Side:ジャック
1回戦のチーム太陽とのデュエルは、実に見事な物だったな。
俺は参加しなかったとは言え、事実上召喚不可能とまで言われていた、最強のエクゾディアを実戦で呼び出し、俺達チーム5D'sに真っ向からぶ
つかって来たデュエルスタイルは称賛に値するものだ。
今回は俺達が勝ったが、機会があればまた戦ってみたいものだな。
だが、次なる2回戦は、如何やら純粋にデュエルを楽しむと言う戦いにはなりそうにない。
『決まったーーー!神の一撃が相手モンスターを粉砕し、チームラグナロクは、ファーストホイーラーであるドラガンの3人抜きで1回戦突破ぁ!
神の一撃は正に最強!!果たして、神のカードを打ち破ることが出来るチームは存在するのかーーーーー!!!』
「神は無敵にして最強!故に、我等の前に敵はない!!」
2回戦の相手、チームラグナロク……と言うよりは、チームメンバーのドラガンと俺には、浅からぬ因縁があるからな。
奴は、シティの連中が、俺をキングに飾り立てようとしていた時に踏み台として宛がわれたデュエリストの1人で、当然ながら俺に敗北した訳なの
だが、あのデュエルが奴の本気だったとはどうしても思えん。
神を従えてるという事を考えても、奴のデュエリストレベルはあの程度ではない筈だ――とするならば、当時のシティのクズ共に、何らかの取引
で、負けるように指示されていた可能性が高いだろうな。……マッタク持って業腹モノだ!!
まぁいい、貴様が2回戦に駒を進めて来たというのならば、改めて相手になってやるドラガン!……今度は、裏のない純粋なデュエルでな!!
だが、その上で知るがいい!例え神を従えた所で、絶対王者たる俺を倒す事など、土台不可能だという事を!!
異聞・遊戯王5D's Turn152
『2回戦に渦巻く因縁の鎖』
「次の相手は、神のカードを従えたチームラグナロク……ちょっとヤバくない?」
「龍亞の言う通り、ちょっとヤバいかも。
彼等の操る神のカードは、私達が従えてる『決闘龍』に匹敵するだけの力を備えてるから、一筋縄では行かないと思うわ。」
とは言え、流石に相手が神ともなれば、龍可と龍亞の双子は其れを脅威に感じるか……クロウと鬼柳も、少しばかり気圧されているようだがな。
その中で遊里、お前はマッタク持て平気な様だが……奴等の神に脅威は感じないのか?
「全然全く感じないわね。
って言うか、アタシはパラドックスの時に過去に遡って、其処で初代決闘王である遊戯さんの神である『オベリスクの巨神兵』をこの目で拝んで
るから、今更神に恐れを成したりはしないわ。
って言うか、チームラグナロクの『神』と、遊戯さんの『神』じゃ格が違いすぎるって。
少なくとも、1回戦でドラガンが使ってた『髭マッチョ雷ハンマーオヤジ』じゃ、オベリスクの足元にも及ばないのは確実。もっと言うなら、そもそも
普通にステータス面でオベリスクには及ばないからね。」
……お前に聞いた俺が悪かった。
過去に遡り、伝説のデュエルキングの『神』を拝んだお前からしたら、チームラグナロクの『神』であっても物足りないレベルだったか――其れだ
けで、初代デュエルキングの武藤遊戯と言うデュエリストが、如何程だったのか想像できると言うモノだ。
尤も、俺とて伊達に絶対王者を名乗ってはいない!
相手が神であろうと、その挑戦を真っ向から受けきって、そして粉砕するだけの事!!それが、絶対王者たる俺の使命だからな!!
「気合入ってるわねジャック?――なら、明日のデュエルは?」
「俺が勝つ!!
奴はある意味で俺の犠牲者だが……だからこそ、本気同士のデュエルで俺が叩き潰さねばならん!!
勝ちを譲ってやる事は簡単だが、其れは逆に奴の誇りを傷つける事でしかないからな……奴の本気を正面から叩き折った末に、俺が勝って
こそ、アイツは救われるのだろうからな。」
「其れを聞いて安心したわ……なら、このカードを持って行くと良いよ。」
――パシ!
このカードは?……俺のデッキならば使えるカードだが……
「デュエルショップで、ガチャ回したら当たったのよ。
アタシのデッキじゃ使えないけど、ジャックのデッキだったら充分に力を発揮してくれるでしょ?……アタシからの『ラッキーカード』って事よ♪」
お前からのラッキーカードか…ならば最高だ。
此れで、俺が奴とのデュエルで負ける事はなくなった!!――相手が神だろうとも、俺のレッド・デーモンが全てを焼き尽くす!!それだけだ!
