Side:遊里


アタシが死ぬとは……何とも穏やかじゃない事を言ってくれたけど、一体如何言う事か説明して貰いましょうかシェリー?
って言うか、何で貴女が其処に居るのよ?――モーメントエクスプレスに潜入した時、シャトルの外に放り出されて、音信不通になってたって
言うのに……一体何があったのよ?



『シャトルの外に放り出された私は、次元の狭間を漂っていたのだけれど、其処を助けられたのよ、イリアステルの総帥である彼女にね。
 そして、私は彼女から全てを聞いたわ……この世界の行く末と、私の両親が殺害された理由までもね。
 私の両親が殺されたのは、その存在が未来にとってマイナスになるからだったのよ……勿論、納得はしていないけれど理解は出来たわ。
 其れを知った上で、私は彼女に力を貸そうと思ったの――最悪の未来を回避する為にもね。』


「シェリー……貴女は、本当に其れで良いの?」

『是非もないわ遊里……此れは私が選んだ道。
 両親をも喪った私にとって、これ以外の道はないわ!待ち受ける破滅を防いでこそ、私は私の生に意味を見出す事が出来るのだから!』




そうかい……なら、これ以上はアタシも何も言わないよ。
だけどねシェリー、だからと言って、アタシ等が何もしないと思ったら大間違いだよ?――シティの上空に現れた物は、大層な物だとは思うけ
ど、ハッキリ言って邪魔だから、取り除かせて貰うからね。

だから、アタシ達は其処に突入するよ――シティの平和を守るためにもね!!














異聞・遊戯王5D's Turn165
『逆上浮遊都市突入作戦!』











『そう……ならば、好きにすると良い――此の逆状浮遊都市、アーククレイドルに突入したその瞬間から、避ける事の出来ない貴女の『死』
 と言う運命が確定するのだからね。』



ったく、少し合わない間に、何ともつまらない人になっちゃったねシェリー?
避けようのない死の運命?……悪いけど、そんな運命なんて『クソ喰らえ』だわ!!と言うか、そんな運命なんて蹴り飛ばして進むのがアタ
シだからね……死の運命なんて知ったこっちゃないのよ!!



『……貴女はきっと後悔するわよ遊里。』

「生憎、こちとら後悔とは無縁の人生なのよシェリー?」

『ならば言い方を変えましょう……貴女達がドレだけ足掻いたところで、アーククレイドルを止める事は出来ないとね。』



確かに、アレだけのモノを止めるって言うのは出来ないかもしれないかも知れないけれど、外から止めることが出来ないのなら、中から止め
ればいいだけの事だからね――何とかして内部に潜り込んで、アーククレイドルの中で待ち構えてる相手を全て倒して、そんでラスボスを倒
せば、其処で終わりだからね。

出来るかどうかじゃなくて、やるかやらないかだからね此れは。
とは言え、あの浮遊城塞にどうやって挑んだ物かな?深影さんに頼めば、ヘリ位は出してくれるだろうと思うけど……ん?



――ザザ……ザザ…ザザザ……



何、此れ!?行き成りレーゲンのモニターにノイズが……そんな、今日は走ってないし、昨日の段階で整備だってバッチリしてたのよ!?そ
れなのに不具合が出るだなんて、あり得ないわ!!



『……から……った…う?……ク……ドル……を……ないと…………精々……がき……さい。』



シェリー!?ちょっとシェリー!?……通信が途切れた!!
其れだけじゃなくて、レーゲンそのものが起動しない……永続機関であるモーメントを使ったエンジンが動かなくなるなんて、冗談じゃないっ
て言うのよ!!



「く……俺のホイール・オブ・フォーチュンも動かん!」

「Dホイールだけじゃねぇ、バスもテレビも何もかも、モーメントのエネルギーで動いてた物は、何一つ反応しなくなっちまってる!!
 まさかとは思うが、あのデカブツが現れた影響じゃねぇんだろうな!?」



モーメントを使ったもの全てが動かないって……クロウ、貴方の仮説は多分正解よ!
シェリーが言ってたでしょう、アタシ達にあの逆上浮遊都市――アーククレイドルを攻略する事は出来ないって。其れは、アタシ達の力じゃ攻
略出来ないんじゃなくて、そもそも辿り着く事が出来ないのだとしたら如何かしら?
アレの出現によって、モーメントが動かなくなったら、当然ヘリだって飛ばす事が出来ないから、あそこに辿り着くのは不可能でしょう?



