Side:遊里


先攻を取ったのはジャック……まぁ、当然よね。
ジャックのDホイーラーとしてのライディングテクニックは天性のモノがあるし、アタシがメンテナンスしたホイール・オブ・フォーチュンを操ってるんだから、余程
の事が無い限り、ファーストコーナー争いで競り負ける事は無い筈よ。



「よし、先攻はジャックが取った!!」

「これで、私達の方が有利になるわ!」



それに、先攻を取るって言う事はモンスターの召喚が阻害されず、伏せカードをエンドサイクロンで割られる事も無いから、かなり大きなアドバンテージを得
る事が出来るからね――特にライディングデュエルに於いては、先攻を制す者がデュエルを制すと言っても過言じゃないもの。

不安材料があるとすれば、本当のアンドレのデッキがどんなデッキなのかって言う事だけど、どんなデッキが相手でもジャックは其れを力で粉砕する筈だか
ら、実質的には不安材料は無いって事になるわね。

チームユニコーンのリーダー的存在であるジャン……色々と策を巡らせたみたいだけど、どんな策をも意味を成さない相手が居るっているって言う事をその
身をもって知るが良いわ――少なくとも、アタシ達は貴方の思惑通りに動いてあげる心算は毛頭ない訳だからね。

取り敢えず、今は絶対王者の最強のデュエルって言うモノをその目に焼き付けると良いわ!――そして知りなさい、絶対王者の絶対の力と言うモノをね!!

全力全壊で、やっちゃってジャック!!












異聞・遊戯王5D's Turn124
『絶対王者の最強デュエル!!』













Side:ジャック


デュエルに於いて手加減など無用の長物故に、初手から全開で行かせて貰うぞアンドレ!!
俺のフィールド上にモンスターが存在しない場合、手札の『輝鱗のエメラルド・ドラゴン』は特殊召喚出来る!!尤も、このターンに攻撃は出来んがな。



輝鱗のエメラルド・ドラゴン:ATK2400


カードを1枚セットしてターンエンドだ!



「俺のターン!」


ジャック:SC0→1
アンドレ:SC0→1




「行き成り攻撃力2400の上級モンスターを出してくるとは、流石はパワーデュエルに定評のある絶対王者って言う所だが……其れじゃあ俺は倒せない!
 相手フィールドにのみモンスターが存在する時、手札の『神速の山猫』は特殊召喚出来る!」
神速の山猫:ATK1500



「そして、俺のフィールド上にレベル4以下の獣族モンスターが存在する時、手札のチューナーモンスター『深山のヤマアラシ』を特殊召喚出来る!」
深山のヤマアラシ:ATK1000



「更に『アサルト・ガゼル』を攻撃表示で通常召喚!」
アサルト・ガゼル:ATK1500



1ターンで3体のモンスターを展開して来たか……そしてそのモンスターレベルの攻撃は10。この間の、遊里とのデュエルから考えるならば、レベル10の超
大型シンクロモンスターなのだろうが、其れは有り得んな。
あのデュエルも、考えようによっては俺達に『アンドレはパワーデッキ使い』という先入観を植え付けようとしたモノだとも考えらる――その上で、敢えてパワ
ーデュエルの俺を、ファーストホイーラーにしたのは、差し詰め『真のパワーデッキを教えてやれ』と言う所か?
ならば、その期待には応えて見せるぞ遊里!



「さぁてと、其れじゃあ悪いけどこのターンで終わりにするぜ?俺はレベル3の神速の山猫に、レベル3の深山のヤマアラシをチューニング!
 草原を凪ぐ風よ、蒼き閃光となりて大地を駆け抜けろ!シンクロ召喚!現れろ『サファイア・ユニコーン』!!」

『フヒィィィィィィィン!!』
サファイア・ユニコーン:ATK2000




サファイア・ユニコーン……攻撃力2000の獣族シンクロモンスターか。
今のままならば、輝鱗のエメラルド・ドラゴンの方が攻撃力は上だが、態々攻撃表示で出して来たと言う事は、自己強化か或は俺のモンスターを弱体化させ
る効果を持って居ると考えるのが妥当だろうな。
尤も、何方の効果であったにしてにも、既に貴様が俺の術中に嵌った事に変わりはないとだけ言っておこう。



