No Side
モーメントエクスプレスから、辛くも帰還した遊里達は、得た情報を確実なものとするために、再びモーメントエクスプレスを訪れたのだが――
「オイ、此れは一体何の冗談だ?」
「モーメントエクスプレスが、跡形も無くなってる?」
そこに在ったのは、赤茶けた地面が広がる開発途中の地区で、其処にモーメントエクスプレスが存在していた面影は微塵もない。と言うより、元
からそんなモノは存在して良かったかのような状態なのである。
そして、其れは決して間違いではない。
「ん?……何だこりゃ?」
同刻、レーン等の復旧が終わり、大会が再開されたWRGPの決勝トーナメント出場の為に、シティに向かっていたとあるチームの1人が、何かに
気付いて、手元の新聞を見やると、其処には先程とは違う記事が書かれてた。
どんなカラクリかは分からないが、イリアステルが何かをしたのは間違いないだろう。
得体の知れない何かが蠢く中で、WRGPの決勝トーナメント開始の時が近付いて来ていた。
異聞・遊戯王5D's Turn146
『迫る、WRGP決勝トーナメント』
Side:遊里
モーメントエクスプレスが丸ごとなくなってたとは思いもしなかったわ。
もっと言うなら、誰もモーメントエクスプレスの事なんて覚えてない――其れこそ、最初からそんなモノは存在していなかったと言った感じでね。
だけど、此れは龍可と龍亞がスキエルに襲われた後の状況に似てるわね?
あの時も、あのデュエル後は、龍可と龍亞のクラスメートは、誰一人としてルチアーノって言う転校生の事は覚えていなかったからね……其れを
考えると、イリアステルにはある程度の歴史改竄能力があるのかも知れないわ。
尤も、其れがあると仮定した場合は、ゼロリバース前に、アタシの両親やジャックの両親を殺しちゃえば、そもそもアタシ達は生まれない事になる
から、色々楽なんだろうけど――まぁ、其処は突っ込まないでおきましょうかね。
「遊里ーーー、大変だよ!!」
「取り敢えず此れ見て!!」
っと、龍亞に龍可、如何したのよそんなに慌てて?
何か凄い記事でもあった?例えば『要塞クジラが空を飛んだ』とか『超時空戦闘機ビッグバイパーの開発に成功』とか、そう言う類のものが。
「そんな大仰なモノじゃないけど、此れはある意味でそんな事よりも衝撃的な事かもしれないよ!!」
「うん、龍亞の言う通りだから。」
?一体何が書いてある――って、此れマジ!?
記事には『チーム・ニューワールド』がWRGP本戦に出場ってあるけど、この記事の写真に映ってるのは、間違いなくプラシドとホセとルチアーノの
イリアステル3人組じゃない!!!
まさかこうして、堂々とWRGPに参加して来るとは……良い度胸じゃない?って言うか、プラシド直ったんだ。
――でもまぁ、生憎とアタシは降りかかる火の粉は払うタイプだから、戦う事になったその時は、一切の手加減なしで叩きのめす!!本より、ア
イツ等のやろうとしてる事は、1万歩譲っても認められる事じゃないからね。
「堂々と出場して来たか……コイツ等は予選には居なかった筈だが、モーメントエクスプレスの存在を歴史から抹消したのと同時に、自分達がW
RGPの決勝に出場すると言う歴史を作り上げたのかも知れん。
だが、奴等が来たところで、俺達チーム5D'sの負けは有り得ん!
何よりも、俺のバーニングソウルと、遊里のクリアマインド、シンクロの新たな可能性を切り開いたこの力が有れば、機皇帝と言えども恐れる相
手ではない!!」
「寧ろ、アイツ等の方から仕掛けて来てくれるんなら面倒な事がなくていいぜ。
大会で当たったら、其処で叩きのめせば其れで終いだからな?――精々、俺達を満足させて貰おうじゃねぇか。」
だよね。
そう言えば、さっきTVで大会注目のチームがそろそろ日本に到着するって言ってたわね?到着し次第、中継するとかなんとか言ってたけど――
『今、只今空港に『チームラグナロク』の面々が姿を現しました!
