Side:ジャック


思った以上に長い道のりだが、大丈夫か龍可、龍亞?俺に牽引されているとは言え、掴まって居るのも楽ではないのだろう?子供の力で
は尚更だ。



「だいじょーぶ!此れ位は如何って事ないって!」

「其れに疲れない様に、掴みやすい所を持ってるから大丈夫よジャック。」

「其れならば良いのだが、辛くなったらすぐに言え。その時はDボード共々、このホイール・オブ・フォーチュンに積み込んで目的地まで進ん
 でやるからな。」

「「その時はお願いします♪」」



任せておけ。
っと、前方が明るくなって来たな?……如何やら、ゴールは近い様だ。とは言っても、最終的なゴール地点ではなく、中ボスクラスが待つゴ
ールなのだろうがな。

尤も、何が待って居ようとも蹴散らすだけの事!
龍可と龍亞もデュエルの準備をしておけ!この道の先には中ボスが待っているだろうから、先ずは其れを撃破するからな!!



「OK!任せといてよ!」

「私も頑張るわ!」

「其れで良い――では、行くぞ!!」















異聞・遊戯王5D's Turn169
『立ち塞がる、絶望の番人』











という訳で到着した中間ゴール地点だが……此れはまた、何とも近未来的な物を感じさせる部屋だな?無機質な金属の壁に、そこ彼処か
ら剥き出しになって見える動力パイプらしきもの――まるでSFに出て来る要塞の内部の様だ。
果たして、此処で如何なる相手が待っているというのか……



「此処に辿り着いたのはお前達か……ある意味では好都合だったな。」

「貴様は……アポリア!!」

決勝戦の後で消えてどうなったかと思っていたが、矢張り生きていたか――つまりは、貴様がこのフロアを守るデュエリストと言う事で間違
いないのだろうな。



「ジャック・アトラス、まさか再び相見える事に成るとは思っていなかったが、此れは私にとってはこの上ない幸運だよ。
 私を討ち果たしたデュエリストと、こうしてもう一度戦う機会を得る事が出来たのだからな?……此処で沈んでもらうぞジャック・アトラス。
 そして、其方の子供達もな!!」

「貴様が俺を倒すだと?……馬鹿も休み休み言うが良い!
 先の決勝戦で、俺と貴様の実力差は既に証明済みだろう?そんなお前が俺に勝つだと?まして、龍可と龍亞もやる心算か?
 そんな事は絶対にさせん!断じてやらせぬぞアポリアよ!!」

「だが、お前達はもう逃げられない。この地に足を踏み入れた時点で、お前達の勝利も撤退もあり得ないのだ――1人ずつ相手にするのも
 面倒だから、貴様等を纏めて相手にしてやろう。」



纏めて相手をするとは大きく出たな?
出来るモノならばやってみるがいい!!この俺と、そして龍可と龍亞を敵に回した事の愚かさを、その身を持ってして分からせてやろう!
準備は良いな、龍可、龍亞!!



「纏めて相手にするなんて、馬鹿にしてるにも程があるぜ!子供だと思って甘く見るなよ!」

「私も頑張る!貴方を倒して、先に進ませて貰うわアポリア!」

「良かろう、ならば貴様等に絶望と言う物を教えてやる。」

「出来る物ならばやってみるがいい!行くぞ!!」



「「「「デュエル!!」」」」


ジャック:LP4000
龍亞:LP4000
龍可:LP4000
アポリア:LP4000



「先攻は貰うぞ。私のターン。
 手札よりフィールド魔法『機動要塞フォルテシモ』を発動!」


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


な、なんだ此れは!?ソリッドビジョンでフィールドが変わっただけでなく、アポリア自身がフィールド魔法と一体化しただと!?
まさか、此れは単なるソリッドビジョンではなく、実際其処に物質として存在しているとでも言うのか?……或は、このアポリア自身がソリッ
ドビジョンによる幻影なのか……何れにしても、只では終わらんだろうな。



