Side:遊里


全機エンジンの状態は良好で、各種計器も異常はないし、タイヤの空気圧もバッチリだから、此れならWRGPの初戦も問題なさそうだわ。
尤も、初戦までに時間はあるから、その間での走り込みやらなにやらが有るだろうから、その辺はその都度微調整が必要になってくるとは思うんだけど、そ
れでも、此のコンディションなら負けは無いって胸を張って言いきれるわね。



「お前がそう言うのならば大丈夫だろうな
 ボルガー&カンパニーがスポンサーに付いているとは言え、最終的なメンテナンスはお前がやってくれなくては安心できんからな、遊里よ?」

「そう言って貰えると、嬉しいかな?
 まぁ、機械弄りは半分趣味みたいな物だから、其れがチームの為になってるって言うなら、其れはこの上なく嬉しい事であるのは否定しないけどね♪」

実際にやりがいのある仕事なのは間違いないし、Dホイールのメンテナンスは奥が深いからやりがいもあるのよ。――知れば知る程、奥が深いモノだしさ。
加えて、仲間のマシンの整備もなんだから、俄然やる気も出て来るってモノだわ!!



「成程な……だからこそ、お前は美しいのだろうな?
 普通なら、埃と油に塗れた姿は汚いとしか思わないのだが、お前に限っては其れすらも美しいと思ってしまうからな……其れが、お前の魅力と言う事か。」

「如何かな?自分じゃ分からないわね。」

でも、ジャックにそう言って貰えるなんて、此れは少し自信持っても良いのかな?

取り敢えず、WRGPに向けて、最高のマシンチューニングをしなくちゃだわ。












異聞・遊戯王5D's Turn123
『開幕!WRGP!!!』













Side:クロウ


さてと、今日も一日ご苦労様ってところだな。
遊里に言われるがままに始めたデリバリー業だが、此れが思ってた以上に俺の肌には合ってたみてぇだな?多い日には、日に30件以上のデリバリー依頼
が有るから、忙しくもやりがいがあるってモンだぜ。

今日も今日とて、受け付けた最後のデリバリーを終えて、後は帰るだけなんだが――折角だから、レーンを適当に流してから帰るってのも悪くねぇよな?
てか、夕暮れのレーンを流すってのは最高に気持ちが良いから、其れを見過ごす手はねぇぜ!!

まぁ、そのせいで多少帰宅が遅れるかもだが、其れはメール入れときゃ問題ないだろうからな。


そうと決まれば早速、ブラックバードを起動してやらねぇとな!!



――ガチャ……ブオォォォォォォォォォォォォン……プスン



へ?……オイオイ、如何しちまったんだよ?
キーを差し込んで、エンジンを起動したって言うのに、適当に吹かした後でエンジンが強制停止するって、普通は有り得ない事だが……ちょっと接触が悪か
ったのか?

ならもう一度――



――ガチャ………ブオォォォォォォォォォォォォン!!ブオオォォォォォォォォォォォォォォォン!!!



よっしゃ、今度は起動したぜ!!
このまま、レーンを……って、待て!!



――ブス、ブス……ジジジジジジジ……



なんだ?ブラックバードから白い煙が……其れに、とっても嫌な音がするし………まさか――



――バガァァァァァァァァァァァァァァン!!!



「どわぁ!?」

く……ブラックバードが爆発しやがった!!
幸いにして、俺は咄嗟に身をひるがえす事で何とか大丈夫だったが、ブラックバードが!!
粉々になった訳じゃねぇし、修理は出来るレベルだろうが大会までには直せねぇだろ!!……悪夢なら覚めて欲しいってのは、正にこの事だぜ!!

