Side:遊里


ハハ……アハハハ……まさか、宣言通りに、アタシにまで回さずにアポリアを、チーム・ニューワールドを倒すとは、流石じゃないジャック!!
こう言っちゃなんだけど、何時でも出れるようにスタンバイはしてたんだけど、必要なかったみたいだね?



「中々に手強い相手ではあったが、奴がお前より上という事は無かろうな。
 故に、お前の他を煩わせるまでもないだろう?予想外の戦術だった事で鬼柳は不覚を取ったが、ネタが割れてしまえば恐れる相手ではな
 かった――あの程度ならば、俺一人で充分だ。」

「ジャックが言うと、凄く説得力あるよね其れは。」

ともあれ、此れでイリアステルの野望は阻止した事に成るわ。
そう言う訳だから、先ずはアポリアを回収して、色々聞かせて貰おうじゃないの?――未来を救うために過去を破壊するなんていう馬鹿げた
方法を選んだ経緯とかを全部ね。

尤も、派手に吹っ飛んだから、アタシに負けた時のプラシドよろしく真っ二つになってるかもしれないけど――取り敢えず、五体は無事みたい。
其れじゃあ回収して――


――バチィ!!


って、何此れ!?
アポリアの周りに火花放電が起きて、其れがアポリアを包み込んで……そして――消えた!?
何処に消えたかは分からないけど、アポリアが消えたって言う事は、イリアステルの野望その他は終わってない可能性がある――それ所か
アポリア以上の黒幕が居る可能性すら出て来たわね。

WRGPを制し、イリアステルも倒したけど、だからと言って楽観は出来ないみたいだわ。














異聞・遊戯王5D's Turn164
『現れる逆状浮遊都市』











とは言っても、アタシ達がWRGPを制覇したのは変わらないから、WRGPの初代チャンピオンチームとしての表彰はちゃんと受けた。このゴール
ドメダルは、大切な宝物になるわね。

だけど、アタシ的にはMCさんにもゴールドメダルを送りたいかな?
アポリアの出現で、サーキットに凄まじいフィールが吹き荒れて、其れに恐れをなした撮影スタッフが逃げちゃった中でも、MCさんは最後まで
実況としての役割を果たした訳だからね……MCさん、マジ裏主人公。


で、表彰式も終わって、コンドミニアムに戻って来た訳なんだけど……多分、アポリアを倒して終わりじゃないよね?



「奴が爆発四散でもしてくれたのならば、終わりという事が出来たのだが……あの様な不可解な消え方をした以上は、終わりとは言えんな。
 寧ろ、アポリア以上の存在が、目的の為に奴を回収したと思った方が良い。
 其れを踏まえると、イリアステルを倒しても、其処で終わりと言う事ではないのだろうな。」

「うん、きっと終わってないと思う。全ての事が、終わってないんだよジャック。」

「なればどうする?」



決まってるでしょ?本当の意味で終わらせるために、イリアステルの本当の頭を叩きのめす。
其れが誰かは分からないけど、敗北したアポリアを態々回収した訳だから、改めてこっちに攻撃を仕掛けて来るのは略間違いないでしょう?
なら、その時に相手をして、そして叩き潰してやるだけよ。



ウム、其れが確実だろうな――問題は、どのような手で来るかだが………ム?



シルバー・ウィンド、如何かした?……って言うか、何かを感じたのよね?
カードの精霊達は、アタシ達人間には無い超感覚が備わってるから、アタシ達に分からない事でも感じ取る事が出来るからね。



此れは……途轍もなく強大な物が現れようとしています遊里!

プリンセスも感じ取ったよね当然?此れは、なんか途轍もなくヤバイのが来そうだよ?



プリンセスとガールも何かを感じ取ったのね?
という事は、きっと龍可もエンシェント・フェアリーから『何かを感じ取った』事を知らされてる筈だわ――龍可!



「遊里……うん、エンシェント・フェアリーも『何か巨大な力を持った物が現れようとしてる』って言ってたわ。其れが何かかは分からないけど。」

「精霊でも分からない存在って言うのは、其れだけでも強大ってのが分かるから其れだけでも充分。
 恐らくはシティに現れるんだろうから、外に出るわよ皆!」

「うむ、何が現れるのか、先ずは其れを見極めんとな。」



という訳で外に……って、此れはまた如何にもな空模様になって来たわね?
大会の閉会式の時には晴天だったのに、今は分厚い黒雲に空が覆われてるわ……其れこそ、何時雷雨になってもオカシクないんだけど、こ
のシチュエーションは、空から何かが現れるにはうってつけって言える物だわ。
シルバー・ウィンド達ですら脅威に感じたその存在……果たしてどれだけの物が来るって言うのかしら……








――――――








Side:アポリア


此処は……そうか、私は負けたのか。
上条遊里を引き出す事も出来ずに負けるとは無念だ……其れに、私が負けたという事はサーキットも完成せずに計画は頓挫してしまったの
だろう……無念だ。



