Side:牛尾


ったく、このご時世、ガソリン駆動の車を探すのには苦労したが、知り合いの伝手で手に入れる事が出来たのは幸運だったとしか言いようが
ねぇなマッタク。
コイツなら、徒歩での避難よりも効率がいいからな。

「アイン、マーサ、其れにガキども、全員乗り込んだか?」

「あぁ、全員乗り込んだぞ牛尾。」

「なら確り掴まってな……シティの郊外までブッ飛ばしていくからな!!舌咬まねぇように気を付けな!つーか、口閉じとけよお前等!!」

「……安全運転で頼むぞ?」

「悪いがソイツは保証できねぇな。」

なんせ、状況が状況なんでな……安全運転第一で避難できなかったなんてのは笑い話にもならねぇから、多少の無茶は許容しろってな?
それに、お前さん達に万が一の事があったら、俺は遊里に顔向けできねぇからな。



「……其れは……そうだな――分かった、多少の無茶には目をつぶるから、必ずみなを安全な場所に連れて行ってくれ牛尾!」

「合点承知!!」

其れが俺の役目だからな!!

こっちの事は任せとけ遊里……オメェは、そのデカブツの中のラスボスをさっさとぶっ倒してきちまいな!――お前なら、誰が相手であろうと
も、負ける事はねぇって、俺は信じてるからよ!!














異聞・遊戯王5D's Turn166
『ファイナルステージ、攻略開始!』











Side:遊里


まさかまさかのお約束が発動するとはね……ちょっとアーククレイドルを甘く見て居たわ――アタシは大丈夫みたいだけど、皆は?ジャック、
龍可、龍亞、鬼柳、クロウ!!其れに謎のDホイーラー!!無事なの?



「まさか、本当に床が抜けるとは……下手な事は言うべきではないらしいな。」

「お約束過ぎて突っ込む事も出来ねぇ……大凡満足とは程遠いな――満足が足りないぜ……」

「ったく、面倒な事に成って来やがったぜ……一体俺達は何処にいるってんだ?」

「真っ暗で、何も見えないや……」

「でも、とても嫌な予感がする……」

「……此処は、アーククレイドルの最深部だからな……そう感じるのも無理ないさ。」



此れは、声を聴く限りは無事みたいね。
とりあえずヘッドライトを照射して、誰が何処に居るのかを把握して………って、なんじゃこりゃぁ!?幾らなんでも、嫌がらせが過ぎるわよ。



「此れは……!!」

「如何やら、俺達が同じルートで最終ステージに進む事は出来ないらしいな……それぞれの進む道を攻略しないとならないみたいだ。」



そう、映し出された道は見事にバラバラ!
ジャックと龍亞と龍可のチームに、鬼柳とクロウのタッグ、そんでもってアタシは謎のDホイーラーとのタッグか……まぁ、タッグパートナーに不
満は無いから良いけどね。
で、これまたお約束的にそれぞれの進行方向も三方に分かれてるんだから、お約束此処に極まれりって所だわ。

「此れはまた、何ともアレなモンだけど、こうなった以上は仕方ないわね。
 いったん此処で分かれて、ゴールで落ち合いましょう?流石にルートは枝分かれしてても、ラスボスは多分1人だろうからゴールも1つな筈
 だと思うから。」

「あぁ、其れが最もベターな方法だろう。そして、確実な方法でもある!
 アーククレイドルの主からしたら、俺達を分断した心算だろうが、ある意味で実力的には最もバランスのとれた組分けと見る事も出来よう!
 ならば、このチームで最上階までの道のりを攻略し、下策を練った此の城の主に一泡吹かせてやろうではないか!!」

「言われるまでもねぇ……鬼柳とのタッグなら、まぁ負ける事はねぇだろうからな?」

「其れは俺もだ。
 龍可と龍亞も、ジャックが一緒なら大丈夫だろ?成長著しいお前達なら、ジャックと一緒に戦う事で、デュエルの中で強くなるだろうしな。」

「アハハ……ジャックの足を引っ張らないように頑張るね?」

「大丈夫!俺と龍可なら、ジャックの足を引っ張ったりしないさ!
 でもさ、そうなると遊里がちょっと心配だな俺……その人ってさ、強いの?Dホイールのテクニックは凄かったけど……」



