事故より数ヵ月後。

スカリエッティは2つのコアのパターンを追跡し、コアが無事に第97管理外世界"地球"に到着し、二人の成人女性に憑依した事を確認した。
だがコアは女性に適合した訳ではなかった。

一つは妊娠5ヵ月の、そしてもう1つは2ヵ月の胎児に問題なく融合、適合した事にスカリエッティは興味を抱き、徹底的に調べあげる為観測を始める。

そして数年後。1人の少女が魔導師として覚醒した。  

少女の名は『高町なのは』。  

対『闇の書』となる『白夜の魔導書』と『金色の魔導杖レイジングハート』の主となり、
そしてとある事件を切っ掛けに、自身が古代ベルカに生きた『オリヴィエ・ゼーゲブレヒト』の転生体である事を知り、その力を継承した。

なのはの覚醒から遅れて数ヵ月後。もう1人の少女がとある魔導書の主となり、魔導師として覚醒。  
少女の名は『八神はやて』。  

紆余曲折が有ったものの『闇の書』と呼ばれていた魔導書は、晴れて『夜天の魔導書』へと戻り、此れによりはやては最後の夜天の主となった。
余談だが彼女もまた、とある事件を切っ掛けに冥王イクスヴェリアの力を継承する事になったのだが、なのはがそれを知るのはもう少し後になる。    

……奇しくも二人の少女は魔導書の主となり、その管制人格にして融合騎もまた『リインフォース』の名を持つ。  

後日、事態が落ち着いた頃、なのはとはやては自宅でボソリと管制融合騎と守護騎士達に呟いた。    

「なんでだろ……。はやてちゃんとは、何処かで一緒だった様な気がするの……」

「んー、なんやろ……。なのはちゃんとは初めてあった気がせぇへんかってんけど……」

この一言が己の真実に関わるとは、この時は誰も思っていなかっただろう。

だが後に、白夜の主従と夜天の主は、この時呟いた言葉の真実を知る事となる。






終焉(ハジマリ)の歌
  〜夜天を渡る(祝福)に乗せて、聖なる月へ捧ぐ〜







――― 新暦75年6月 海鳴市・喫茶『翠屋』 ―――

 

「……なに?小鴉の姿が消えた、だと?」  

『そうだ!私達はすずか嬢の別荘へと転移したんだが、はやての姿だけが無かったんだ!』    

聖王教会カリム・グラシアの依頼で、とあるロストロギアの探索の為、海鳴に一時戻ってきた冥沙達の下へアインスから緊急の連絡が入った。

 

――― はやてが居なくなった、と。

 

正確には現地協力者の1人、月村家の別荘に設定されている転送ポートにザフィーラを除いた八神一家で無事転移完了となったのだが、
何故かはやての姿だけが無かった。

今までこんな事は一度も無かった為、慌てふためいたのは言うまでもない。  

なのはとルナが行方不明になってからと言うものの、こうした事案に関して皆が物凄くナーバスになっているのだ。

「えぇい、少しは落ち着かぬか!丁度此処にフェイト達ライトニングの連中もおる!うぬらは其処から離れられんのだから、我に任せておけ!良いな?」    

とだけ伝えると冥沙は通信を切り、翠屋で合流したフェイト達ライトニングと共に、市内を探す事にした冥沙だった。



――― 同新暦75年6月 某管理外世界 ―――

 

「だから落ち着いて、ルナっ!」  

「えぇいっ、放せっ!此れが落ち着いていられるかっ!いきなりだぞっ?なのはの姿が掻き消えたのはっ!」    

同じ頃なのはもまた、ルナ達の目の前で忽然と姿を消していた。  

手を差し伸ばす暇もなくだった為、呆然と立ち尽くしていたルナ達だが、我に返るや否やルナが大騒ぎを始めたのだ。……祝福状態で。

(……だが何故いきなりなのは君の姿が消えたのだ……? そういえば今日は18……。っ?18日だと……っ?そうか……っ!)
 落ち着きたまえルナ君。なのは君なら……いや、なのは君だけでない、はやて君も無事だ」  

「……はやて嬢も?」

「今はまだ詳しくは言えないが、間違いなく夜天の主であるはやて君もとある場所へ、強制転移させられて……
 いや『今日と言う日に転移する様に』プログラムされていたと言うべきか……」