神のカードを持つと言われている、このチーム!WRGPで、如何なる戦いをするのか、今から目が離せません!!!』
件のチームが到着しましたか。
チームラグナロク……神のカードを持つデュエリスト達って事だけど、神のカードって遊戯さんの『三幻神』以外にも存在してたんだ?
普通なら驚くところなんだろうけど、アタシはこの目で遊戯さんの『神』を拝んでるから、ぶっちゃけオベリスク以上のモンスターでない限りは、神
のカードって言われても驚かないわ。
てか、最上級能力を発動したオベリスクの攻撃力∞を超える事が出来るとは思わないからね。
何にしても、WRGPの決勝トーナメント、全力全壊で行くわよ?目指すは優勝只一つ!そんでもって、イリアステルの野望も粉砕!玉砕!!大
喝采!!!してやるわ!!
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んで、決勝トーナメント前日。
龍亞が『頼みたい事がある』って言って来たから来てみれば、アタシ達の1回戦の相手である『チーム太陽』が其処に居た。
龍亞曰く『Dホイールのメンテナンスをしてほしい』って言う事だったけど……此れは確かにメンテナンスが必要ね?今の状態でも辛うじて走る事
は出来るけど、此のまま使ったら最悪の場合、エンジンが完全に焼き付いて二度と使い物にならなくなる可能性があるわ。
技術者としても、Dホイーラーとしても、其れは見過ごせる事じゃないから、メンテナンスをさせてもらうわ。
「勝手な事言うな!誰が、お前達なんかに――」
「助かるよ、お願いして良いかな?」
「お、おい太郎!本気か!!?コイツは、俺達の1回戦の相手なんだぞ!?
そんな奴に俺達のマシンを任せていいのかよ!俺達に勝つ為に、マシンに細工するかも知れないんだぞ!!!!」
「それは杞憂だ甚兵衛。
遊里は、そんな姑息な事をするような人じゃないし、マシンの不具合は俺達じゃどうしようもないだろ?直してもらえるなら僥倖じゃないか。」
あはは……まぁ、甚兵衛って呼ばれた人の反応の方が普通なんだけど、太郎って呼ばれた人は、人を信じるタイプみたいね?
なら、其れには応えないとだわ。信じて貰った以上は、チーム太陽のDホイールを最高の状態に仕上げるのがアタシのすべき事だからね!!
其れじゃあ早速取り掛かるとしますか!
久々にやりがいのある仕事だから腕が鳴るわ!!!――期待してなさいチーム太陽?貴方達のDホイールを、アタシの技術でジャックの『ホイ
ール・オブ・フォーチュン』に匹敵する性能にまで引き上げてあげるわ!!
「あぁ、頼むよ。」
「任せなさい!!」
アタシの中のエンジニアとしての血が騒ぐわ!!此れは燃えて来た!!!
――――――
Side:ジャック
WRGP決勝トーナメントのプレイベントと言う事で、チームラグナロクのイベントに来てみたが、其処でのエキシビジョンデュエルで、ドラガンと言う
奴が、己の対戦相手として俺を指名して来るとはな。
と言うか、俺の記憶が確かならばコイツとは1年前に戦った事がある――その時には俺が勝ったが。
面白い、あの時のリベンジと言う訳か!ならばそのデュエル、受けてやる!!
「「デュエル!!」」
ジャック:LP4000
ドラガン:LP4000
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そうして始まったデュエルは略互角!
『バオォォォォォォォォォォォォ!!』
煌魔龍 レッド・デーモン:ATK3000
『ムオォォォォォォォォォォ!!!』
極神皇トール:ATK3500
俺のレッド・デーモンに対して、ドラガンも神のカードを呼び出し、此処からが本番と言う所だ!!――と言いたい所だが、レッド・デーモンと神が
共鳴して、何やら建物が崩れ始めているな?
