Side:遊里


期せずして始まったジャックとマックスのデュエル。
初心者としては及第点の戦術を見せてくれたマックスに対して、ジャックも自分の2ターン目でレッド・デーモンをシンクロ召喚したんだけど……そ
のレッド・デーモンが行き成り消えたって言うのは、幾らなんでもおかしいわよね?



「何だ此れは?デュエルディスクの故障か?
 何れにしても、此れではデュエルを続ける事は出来ない――よって、このデュエルはノーコンテストとする!!」



ボマーはデュエルディスクの故障って思ったみたいだけど、アタシが整備してるデュエルディスクがそう簡単に故障するなんて事は有り得ない。
絶対に故障しないとは言わないけど、出発前にメンテをして来たから、このタイミングでの故障は、普通に考えて起きる筈がないから、レッド・デ
ーモンが消えたのは、デュエルディスクの機能とは関係ない、全く別の『何か』の可能性があるかも知れないわ此れ。

でも、そうだとしたらそれは一体何なのかしら?


このナスカの地への訪問は、如何やら只では済みそうにない……確実に、何か起きるわね。












異聞・遊戯王5D's Turn140
『紅蓮の悪魔の誘い』











Side:ジャック


デュエル中に、我が魂であるレッド・デーモンが消えてしまうとは……正直言って納得できん。
不可解な事態故にノーコンテストの裁定が下されたが、そうでなければレッド・デーモンを失った俺は負けていたのだろうが、矢張り解せんな?

デュエル後に遊里に調べて貰った所、俺のデュエルディスクには何らかの障害が発生している訳では無かったし、無線を使っての外部接触の
痕跡も見られなかった……つまり、原因は不明と言わざるを得ない状態だ。

或は、この地で俺に降りかかる脅威が存在し、其れをレッド・デーモンが感じ取って、その危機を伝える為に自己崩壊した可能性もあるが――



「くひひひひ、何やら迷っていらっしゃいますね、ジャック・アトラス様?」

「……死ね。



――ドゴォォォォォォン!!



「のわぁぁぁぁぁ!?行き成り出合い頭に、手加減無用のケンカキックをかましますか普通!?」



人間相手だったらやらんが、貴様は如何見ても人間ではないだろう炎人間が。
本来ならば、貴様の様な存在には驚いて然りなのだろうが、生憎とお前以上の存在とやり合って来た故に、その程度では最早驚く気にもならん
と言うのが本音だ……だからさっさと失せろ雑魚が。



「あんまり虐めないで下さいませ!!」

「だが、断る!!!」

「ひど!!……ではなくて、ジャック・アトラス様、貴方は素晴らしきデュエリストでございます。
 私は紅蓮の悪魔様の僕でありますが、然るべき力を持ったデュエリストに、紅蓮の悪魔様の力を譲渡する任を申し付けられております――故
 に、貴方様には私とのデュエルを受けて力を示して頂き、紅蓮の悪魔様の力を継いでほしいと。」



ほう?俺に力をか?
紅蓮の悪魔と言う名は不吉な予感がするが、その悪魔を調伏し、其の力を我が物とするのもまた一興だ!!
貴様の、甘言を敢えて受けてやろう炎人間――さっさと俺を紅蓮の悪魔とやらの下に連れて行くが良い!絶対王者が、その力を見せてくれる!



「それでこそ、絶対王者ジャック・アトラス様であります。どうぞ、此方へ……」



ふん、甘言で俺を誘い込み、デュエルで制して僕にでもする心算だろうが、悪魔風情が絶対王者に盾突こう等とは笑止千万!片腹痛いわ!!
逆に貴様を倒し、その力を俺が取り込んでくれる!!



「あ、ジャック!何処行くの?」

「マックスか……少しばかり悪魔退治に行って来る。遊里やボマーが俺を探している様ならば、『ジャックは悪魔退治に行った』と伝えておけ。」

「悪魔……退治?」

「悪魔退治だ!」

紅蓮の悪魔などと大層な名を名乗るのならば、せめてその名に見合う力を見せて貰おうか?どうせ、あの炎人間も紅蓮の悪魔が操っているの
だろうから、奴とのデュエルは紅蓮の悪魔とのデュエルと言っても間違いではなかろうからな。








――――――








Side:遊里


ジャックのレッド・デーモンが消えた理由は、やっぱり分からないわね?
シルバー・ウィンド達、カードの精霊に聞いても理由が不明だし、デュエルの後で念の為にジャックのデュエルディスクをチェックしたけど、ソリッド
ヴィジョンシステム、その他全てに於いて異常無しな訳だからホントに不明だわ。

ねぇボマー、ナスカは地縛神が封印されてる地だけど、其れがレッド・デーモンの消滅と何か関係が有ったりはしない?