「……ドクター・ジェイル、それはどういう……?」    

サイファーとドゥーエに押さえつけられていたルナは、スカリエッティを睨み付けながら訊ねる。なのはの事になると、どうやら自制が利かないらしい……。

……どっかのシスコンを思い出したのは、致し方あるまい。 

「……そのままの意味だよ。まぁまさかこのタイミングで、なのは君とはやて君が再会する事になるとは思ってもみなかったが……」  

「……あっ!」  

スカリエッティの一言で、予想だにしていなかった再会に気付いて、ルナ達は慌てふためいたのは言うまでもない。

「……どちらにしろ、なのは君達が転移した場所に我々が行ける筈もない。必ず今日中に戻って来るから、安心しなさい」  

「……ドクターには心当たりが?」  

「……プログラムされていたとはいえ、ある意味『里帰り』と言うべきかねぇ……?」  

「……え?」    

ドゥーエの質問にスカリエッティは質問で返し、呆気に取られている間に自室に戻った。その表情は、喜びと悲しみが綯い交ぜになっていたが。    

「……全く君は……。何の為にあの子達を……。いや、考えすぎか。君の事だから、自分の目で確かめたかったのだろうな……」      

 

――― 管理外世界ズラール 元カハーゲル研究所跡地 ―――

 

「……っ、此処は一体……?」  

「……何や見覚えが有る様な無い様な……?」  

「「……へっ?」」    

突然発生した転移魔法で、なのはとはやては強制的にとある場所 ――― 二人のコアと融合した『人工リンカーコア』にとっては『始まりの場所』―――
そんな場所で顔を合わせる事になった……。    

「なっ!なのはちゃんっ?」  

「っ?はやてちゃんっ?」  

「「何でここにっ?」」

片やずっとその行方を探していたはやてと、片や身を隠さざるを得なかったなのは。  

実に約8年振りの再会となった。  

「なのはちゃんっ!ホンマになのはちゃんなんよねっ?今まで何処に居ったんやっ?無事やったら何で連絡せぇへんかったっ?
 一時翠屋の営業、儘ならん位桃子さんショック受けとったんやでっ!ルナも一緒なんやろ?
 あっ、各地にあった違法研究所を潰し回ってたん、なのはちゃん達やねんろ?したら一旦海鳴に帰る「ストーップ!」……なのはちゃん?」


マシンガントーク炸裂。此処で止めなければ、はやては自分の気が済むまでなのはを質問攻めにするだろう。
だからと言って、それら全てに答えられる訳がないのだが。

「先ずは心配かけてゴメンね?ルナも無事だよ。
 連絡しなかった……出来なかったのは、そんな状況じゃなかったから。
 お父さんやお母さんには、凄く申し訳なかったけど……。
 ただ今は海鳴にも、はやてちゃんとも一緒には帰れない……。帰る事は出来ない」    

一つ深呼吸を吐いた後、なのははしっかりとはやての目を見てキッパリと告げた。  



今は未だ共に行動出来ない、と。  

そんななのはに何か言い掛けたが、その真っ直ぐな目を見てはやてはある事を思い出し、深く溜め息を吐いた。  



――― この親友は、言い出したらその信念を決して折る事はない ―――    



「……ハァァ……。判った、これ以上は聞かへん、聞いてもなのはちゃんが言うてくれるはずないし……。
 そやけどコレだけは聞かせてくれるか?…ちゃんと帰って来るんよね?」

「勿論だよ、はやてちゃん。わたしもルナも死にかけたけど、こうして生きているのは必ず帰る為だもん。だけど……」  

「……ん、判った。誰にも言わへん。会うた事も」  

「……ゴメンね?」  

「えぇって。それより現状や」  

「うん、そうだね」    

聞きたい事、話したい事は沢山ある二人だが、気持ちを入れ替えて周囲を見渡した。  
目の前に広がるのは、嘗て何かの建物が在ったであろう事を示す瓦礫の山。    

「何かの研究所跡かなぁ?」  

「うん、そんな感じだね。ホンの僅かだけど、魔力の残滓を感じる……」 

「やけど、イヤな感じはせぇへんよね?寧ろ……」  

「寧ろ懐かしい?」  

「うん、そうや」    

はやての一言に、なのはは何かを思い出そうと考える。  


無人世界、研究所跡の様な瓦礫の山。
はやてと共に感じる『懐かしい』と言う思い。    

(……何か……何処かで……)  

