Side:衛遊


此れは……全ての電源が落ちた状態であるにも拘らず、此の保管庫のセキュリティはまだ生きてるようだな?…メインとは別の電源系統と言う事だろうな。
おかげで、こうしてパスワードの入力が必要な訳なんだが……



「パスワードって、そんなの分かるかよオイ!」

「4桁とは言え、組み合わせは1万通りある訳だし、それら全てを試すと言うのは、余りにも効率が悪いわよ……」



あぁ、確かにその方法では効率が悪いが……だったら、治安維持局のメインデータバンクにアクセスをしてパスワードを取得すれば良いだけの事だろう?
ハッキングはあまり好きな方法じゃないが、必要ならば其れもやるさ。



「必要悪か……まぁ、綺麗ごとだけじゃ何も出来ねぇからな?――そう言った意味では、お前さんのやり方は間違ってるとは思わねぇぜ衛遊?」

「其れは私もよ。
 其れ以前に、私の形見のカードを此処まで親身になって探してくれる人なんて、今まで居なかったからね……彼方には感謝しているわよ、衛遊。」



大した事じゃないさ。俺は俺がやりたいようにやっているだけだからな。


――ピン!


っと、ビンゴだったみたいだ。危険を冒してまでデータバンクにアクセスした甲斐が有ったと言う物だな……保管庫のロックは、今此処で全て解除したぜ!!













異聞・遊戯王5D's Turn117
『不退の意思、其れを蹴散らせ!』













Side:遊里


と言う訳で、シェリーの専属執事であるミゾグチとのデュエルをする事になったわ。――まぁ、負ける気は毛頭ないけれどね。
とは言え、相手が未知数のデュエリストである事は間違いないから、先ずは攻撃力高めのこの子で、様子見と行きましょうか。

「アタシは、『一角獣のグレムリン』を攻撃表示で召喚!」

『キシャァァァァア!』
一角獣のグレムリン:ATK2000


カードを2枚セットして、ターンを終了するわ。



「私のターン!先ずはこのモンスター『魔頂の武士』を攻撃表示で召喚します。」
魔頂の武士:ATK1200


「魔頂の武士の召喚に成功した時、手札からレベル3以下の戦士族モンスター1体を特殊召喚出来ます。
 私はこの効果で、手札からレベル3の戦士族チューナーモンスター、『放踵の武士』を特殊召喚します。」
放踵の武士:DEF1000



む、効果を駆使しての展開から、レベル7シンクロの布陣を整えて来るとは……ミゾグチは只の執事じゃないわね?…昔は、強豪デュエリストだったのかも。
其れが、なんでシェリーの執事になったのかは気になるけど、其れはこのデュエルには関係ない事だから、取り敢えず横に置いとこう。



「ではまいります……レベル4の魔頂の武士に、レベル3の放踵の武士をチューニング!
 二つの刃交わりしとき、ここに忠義の刃が現れん。我に仕えよ!シンクロ召喚!現れろ『不退の荒武者』!!」

『デリャァァァァァァァァァァ!!』
不退の荒武者:ATK2400




レベル7で攻撃力2400……ステータスとしてはレベルの割に頼りないけど、其れは逆に低めのステータスを補うだけの効果があるって事でもある訳だから
、あまり舐めてかからない方が良さそうね。



「行きます!不退の荒武者で、一角獣のグレムリンに攻撃!『斬り捨て御免』!!!」

「此れはまた、何ともストレートな攻撃名ね!?だけど、そう簡単にはやられないわ!
 トラップ発動『ガード・ブロック』!このカードの効果で、戦闘ダメージを0にして、デッキからカードを1枚ドローする!
 そして、グレムリンの魂の叫びが、此処に新たな仲間を呼ぶ!トラップカード『魂の綱』
 アタシのフィールド上のモンスターが破壊された時、ライフを1000ポイント払って、デッキからレベル4以下のモンスターを特殊召喚する!!
 グレムリンの魂を受け継ぎ現れよ『エルフの双剣士』!!」

『ハァ!!』
エルフの双剣士:ATK1400

遊里:LP4000→3000



「ふむ……戦闘ダメージを回避して手札を増やし、更にフィールドにモンスターを途切れさせないとは、流石はお嬢様と渡り合ったデュエリストだけはある。
 ですが、私も此処で負ける訳には行きません。――カードを1枚セットしてターンエンド。」



あ~~~……シェリーとは割とガチなデュエルしたからね~~~?……アレはノーコンテストになっちゃったから、何れは決着を付けないとね。
だけどミゾグチ、貴方も悪くないと思うわよ?その『不退の荒武者』からは、貴方のデュエリストの闘気をガンガン感じるからね…其れには応えようじゃない!
アタシのターン!!