「私は先ず、このモンスターを攻撃表示で召喚する。来い『機皇兵ワイゼル・アイン』!」
機皇兵ワイゼル・アイン:ATK1800


「更に機動要塞フォルテシモの効果発動。
 1ターンに1度、手札の『機皇兵』モンスターを特殊召喚出来る。現れよ『機皇帝ワイゼル・ツヴァイ』!!」
機皇兵ワイゼル・ツヴァイ:ATK2200



『機皇兵』限定の特殊召喚効果を持つフィールド魔法か!
対象は限定されるとはいえ、『機皇兵』ならば本来リリースが必要となる上級モンスターであっても簡単に召喚出来ると言う訳か……現に
コイツが召喚したワイゼル・ツヴァイは、デュエルディスク上でレベルが5と表示されているのだからな。
此れは、エクストラデッキからの特殊召喚を使用せず、メインデッキの上級モンスターを高速展開する戦術か?だとしたら、シンクロやエク
シーズに対しての何らかのメタを張ってくる可能性は考えておかねばな。



「私はカードを2枚セットしてターンエンド。」

「今度はこっちの番だ!ジャック、俺から行かせて貰っても良い?」

「ほう?良い威勢の良さだな。……良いだろう、先ずはお前が先陣を切るが良い龍亞!
 お前は遊里が次代を担うデュエリストとして認める程の可能性を秘めているからな!その可能性を見せつけ、そして今此処で開花させて
 見せるが良い!!」

「うん!行くぞアポリア!俺のターン!
 手札から魔法カード『Dエクスチェンジ』を発動!手札の『D』を墓地に送り、デッキからカードを2枚ドローする!……よっしゃ良い引き!
 俺が今ドローした2枚のカードは、2枚とも『D・カッタン』!
 このカードは、カード効果で手札に加わった時に特殊召喚出来る!頼むぜ、2体の『D・カッタン』!」
D・カッタン:DEF1000×2



此れは、何という引きの良さだ。
手札強化のために発動したカードでドローしたカードが何方もD・カッタンとは……通常召喚権を残したままで2体のモンスターを呼び出した
と言うのは大きいが、問題は此処から如何動くかだ。
この変則デュエルでは、最後のターンのプレイヤー以外は1ターン目には攻撃する事が出来ないので、行き成り大型を召喚するのはリスク
を伴うのだが……



「そんでもって、俺は『D・メタルブックエンドン』を守備表示で召喚!」
D・メタルブックエンドン:DEF1200



「メタルブックエンドンが守備表示で存在する限り、俺のフィールド上の『D』モンスターはカード効果では破壊されないぜ!!」



ふ、攻撃できない状況での大型モンスター召喚のリスクは理解していたか。
だが、此れで龍亞は初手から可成り固い布陣を敷いた事に成るな?ブックエンドンが存在する限り、龍亞のモンスターを効果破壊する事
は出来ないし、カッタンは戦闘で破壊された場合にシザースンを呼び出す事が出来る……龍亞のフィールドをがら空きにするには、効果破
壊を使わなかった場合、5回もの攻撃が必要になる訳だからな。


「俺は、カードを1枚伏せてターンエンド!」

「じゃあ、今度は私が行くわ!良いよね、ジャック?」

「良かろう。好きなようにやってみろ!」

「うん!私のターン!『森の小悪魔 グレムリン』を守備表示で召喚!」
森の小悪魔 グレムリン:DEF1400


「森の小悪魔 グレムリンの効果発動。
 1ターンに1度、手札から『森の』モンスターを特殊召喚出来る。お願い、『森の守護神 ロック』!!」
森の守護神 ロック:DEF2000


龍可の1ターン目も悪くはないな。
森のモンスターを展開できるグレムリンを呼び出し、更に守備力2000のモンスターを呼び出して壁を作った訳だからな?……3対1と言う
状況では、この布陣はきつかろうなアポリアには。


「カードを1枚セットしてターンエンド!それじゃあ……」

「真打登場だぜ!!」



真打か……ならば、真打らしく大立ち回りをするとするとしよう!何よりも、此の俺のターンから攻撃が可能になるのだからな!!
俺のターン!!