「!!なのはちゃんっ、アレっ!」    

不意に現れたのは、度々介入してくる評議会派のガジェットとは別の存在。  
漸くハッキリとその姿を確認、咄嗟に各々のデバイスを向けて警戒したのは流石と言うべきなのだが……。    

「って何で新劇場版のサキエル、しかもデフォルメ版がこないなトコにおんねんっ!」  

「……あー、何となく似てるね、確かに……」  

「いや、デフォルメされとるけど、まんまやんっ!」  

「あはは。(……そう言えばこの間乱入してきたアンノウンは、ラミエルに似てたし……)    

と、思わずツッコミを入れたはやてに対して、なのはは苦笑いを浮かべた。  

その昔、フェイトや冥沙達を交えてDVD鑑賞会と称し、色んなアニメをはやてと視た事を思い出したのだ。    

El nxte to H-YT0415 kai ton arithm  anagn  risi s NN-H0604. Tha sas kathodi g  sei sto k to m ros tou ploi rchou ap  af t .
 (識別番号NN-H0604及びH-YT0415を確認。これよりマスターの下へ案内します。)

「「……へっ?」」    
不意に聴こえてきた音声に、二人は呆気にとられた。目の前のサキエル?が言葉を発したのだ。
しかもミッドチルダの言語でもなく、ましてや日本語でも英語でもない。

「……これって……ギリシャ語……?」  

「んなアホな……」  

……? la.(……?さぁ).    

サキエル?は『マスターの下へ案内する』と言う趣旨の言葉を発すると、二人に背を向けて移動を始める。
唖然とその姿を見送る二人だが、着いて来ない事に気付いたのか、クルリ、となのはとはやての方を向いて、一言告げてその場に待機する。    

「……ひょっとして『着いて来い』って言ってるのかな?」  

「そやね……。なんや怪しさ大爆発やけど、取り敢えず害意は無さそうやし着いて行こか」    
ギリシャ語は判らないがそう結論付けて、二人はバリアジャケットを展開したまま、その後を追いかける。
するとサキエル?は満足したのか、再び移動を開始したのだった。

「……やけど、先刻の『NN-H0604』と『H-YT0415』ってなんやろ?どうも私等を指してるっぽいけど……?」

「……!!」

使徒の後を追いながらはやてが呟いた一言で、なのははスカリエッティから聞いた話を思い出したのだ。だが、それをはやてに告げて良いのだろうか……。

 

『……ん?はやて君に、かい?』  

『うん。はやてちゃんも不思議がってたし、何より初めて会った気がしなかったって、お互い笑って言った事があったから』  

『……ふむ、まぁ知られて困る話ではないが……』    

サイファーがデバイス『ライオンハート』を手に入れた日、なのははスカリエッティに訊ねたのだ。



それを思い出したなのはは、意を決してはやてに声をかけた。    

「……ねぇはやてちゃん。ずっと前に初めて会った気がしなかったって、話をした事があったよね?」  

「ほへ?……あぁ、そういやそんな事あったなぁ。……って、まさか関係あるとか言うんか?」  

「……わたしとはやてちゃんがどうして魔法が使えるのか、とある人に教えて貰ったんだ。
 ……約20年程前、ある研究所で人工リンカーコアの研究が行われてて、リンカーコアの無い一般人にそのコアを移植する実験が行われていたの。
 そんな中、保管されていたコアが異常な活性化を起こして暴走、小さな次元震を引き起こした。
 そして1,000個以上あったコアのうち、二つだけがとある世界に転移して、二人の女性の胎内に憑依……」  

「……なっ?ちょお待って!したら私等……!」  

「その人が言うには、元々わたしとはやてちゃんには因子があったって。
 わたしはオリヴィエの転生体だった訳だし、はやてちゃんに至っては元々『夜天の主』となる因子が存在してたからだって。」  

「……夜天の主となる因子が……」  

「そう。 そのおかげで『闇の書』を『夜天の書』に戻せた事と、アインスさんとの適合率も高かったって。
 人工リンカーコアは活性化した状態で、胎内にいたわたしとはやてちゃんのリンカーコアと融合、今に至るって事。」    