――――――
Side:ドラガン
1回戦の相手は、何とも歯応えがなかった……アレならば、或は神を召喚せずとも勝つ事は出来ただろう――3連続瞬殺とは行かなくともな。
「まぁ、そのお蔭で俺とハラルドは楽出来たし、次の相手に手の内を曝さずに済んだとも言えるけどなぁ?」
「そうと言えるかもしれんが、次の対戦相手である『チーム5D's』の登録メンバーは、登録上限の5人……1回戦の時とはメンバーを入れ替えて
来る可能性は高いだろう。
となれば、手の内が分かっているのが1人と言う状況は、此方も同じだ。」
「いや、2人だ。少なくとも俺は、ジャック・アトラスの戦い方は知っている。
無論、以前のデッキとまるっきり同じではないだろうが、メインのカードは大きく変えてはいない筈だからな……今度は、俺が勝つ!!」
「気合入ってんなぁドラガン?
ジャックてのはシティの絶対王者だろ?お前、アイツと何か因縁でもあんのかよ?」
……前に一度、俺がシティに遠征に行った事があっただろう?その遠征先での相手が、当時無敵街道を驀進していたジャック・アトラスだった。
毎日のように行われるデュエルで連戦連勝、俺が挑んだ頃には少しずつ『絶対王者』と呼ばれ始めていた頃だったのだが……シティの連中は、
象徴的な王者を欲し、其の力を絶対の者とする為に俺を奴の対戦相手に選んだのだ。
「はぁ?意味分かんねぇ。
いや、神を持つお前にジャックが勝つ事で、其の力の偉大さを示すって言う意図は分かるんだが……確実にジャックが勝つなんて保証は何処
にもねぇんじゃねぇのか?
って、まさか!!」
そのまさかだブレイブ。
プロモーターは俺に八百長を持ちかけて来たのだ……『ジャックに負けてくれれば、父上の治療費と入院費を全て払う』と言ってな。
今にして思えば馬鹿な事をした……そんな方法で助かっても、父が喜ぶ筈がないのにな――だが、当時の俺はどんな形でも父を助けたいと思
って居た故に、其れを受け入れ、そして負けた。
だが、其れ自体は俺自身が選択した事だから仕方がない…俺が許せないのは、奴が俺とのデュエルにマッタク本気を出していなかった事だ!
恐らく八百長の事は知らなかったのだろう。デュエル後に『神を従えた者も、この程度か……』と言っていた事からも其れは間違いないだろうが、
それに続いて奴は『つまらん』と抜かした!
其れはそうだろう、俺はわざと負けるようデュエルをしていたのだから。
だが奴は、其れを俺の実力と取り、全力を出すまでもない相手として、レッド・デーモンを召喚せずに俺のライフを0にした――本気を出さずに俺を
倒した。
本気を出さずとも倒せると判断されたのも屈辱だったが、その思いは1年ほど前にシティで行われた『デュエル・オブ・フォーチュンカップ』のエキシ
ビジョンを見て更に強くなった。
その時のジャックの相手は、チーム5D'sのリーダーである上条遊里だったのだが……彼女とデュエルしていた時のジャックは、俺と戦った時とは
まるで別人の様だった。
ジャックは、上条遊里とのデュエルを心底楽しんでいた……其れが、俺には受け入れらなかった。
如何に本気を出していなかったとは言え、其れが俺の本気と誤解されて全力を出されず、更にはデュエルを楽しんでもいなかった……其処まで
安く見られたのは、幾ら何でも我慢できん!!
俺の力はあの程度ではないという事を、奴に叩き込まねば俺の魂は……神は鎮まらん!!
「ならば、如何するねドラガン?」
「知れた事……次の2回戦で、ジャックの首を狩って全てを清算するだけだ!!
俺の本当の力を奴に見せ、その上で神の圧倒的な力を持ってして奴を屠る!!――本気で戦ったら何方が強かったのか、其れを証明する。」
「お、燃えるねぇ?」
俺が奴に劣っているとは如何しても思えんと言うのが本音だ。
だからこそ、俺はお前に勝つ!!お前が如何に強かろうと、神のカードは無敵にして最強故に、お前でも神に勝つ事は出来ないだろうからな。
神の鉄槌を持ってして、あの時の全てを清算する!――覚悟しておくがいい、ジャック・アトラス!!!
――――――
Side:ジャック
『盛り上がってるか皆ーーー!
WRGP2回戦の第1試合は、ある意味で事実上の決勝戦と言っても過言じゃない組み合わせだー!!
神のカードを持つ『チームラグナロク』と戦うのは、絶対王者ジャック・アトラス、黒翼の使者クロウ・ホーガン、無敵女帝上条遊里がオーダー提
出されているチーム5D's!
神の力は、1回戦で示されたが、此の3人が簡単に神に屈するとは思えない!――この2回戦は、大荒れ間違いなしだ~~~!!』
WRGPの2回戦も盛り上がっているな?……いや、其れも全ては実況を務めている、弩派手なリーゼント髭ダンディのお蔭なのだろうがな。
だが、盛り上がっているのは良い事だ――其れでこそ、俺とドラガンのデュエルは激しくなるだろう。互いにファーストホイーラー故に、負ける事も
出来ないと来ているからな!!
