Side:遊里


一日の始まりは、先ずはパソコンに送られてきたメールのチェックからね。
修理業をやってるだけに、修理に使えるジャンクパーツが無いかどうかは、ネットでの検索になるし、ジャンクパーツ販売ギルドに登録しておけば
、必要な時にパーツを取る事が出来るしね。

だけど、その関係メールとは別に、所謂迷惑メールが来るのも事実。
不特定多数にアトランダムに発送してるだけに、特定が難しくて、完全なブロックプログラムを作り出す事が出来ないのが現実って所ね、マジで。

今日も今日とて、怪しげな新興宗教に、インチキ感たっぷりのダイエット食品、何が根拠になってるのか分からない精力剤と……盛り沢山だわ。
ドレも此れも要らないから纏めて削除―――って、ん?


『to 遊里 From ボマー』



此れは、ボマーからの直メール?
一度はダークシグナーとなったけど、其処から再起したデュエリスト……それが、一体私に何の用かしら?取り敢えず中身を見てみて――ってオ
イ、マジか?

地縛神が封じられてるナスカの地上絵遺跡に、ジャックと共に来てくれって。

ボマーの思惑は分からないけど、招待された以上は、行くしかないわよね?――取り敢えず、ジャックに話してみないとだね。












異聞・遊戯王5D's Turn139
『その夢は、現実か虚構か』











Side:ジャック


ボマーの奴め、俺と遊里を揃ってナスカの地に招待するとは、中々粋な事をしてくれるではないか?
まして、ナスカはダークシグナーの力の源である、地縛神が封じられている地でもあるが故に、何かが起こりそうな気配はしているからな……ま
ぁ、何が起ころうとも、俺は其れを超えるがな!



「見えて来たよジャック!あの地上絵は……Ccapac Apuかな?」

「研究者たちの間では『フクロウ男』等とも呼ばれている地上絵だが……実際に見る限りではCcapac Apu――巨人が正しいのだろうな。」

尤も、此れだけの物が、今にまで受け継がれていると言う事の方に驚いてしまうがな。


さて、目的地に着いた訳だが―――



「よく来てくれた、遊里、ジャック。」

「久しぶりねボマー!元気だった?」

「お蔭で、無病息災だよ遊里。自慢ではないが、君とのデュエル以来、風邪一つ引いた記憶が無い――きっと、私自身の身体が強くなったか。」



だろうな。でなくては、納得できん。
其れは其れとして、貴様は一体何が目的で俺達をこの地に呼びつけた?メールで済むモノではないのだろう?



「うむ……実はこのところ妙な夢を見るようになってね。
 デュエルを観戦している夢なんだが……其処で戦っているデュエリストの1人は、君だったんだジャック。相手の事は分からないけれどね。」

「俺だと?」

「ジャックが!?」



何とも面妖な……して、そのデュエルの結果は?



「分からない……だが、夢から覚める前の映像が、決まって君がクラッシュする場面だった事を考えると、芳しくなかったのかも知れないな。」

「分からず終いか。」

だが、俺が大破すると言うのは聞き捨てならんな?
幾ら夢であるとは言え、俺のフィール・バニッシュを突き破れるほどのフィールを放つ事のデュエリストなど、早々いない筈だが、其れだけに無視
は出来んと言う訳か。

しかも、其れが一度や二度ではないとなれば尚の事だな。



「加えて、本格的にこのナスカの地で暮らすようになってから見るようになったと言うのも気になっているのだ。
 此処は地元の住民にとっては聖地であると同時に、地縛神が封じられている地でもある。嘗てダークシグナーとなってしまった私が、この地に
 来てからというのは、如何にも只の夢では無いように思えてな。」

「加えて、ジャックはシグナーである訳だから、其れは気にするなって言う方が無理よね。」

「まぁ、お前の言う事は分かったぞボマー。俺の身に、何か危険が降りかかる可能性があると言うのだろう?
 だが、どんな厄災で有ろうとも、降りかかる火の粉は纏めて薙ぎ払うまでの事!!俺は絶対王者、誰が掛かって来ようと、蹴散らすだけだ!」

「ウム……まぁ、君ならばそう言うだろうな。
 それでだ、実は其れとは別に、お前達を呼んだ理由はもう一つあるんだ。」



其れとは、別にだと?