龍亞?って、龍亞と龍可はアタシと彼とのデュエルは見てないんだったけ。其れじゃあそう思うのは無理ないか。
大丈夫だよ龍亞、この人はすっごく強いデュエリストなの。と言うか、この人がアタシにアクセルシンクロの存在を教えてくれたんだからね?
アクセルシンクロの存在をアタシに伝える為にデュエルをした事があるけど、相当に強かった――アタシにアクセルシンクロのヒントを与える
って言う目的が無くて、ガチのデュエルだったらアタシは負けてたかもしれないから。



「遊里が負けてたかもしれないって……実は凄い人!?」

「遊里と互角以上に戦えるデュエリストなんて、ジャックしか居ないと思ってた……」



アタシとジャックはドンだけ高評価なのよ龍亞の中で……でも、少なくともアタシやジャックと同等以上の実力者だから問題はないわ。
其れに、貴方だって助っ人の心算で来てくれたんでしょうミスターX?



「勿論だ。……だが、ミスターX?」

「謎のDホイーラーって面倒くさいし呼び辛いから。」

「成程な。」



まぁ、そんな訳で各チーム戦力的には問題なし!
だから、突き進みましょう、この果てしなく迷惑な逆上浮遊城を!!そして、此れを攻略し、シェリーを取り戻してラスボスも叩きのめすわ!!

チーム5D'sの本当の決勝戦を、始めるとしましょうか?――行くわよ!!



「「「「「「オーーーーーーーー!!!」」」」」」



さて、いったい何が待っているのやらね。








――――――








Side:クロウ


つ~訳で、自分のルートを進んでる訳だが……進めど進めど真っ暗なトンネルかよ?Dホイールのヘッドライトの明かりだけが頼りってのは
流石にちょいとキツイぜ。つっても進むしかねぇけどな。



「ソロソロ走り始めて2kmって所か……相当に曲がりくねったコースだったからな。
 時にクロウ、お前出発前にミゾグチから何か預かってたみたいだが、何を預かったんだ?」

「ん?あぁ、『EndlessDragon~Z-ONE』のカードをな。」

如何やらシェリーの奴、モーメントエクスプレスに潜入する際に、このカードだけはミゾグチさんに渡してたみてぇなんだ……万が一の事を考
えて、ミゾグチさんに此のカードを託したんだろうけどな。
で、そのミゾグチさんから、このカードをアーククレイドル内でシェリーに会う事が出来たら渡してくれって頼まれたって訳だ。



「其のカードか……だが、ソイツをシェリーに渡していいのか?
 さっきの通信を聞いた限りじゃ、シェリーは間違いなく俺達の前に『敵』として立ち塞がると思うぜ?――其れでもお前は、其のカードを?」

「渡すさ。此れはシェリーのモンだから、アイツが持ってるのが正しいんだ――カードが正しい持ち主の手に有るのに、敵も味方もないぜ!」

「だな……満足できる回答だったぜクロウ。」



そりゃどうも。
俺も、ブラック・フェザーを受け継いだからって訳じゃねぇが、カードってのは本来の持ち主が持ってこそ、其の力を発揮できるモンだからな。

っと、明かりが見えた!如何やら、トンネルは終わりみてぇだな!!


――パァァァ……



と、コイツはまたドドッ広い場所に出て来やがったな?
ちょっとしたコンサートホール位の広さがあるんじゃねぇのか此れ?……間違いなく、此処には俺達の相手のデュエリストが居るんだろうな。

オイ、居るんだろ!隠れてないで出て来やがれ!!



「……遊里ではなく貴方達が此処に来たのね?鬼柳京介、そしてクロウ・ホーガン。」

「お前は……」

「シェリー!!」

若しかしてとは思ったが、マジで俺達の前に立ちはだかるデュエリストとして現れるとはな……予想していたとはいえ、少しばかりキツイぜ。
ぶっちゃけた事を言わせてもらえば、大人しく通してほしいんだが、そうはさせてくれねぇんだろ?