チューナーモンスター『トゲクリボー』を召喚!



『クリ~~~!』
トゲクリボー:ATK300



「今度はこっちから行くわよミゾグチ!アタシは、レベル4のエルフの双剣士に、レベル2のトゲクリボーをチューニング!
 集いし闘気が、まだ見ぬ未来を指し示す。光射す道となれ!轟け『漆黒魔族ギルファー・デーモン』!!

『フオアァァァアッァァァ!』
漆黒魔族ギルファー・デーモン:ATK2200



ギルファー・デーモンの効果で、相手モンスターの攻撃力は500ポイントダウンし、アタシのモンスターの攻撃力は300ポイントアップするわ!



漆黒魔族ギルファー・デーモン:ATK2200→2500
不退の荒武者:ATK2400→1900




これで、ギルファー・デーモンの攻撃力は不退の荒武者を上回った!!
バトル!漆黒魔族ギルファー・デーモンで、不退の荒武者に攻撃!『ギルファーブレイズ』!!



ミゾグチ:LP4000→3400
「ぐぬう……ですが、不退の荒武者は己よりも攻撃力の高いモンスターとの戦闘で破壊されず、更に戦闘を行った相手モンスターを破壊する!!」

「何ですって!?」

「そして其れだけではない……リバースカードオープン、永続トラップ『主従の覚悟』
 バトルフェイズ中にモンスターが効果で破壊された場合、破壊されたモンスターの攻撃力分のダメージをモンスターのコントローラーに与える!」

「マジで!?……きゃぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」
遊里:LP3000→800


不退の荒武者:ATK1900→2400



く……強烈な効果があるとは思ったけど、自分よりも攻撃力の高いモンスターを、戦闘を介して一方的に破壊するとかやってくれるじゃない――!!
更に、その効果を利用しての永続トラップとのコンボ……見事としか言いようがないわ。

だけど、アタシが1000ポイント以上の効果ダメージを受けた事で、手札の『慈愛のホーリー・エルフ』が特殊召喚される!
そして、この効果で慈愛のホーリー・エルフを特殊召喚した場合、アタシは受けた効果ダメージの半分の数値だけライフを回復するわ!



慈愛のホーリー・エルフ:DEF2000
遊里:LP800→1900




カードを1枚伏せてターンエンド。



「私のターン!スタンバイフェイズに、主従の覚悟の維持コストとしてライフを1000ポイント払います。」
ミゾグチ:LP3400→2400



流石に維持コストは有るか……まぁ、コスト無しだったら『ふざけなゴルアァ』上等の効果だからね。



「私は、手札から装備魔法『名刀・正宗』を、不退の荒武者に装備!
 名刀・正宗は戦士族モンスターしか装備できませんが、このカードを装備したモンスターの攻撃力は500ポイントアップして、貫通能力を得る!!」
不退の荒武者:ATK2400→2900(貫通効果)



此処で貫通効果と来るか!
如何やらミゾグチは徹底して攻撃上等のスタイルみたいね?……良いじゃない、そう言うのは嫌いじゃないわ!!



「不退の荒武者で、慈愛のホーリー・エルフを攻撃!!『斬り捨て御免』!!」



――ズバァァァアッァァァアァ!!!



遊里:LP1900→1000


ぐ……此れは可成り効いたわ……だけど、このデュエルの勝利は渡さないわ!!



「状況的には私が有利であるにも関わらず、吠えますか……ならば見せて頂きましょう、貴女の力を!
 カードを1枚セットしてターンエンドです。」


アタシのターン!!
手札を1枚捨て『THE トリッキー』を特殊召喚!



THE トリッキー:ATK2000



「そして、チューナーモンスター『クイック・スパナイト』を召喚!」
クイック・スパナイト:ATK1000


行くわよ?レベル5のTHE トリッキーに、レベル3のクイック・スパナイトをチューニング!
集いし星の瞬きが、聖なる力を呼び覚ます。光射す道となれ!シンクロ召喚、切り込め『プリンセス・ヴァルキリア』!!


戦いましょう、胸を張り、頭を上げて!
プリンセス・ヴァルキリア:ATK2500



頼りにしてるよプリンセス!
さてと、クイック・スパナイトの効果で、不退の荒武者の攻撃力は500ポイントダウンするわ!



不退の荒武者:ATK2900→2400



バトル!プリンセス・ヴァルキリアで、不退の荒武者に攻撃!『デュランダル・ブレイザー』!!



