始2ターン目よね?その筈よね?
それで、攻撃力2700オーバーが3体って……相当に飛ばしてるわね梶木は…


「一気に行くぜよ!超弩級要塞戦艦クジラで、ハーピィ・ガードナーに攻撃!!『ホエール・ビック・ボンバード』!!」

「ハーピィ・ガードナーの効果!
 このカードが表側表示で存在する限り、私の場のハーピィは、1ターンに1度だけ戦闘では破壊されいわよ!」

「ガードナーの名前から守備的な効果を持ってると思ったが、此れは1番最初に狙って正解じゃったな!!
 なら先ずはそいつを葬るだけじゃ!!超古海竜王フレジアスで、ハーピィ・ガードナーに攻撃!『アーク・ウェーブ』!!」


――バリィィン!!


巧い…ガードナーを先に倒せば、残るハーピィは戦闘耐性を失うからね。
残るモンスターの攻撃で麗のモンスターはゼロになるけど…


「ダンクルオステウスで、ハーピィ・アーチャーに攻撃じゃあ!!『ビッグマウスハンティング』!!」


――バクゥゥ!!


「きゃぁぁぁ!!」
麗:LP4000→3400


食べた…食べたよ、巨大魚が鳥人を…何て言うか結構インパクトのある衝撃映像じゃない今のって…


「ダンクルオステウスの効果発動!!
 相手モンスターを戦闘で破壊した場合、相手に500ポイントのダメージを与え、自身の攻撃力を300ポイントアップするぜよ!!」

「そんな効果も!!」
麗:LP3400→2900

超古代魚ダンクルオステウス:ATK2800→3100



「だけどそう簡単にはやられないわ!トラップ発動『ヒステリックコール』
 私の場のハーピィが、1ターンの間に2体以上戦闘で破壊された場合に発動できるわ。
 デッキか墓地から『ハーピィズペット竜』を特殊召喚する!そして、この効果で特殊召喚された『ハーピィズペット竜』は攻撃力が400ポイントアップする!」

『ガァァァァァッァ!!』
ハーピィズペット竜:ATK2000→2400



だけど麗だって負けてないわね。
モンスターが2体以上破壊されたことを逆手にとってペット竜の召喚…其れも強化した状態で。
此れだけならまだ梶木が有利だけど、この展開を見る限り、麗のもう1枚のリバースは『あのカード』とみて間違いないわ。


「…やるのうお前…此れだけのデュエリストが準決勝の相手とは…楽しくなってきたぜよ!
 俺はカードを1枚セットしてターンエンドじゃ!!」

「楽しくなってきたか…其れは私も同じよ!私のターン!!
 リバースカードオープン、永続トラップ『ヒステリック・パーティー』を発動!手札を1枚捨て、墓地の『ハーピィ・レディ』を可能な限り特殊召喚するわ。
 そしてこの効果は『墓地でハーピィ・レディ』として扱うモンスターも甦らせえる事が可能!
 舞い戻れ『ハーピィ・レディ1』『ハーピィ・チャネラー』『ハーピィ・クィーン』『ハーピィ・チェイサー』!」
ハーピィ・レディ1:ATK1300
ハーピィ・チャネラー:DEF1300
ハーピィ・クィーン:ATK1900
ハーピィ・チェイサー:DEF100



やっぱり伏せてあったわね『ヒステリック・パーティー』。
更にこの展開は…


「ハーピィズペット竜はフィールド上の『ハーピィ・レディ』1体に付き、攻撃力が300ポイントアップする。
 そして、ハーピィ・レディ1の効果でフィールド上の風属性モンスターの攻撃力は全て300ポイントアップする!!」
ハーピィズペット竜;ATK2400→3600→3900
ハーピィ・レディ1:ATK1300→1600
ハーピィ・クィーン:ATK1900→2200
ハーピィ・チャネラー:ATK1400→1700   LV4→7
ハーピィ・チェイサー:ATK300→600



全体の強化だけど、呼び出したハーピィにはチューナーもいるから…今度はシンクロする心算かな。


「今度は私のデッキのエースを見せるわ!
 レベル7のハーピィズ・ペット竜に、レベル1のハーピィ・チェイサーをチューニング!
 鳥人の僕たる竜よ、大空を飛び回りて此処にその姿を示せ!シンクロ召喚『ハーピィズペット聖竜』!!」

『キョアァァァッァァァ!!』
ハーピィズペット聖竜:ATK2800→3100



「ハーピィズペット聖竜はフィールド上に存在するこのカード以外のハーピィの数だけ攻撃力が400ポイントアップするわ。」
ハーピィズペット聖竜:ATK3100→4300


此処で攻撃力4300!!

先手を取ったのは梶木だけど、麗も負けじと最強レベルのモンスターをシンクロ召喚してきた。

此れはどっちが勝ってもおかしくないデュエルよね……空と海のデュエルはどんな結末を迎えるんだろう?
このデュエル…面白くなってきたわね!
















 To Be Continued… 






登場カード補足



超古海竜王フレジアス
レベル7    水属性
海竜族・効果
1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動できる。
自分の墓地かデッキからレベル4以下の魚族モンスターを可能な限り攻撃表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚されたモンスターの攻守は0になり、アドバンス召喚の為にはリリースできない。
ATK2800    DEF2300



超古代魚ダンクルオステウス
レベル7    水属性
魚族・効果
このカードが相手モンスターを戦闘で破壊し、墓地に送った場合、相手に500ポイントのダメージを与え、このカードの攻撃力は300ポイントアップする。
ATK2800    DEF2000



キラー・ジョーズ
レベル4    水属性
魚族
貪欲なる海のハンター。音もなく近づき獲物を捕らえるその姿は、海の殺し屋そのもの。
ATK2000    DEF100



ハーピィ・アーチャー
ランク4    風属性
鳥獣族・エクシーズ/効果
「ハーピィ」と名の付く風属性のレベル4モンスター×2
1ターンに1度、このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除いて発動する。
自分のデッキか墓地から「ハーピィ」と名の付くモンスター1体を選択して特殊召喚する。
自分のターンのエンドフェイズ時に、このカード以外の「ハーピィ」と名の付くモンスターが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、
自分の墓地の「ハーピィ」と名の付くカード1枚を選択し、オーバーレイユニットとしてこのカードの下に置く事が出来る。
ATK2200    DEF2000



ハーピィ・ストライカー
レベル4    風属性
鳥獣族・効果
このカードが相手に戦闘ダメージを与えた場合、相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。
このカードはフィールド上と墓地では、カード名を「ハーピィ・レディ」として扱う。
ATK1800    DEF1000



ハーピィ・ガードナー
レベル4    風属性
鳥獣族・効果
このカードが表側表示で存在する限り、自分フィールド上の「ハーピィ」と名の付くモンスターは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。
このカードはフィールド上と墓地では、カード名を「ハーピィ・レディ」として扱う。
ATK1000    DEF1800



ハーピィ・チェイサー
レベル1    風属性
鳥獣族・チューナー
このカードは風属性モンスター以外のモンスターの攻撃対象にならない。
このカードはフィールド上と墓地では、カード名を「ハーピィ・レディ」として扱う。
ATK300    DEF100



ヒステリック・コール
通常罠
自分フィールド上の「ハーピィ」と名の付くモンスターが1ターンの間に2体以上戦闘で破壊されたときに発動できる。
自分のデッキか墓地から「ハーピィズペット竜」1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は400ポイントアップする。