Side:十代


世界中で、妙な事が起きてるって聞いたから、ロンドンくんだりまで来たが……此れは確かにトンでもない事かもしれないぜ――なぁ、ユベル?



トンでもない所じゃないだろう十代?
 デュエルモンスターズのモンスターが暴れて街を破壊してるなんて言うのは、如何見ても普通じゃない。火を見るよりも明らかさ。

「だよな?
 しかも、あのモンスターはカイザーの切り札の『サイバー・エンド・ドラゴン』と、ヨハンの切り札の『レインボー・ドラゴン』じゃないか?
 其れだけのモンスターが、街を破壊してるなんて言うのは、流石に見過ごす事は出来ないぜ!!」

それ以前に、如何やらこんな事をやってくれてる奴は、俺の事に気付いてるみたいだからな――だったら、トコトンまでやってやろうじゃないか!!



『ゴォォォォォォォォォォォォォ!!!』



サイバー・エンド!
流石にコイツを喰らったらヤバイからな……頼むぜ、ユベル!!



任せておくれ。君を護る事こそが、僕の使命だからね。



――ガキィィィィン!!



「む?」

「攻撃力0だからって、ユベルを舐めるなよ?
 例え攻撃力が100万のモンスターであっても、ユベルを破壊する事は出来ねぇ!!お前の好き勝手にはさせないぜ!!」

覚悟は出来てるな、仮面野郎?……お前の事をぶっ倒してやるぜ!!













異聞・遊戯王5D's Turn109
『謎の刺客~Paradox~』










Side:遊里


WRGPまで、残り3カ月を切った訳だけど、アタシは未だにアクセルシンクロの糸口を掴めないでいた。
シンクロチューナーとシンクロモンスター――2体のシンクロモンスターで行う、シンクロを超えたシンクロだって言う事は分かってるんだけど、其れ
を体得する為には、何が必要なのかが全く分からない。

2体のシンクロモンスターによるシンクロ召喚って言うだけなら難しくないのかも知れないけど、アクセルシンクロにはそれ以外の秘密がありそうだ
から、どうしても慎重になってるのかも知れないのも事実だけどね。

でも、アクセルシンクロを会得しないと、機皇帝とやり合う事は出来ないだろうし、WRGPを勝ち進むのも楽じゃないだろうから、何が何でも会得しな
いとだわ………道は険しいけどね。



「なんだ、こんな所に居たのかよ遊里?」

「コンドミニアムに居ねぇから、探しちまったぜ?……珍しいな、こんな所に1人でとは?」

「美人の憂い顔と言うものは、中々に絵になるが……悩みがあると言うのならば見過ごす事は出来んのでな――何か考えごとか、遊里?」



クロウ、鬼柳……其れにジャックまで。
悩みって言うか、アクセルシンクロの事について考えてんだ……如何すれば、アレだけの召喚方法を会得できるのかってね。

あの時、あの謎のDホイーラーは、一瞬でアタシの視界から消え、そして今度は後ろから現れた――つまり、コンマ数秒の間に、コースを一周して
アタシの後ろから現れたとしか思えない……となると、相当なスピードが必要になるのは疑いようもない事でしょう?



「確かにな……その方法が見つからぬ故に、少し迷っていたと言う訳か。」

「自分でも、こんなに悩むのはらしくないって言うのは分かってるんだけど、流石にこうも切っ掛けすら見つけられないとなるとね?
 だけど、あの謎のDホイーラーだって、アタシに出来ると思ったからこそアクセルシンクロの存在を知らせて来たんだと思うからさ………」

「だよなぁ?……おし、少し走ろうぜ遊里!迷ったその時は、思い切り走ってスッキリすんのが一番だろ?
 この面子でDホイールをかっ飛ばせば、スッキリして、何かアクセルシンクロのヒントになる事を、思いつくかもしれねぇだろ?」

「今は、思い切り走って満足しようぜ?」



そうだね、其れも良いかもね?
Dホイールのエンジンや、パソコンのプログラムを組む時も、煮詰まって来たら一度Dホイールで思いっきりかっ飛ばしてくると、スッキリして、少し前
まで煮詰まってのが嘘みたいに、作業が捗る事が多いからね。

なら、いっその事ゴールを決めて競争でもする?
アタシ以外が1位になったら、1位の人に本日の晩御飯のリクエスト権プレゼント!とか如何よ?