それが魔法の無い世界に産まれたにも関わらず、自分たちの魔力が高い理由だと、なのはは告げた。  


そんな事実を告げられたはやては、暫し呆然。    

「……なんやそれ……。したら此処が、わたしの……わたしらの『始まりの場所』って事なん……?」  

「……多分、ね……。わたしも場所とか詳しい事は判らないけど……」    

未だ混乱の中にあるはやてだが、何とか気持ちを奮い起たせてなのはに問うた。
そんなはやてに対して、なのはは静かに告げると同時に、それを見計らったようにサキエルは停止し、なのはとはやてに振り返って告げる。    

D skalos perim nei ed .( 此方でマスターがお待ちです。)  

「「あ、ご丁寧にどうも。」」    

思わず頭を下げるなのはとはやて。言葉は判らないが、何となく雰囲気で言っている事が判るらしい。    

「……今更やけど、口……付いてへんよね?」  

「……どうやって話してるんだろ……?」    

改めてサキエルの状態をマジマジと眺めながら、二人は疑問を口にした。    

E nai ...... to opo o th lo ep si s na x rete.(それは……私も知りたい。)  

「「って、自分自身も判ってないのっ?(判らんのかいっ!)」」    

サキエルがポツリと溢した一言に、思わず突っ込むなのはとはやて。    

Ese s, tha th loun na gno r zoun ti n al  theia ed  . Gi 'af t  th lo na apelef ther  soun ton plo archo. Sas ef charist .
 (貴女達は、ここで真実を知る事になるでしょう。だからこそマスターを解放してほしいのです。お願いします。)

だがそんな二人に構わず、サキエルは自身のマスターを解放してやって欲しい、そう伝えると身体を少し折り曲げる。

どうやら頭を下げたらしい。   

「……正直、まだ信じられへんてのが本音やけど、なのはちゃんが嘘言うてるとは思えんし、何より此処に転移させられて『懐かしい』思うたんもホンマや。
 ……そやからわたしは知りたい。此処がどんな場所でわたしらとどんな関係があるんか」  

「そうだね。わたしも知りたいって気持ちは同じ。貴方の言うマスターが真実を語ってくれるなら、ちゃんと聴きたい。どうすれば解放出来るかは判らないけど……」  

…… Sas ef charist .(……ありがとう。)  

サキエルはそう告げると、不自然に積み上げられていた瓦礫の一部に触れる。  

ガコン、と音が響き地下へと続く入口が現れサキエルは降りて行く。勿論なのはとはやてもそれに続く。    

D skale,  chete l vei.(マスター、お連れして参りました。)

「……サークか。御苦労様」  

「「っ?」」    

一つの部屋の前で立ち止まり、サークと呼ばれた使徒はその扉を開く。  

その先に居た1人の男性……。その男性を見た途端、なのはとはやては……正確には溶け込んだ筈の人工リンカーコアが反応したのだ。   

「……シリアルNo.NN-H0604H-YT0415か。どうやら無事に管理外世界『地球』に辿り着いたようで、なによりだ……」  

「……その呼ばれ方は、ちょっといただけないかな?」  

「なのはちゃんに同意やね。事実がそうであれ、今のわたしらは『八神はやて』と『高町なのは』って言う一個人や。
 ……確認したいんやけど、自分『パレンヴァシー』のリオル・ヴァンフォーレで間違いないか?」   

沸き上がる感情をグッと堪えて、なのはとはやては目の前の男性……『リオル・ヴァンフォーレ』に訊ねる。    

「……だったらどうする?」  

「魔導師殺害とレリックの強奪で指名手配されとる。
 大人しく投降してく「それはリベリオンズと名乗る連中も一緒だろう?」……せやね。
 そやけどリベリオンズはリンカーコアの破壊はしても殺す様なマネはしとらんし、レリックは六課に渡してくれてる。」 

「……(いや、実際はもう何百人以上も殺してるし、施設も破壊しまくったんだけどね……)    

リベリオンズの正体がなのはとルナである事に薄々気付いているだろうはやてと、既にその手を血で染めているなのは。    

「……ふむ。サークにレリックを喰らうように指示してるのは、単なる嫌がらせ「嫌がらせかいっ!」当然じゃないか。
 アルマシー達は人造魔導師のコアにレリックを使用してレリックウエポンを産み出している。
 回収、保管されていた人工リンカーコアも、デバイスのコアに流用されているだけなら未だしも、ね……。
 サークは人工リンカーコアに反応し破壊する様に設定してある。
 ……その設定を解除し、全てのリ・ロイの機能を停止したいなら、私のリンカーコアを破壊したまえ。」  