「あぁ。
 マックス、絶対王者ジャック・アトラスが来てくれたぞ!」

「ホントに!?ホントに来たの、兄ちゃん!!」

「「……誰?」」

「紹介しよう。私の弟のマックスだ。」

「マックスです!うわ~~~、本物のジャック・アトラスだ~~~!凄いよ兄ちゃん!本当に、ジャックと知り合いだったんだ!!」

「此れは、少なくともジャックの自己紹介は……」

「要らんだろうな。」

つまり何か、夢の事を忠告するだけでなく、自分の弟に俺達を会わせたかったと、そう言う事かボマー?まぁ、其れ位ならば別に構わんが……



「スマナイな。見ての通り、マックスは君の大ファンでね。不敗の王者ジャック・アトラスは、マックスにとってのスーパーヒーローと言う訳だ。」

「成程な。では、改めて……俺こそが絶対王者ジャック・アトラスだ!!」

「アタシは上条遊里。宜しくね、マックス♪」

「お姉ちゃん誰?」

「って、分からない!?
 ちょっとボマー、此処ってテレビとか有るの!?フォーチュンカップは兎も角、WRGPは見てくれてるんじゃないの!?」

「私としても、君達の活躍を観戦したい所なのだが、如何せんここは特殊な辺境の地ゆえに、地上デジタル放送が受信できなくてね?
 生憎とWRGPはBSではス○パーのデュエル専門チャンネルでしか放送していない故、マックスは君の活躍を知らない…許してやってくれ。」

「ドンだけ田舎よ此処は!!!」



まさか、遊里の事を知らんとは予想外だったな。
ならば改めて知るがいい!コイツは上条遊里!嘗てこの俺と引き分けた実力者で、絶対王者が唯一認めた最強のデュエリストの無敵女帝だ!



「ジャックと引き分けた?マジで!!すげーよお姉ちゃん!!」

「あはは……まぁ、次やったらその時は勝つ心算だけどね?」

「抜かせ、今度は俺が勝たせて貰うわ!」

「ふふ、良いライバル関係を築いているようだな君達は。
 それでだ、マックスは君のファンであるだけでなく、君に憧れて最近デュエルを始めてね?兄バカかもしれないが、此れが中々見所がある。」



ほう?俺に憧れてデュエルとは、王者冥利に尽きると言うモノだが――どれ、デッキを見せてみるがいい。



「えっと……はい!」

「……ふむ、特殊召喚しやすいモンスターと、攻撃力の高いモンスターを主軸にし、魔法もモンスター強化の装備魔法を主体にした、徹底して正
 面から押していくタイプのパワーデッキか。
 冷静に罠で対処されると辛いモノがあるが、半面一度型に嵌ってしまえば其のまま相手を押し切ってしまう事の出来るデッキだな。」

「マックスがパワーデッキを使うのも、君への憧れだよジャック。
 君も遊里も、何方もデュエルは攻撃型だが、遊里が技を駆使して攻めるのに対し、君は何方かと言うと正面からパワーで押すタイプだからな。」



ふ、否定はせん。
何よりも、王者は退かぬ、媚びぬ、顧みぬ!!常に一番前を行ってこその絶対王者だ!そして、其れを成す為には、力で道を切り開かねばな!



「普通だったら、罠に掛かったらって思うんだけど、ジャックの場合はそこそこの罠は文字通り力で引き千切っちゃって先に進むからね~~?
 こう言っちゃなんだけど、普通の手錠くらいじゃジャックを拘束する事は出来ないような気がするわ。」

「……遊里、お前は俺をなんだと思っているんだ?」

「相手のフィールを自分のフィールで相殺出来る、ちょっとやそっとじゃ掠り傷も負わない最強の絶対王者。そして、現代の天錠覇王でどうよ?」

「ウム、間違ってはいないな。」

「……何と言うか、随分と仲が良いな君達は?まぁ、仲良き事は美しきかなだ。
 さて、マックス、ジャックに言いたい事があったんじゃないのか?」



ん?なんだ、言ってみるがいい。



「えっと……ジャック、僕とデュエルしてください!!」

「ほう?」

「ずっとジャックに憧れてて、何時かデュエルしたいと思ってたんだけど、其れには僕がジャックに挑戦できるまでにならないとならない。
 でもそうなるには何年かかるか分からないから……だから、この機会にデュエルをしてほしんだ!!」



そう言う事か。
シティの王者に挑戦するとなれば、其れこそ色んな大会で実績を納めるか、フォーチュンカップの様な大会で優勝して俺とのエキシビジョンの権
利を勝ち取らねばならないからな。

其処の辿り着くまでには、確かに凄まじい道のりを超えねばならぬから、こうして俺と出会った今日が、数少ないチャンスと言う訳か。

良いだろう、そのデュエル受けてやる!
普段ならば、俺に挑戦する資格を持たぬデュエリストの挑戦は、シティのデュエル運営のフロントが切る所だが、此処ではそんな物は無い!!
其れに、未来有望なデュエリストの卵の力をこの身で受けると言うのも、また一興であるからな!



「ほ、本当に!?」

「王者に二言は無い!持てる力の全てを持って挑んでくるが良い!!」

「う、うん!!其れじゃあ行くよジャック!!」



「「デュエル!!」」



ジャック:LP4000
マックス:LP4000




先攻は譲ってやる。思い切り来い!!