「全く無いとは言い切れないが、しかし赤き竜のシグナーの持つ決闘龍ならば、地縛神が何らかの活動を始めた場合、それに対抗する為に力が
 増す筈だろう?
 其れを考えると、召喚時のエフェクトが強烈になるならば兎も角、デュエル中に消滅すると言うのは、考えられない。」

「だよね。」

そもそも、Ccapac Apu、Ccarayhua、Aslla piscu、Cusillu、Chacu Challhua、Uru、Wiraqocha Rascaの7体の地縛神は全て倒して再封印した上に
ダークシグナーだって全員倒した訳だから、今更地縛神が何かをする筈も――


――キィィィィィィン……


『……此れだけの封印を施せば、大丈夫かしらジャッキー?』

『此れまで倒した地縛神に施した封印の10倍の強さの封印だが……正直言って其れでも絶対に安全とは言えんな。
 相手は5000年前の戦いで、赤き竜をあと一歩まで追い詰めた、最強最悪の8体目の地縛神だ――今回は、俺達の龍の力を総動員する事で
 何とか退ける事が出来たが、次にコイツが目覚める時が来たのならば、その時は伝説の力を受け継ぐ者が居なければ、危ないかも知れん。』

『今のアタシ達に出来るのは、せめて次の戦いが始まったその時に、此れの封印が解けない事を祈るのみ……か。』



!!?……此れは、アタシの中に眠るユウリの記憶!?なんて言うか久しぶりに見たけど、今のは可成り無視できない事を言ってたわよ!?
地縛神は7体じゃなくて、実は8体居たって言うの!?
それも、1万年前には赤き竜をギリギリまで追い詰め、5000年前の戦いではユウリ達の龍を総動員して何とか退けた程の力を持つ地縛神が!

ボマー、8体目の地縛神の事を聞いた事は無い?



「8体目の地縛神?……そうだ、聞いた事が有る。
 地縛神の中でも最強最悪の力を持ち、1万年前の戦いでは、赤き竜をあと一歩まで追い詰めた、紅蓮の悪魔の二つ名を持つ地縛神『スカーレ
 ッド・ノヴァ』!!
 確か、此処には其れを封印した地下遺跡も存在していた筈だが……」

「直ぐに其処に案内して!
 ジャックのレッド・デーモンが消えたのは、ダークシグナー事件の余波で、ソイツの封印が解けかけて、復活しようとしてるからかも知れない!」

「何だと!?」



確実にそうだとは言えないけど、このタイミングでユウリの記憶を見たって事は、その可能性は可成り高いと見て間違いないわ!
ジャックにもそれを伝えないと!!



「あれ?如何したの兄ちゃん、遊里、そんなに慌てて?」

「マックスか、良い所に。ジャックは何処に行ったか知らないか?」

「へ?ジャックなら『悪魔退治に行く』って何処かに行ったけど………」



悪魔退治って……まさかジャックも、紅蓮の悪魔に気付いて単身で其れを倒しに行ったとでも言うの!?
冗談じゃないわ!シグナーの龍の力を全て集結して、漸く退ける事が出来た程の力を持つ地縛神を、たった1人で倒そうなんて無茶すぎるよ!
ボマー、紅蓮の悪魔が封印されてる地下遺跡まではドレくらいあるの?



「此処からなら距離にして500mほどだが、事は急を要するようだから、私のサンドバギーを出そう。其方の方が、歩いて行くよりも早い。」

「サンドバギーなんて持ってたの!?でも、今は助かるわ!」

ジャック、ソイツは危険な相手よ!アタシ達が行くまで、無事でいて!!








――――――








Side:ジャック


此処が、紅蓮の悪魔の居城か……ドレだけ大層なモノかと思ったが、随分としみったれた地下遺跡に住み着いているのだな?
ドレだけの禍々しい城を持っているのかと期待したが、こんな場所を居城としている様では、紅蓮の悪魔の実力とやらも高が知れていると言って
も過言では無さそうだな?