ん?でも待てよ?何だって行き成り爆発なんぞしやがったんだ?
そもそも最初の起動の悪さだって考えられねぇ事だぜ……俺達のDホイールは、毎日遊里と衛遊って言うプロ顔負けのメカニックがメンテナンスしてくれて
んだから、そもそも具合が悪いなんて言う事が有り得ねぇこった。

まぁ、原因は遊里が調べりゃ分かるだろうが、大破したブラックバードをコンドミニアムまで持ってくのは一苦労だぜ……しょうがねぇ、牛尾の旦那に連絡入
れて、トラックで迎えに来てもらうとすっか。

大会前に、何とも縁起の悪い事が起きちまったなぁ………








――――――








Side:鬼柳


中々やるみたいだが、お前じゃ満足には程遠いぜ。
インフェルニティ・ケルベロスの効果で、お前のフィールド上のマシュマロンをゲームから除外する――此れでお前を護るカードは一切なくなったな?



「ててて、手札0の状態から上級シンクロを2体も呼び出し、俺の場を壊滅させるとは……こ、此れがハンドレスコンボ!!」

「義村組の店で、店員のウェイトレスに手を出したのが運の尽きだったな?
 義村組は本物の任侠一家としてシティの住人からも慕われてるが、其れだけに外道にゃ一切容赦はしねぇ――俺もバウンサーとして、外道には容赦する
 なって組長から言われてるんでな。
 此れで終わりだ。インフェルニティ・ケルベロスと、煉獄龍 フォルト・スクライドの2体でダイレクトアタック!精々煉獄の炎に焼かれるんだな。」


――ドガゴバァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!



「シンジャラキエェェェェェェェェェェ!」
ウェイトレスに手を出したバカ:LP4000→1300→0



ったく、満足には程遠いデュエルだったぜ。――この不満足感は、WRGPで解消するしかなさそうだな。
組長も期待してくれてるし、何よりも、俺と遊里、其れにジャックとクロウが一緒のチーム5D'sに負けはねぇ。最高に満足できるデュエルが出来るだろうな。



「アニキ!鬼柳のアニキ!!」

「たたた、大変だ、アニキのDホイールが!!」



如何した?俺のDホイールが如何かしたのか?



「い、行き成りエンジンから発火して火達磨になっちまったんだ!!
 直ぐに消火したけど、アレじゃあ走行は不可能だぜ……もうすぐWRGPだってのに、冗談じゃねぇぞ!!!」



なんだと!?……其れは確かに冗談じゃねぇ……走行不能程度なら遊里の手に掛かれば何とかなるだろうが、火達磨になったって事を考えると色々と直
す部分が多いだろうから、WRGPの予選1回戦には間に合わないかもしれねぇな……

しかし、行き成りエンジンから出火とは……誰かが俺のDホイールに何らかの発火装置をくっつけて、其れを遠隔起動したとしか思えないぜ。
だとしたら、WRGPに参加するチームの何れかが、俺達の戦力を削ぐ意味で行った妨害工作の線も否定できねぇな……ま、遊里が調べりゃ仕掛けの詳細は
明らかになるだろうけどよ。

如何にも満足出来ない事態が起きちまったのは間違いなさそうだがな……








――――――








Side:遊里


正直に言うわ、ハッキリ言ってぶっ殺したい。クロウと鬼柳のDホイールを破壊した奴等は心の底からぶっ殺したい。端的に言うなら瞬獄殺を喰らわせたい。
アタシと衛遊が、毎日大会に向けてメンテナンスを施してた機体を、こうもあっさりと壊してくれるとか、本気で喧嘩売ってるとしか思えないわよ!!

しかも、調べてみたら、クロウのブラックバードには2度目のエンジン起動で爆発する爆弾が仕掛けられてて、鬼柳の方に至っては遠隔操作で爆破炎上す
る小型爆弾が仕掛けられてたって、妨害工作にしたって露骨にも程が有るでしょうが!!