「言わずとも分かるでしょうクロウ?
 私はこのフロアの番人……先に進みたいのなら、私を倒す以外に手段はない――2人纏めて相手にしてあげるから、かかって来なさい。」

「1vs2だと……余裕かましてくれるじゃねぇか。
 だが、其れで俺達に勝てると思ってんなら、大凡満足足り得ねぇな…俺達を倒すには、お前じゃ力不足だシェリー…其れを教えてやる!」

「尤も、負ける気は最初からねぇけどよ。」

だがシェリー、お前と会う事が出来たのは運が良かったぜ。
ミゾグチさんから、コイツをアンタに渡してくれって頼まれたからな――受け取れ、此れはアンタにとって一番大切なカードなんだろシェリー?



「此のカードは……此れは…そうね、確かに私にとって一番大切なカードよクロウ。
 だけど、貴方は此れを私に渡した事を後悔する事に成るわ――このカードのおかげで、私の敗北は、殆どなくなったと言えるのだから。」



後悔だと?馬鹿言ってんじゃねぇぞシェリー?
其のカードはお前のモンだ、お前の為のカードだ!其れを本来の持ち主に渡した事を後悔するなんて事はねぇ!つーかあり得ねぇんだよ!

其れ以前に、俺が後悔する事があるとすれば……シャトル内で、お前の手を離しちまった事だぜ。
俺がもしもあの時何とか持ちこたえて、お前の手を離す事が無ければ、こんな事にはならなかったかも知れねぇんだからな……正直な事言
って、ミゾグチさんにだって会わせる顔はねぇ!!
だけど、此処でこうしてお前と出会う事が出来た――なら俺は、目の前のお前を連れ戻すだけだ!!



「私を連れ戻す?……馬鹿も休み休み言うのね。
 私は戻らない……此処で貴方達を倒して、そして彼女の目指す世界の構築を手助けをする――だから誰にも邪魔h「俺は!!!」!?」



あの日から、ずっと後悔してたんだ。そして怖かった、お前が死んじまったんじゃないかって思ってな。
でも、お前は生きていてくれた……敵とは言え、俺達の前にその姿を現してくれたんだ……だったら、俺はお前を打っ倒して、本当のお前を
取り戻す!!
アーククレイドルの彼是や、未来云々なんてのは、後で考えるとして、このデュエルで目の前のお前を取り戻す!!

そして、俺は、今度こそお前の手を離さねぇ!!



「情熱的なセリフねクロウ……だけど、もう遅い――滅びへのカウントダウンは始まってしまっているのだから。
 そして、此のカウントダウンは、アーククレイドルの主である『ゾーン』を倒さなくては止める事は出来ない――故に、カウントダウンが止ま
 る事はない……此処だけでなく、全ての道に置いて番人が存在するのだから。」

「あくまでもやるってのかよ……ならやってやるぜシェリー!このデュエルで、お前の目を覚ましてやる!!」

「お前の力は大層なもんなんだろうが、精々俺を、満足させてくれよなぁ!」

「愚かな……貴方達の道は、此処が終焉よ。
 せめてもの情けとして、私が終わらせてあげるわ……此れは希望を否定した、絶望の戦いだという事を忘れずにいる事ね。」



救いは無いってか?
だけどな、絶望があるからこそ希望ってのは存在するんだぜ?――どんなに絶望的な状況であっても希望ってのは絶対に消える事はねぇ
んだ!!俺はそう信じてるぜ!!
そして、その希望の光で、お前を闇から救い出す!!――行くぜ、シェリー!!



「精々足掻きなさい……足掻けば足掻くほど、絶望が深くなるだけなのだから。」

「だが断る!そんな、はた迷惑な理なんざ、宇宙の彼方のブラックホールに蹴り飛ばす――だから、俺達に絶望は訪れねぇよ、絶対にな!」



そう言うこった――さて、始めるとしようじゃねぇか、俺達の戦いってのをな!――行くぜ!!


「「「デュエル!!」」」


クロウ:LP4000
鬼柳:LP4000
シェリー:LP4000




コイツは、夫々が4000ポイントのライフを持ってる、変則デュエルって所か……だが、それなら俺達の方が有利なのは言うまでもねぇ事だ。
ライフがバラバラなら、俺か鬼柳のどっちかが先にくたばっても、残った方はデュエルを続行できるからな。……まぁ、俺達のどっちかが先に
くたばるなんて事は無いだろうけどよ。

何にしても、先ずは目の前のデュエルだ!――シティの為にも、そしてお前の為にも、勝たせて貰うぜシェリー!!













 To Be Continued… 






登場カード補足