「確かにそう見えるかも知れませんが、此れは5000年前に、当時のシグナー達が紅蓮の悪魔様を封印する為に作った物ゆえ、紅蓮の悪魔様
 とて、好き好んでこんな場所に居る訳ではありません。
 そして、このデュエルは儀式……私が勝てば、紅蓮の悪魔様は封印を解かれて復活し、貴方が勝てば封印は解かれず、紅蓮の悪魔様は復
 活する事は無い…つまりそう言う事なのです。」

「俺は、ソイツが復活する為の糧と言う訳か……だから如何した?俺は絶対王者、誰が相手でも圧倒的な力を持ってして叩き潰すのみ!
 何よりも、王者にとって勝利とは必然!
 この世に俺を倒す事が出来るデュエリストが存在すると言うのならば、其れは只1人上条遊里のみだ!後は有象無象の雑魚に過ぎん!」

チーム5D'sの連中は、それでも俺と引き分ける事の出来る力を持っているがな。
つまり、貴様如きは俺の相手ではないと言う事だ炎人間!貴様を叩きのめし、そして紅蓮の悪魔とやらも、俺が高みに上る為の糧としてやる!
行くぞ!!



「「デュエル!!」」



ジャック:LP4000
紅蓮の悪魔の僕:LP4000




「先攻は頂きます!私のターン!
 私は、『クリムゾン・デビル』を攻撃表示で召喚!」
クリムゾン・デビル:ATK1500


「カードを1枚セットして、ターンエンド。」



俺のターン!
俺は『X-ヘッド・キャノン改』を攻撃表示で召喚!


X-ヘッド・キャノン改:ATK1800


そして、俺のフィールド上に『X-ヘッドキャノン改』が存在する時、手札の『Y-ドラゴン・ヘッド二式』は特殊召喚出来る!


Y-ドラゴン・ヘッド弐式:ATK1500


更に、俺のフィールド上に『X-ヘッドキャノン改』と『Y-ドラゴンヘッド弐式』が存在する時、手札の『Z-メタル・キャタピラーV3』を特殊召喚出
来る!!!


Z-メタル・キャタピラーV3:ATK1500



そして、俺はこの3体のレベル4モンスターをオーバーレイ!
闇を焦がす閃光よ、その力を束ねて立ち塞がる敵を粉砕せよ!エクシーズ召喚、殲滅しろ『XYZ-ドラゴンキャノン零式』!!


XYZ-ドラゴン・キャノン零式:ATK2800   ORU3



XYZ-ドラゴン・キャノン零式の効果発動!
1ターンに1度、このカードのオーバーレイユニットを取り除く事で、フィールド上のカード1枚を破壊する!
俺はこの効果で、貴様のクリムゾン・デビルを破壊する!!



XYZ-ドラゴン・キャノン零式:ORU:3→2



「流石にお見事ですが……クリムゾン・デビルが墓地に送られた時、相手モンスター1体の攻撃力を500ポイントダウンさせます!
 よって、XYZ-ドラゴン・キャノン零式の攻撃力は500ポイントダウンします!」



XYZ-ドラゴン・キャノン零式:ATK2800→2300


攻撃力を下げて来たか……だが、そうであっても貴様に大ダメージを与える事は可能なのでな――此処は迷わずに攻撃させて貰うぞ!!
XYZ-ドラゴン・キャノン零式で、プレイヤーにダイレクトアタック!!消え去れ『XYZアルティメットキャノン』!!



――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォ!!



「おぉっと、そうは行きません。トラップカード『デモンズ・チェーン』
 このカードの効果によって、XYZ-ドラゴン・キャノン零式は、その効果を失い、攻撃する事が出来ません!!」



此処でデモンズ・チェーンとは、中々に用意周到な様だな?
こうなってはXYZ-ドラゴン・キャノン零式は攻撃できんが、このモンスターは俺のデッキの力を引き出す為の尖兵に過ぎん故、此れ位の事は、
承知済みだ!!

寧ろ本番は此処からだ!!

否が応でも、絶対王者のデュエルをその身に叩き込んでやるから、精々覚悟をしておくが良い!!

そして知るが良い、紅蓮の悪魔であっても絶対王者を超える事など出来ないと言う事をな!!――寧ろ、貴様を倒すぞ紅蓮の悪魔とやら!!

俺は絶対王者!
何人にも屈しない、無敵にして最強のデュエリスト!!――その力が如何程かという事を、貴様の魂に刻み込んでくれるわ!!









 To Be Continued… 






登場カード補足




クリムゾン・デビル
レベル4    闇属性
悪魔族・効果
このカードが相手によって破壊された場合に発動する。
相手フィールド上のモンスター1体を選択し、選択したモンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。
ATK1500    DEF1500