まぁ、2機とも直せるレベルだから大丈夫だけど、此処まで壊れたのを直すのは、流石のアタシでも一朝一夕って訳には行かないから、WRGPの予選1回戦
は、最悪の場合ジャックと2人で出る事も念頭に置いておかないとだわ。

最初から1人欠員のディスアドバンテージだけど、其処は何とかする方向でやるしかないと思うわ……マッタク持って、大会を前に良くない事が起きたわね。



「……2人にはさせない。」

「アイン?」

「私をチーム5D'sのデュエリストに加えてくれ遊里。
 スタッフ登録だったが、スタッフメンバーを急遽デュエリストとして起用してはいけないと言う規約は無かった筈だ――クロウと鬼柳のDホイールが直るまで
 の間、私がチーム5D'sの5人目のDホイーラーとなる!!」

「本気か!?」

「マジかよ……!!」

「コイツは、予想外だったぜ。」



完全に予想外よ!!まさか、アインが名乗りを上げてくれるとは思ってなかったからね。

でも、考えてみればアインをチームデュエリストとして加えるのは悪くないかもしれないわ。
アインの実力は高いけど、アタシやジャックと違って名が知られてないから対策もされないだろうし、カオス・ソルジャー特化デッキは普通に脅威だからね。

「その提案、有り難く受けるわアイン!」

「友を助けるのは当然の事さ――だが、やる以上は全力を尽くすけれどね。
 其れ以前に、最高の仲間達が集っているんだ、チーム5D'sに敗北など有り得ないさ――相手がどんな策略を巡らせていたとしてもね。」



だね。アタシ達に敗北なんて有り得ない!!
でも、此れでチーム5D'sの5人目のDホイーラー、確定ね!!――頼りにしてるわよ、アイン!!



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そして、向かえたWRGPの予選リーグ!!
予想以上に観客席が埋まってるけど、其れだけWRGPは予選リーグから注目されてるって事だよね――ま、余計にやる気が出て来るって言うモノだけどさ。

で、予選1回戦の相手は『チーム・ユニコーン』……分かってた事だけど上等だって言う所ね。



『さぁ、いよいよWRGPの開幕だ~~~!!!予選1回戦の第1試合を戦うのは、チーム5D'sとチームユニコーン!!
 チームユニコーンは、世界的に有名なデュエルチームだが、対するチーム5D'sも、『絶対王者』ジャック・アトラスと、『無敵女帝』上条遊里と言う最強クラ
 スのデュエリストを有し、更には実力未知数のデュエリスト『アイン』をメンバーに加えているからその力を計り知る事は不可能だーーー!!
 何れにしても、此の開幕戦が凄まじいデュエルになる事は間違いない!!盛り上がって行こうぜ~~~~~~~!!!』


「「「「「「おぉーーーーーーーーーーー!!!」」」」」」



会場も大盛り上がりだから、情けないデュエルは出来ないよね……ファーストデュエル、任せるわよジャック?



「フン、誰に物を言っている?俺は『絶対王者』、如何なる相手であっても全力を尽くして叩きのめすだけだ――其れが王者の宿命とも言えるからな。
 絶対王者のデュエルと言うモノを、奴等に教えてくれる!!」

「その調子なら大丈夫ね――絶対王者のデュエル、其れをチーム・ユニコーンに叩き込んでやって!!」

「言われるまでもない!!
 このジャック・アトラスが『絶対王者』と呼ばれる由縁を、奴等の魂に刻み込んでくれる!!」



それは、何とも頼りになる一言ですこと。



『其れじゃあ行くぞ!?
 予選リーグ1回戦!チーム5D'sの先鋒ジャック・アトラスvsチーム・ユニコーンの先鋒アンドレ!!ライディングデュエル……アクセラレーション!!!』




そして始まった予選1回戦。
アンドレも中々やるみたいだけど、ライディングテクニックに関してはジャックの方が遥かに上ね――だから、先攻は貰うわよ。



『ファーストコーナーを制したのは絶対王者ジャック・アトラス!!此処からどんなデュエルが展開されるのか!ワクワクが止まらないぞーー!!』

「「デュエル!!」」


ジャック:LP4000   SC0
アンドレ:LP4000   SC0




そして始まったWRGPのファーストデュエル。
絶対王者ジャック・アトラスの力がドレだけのモノか、その身をもって知るが良いわチーム・ユニコーン!!――このデュエル、勝つのはアタシ達だからね!













 To Be Continued… 






登場カード補足