「アポリアよ、如何やら俺のデッキは、貴様との全力のデュエルを望んでいるらしい。」

「なに?」

「俺の手札には、既に我が魂を呼ぶ事の出来るカードが揃っているという事だ!
 俺のフィールド上にモンスターが存在しない時、このモンスターを特殊召喚出来る!
 来い、殺戮の魔獣超人『カイザー・ブラッド・ヴォルス』!!!」

『グガァァァァァァァァ!!』
カイザー・ブラッド・ヴォルス:ATK1900



そして、チューナーモンスター『レッドデーモン・リゾネーター』を召喚!!


レッドデーモン・リゾネーター:ATK1300



「シンクロ召喚か……馬鹿の一つ覚えの様な戦術だ。
 だが、其れがお前達の力なのだと言うのならば其れを潰しておこう!リバースカードオープン、永続トラップ『アンチSXフィールド』!!
 モンスターをシンクロ召喚、またはエクシーズ召喚をしたプレイヤーは700ポイントのダメージを受ける!!」



矢張り、シンクロとエクシーズに対するメタ効果を張って来たか!
だが、その程度のカードで、俺を止める事が出来ると思ったら大間違いだ!寧ろ、700ポイント程度のダメージならば許容範囲内だ!!
行くぞ!レベル5のカイザー・ブラッド・ヴォルスに、レベル3のレッドデーモン・リゾネーターをチューニング!
万物を焼き尽くす孤高の絶対王者よ、天地鳴動の力を揮うが良い!シンクロ召喚!降臨せよ『煌魔龍 レッド・デーモン』!!」

『バオォォォォォォォォォォォオォオォォォォォォォォォ!!!』
煌魔龍 レッド・デーモン:ATK3000




アンチSXフィールドの効果で俺は700ポイントのダメージを受ける。



――ドゴォォォォォォォォ!!!



「ぐが!?」
ジャック:LP4000→3300


な、なんだ?僅か700ポイント程度のダメージで此の衝撃とは……大凡普通のフィールとは思えんぞ?



「言い忘れていたが、この空間ではフィールの衝撃は通常の5倍に設定されている……受けたダメージによっては、其のまま現実の『死』
 に直結するダメージにもなりかねないから注意する事だ。」



5倍のフィールだと!?……俺のフィール・バニッシュでも相殺できない訳だ。
だが、其の5倍フィールは貴様にも有効なのだろうアポリアよ!ならば、其れを逆手にとって、貴様の事を文字通り粉砕してくれる!!!
レッドデーモン・リゾネーターを素材にしてシンクロ召喚された『レッド・デーモン』シンクロモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする!


『バオォォォォォォォォォォ!!』
煌魔龍 レッド・デーモン:ATK3000→4000(レッドデーモン・リゾネーター効果)


「そして、レッド・デーモンの効果発動!
 フィールド上のモンスターを全て攻撃表示に変更し、元々の攻撃力がレッド・デーモンの攻撃力より低いモンスターを抹殺する!!
 この効果は、仲間のモンスターをも巻き込んでしまうが……龍可!!」

「うん!永続トラップ『フォレスト・ガーディアン』
 私のフィールド上に『森の』モンスターが存在する限り、私のモンスターはカード効果によっては破壊されない!!」



そして、この変則デュエルに置いて、その効果は俺と龍亞のモンスターにも適応される!
メタルブックエンドンが攻撃表示になった事で『D』の耐性は失われたが、このカードのお陰でレッド・デーモンでの効果で破壊される事はな
い……つまり、消え去るのは貴様のモンスターだけだアポリア!!