『中止!中止です!!』
デュエルは中止か……仕方あるまい、建物が崩壊したら大事だからな。
赤き竜の化身の1体であるレッド・デーモンと、神のカードが対峙したら、只では済まなかったか……だが、此れだけの力を生み出す決闘龍と神
のカード……ならば、神であっても俺は屠るだけだ!!!
「ノーコンテストか……だが、トーナメントで当たったその時は、実力差通りに貴様を仕留めてやる。
造られた王者、ジャック・アトラス――俺と戦うその時が、貴様のデュエリストとしての命日だ……精々覚悟しておく事だ!私は貴様を倒す!」
俺がシティのお飾り王者であった過去は否定せん。
だが、今の俺はお飾りの王者ではない!!何よりも、遊里が俺を倒すまで、俺は絶対次王者であり続ける!!――まぁ、貴様もある意味では、
俺の被害者なのかも知れんが、だからこそ本気で来るが良い!!
絶対王者の強さを、貴様の魂に刻み込んでくれる!!
「フン……期待しないで待っていよう。」
「ならば、期待していなかったことを後悔させるまでの事だ。」
俺は絶対王者、ジャック・アトラス!
全てのデュエリストの羨望と、恨みを一身に受ける存在だ!!――故に、貴様のような奴ともデュエルをした事はあるし、そのデュエルには勝利
してきた!!
俺が常に最強でなければ、貴様等も挑む甲斐がないだろうからな!!!
今回のデュエルはノーカンだが、決勝トーナメントで当たったその時は、俺の力の本質と言うモノを見せてやるから、楽しみにしておくと良い!!
「その言葉、忘れるなよ?
貴様を倒すのは、この俺ドラガンだ!!お前が如何なる策を巡らそうとも、神のカードで貴様を打ち砕く!そして、1年前の屈辱を清算する!」
「やってみろ、本気で俺に勝てると思っているのならばな!!」
たとえ相手が神であろうとも、俺はそれを砕いて進むのみだ!!
――絶対王者のデュエル道は、どんな相手であっても退けて前に進むのみなのだからな!!相手が神であろうとも、俺のロードを止める事は
出来ないと言う事を知るがいい!!
――――――
Side:遊里
何て言うか、チーム太陽のDホイールには、ちょっと懐かしさを感じちゃうわね?
サスペンションスプリングの代わりに針金製のハンガーを使ったり、動輪の駆動ベルトに自転車のチューブを使ったり……サテライトでDホイール
を作り始めたころのアタシを思い出すわ。
如何に技術が有っても、ジャンクパーツからDホイールを1台組み上げるって言うのは至難の業だから、あの頃は使える物は何でも使ったわ。
針金のハンガーに、タブレットのモニター、果ては玩具の基盤まで色々とね。
だからこそ分かる――この子は、見た目はオンボロでも、そこにはチーム太陽の魂が籠ってる最高のマシンなんだって言う事が。――ある意味
では、1回戦から最高のチームとぶつかる事になったのかも知れないわアタシ達は。
まぁ、其れは其れとして、代用品を使ってた部分はボルガー&カンパニー製の純正部品と入れ替えたし、エンジン部分も強化して、動輪の駆動
ベルトも切れ難い物に変えておいたから、性能面はかなり向上した筈よ?
「いや、助かったよ。――だけど、お代は如何すれば良いのかな?」
「要らないわ。アタシは龍亞の頼みを聞いただけだからね。
まぁ、其れで納得できないって言うなら、1回戦のデュエルでアタシ達をワクワクさせてくれる?そっちの方が、デュエリストに対する最高のお代
になるからさ。」
「その好意に感謝するよ……でも、そう言う事なら其れには応えないとだよな?
OK、俺達の全力を持ってして君達と戦うよ。と言うか、全力以上の全力を出さないと、君達には勝てないだろうから、持てる力を全て出すさ!」
「その意気や良し!」
彼方達との1回戦、楽しみにしているわチーム太陽――最高のデュエルをしようじゃない!!
To Be Continued… 
登場カード補足
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