「僕のターン!僕は『ジェネティック・ワーウルフ』を攻撃表示で召喚!」
ジェネティック・ワーウルフ:ATK2000


「カードを1枚セットしてターンエンド!」



ジェネティック・ワーウルフ……レベル4で攻撃力2000のデメリット無しは、確かに強力だな。装備魔法で強化すれば、一線級の活躍も期待出
来る優秀なモンスターだ。

だが、その程度で俺を牽制出来ると思ったら大間違いだ!!俺のターン!
相手フィールド上にのみモンスターが存在する場合、手札の『バイス・ドラゴン』は特殊召喚出来る。この方法で特殊召喚されたバイス・ドラゴン
のステータスは半減するがな。



バイス・ドラゴン:ATK2000→1000



そして、チューナーモンスター『インビジブル・リゾネーター』を召喚!!



インビジブル・リゾネーター:ATK0



「レベル5のバイス・ドラゴンに、レベル1のインビジブル・リゾネーターをチューニング!
 天を焼くシリウス、孤狼の蒼き瞳よ、地に縛られた牙無き愚者を噛み砕け!シンクロ召喚、蒼き爪牙『天狼王 ブルー・セイリオス』!!」

『ガオォォォォォォォォォォォ‼!』
天狼王 ブルー・セイリオス:ATK2400




バトル!ブルー・セイリオスで、ジェネティック・ワーウルフに攻撃!噛み砕け『天狼蒼牙』!!



「トラップ発動『攻撃の無力化』!此れでバトルを終了する!!」

「ふむ、悪くない手だ。相手の攻撃を止める事が出来れば、其処から自分のチャンスが生まれるからな。
 カードを1枚セットして、ターンエンドだ!!」

「僕のターン!
 僕は、手札を1枚捨て、魔法カード『コスト・ダウン』を発動!これで、手札のモンスターレベルを2つ下げる!!!」



ふむ、これでレベル7以上のモンスターも、リリース1体で召喚出来るようになった訳だが……さて、何を呼び出してくる?



「僕はジェネティック・ワーウルフをリリースし、『ダーク・ホルス・ドラゴン』をアドバンス召喚‼!」
ダーク・ホルス・ドラゴン:ATK3000



此れは……レベル8で攻撃力3000と言う、最強クラスのステータスを持った最上級のドラゴン族か!
シンクロやエクシーズを使わずに、こうも簡単に上級モンスターを呼び出してくるとは、ボマーの言うように中々に見所は有りそうだな。



「行くよ!ダーク・ホルス・ドラゴンで、ブルー・セイリオスに攻撃!『ダーク・ホルス・フレイム』!!」



――ゴォォォォォォォォォ!!!



ジャック:LP4000→3400



く……だが、天狼の王であるブルー・セイリオスは只では死なん!
自らを滅ぼしたモンスターに牙を突き立て、その攻撃力を2400ポイントダウンさせる!!



ダーク・ホルス・ドラゴン:ATK3000→600



「うわ、そう言えばそんな効果があったっけ!!
 う~~ん……カードを1枚セットしてターンエンド!!」



ふ、苦し紛れのブラフリバースが見え見えだな?……もっとポーカーフェイスを磨くが良い。
だが、エンドフェイズにトラップ発動『ロスト・スター・ディセント』!このカードの効果で、墓地のブルー・セイリオスのレベルを1つ下げ、能力を大
幅に制限した状態で特殊召喚する!!



天狼王 ブルー・セイリオス:Lv6→5   DEF1500→0



そして俺のターン!
チューナーモンスター『ダーク・リゾネーター』を召喚!!



ダーク・リゾネーター:ATK1300



「レベル5になったモンスターに、レベル3のチューナー……と言う事は若しかして!!」

「その予想通りだ!
 俺は、レベル5となったブルー・セイリオスに、レベル3のダーク・リゾネーターをチューニング!!
 万物を焼き尽くす孤高の絶対王者よ、天地鳴動の力を揮うが良い!シンクロ召喚!降臨せよ『煌魔龍 レッド・デーモン』!!」

『バオォォォォォォォォォォォォ!!』
煌魔龍 レッド・デーモン:ATK3000




王者の力を見るが良い!煌魔龍 レッド・デーモンの効果発動!
1ターンに1度、フィールド上のモンスターを全て攻撃表示にし、元々の攻撃力がレッド・デーモンよりも低いモンスターを全て破壊する!
砕け散るが良い、邪悪なる偽物が!!『クリムゾン・デス・メテオ』!!



『グオォォォォォォォォォォ…!!』

「む?如何したレッド・デーモン!眼前の敵を焼き尽くせ!!」

『バオアァァァァァァァァァァァァァァ!!!』



――シュン……!!




な、此れは……レッド・デーモンが消えただと!?
俺の魂其の物と言えるレッド・デーモンが消えるとは、ただ事ではないな……一体、何が起きた?――否、何が起きてしまったのだ、この地で?

如何やら、ナスカ訪問は、簡単に終わりそうは無いらしいな――










 To Be Continued… 






登場カード補足