「サファイア・ユニコーンの効果発動。
 自分のターンに1度、墓地の獣族モンスターをゲームから除外し、除外したモンスターの攻撃力分だけ相手モンスター1体の攻撃力をダウンさせる。
 俺は墓地の、神速の山猫をゲームから除外し、輝鱗のエメラルド・ドラゴンの攻撃力を1500ポイントダウンさせるぜ!」

「ほう?」
輝鱗のエメラルド・ドラゴン:ATK2400→900



「バトルだ!サファイア・ユニコーンで、輝鱗のエメラルド・ドラゴンに攻撃!『サファイア・スプラッシュ』!!」



――バリィィィィィン!!!


ジャック:LP4000→2900



ふん……この程度のフィールでは蚊ほども効かんな?寧ろ、この程度の衝撃では良い刺激になって、心地よい位だ。



「言ってくれるじゃないか?……だがその余裕も此処までだ。
 アンタのフィールドにはモンスターが居ない、そしてアサルト・ガゼルはバトルフェイズ中に2回攻撃出来る!つまり、アサルト・ガゼルの連続攻撃でアンタ
 は、終わりって事だ!」

「……其れは如何かな?」

「なに?」



俺が、1ターン目からレッド・デーモンを召喚しなかった事は疑問に思わなかったのか?
俺がレッド・デーモンを呼ばなかったのは、大体この展開を予想していたからだ!――召喚して居たら、このターンで倒されてしまった訳だからな!
故に貴様の攻撃を誘う為の罠を張ったと言う訳だ……そして貴様は、ものの見事に其れに掛かってくれた!

俺のモンスターが戦闘によって破壊された時、手札の『執念深き復讐のソード・ストーカー』が、仲間の仇を討つために復讐の剣を携えて現れる!!


『ウラミハラサデオクベキカ……』
執念深き復讐のソード・ストーカー:ATK2000



「そして、この効果で特殊召喚されたソード・ストーカーの攻撃力は、次の俺のターンのエンドフェイズまで500ポイントアップする!」
執念深き復讐のソード・ストーカー:ATK2000→2500



更にトラップ発動『緊急調律』
俺のモンスターが破壊された時、デッキからレベル3以下のチューナー1体を特殊召喚する!出でよ『インビジブル・リゾネーター』!


『クケケケケケ。』
インビジブル・リゾネーター:DEF0




「モンスターを失いながらも、一気に2体のモンスターを展開するとは、流石は絶対王者って所か……簡単には決めさせてくれないぜ。
 だったら、厄介なチューナーから処理させて貰おうか?」

「やれるモノならばやってみるがいい。
 インビジブル・リゾネーターは、1ターンに1度だけ戦闘及びカード効果で破壊されず、更にこのカードと戦闘を行ったモンスターを守備表示にすると言う『防』
 の力に長けたチューナーだ。
 アサルト・ガゼルで処理しようとしたのだろうが、其れも無駄だぞ。」

「其処まで考えて……カードを1枚セットして、ターンエンドだ!」

「俺のターン!!」



ジャック:SC1→2
アンドレ:SC1→2




ふむ、手札にレベル2のチューナーは存在していたが、この局面で此れを引くとは、デッキも全力でやれと言ってくれていると言う事か――ならば応えよう!
俺はチューナーモンスター『発掘王 ブラッド・フィング』を召喚!



発掘王 ブラッド・フィング:ATK0



「さっきの礼だ、今度は俺の力を見せてやろう!レベル6の執念深き復讐のソード・ストーカーに、レベル2の発掘王 ブラッド・フィングをチューニング!
 万物を焼き尽くす孤高の絶対王者よ、天地鳴動の力を揮うが良い!シンクロ召喚!降臨せよ『煌魔龍 レッド・デーモン』!!」

『バオォォォォォォォォォォォオォオォォォォォォォォォ!!!』
煌魔龍 レッド・デーモン:ATK3000




「来たか、レッド・デーモン!!」



しかとその目に焼き付けるが良い、絶対王者の最強の僕の姿を!