「それは攻略不可能じゃなくて、そもそも攻略に挑む事すらさせねぇんだろうが!やる事がキタねぇぜ!!!」

「八方塞がりかよ……満足できねぇな。」

「んで、此の状況を考えると、アレってお約束的に少しずつシティに降下して来てると思うのよねぇ…何とかしないとシティ壊滅しちゃうわ!」

「何だとぉ!?ならば先ずは住民を避難させねばなるまい!!」



――キキー!!



「それについては大丈夫です、アトラス様、皆さん。
 セキュリティのカメラで、アレが出現したのを捉えた瞬間に、シティの住民全員にセキュリティの緊急防災システムを使って避難勧告メール
 を送っておきましたので。」

「そう言う訳で、シティの住民は既に避難の準備をしているから安心すると良い。」



深影さん!其れに、チームラグナロク!!
深影さんは兎も角、貴方達が如何して此処に?……それ以前に、貴方達のDホイールは如何して動いているの?モーメントは停止している
筈なのに……



「我々は君達に用があったのだが、その道中で君達の家に向かっているという彼女と出会ったのでね、序なので連れて来たのだよ。」

「それと、俺達のDホイールが動く理由は此れさ!」


――キィィィン!!



深影さんとは偶然出会っただけだったんだ……だけど、Dホイールが動く理由がルーンの瞳ってどういう事!?



「気が付かないか?
 我等は星界の三極神に選ばれた存在、その証たるルーンの瞳の力でモーメントの力を有効にする事が出来た……ならば、赤き竜の力を
 受け継いだシグナーたるお前達もまた、モーメントを有効にすることが出来る筈だろう?」

「「「「「!!!」」」」」


其れは、盲点だったわね。
確かに其れなら、赤き竜の力と、その証である決闘龍の力を使えば、モーメントの力を再び使う事が出来るかも知れないわ!!
力を貸して!飛翔せよ、『輝天龍 シルバー・ウィンド』!!



「降臨せよ『煌魔龍 レッド・デーモン』!」

「出でよ『煉獄龍 フォルト・スクライド』!」

「舞い上がれ『玄鳳龍 ブラック・フェザー』!!」

「降臨せよ『精霊龍 エンシェント・フェアリー』!!」



――ゴォォォォォォォォォ!!!!

――ヒィィィィン……!!




此れは……動いた!動いたわ!!
Dホイールが動くのなら何とかなるかも知れない!最大限にまで高めたフィールを使えば、その反動を利用してアーククレイドルに突入する
事だって不可能じゃない訳だからね!



「まぁ、待ちたまえ……その方法で行く事も出来なくはないのだろうが、リスクの方が大きいだろう。
 私達の目的は、君達ならばDホイールを起動する事が出来るという事を伝えるだけではない……あの逆上浮遊都市に乗り込む為の道を、
 私達が作るという事を伝えに来たのだ。
 君達には、私達の作る道を使ってアレに乗り込んで欲しいのだ。」

「アーククレイドルに至る道ですって?一体どうやって?」

「ゼロリバースで停止したモーメントを、星界の三極神の力を使って起動し、更にモーメントエネルギーを神の力で固着化させて光の道をあの
 場所まで繋ぐ。
 其れでも、光の道をずっと維持する事は出来ないだろうから、片道切符になるだろうが、この世界を護るためならばせめて此れ位はね。」



ハラルド、其れで充分よ!!
例え片道切符でも、アレに乗り込むことが出来るのなら僥倖!帰りの事は……まぁ、その時に考えるから気にしなくて良いわ!いざとなった
ら、全員がジャックのフィールバニッシュに包まれてシティにフリーダイビングすれば、最悪でも骨折程度で済むと思うから!!



「何とも、胆が据わっているな君は……流石は、神を制しただけの事はあるか。」

「デュエリストは度胸が据わってないと務まらない…でしょ?」

「ふ……確かに其の通りだ。」



でも、アレに乗り込む事が出来るなら有り難いわ。
――さて、聞いたわね皆!チームラグナロクが、アレに乗り込む道を作ってくれるらしいから、乗り込む!寧ろカチコミかけて撃破するわよ!