「「なっ?!」」    

リオルの告げた言葉に、なのはとはやては絶句した。  

今まで研究施設の所員や局員に対しては、問答無用で破壊していたなのは達リベリオンズと、
施設の破壊はしても出来るだけ逮捕と言う形を取っていた、反評議会派に属しているはやて達。  


如何に命を奪う覚悟が出来てるなのはと言えども、流石に躊躇うのも仕方がない事だろう。    

(……この人は、命を奪う覚悟も奪われる覚悟も出来ているんだ……。どうしよう……もの凄く『怖い』……。
 だけど、はやてちゃんの手を血で染める訳にはいかない……)    


なのはが初めて感じる『殺す事に対する恐怖』。けれど立ち止まらない、と決めたのだ。    

「……判りました、貴方のリンカーコアを破壊します」  

「なっ?なのはちゃん、何を言うてるんやっ?」  

「だって唯でさえ三つ巴状態なのに、パレンヴァシーを名乗っているリオルさんの勢力が介入して来て、更に混乱してるじゃない。」  

「そ、それはそやけど……」

言い淀むはやてに対してなのはは淡く微笑み、レイジングハートをスティンガーモードに変更する。  

少しでも抵抗する様子を見せれば、なのはは躊躇う事もないだろうが、相手は抵抗する気が全くないのだ。
その証拠に、なのはの『決意』が揺らぐことが無い様にと、リオンは瞼を閉じて静かにその時を待っているのだ。  
流石に罪悪感は否めない。だからこそなのはは深呼吸を一つすると、真っ直ぐにリオルを見つめ
  


「……ハアァッ!」   

躊躇いや罪悪感を飲み込んで、リオンのリルカーコアを破壊した。   

「……っ!」   

顔を背ける事なく、なのはの行動を確りと目に焼き付けたはやてと、小さく息を飲んだリオル。   

Stamat  ste to pr gramma katastrof  s, enkatast  ste to mi katastreptik  pr gramma ek n ou. ......Kai na de te tis allag s.
 (破壊プログラムを停止、新たに非破壊プログラムをインストール。……変更確認。)  

サークの姿が戦闘形態から通常モードに変わると同時に、突然リオルの目の前に通信モニターが開き 

『……久し振りに回線が繋がったかと思えば随分な姿だね、リオン君……。どうやら記憶が戻ったようだが?』  

「……やぁスカリー。記憶に関しては、数年前にはね……。……何年振りだい?」

『ざっと20年程かな?』  

「……ククッ、成る程……。年は取りたくないもんだなぁ……」  

『酷く損傷しているリンカーコアに、人工リンカーコアが数個も融合していたんだ。
 ……10年を目安にしていたみたいだが、よくもまぁ今まで身体が持ったものだ……』  

「……だが皮肉な事に、自分の手で自分の命を終わらせる事が出来なくてな……。
 
予め『NN-H0604』『H-YT0415』に、俺のリンカーコアを破壊するプログラムを組んでおいたんだが、 どうやらタカマチ・ナノハの方のプログラムが起動したようだ……」

呆れた様にスカリエッティがリオンに告げる。    

「っ?ジェイルさんっ?何でっ?」  

『どうもそこにいるリオン君が設定していたようだね。
 初めてまして、機動六課総司令『夜天の主』八神はやて君。
 私がリベリオンズの科学者にして、8年前になのは君とルナ君を保護したジェイル・スカリエッティだ。』  

「なっ?ジェイル・スカリエッティやて!大分前に実験事故で亡くなった筈……!」  

『まぁ、その辺の詳しい話は割愛させてもらうが、其処にいる彼の本名はリオン・アークヒール。
 ……彼が君達2人に溶け込んだ人工リンカーコアを調整した本人だ』  

「……尤も10年前に、人工リンカーコアの1/3を奪った序でに評議会派の施設を破壊したんで、広域次元犯罪者として指名手配されているがね……」  

『それで偽名を名乗った筈なのに、また指名手配されてるとは……。バカだろ、君。』

「「……えっ?」」    

スカリエッティの言葉に、なのはとはやては目を見開き、リオンを振り返った。  

はやては広域次元犯罪者『リオン・アークヒール』である事に、なのははサイファーのデバイスのコアの以前の持ち主で、スカリエッティの親友だったと言う事に。

「……リオン・アークヒール。元空戦魔導師で、当時魔導師ランクはA-。ミッド式とベルカ式を使い分ける元エース・オブ・エース。
 同僚のやっかみで撃墜された挙げ句、リンカーコアを損傷して空を奪われた……」  