D・カッタン:DEF1000→ATK1500×2
D・メタルブックエンドン:DEF1200→ATK1300
森の小悪魔 グレムリン:DEF1400→ATK1300
森の守護神 ロック:DEF2000→ATK1200



砕け散れ!『クリムゾン・デス・メテオ』!!!


『バオォォォォォォォォォォォ!!!!』


――ドゴォォォォン!



精々地獄の業火で焼かれるが良い雑魚が!貴様等程度のモンスターが、この絶対王者の道を妨げる事が烏滸がましいと知るが良い!
レッド・デーモンのダイレクトアタックで終わりだアポリア!!


「……其れは如何だろうな?」

「何?」

「な、此れって!!」

「何で無事なの!?」



機皇兵ワイゼル・アイン:ATK1800
機皇兵ワイゼル・ツヴァイ:ATK2200



機皇兵が無事だと!?……まさか、アポリア貴様!!



「察しの通り伏せカードを発動した。永続トラップ『機皇城砦』をな。
 このカードが私のフィールド上に存在する限り、私のフィールド上の『機皇』モンスターは相手のカード効果では破壊されないのだよ。
 そして、私のカードを破壊できなかった事で、レッド・デーモンは攻撃する事が出来ない。」


小賢しい真似を……カードを2枚セットしてターンエンドだ。
だが、このカードは有り難くないな……レッド・デーモンの破壊効果を実質封じられてしまった訳だからな。



「私のターン!手札より魔法カード『天よりの宝札』を発動し、全てのプレイヤーは手札が6枚になるようにデッキからカードをドローする。
 そして『機皇兵スキエル・アイン』を召喚。」
機皇兵スキエル・アイン:ATK1200


「スキエル・アインの攻撃力はこのカード以外の自分フィールド上の『機皇兵』1体に付き200ポイントアップする。
 私のフィールドにはワイゼル・アインとワイゼル・ツヴァイの2体の機皇兵が存在している――よって、攻撃力は400ポイントアップする。」
機皇兵スキエル・アイン:ATK1200→1600


「そして、私のフィールド上に『機皇』モンスターが3体以上存在する時、手札からこのカードを特殊召喚出来る!
 3つの絶望よ、あらゆる希望を飲み込み、破滅の使者として此処に顕現せよ!現れよ『破滅機皇神-オメガ・ウェポン』!!」

『ギュオォォォォォォォォォォォン!!』
破滅機皇神-オメガ・ウェポン:ATK?



2ターン目で現れたか、大型の機皇帝!
攻撃力は不明な事を見ると、攻撃力を得る何らかの効果があるの有ろうが……俺達は負けん!!俺達の闘志を消す事は出来ないと知る
がいいアポリア!!



「ならば、その闘志を消し去る位の絶望をくれてやろう。」

「やってみろ……出来る物ならばな!!」

生きていれば、何かに絶望する事はあるだろうが、大事なのは絶望を知った上で如何するかだ――絶望に飲まれて其のままになるか立
ち上がって絶望と戦うかだ!!

無論俺は戦うぞ……そして、貴様を再び黄泉へと送り返してやる!!精々、黄泉路で此の行く末を見守るが良い!!













 To Be Continued… 






登場カード補足






Dエクスチェンジ
通常魔法
手札から「D」モンスター1体を墓地に送って発動する。デッキからカードを2枚ドローする。



フォレスト・ガーディアン
永続罠
自分フィールド上に「森の」モンスターが表側表示で存在する限り、自分フィールド上のモンスターはカード効果によっては破壊されない。



アンチSXフィールド
永続罠
このカードが表側表示で存在する限り、モンスターをシンクロ召喚またはエクシーズ召喚したプレイヤーに700ポイントのダメージを与える。



機皇城砦
永続罠
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の「機皇」モンスターは、相手のカード効果では破壊されない。