「其れは構わんが、お前が一位になったらどうなるんだ?」

「本日の晩御飯が言峰麻婆と黒炎弾チキン、そして飲み物は『ドロリ濃厚ピーチ』になります。」

「「「よし、絶対に勝つ。」」」



な、何かやる気になったみたいね?
だけど、やる以上はアタシだって負けないから――と言う訳で、レディー………ゴー!!!



――ドォォォォォォォォン!!!



一斉にスタート!
流石は、チームの中で最も最高速度に達しやすいだけあって、ジャックが先ずはトップって言う所。次いでクロウ、鬼柳、アタシの順だけどその差は
僅かだし、アタシの場合はスタート直後よりも、少し走ってからの方がスピードが伸びるから、勝負はこれからよ!


って、ん?



――キィィィィィィィィン……!



此れは、アタシ達以外のDホイールの疾走音?
確実に近づいて来てるけど……



「私とデュエルをして貰おうか?」

「「「「!?」」」」


現れたのは、3輪タイプのDホイールと、其れを操るDホイーラー――なんだけど………

「ジャック、今直ぐセキュリティに通報して『レーンに変質者が現れた』って!!」

「承知した。」


「待て、なぜそうなる?」



言わなきゃわからないのかい!?
その服装はまぁ良いとして、何なのよその奇妙奇天烈なモノクロマスクは!?素顔隠すにしてもデザインが微妙だし、そんなモノを付けてる奴の事
を、変質者以外に如何形容しろって言うのよ!

形容方法があるなら言ってみなさい!原稿用紙3枚以内で!!



「正体不明の謎の敵で如何だ?規定枚数以内で収めたぞ?」

「やるわね……」

「此れ位ならば対処する事は出来る。
 だが、上条遊里、貴様は私とのデュエルを受けなければならない。デュエリスト同士が対峙した時、其処にはデュエルが生まれるのだからな?」



まぁ、そうとも言うわね。
だけど、デュエルをするって言うなら、せめて名前位名乗ったらどうなの?己の名を名乗らないような無礼者とは、デュエルしたくないんだけど。



「此れは失礼をした……我が名はパラドックス。覚えておくが良い。」



パラドックス……矛盾か。
恐らくは偽名か、或はコードネームみたいなものなんだろうけど、名乗った以上はデュエルをするに値する相手である事は認めるわパラドックス。

だけど、『女帝』と言われるアタシにデュエルを挑んだから、相応の覚悟はして貰うわよ?



「ふん、何処の馬の骨か知らんが、遊里に挑むとは身の程知らずも良い所だな?
 世界広しと言えども、無敵女帝を倒すのは絶対王者たる俺以外にはあり得ん!――やってしまえ遊里!力の差と言う物を教えてやるが良い!」



OKジャック、やってやるわ。
フィールド魔法『スピードワールド2』セットオン!!



『デュエルモード、オン。レーンをセントラルに申請。』



「行くぞ、上条遊里!」

「来なさい、パラドックス!」



「「デュエル!!」」


遊里:LP4000   SC0
パラドックス:LP4000   SC0



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遊里:LP2800   SC6
有翼幻獣 キマイラ・ガイスト:ATK2100
トゲクリボー:ATK300


パラドックス:LP2500



思った以上にやるわねパラドックス?此処までの展開は略互角だったからね。
だけど、其れも此処までよ?何を狙ってるかは知らないけど、このターンで終わらせるわ!!

アタシはレベル6のキマイラ・ガイストに、レベル2のトゲクリボーをチューニング!
集いし願いが、天空(そら)を駆け抜ける疾風(かぜ)となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、飛翔せよ『輝天龍 シルバー・ウィンド』!!


さて、終わりにしようか?
輝天龍 シルバー・ウィンド:ATK2500


パラドックスのフィールドにモンスターは居ない。
其れに、例え攻撃モンスター抹殺系のトラップを仕込んでいたととしても、シルバー・ウィンドの効果で受け流す事は可能だから、此処で一気に――



「かかったな?――上条遊里、貴様のシルバー・ウィンドは頂いて行く。」



――ギュリィィィィィィィィィィィィ………ビシュゥン!!