「だが、不退の荒武者は己よりも攻撃力の高いモンスターとの戦闘では破壊されぬ!!」

「……其れは如何かしら?
 プリンセスは、攻撃対象にしたモンスターの効果を無効にする効果があるわ!此れによって、不退の荒武者の効果は無効となりプリンセスの一撃で粉砕
 される――大人しく消し飛べぇぇ!!!」

滅殺です!



ミゾグチ:LP2400→2300
「ぐぬおぉぉぉぉぉぉ!!……だが負けぬ!!
 リバースカードオープン、トラップカード『報復の毒牙』
 私のフィールド上のモンスターが破壊された時、相手モンスター1体を選択して破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える。
 此れで、終わりの様ですね。」



そう来たか……だけど、アタシは其の更に上を行くわ!!
手札から、速攻魔法『シンクロン・リリーフ』を発動!!
アタシのフィールド上のシンクロモンスター1体をリリースし、リリースしたモンスターと同じレベルのシンクロモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する!

アタシは、プリンセスをリリースし、エクストラデッキから『輝天龍 シルバー・ウィンド』を特殊召喚するわ!!



我が魂、貴方に預けます。

うむ……貰い受けたぞ、その力!
輝天龍 シルバー・ウィンド:ATK2500



これで、報復の毒牙は対象を失って不発に終わる――そして、新たに現れたシルバー・ウィンドにはまだ攻撃の権利が残されている!
此れがラストターンよミゾグチ!!シルバー・ウィンドで、プレイヤーにダイレクトアタック!!!!

蹴散らせ『シューティング・ストリーム』!!!


此れで、終わりだ!!



――バガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!



「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ミゾグチ:LP2300→0



アタシの勝ちだねミゾグチ?……でも、良いデュエルだったわ。



「えぇ、私も久しぶりに熱くさせて頂きました。
 私に勝ったのですから、どうぞ先にお進みください……この先にはお嬢様がいらっしゃいます。」

「ありがと……だけど、行くのは私だけじゃなくて、貴方もよミゾグチ?
 貴女はシェリーの護衛なんでしょう?――だったら、今護衛対象の子が何をしているのかを把握しておくのも護衛の役目でしょう?違うかしら?」

「……!!……忝い。」



じゃあ行こうかシェリーの下に。
まぁ多分、衛遊と牛尾が何とかしてると思うんだけどね。



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んでもって、衛遊達が向かった方に来てみたんだけど……此れは本気で如何にかなったみたいね?
って言うか、其のカードは何処から引っ張り出したの衛遊?



「このカードはシェリーの形見のカードなんだ……此れを取り戻す為に、彼女は此れだけの事を画策し、そして実行に移したらしいんだ。」

「ったく、良いか悪いかは兎も角、大したもんだぜこの嬢ちゃんは。」



シェリーの両親の形見であるカード!――其れは確かに手元に置いておきたいわよね……其れが見つかったなら、良かったじゃないシェリー!!



「強引ではあるけれど、このカードを手に入手出来たと言う事は、私の過去に付いて分かる事が有るかも知れない……とは言っても、何が書かれているのか
 は此処では分からないから、詳しく調べる必要がありそうだけどね。」



謎のカード……確かに厄介だけど。其れもアタシが何とかするわ。

このカードを解析する事が出来たら、きっと次へのステップに繋がって行くと思うからね――よし、このカードに関しては遊里さんに任せなさい!!

貴女の両親の形見のカード、必ずやその詳細を明らかにしてあげるわ!!













 To Be Continued… 






登場カード補足





魔頂の武士
レベル4    地属性
戦士族・効果
このカードが召喚に成功した時、 手札からレベル3以下の 戦士族モンスター1体を特殊召喚できる。
ATK1200    DEF1600



放踵の武士
レベル3    地属性
戦士族・チューナー
このカードは戦闘によっては破壊されない
ATK0    DEF1000



シンクロン・リリーフ
速攻魔法
自分フィールド上のシンクロモンスター1体をリリースして発動する。
リリースしたモンスターと同じレベルのシンクロモンスター1体を、エクストラデッキから召喚条件を無視して特殊召喚する。



名刀・正宗
装備魔法
戦士族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、相手の守備表示モンスターを攻撃した場合、攻撃力が守備力を超えて
いれば、その数値分の戦闘ダメージを相手に与える。



報復の毒牙
通常罠
自分フィールド上のモンスターが破壊された時、相手モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを破壊し、相手にそのモンスターの攻撃力分のダメージを与える。



主従の覚悟
永続罠
バトルフェイズ中にモンスターが効果モンスターで破壊された時、破壊されたモンスターの攻撃力分のダメージをそのコントローラーに与える。
このカードのコントローラーは、自分のターンのスタンバイフェイズ時に 1000ポイントダメージを受ける。
またダメージを受けなかった場合、このカードを破壊する。