「ふ、異論はない!シティに仇なすモノに、絶対王者の鉄槌を下してくれる!!」

「此のままじゃ不満足なんでな……アレに乗り込んで、暴れて満足させて貰おうじゃねぇか……!」

「此の鉄砲玉のクロウ様に喧嘩を売った事を後悔させてやるぜ!!」

「私も頑張る……この街は、大切な場所だから!」

「龍可が行くなら、俺が行かない訳には行かないよな?俺はシグナーじゃないけど、一緒に行かせてもらうぜ遊里!!」



皆スタンバイはOKみたいね?
其れと龍亞、一緒に来て頂戴。確かに貴方はシグナーじゃないけど、妹だけに全てを任せるのを是と出来ないって言うのは、お兄ちゃんとし
て間違いなく正しいからね。

で、アインは如何するの?
貴女の実力は確かだから、一緒に来てくれるとありがたいんだけれど……



「悪いが、私は此処に残るよ遊里。
 マーサハウスの子供達を護らねばならないし、私まであそこに行ってしまったら、万が一の場合にアレを如何にか出来る者が居なくなって
 しまうからね……だから、私は残るよ。」

「そっか……なら、マーサハウスの皆の事、頼んだわよ?」

「あぁ、任された!!」



お願いねアイン!!……そう言えば衛遊は何処に行ったの?



「そう言えば、アレが出現する前に、飲み物を買ってくると言って出て行ったきり見て居ないが……まぁ、其の内戻って来るだろうさ。
 彼の性格的に、自分だけ先に何処かに逃げるという事はないだろうからね。」

「其れは確かに……案外、ガソリン駆動の車とか探して持って来そうだわ。」

まぁ、あんまりゆっくりもしていられないし、アタシ達は行くから、衛遊が戻ってきたら『アレにカチコミかけに行った』とか言っておいて!



「ふふ、了解した。」



さて、乗り込むわよアーククレイドルに!!








――――――








Side:ハラルド


神に選ばれた私達が、まさか道を繋ぐ事に成ろうとは……或は、此れこそが私達の役目だったのか……確かめる術はないが、私達の役目
は、上条遊里達をアーククレイドルに送り届ける事だ――準備は良いな、ドラガン、ブレイブ!!



「準備は出来ている…行くぞ!!
 星界の扉が開く時、戦神がその魔鎚を振り上げん。大地を揺るがし轟く雷鳴と共に現れよ!光臨せよ『極神皇トール』!」

「星界より生まれし気まぐれなる神よ、絶対の力を我らに示し世界を笑え!光臨せよ、『極神皇ロキ』!」

「北辰の空にありて、全知全能を司る皇よ!今こそ、星界の神々を束ね、その威光を示せ!
 天地神明を統べよ、最高神『極神聖帝オーディン』!」



――キィィィン!!!

――轟!!!




よし、モーメントが起動し、アーククレイドルへの道が開けた……私達に出来るのは此処までだ――後は頼んだぞ、チーム5D's……最強の
デュエリスト達よ!!








――――――








Side:遊里


OK、チームラグナロクのおかげで道が開けた!!行くわよ皆!!



「「「「「応!!」」」」」



そんな訳で、一気加速して光の道を爆走!!
龍可と龍亞はDボードだから、ジャックのホイール・オブ・フォーチュンに捕まる形で光の道を爆走してるんだけどね……でも、そのせいでジャ
ックが若干遅れてるわね?
如何に最高性能のホイール・オブ・フォーチュンでも、Dボード2機を引き連れるのは、少し無理があったかなぁ?
ハラルドの言葉を信じるなら、この道はあまり長くは維持されないだろうから、出来るだけ早くゴールしたいんだけど……さて如何しよう――



――キィィィン……



って、この音はDホイール!?……貴方は!!!あの時の、謎のDホイーラー!?



「遊里、ジャック、スリップストリームで付いてこい!!」

「……分かったわ。」

「状況が状況なのでな……今は貴様に従う事にしよう!!」



まさかの乱入だったけど、此れは嬉しい乱入だったわ――此のスリップストリームのおかげで、チーム5D's全員が、光の道が消える前に、ア
ーククレイドルに降り立つ事が出来た訳だからね。

でも、降り立った場所には内部に通じるドアとかは見えないんだけど……どうやって内部に入り込もうか?


「考える事などなかろう……この状況下では、お約束が発動するだろうからな……」

「……お約束?」

「お約束だ。」


――パカ!



なんて事を話してたら、行き成り床が抜けたですって!?……此れじゃあ本当に、ジャックが言った『お約束』その物じゃないのよぉ!!!!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!













 To Be Continued… 






登場カード補足