だが先ずは効果の処理からだ――発掘王 ブラッド・フィングがレベル8のシンクロモンスターのシンクロ素材となった時、俺はデッキからカードを2枚ドロー
する。
そして、煌魔龍 レッド・デーモンの効果発動!
フィールド上のモンスターを全て攻撃表示にし、元々の攻撃力がレッド・デーモンよりも低いモンスターを問答無用で抹殺する!



インビジブル・リゾネーター:DEF0→ATK0



この効果でインビジブル・リゾネーターも攻撃表示になるが、破壊されるのは貴様のモンスターだけだ!!消えろ『クリムゾン・デス・メテオ』!!



「強烈だな……でもその攻撃は通さないぜ?サファイア・ユニコーンの効果発動!!
 1ターンに1度、自分フィールド上のモンスターをリリースする事でこのカードをエンドフェイズまでゲームから除外できる!この効果で、アサルト・ガゼルを
 リリースして、サファイア・ユニコーンを除外!
 そして、レッド・デーモンの効果は不発となり、俺のモンスターを2体以上破壊できなかった事で攻撃は出来ないぜ!」



レッド・デーモンの効果を、その様な形で躱すのは見事だが、それで俺の攻撃を止める事が出来たと思うのならば大間違いだ!!



「如何言う事だ?」

「絶対王者のデュエルは、常に進化し続けると言う事だ!!――貴様に、真の絶対王者のデュエルと言うモノを見せてやろう!
 俺は、レベル8の煌魔龍 レッド・デーモンに、レベル1のインビジブル・リゾネーターをチューニング!
 混沌の世で、その力を増した魔王よ、今此処に震天動地の力を示せ!シンクロ召喚!!滅ぼせ『煌魔龍 レッド・デーモン・カオス』!!」

『バオアァァァァァアッァァアッァァァァァァァァァァァァァァアァァァァァァ!!!』
煌魔龍 レッド・デーモン・カオス:ATK3300



「んな、レッド・デーモンが進化しただとぉ!?」



言っただろう、絶対王者のデュエルは常に進化すると!
先ずはレッド・デーモン・カオスのモンスター効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功した時、相手に自分の墓地のチューナー1体に付き400ポイントの
ダメージを与える!
俺の墓地のチューナーは2体、よって800ポイントのダメージを受けて貰う!



「くそ……!」
アンドレ:LP4000→3200



此れでラストターンだアンドレ!
煌魔龍 レッド・デーモン・カオスでダイレクトアタック!!全てを灰にしてしまえ『アブソリュート・フォース・ブレイク』!!



「く……その攻撃は通さないぜ!!
 リバースカードオープン!トラップ発動『魔法の筒』!この効果で、レッド・デーモン・カオスの攻撃はアンタに跳ね返って終わりだ!!」



其のカードを伏せていたか……だが、その程度の戦術が俺に通じると思ったら大間違いだ!
レッド・デーモン・カオスは、相手のカード効果の対象にならない!!よって、貴様の狙っていた魔法の筒によるカウンターは無効となり、レッド・デーモン・カ
オスの攻撃は続行される!

「砕け散るが良い!雑魚が!!」

『バオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!』



――ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァァアッァァァアァ!!!



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
アンドレ:LP3200→0



『決まった~~!!ファーストデュエルを制したのは、チーム5D's!!絶対王者が、その貫録を見せつけての大勝利だ~~~~!!!』



ふん、此れ位は当然だ――天才アンドレと聞いていたが、所詮はこの程度だったか……準備運動にもならん。

さて、デュエルは決着したが効果の処理はしなくてはならないな?レッド・デーモン・カオスが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、デッキからチューナー1
体を特殊召喚出来る!!現れろ『富豪王 ヘル・グリード』!!


富豪王 ヘル・グリード:DEF0



「お、俺も効果発動……自身の効果で除外されたサファイア・ユニコーンは、エンドフェイズに特殊召喚される。」
サファイア・ユニコーン:DEF1800


転んでも只では起きんと言う事か……だが、先手は取らせて貰った!このまま一気に押し切ってくれる――真のデュエルと言うモノを此処で知るが良い!