「やっちまえジャック!
神を従えただけで倒せるほど、絶対王者は柔なもんじゃないって言う事を、た~~っぷりと教えてあげてきて。」
「言われずともその心算だ!!」
確かにドラガンが挑んだ時の俺は、お飾りのキングだったかもしれんが、サテライトに渡り遊里と出会った事で、俺は真の絶対王者となった。なる
事が出来た!!
真なる絶対王者の力、奴にたっぷり味わわせ、その上で奴の本気を俺の本気で叩きのめすだけだ!!
「良い気合いねジャック?なら、更に士気を高める意味で『行ってらっしゃいのチュー』でもしてあげようか?」
「要らん。勝利のメイク・ラブならば大歓迎だがな。」
「そりゃ残念。
ま、冗談は兎も角として、神を従えた連中に絶対王者の力を見せつけてやってよジャック!そんで、余裕で決めてきて『俺の敵じゃない』って。」
ふん、誰に物を言っている!
俺は絶対王者!!誰が相手でも全力で叩きのめすだけの事――例えそれが『神』であってもな!!俺に挑んだ事を後悔させるだけだ!!!
『さぁ、いよいよ2回戦第1試合の開始だーー!
1回戦を3人抜きしたドラガンの前に立ちはだかるのは、シティの絶対王者のジャック・アトラス!!
神を従えた男と、シティの絶対王者!勝つのは果たしてどちらなのか全く予想が出来ないデュエルだー!!だからこそワクワクする~~!』
さて、其れでは行くか。
俺に挑む、その意味は理解しているのだろうなドラガンよ?
「お前に挑むのは最強奪取の意思表示……俺は其れを現実にする!!」
「ふ……良くぞ吠えた!それでこそ俺の相手に相応しい!!
では始めるとしようか、絶対王者と神による、最強のデュエルをな!!」
「是非もない……今度こそ、俺は貴様を倒す!!」
「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」
先ずはコーナー争いになるが……コイツ、予想以上に強気にインを攻めて来るな?余程腕に自信があるか、機体の強度がなければできない事
だが、敢えてそれをするという事は、それ程の覚悟を持ってして俺とのデュエルに臨んで来たという事か。
良いだろう、先攻は譲ってやる。全力で来るがいい!!
『ファーストコーナーを取ったのはドラガン!果たして一体どんなデュエルが展開されるのかーーー!!
其れじゃあ行くぞ?2回戦第1試合、デュエルスタートォォォォォォォォ!!!』
「「デュエル!!」」
ジャック:LP4000 SC0
ドラガン:LP4000 SC0
「俺のターン!『極星獣シトロン』を守備表示で召喚!」
極星獣シトロン:DEF2000
「カードを1枚セットしてターンエンド。」
守備モンスター1体とリバースカードが1枚……悪くない布陣だが、その程度で俺を止める事は出来ん!!俺のターン!!!
ジャック:SC0→1
ドラガン:SC0→1
此れは、行き成りいカードを引いたな?遊里から貰ったラッキーカードを引き当てるとは、運は俺に向いているらしい。
俺は、遊里から貰った『リゾネーター・サモナー』を攻撃表示で召喚!
リゾネーター・サモナー:ATK1500
リゾネーター・サモナーの召喚に成功した時、デッキか手札から『リゾネーター』チューナーモンスターを特殊召喚出来る。
俺はデッキから、このモンスターを呼び出す!来い『シェル・リゾネーター』!!
シェル・リゾネーター:ATK1000
行くぞ!レベル4のリゾネーター・サモナーに、レベル3のシェル・リゾネーターをチューニング!!
天頂に輝く死の星よ、地上に舞い降り生者を裁け!シンクロ召喚!切り刻め『天刑王 ブラック・ハイランダー』!!
『ムオォォォォオォオォォ!!!』
天刑王 ブラック・ハイランダー:ATK2800
「天刑王 ブラック・ハイランダー………相手にとって不足なし!!見せてみろ、貴様の本気と言うモノをな!!」
「言われずともその心算だ!!」
そして、貴様こそ知るがいい――この俺の力を……絶対王者の圧倒帝な力と言うモノをなぁ!!!
精々貴様の全力を賭してかかって来るがいい……俺が、否俺達が、真正面から叩き潰してやるからな!!――さぁ、行くぞドラガンよ!!!
あの時のデュエルの、真の決着をつけようではないか!!
俺も手加減はせん!!己の全力を賭してかかって来るが良い!!神を従えたデュエリストよ!!
To Be Continued… 
登場カード補足
極星獣シトロン
レベル4 地属性
獣族・効果
このカードが相手によって破壊された場合、デッキからレベル4以下の「極星」モンスター2体を特殊召喚する。
ATK0 DEF2000
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