え?



「馬鹿な、此れは!!!」

「アイツのカードに、シルバー・ウィンドが捕らわれたと言うのか!?」

此れは……うわぁぁぁぁぁぁあぁ!!!



シルバー・ウィンド!?



「私の目的は果たした……さらばだ!」



――シュン!



消えた!!……其れに、シルバーウィンドのカードが真っ白に!!
まさか、本当にシルバー・ウィンドを奪ったって言うの!?……若しかしなくても、最初から此れが目的で……完全に、してやられたわ此れは!!


だけど、アタシのデッキのエースを、アタシの相棒を堂々と奪うなんて、良い度胸してるじゃない?……絶対に見つけ出して叩きのめしてやるわ!!

でも、如何してシルバー・ウィンドを?……どうやら、此れは単純なカード強奪事件ではないみたいね。



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とは言っても、今の状況に於いては、如何にかする事も出来ないのが現実よね?
パラドックスが消えて、そして何処に行ったのか分からないんじゃ、探しようもないし、そうなると追いかける事も出来ない……シルバー・ウィンド…



「おぉ~~い!!」

「ねぇ、此れを見て!昔の『週刊デュエリスト』なんだけど!!」



うおう!?ど、如何したの龍亞、龍可!?
そんな古い週刊デュエリストなんて持って!!!



「此処、此れ見てよ!!!」

「なんかの記事か此れ?……つーか、誰だ此れ?」

「此れは、伝説の初代デュエルキングである武藤遊戯さんではないのか?
 伝説にして最強、不敗と言う正に王者!史上最強のデュエリストではないか!!」



うわ~~~、此れって凄くレアじゃない?遊戯さんの写真が載ってる雑誌なんて、其れだけでプレミア付くと思うわ本気で。
デュエリストとして、一度遊戯さんとデュエルしたいと思うんだけど、其れは流石にタイムトラベルでもしない限りは無理よね絶対に。

だけど、この記事が如何かしたの?



「そっちじゃなくて、重要なのはこっち!」

「この記事を見て!」


「!!!!!」

龍亞と龍可が指示した記事……此れは、一体如何言う事なの!?
過去の雑誌の筈なのに、其処には見間違えようもない、シルバー・ウィンドの姿が!!……そんな、こんな事絶対に在り得る筈がないのに!!

でも、唯一の可能性を考えるなら、シルバー・ウィンドを奪ったパラドックスが過去に飛んだって考えるのが一番でしょうね。……何が目的なの?



――ズズズズズズズズズズズ……



なんて事を考えてたら、なんじゃこりゃあ!?
シティの建物が、次々と黒い粒になって消えて行く!?……如何考えたって自然現象である筈がない……まさか、此れは!!!



「お前のシルバー・ウィンドが奪われた事で、歴史が変わったのかも知れん。
 そして、その変わった歴史と矛盾しない様に、この世界が崩壊を始めたと言うのは否めないかもしれないが……此れは流石に拙いかもしれん。」



このままだと、世界が飲み込まれちゃう……何とか止めないと!!
なにか、何か手はないの!?この際どんな方法でもいいから、世界の崩壊を止める手段は―――!!



『コォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』



へ?



「此れは………赤き竜!!」

「如何して此処に……!!」

「アンタにも、満足出来ねぇ事が有ったのかもしれねぇな……だったら、頑張って満足しようぜ!!」



って言う事は、赤き竜の力を持ってすれば、時間を超える事は可能って言う事よね?

其れだけ聞くと眉唾物120%だけど、アタシの魂は其れに従えって吠えてる……なら迷う事は何処にもないわ!!!

「赤き竜よ、アタシをこの雑誌の記事の日時に送って!!――お願い、時空を、時を超えて!!!!」

『コアァァァァァァァッァアァァァァァアァァァァァァァァァァァァァッァァアァァァ!!』



瞬間、アタシはDホイール共々この時空から消えていた。恐らくは時を超えたって言う事なんだろうけど、かえって好都合だわ!
――そのお蔭で、貴方を取り戻す事が出来るかも知れないから、待っててねシルバー・ウィンド!必ずや、貴方を取り戻すから!!!














 To Be Continued… 






登場カード補足