――――――








Side:ジャン


まさかアンドレがやられるとはな……俺の計算ではアンドレがジャックの攻撃を躱して勝つ筈だったんだが、其れを覆されるとは予想外だったな。
だがまぁ良い、アンドレを欠いたのは痛いが、ブレオと俺で勝てばいいだけの事だからな……此処から反撃に転じるとしよう。

もっと言うならば、ブレオのデッキが最大の効果を発動すれば、其れこそ相手モンスターが如何に強力であってもそんなモノは関係なく勝利をもぎ取るだろう
からな……頼りにしているぞ?


「任せな、先ずはアイツを倒して見せるさ――其れが俺達のやる事だからな。俺の全能力を持ってして挑ませて貰うさ。」

「ならばいいが……クレグレも油断だけはするな……たった一つの綻びが、どんな結果を齎すかはわからんからな。」

アドバンテージはチーム5D'sにあるように見えるが、其れを覆すのが俺達なのでね……最終的には勝って見せるさ。其れが俺の悲願でもあるからな。
その為にも、頼むぞブレオ、



「任せときな……最強の絶対王者を倒して見せるさ――見た所、俺のデッキとの相性は最悪レベルに悪そうだからな?絶対に勝ってやるぜ!!」

「まぁ、確かに奴のデッキはお前との相性は良くないだろうな。」

さて、ブレオのデッキを見て、チーム5D'sは如何動くか……








――――――








Side:遊里


ファーストデュエルは、ジャックが圧巻の実力差を見せつけての絶対勝利だったんだけど――チームユニコーンが、只で転ぶとは思えないから油断は禁物。
特にセカンドホイーラーとして現れたブレオは、どうにも『いやらしい戦術』を使うデュエリストみたいだからクレグレも油断しないでねジャック。

ま、アンタだったら何があろうとも突き進むだけだろうけどさ。
取り敢えず、チームユニコーン戦は此処からが本番だわ――尤も誰が相手であろうとも全力は尽くすけどね。




「貴様が次の俺の相手か……精々失望させてくれるなよ?」

「まぁ、頑張ってみるさ。」


「「デュエル!!」」



ジャック:LP2900   SC3
煌魔龍 レッド・デーモン・カオス:ATK3300
富豪王 ヘル・グリード:DEF0


ブレオ:LP4000    SC3
サファイア・ユニコーン:DEF1800



さて、どうなるのかしらねこのデュエルは?
ハッキリなら予想が出来ない――予想を立てる事が出来ない……だから、誰にも予想する事が出来ないんだけど――此れだけは確実に言えるわ、WRGP
を制覇するのは、私達『チーム5D's』だってね!

前哨戦とも言える予選リーグだって、全勝突破の心算だから。
だけどまぁ、取り敢えず次もやっちゃってジャック!――ブレオがどんなデッキを使うかは分からないけど……立ち塞がる相手は、倒して進むだけだから!

さぁ、第2ラウンドはどんなデュエルになるのか、括目して見届けないとね!













 To Be Continued… 






登場カード補足




サファイア・ユニコーン
レベル6    水属性
獣族・シンクロ/効果
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分のターンに1度、墓地の獣族モンスター1体と、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動する。
選択した墓地のモンスターをゲームから除外し、選択した相手モンスターの攻撃力を除外したモンスターの攻撃力分だけダウンさせる。
1ターンに1度、自分フィールド上のモンスターをリリースして発動する。このカードをゲームから除外する。
エンドフェイズ、この効果で除外したこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。
ATK2000   DEF1800



神速の山猫
レベル3    風属性
獣族・効果
自分フィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上にモンスターが存在する時、このカードは特殊召喚出来る。
ATK1500    DEF1000



深山のヤマアラシ
レベル3    地属性
獣族・チューナー
自分フィールド上にレベル4以下の獣族モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚出来る。
ATK1000    DEF800



アサルト・ガゼル
レベル4    炎属性
獣族・効果
このカードは、バトルフェイズ中に2回攻撃出来る。
このカードがゲームから除外された時、デッキからカードを2枚ドローする。
ATK1500    DEF1000



緊急調律
通常罠
自分フィールド上のモンスターが破壊された時に発動できる。デッキからレベル3以下のチューナー1体を特殊召喚する。