「いいえ、計画は終わっていません。寧ろ、計画は次の段階に進みましたよアポリア。」

「ゾーン?……計画は、次の段階に進んだ……だと?」

「アポリア、君がルチアーノ、プラシド、ホセの3人のままで負けたのならば計画は頓挫していましたが、再びアポリアに戻った事で計画は成さ
 れたのです。
 何故ならば、貴方が現れて、彼等とデュエルをすれば何方が勝ってもサーキットは完成するのですから――貴方が現れた時点で、計画が
 次の段階に進むのは確定していたのですよアポリア。」



そうだったのか……だが、其れならば私はもう用済みだろう?
其れなのに、何故まだ生かしておく?計画の残りは君だけでも成し遂げる事が出来るだろうゾーン?……何故私を助けた、4度目の絶望等
味わいたくはないぞ?



「貴方にはまだ生きて貰わねばなりません。
 確かに計画は次の段階に進みましたが、しかし彼女達が黙っている筈がないでしょう――必ずや、此処まで乗り込んで来る筈です。
 なので、貴方には乗り込んで来た者達を始末して頂きたいのです。絶望を知り、そして絶望を与える番人として。」



3度の絶望を味わった者が絶望の番人として立ち塞がるか……皮肉にも程がある事だが、そう言う事ならば計画が完遂するその時まで、今
暫く生きてみるとしよう。
其れに、奴らが乗り込んでくると言うのならば、私に4度目の絶望を味わわせようとしたジャック・アトラスへのリベンジも出来るだろうからな。



「貴方ならそう言ってくれると思いました。
 それと、貴方のデッキに新たなカードを追加しておきました――これで貴方のデッキは、究極のSXキラーデッキとなったので、余程の事がな
 い限り、負ける事はないでしょう。」

「くく……礼を言うぞゾーンよ。」

負けはしたが、計画が続いているのならば僥倖だ……必ず我等の目的を果たして見せよう!
絶望の未来を回避する為に、絶望を齎す過去を破壊する――過去がなければ未来はないが、間違った過去がなくなれば間違った未来も存
在しえないのだからな。

全ては未来の為に――今全てを無に帰すだけだ。








――――――








Side:遊里


そんな訳で、外に出て何が来るのか待ってた訳なんだけど……



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……



な、なんじゃありゃーーー!?天空の城ラピュタ宜しい浮遊城!?てか、大きさが普通に旧サテライト地区と同じ位なんだけど、まさかアレ
がシルバー・ウィンド達が感じ取っていた物!?
此れは冗談抜きで半端な物じゃないわ……って、何か見えるわね?……アレは、可成り朽ちてしまってるけどダイダロスブリッジじゃない!

サテライトと同じ大きさって言ったけど、まさかアレは旧サテライト市区を逆さまにした物だって言うの!?……だけど旧サテライト地区は健在
だから、其れを模した何かか、或は遥か未来からやって来た物なのか……

何れにしても、アレは到底捨て置く事が出来るモノじゃないわ。
深影さんに頼んで、輸送用のヘリ出してもらって、アレに乗り込むとしましょう!!――アタシの勘が、あそこに全ての元凶が居るって言って
るからね。



「確かに、アレはヤバそうだから、何とかしねぇとならねぇからな。乗り込むのが上策だぜ!!」

「天から現れた逆状浮遊都市……相手にとって不足はねぇ。満足させて貰おうじゃねぇか!!」

「大層な出で立ちだが、其れだけに過ぎんだろう。俺達の前では、あんな物など塵芥に過ぎん!乗り込んで倒して、其れで終いだ!!!」



当然、あそこで何が待ち受けていたとしても先に進むだけだけどね。
でも、そうと決まったら早速深影さんに頼んで――


――ヴィン


と思ってたら、Dホイールのモニターが何かを表示した?
アタシのDホイールは、オンライン接続をしてるから、携帯端末に代わって情報を受信できるんだけど……このタイミングで一体誰が通信を?



『久しぶりね、遊里。』

「って、シェリー!?」

良かった、無事だったんだ。
あのシャトルの一件以来、ずっと心配してたのよアタシは!……無事なら無事で、せめてメール1通くらい寄越しなさいよ!ドンだけ心配した
と思ってんのよ!ミゾグチさんなんて、最初は食事がのどを通らなかったんだからね!?



『其れは……申し訳なかったと伝えておいて。其れと心配かけて御免なさいってね。
 でもね遊里、貴女は此処に来てはダメよ――此処に来たが最後、貴女は死んでしまうのだから――此の未来は回避する事は出来ない。」


「え?」

ちょっと待って、あそこに乗り込んだらアタシが死ぬってどういう事?それも、断定的に言うって……あそこには一体何があるって言うのよ…













 To Be Continued… 






登場カード補足