「……あぁ、そうだ……。空を奪われて畑違いの人工リンカーコア移植計画の要だった研究所(此処)に追いやられた……。
 ハゲ……此処の所長だったツルーヒ・カハーゲルの事なんだが「「ブッ!」」……うん、気持ちは判る……。
 当時『NN-H0604』『H-YT0415』のコアの魔力レベルはFランク程度で、ハゲは勿論、他の研究員も見向きもしなかった。
 そんなコアだったから、早々の処分が決まっていてな……。俺は自分のリンカーコアの治療の為と、デバイス用の為にその2つを拝借した」    

そんな中、調整を続けて行くうちに奇妙な反応が現れた。  
明確なモノではなかったが『意思』の様なモノを感じたと同時に、リンカーコアの魔力レベルが上がってきた事。
そして、調整を進めて行く内に、この2つは自分が使うべきではないと確信した事。

「……此処がこんな廃墟になったのも、ハゲの自業自得だ……。
 ハゲがヒステリー起こしてコンソールぶん殴って、それがきっかけになって誤ったプログラムがインストールされて、
 コアが異常な活性化を起こして暴走した挙げ句、小規模な次元震を引き起こした……。
 俺はそれを利用して、2つのリンカーコアを此処から解放……」  

「……その2つの人工リンカーコアが地球の……わたしとなのはちゃんのお母さんに憑依。
 当時胎内に居った、わたしとなのはちゃんが持っとったリンカーコアに融合して溶けた……」 

「……人工リンカーコアが数個、リオンさんの体内に取り込まれたとは、どういう事ですか……?」  

「……文字通りさ……。天井が崩れて、瓦礫と共に人工リンカーコアが数個落ちてきた……。
 それがどういう訳か、俺の体内に入る前に一つの結晶体に変化、取り込まれた訳だ……。だけど俺のリンカーコアの損傷は、かなりのモノだったからね……。
 命の目安は大体15年、それ以降はどうなるか判らなかったが……」    

まさか20年も生き長らえるとはな、と肩を竦めて呟く。    

『計らずも人造魔導師となったリオン君を評議会は見逃す筈もなく、その記憶を改竄し新たに知識を与えた……そんなトコかい?』  

「……あぁ。記憶の改竄は予想していたけど、まさかスカリー並の知識と技術力を与えられるとは思わなかったが……」  

『だとしても、だ。よくもまぁ記憶を取り戻せたモノだね……』  

「……何、単なる強力な自己暗示みたいなモノさ……。15年後に改竄された記憶を残したまま以前の記憶が甦る、とね。後は……」


――― 予め2つの人工リンカーコアに俺のリンカーコアを完全破壊する様、プログラムを組んでおいた、と。 ―――    


それを聞いたなのは、はやて、そしてスカリエッティは絶句した。    

『待ちたまえ!なら君は最初から!』  

「当たり前じゃないか……。憑依したは良いが適合しなかった場合、二人は死産した可能性もあった筈。
 ……俺は良かれと思ってやった事だが、結果的に見れば『リンカーコアを持たない者に、人工リンカーコアを移植する実験』を行った事と、何ら代わりはない。
 非人道的な実験を行って来たんだ、殺されても文句は言えまいよ……」    

自ら望んだとは言え、リンカーコアを砕かれたのだ。今だって相当な痛みがあるにもかかわらず、リオンはそれを堪えて淀みなく会話を続けていた。  
それがなのはとはやてには信じられなかった。    

『……時に君が強奪した人工リンカーコアはどうしたんだい?』  

「……あぁ、レリック擬きにしてバラ撒いたり、サーク達の経験値稼ぎに利用したり、ラミーの動力炉(コア)に使用したり、砕いて無に返したり、
 デバイス用のコアに再調整して、こっそりデバイスルームに戻したり、サークの腹の中に収まったり。」  

「……通りでレリックに似た反応が出る訳や……。って、ホンマにデバイスのコアに流用されてるんやね……」  

「一からデバイス用のコアを作るより、時間も費用もかからん」 

「あれ?でもなんで六課のフォワードの子らは、サークに襲われたりせんかったんやろか?条件は一緒やのに。」  

「一度サーク達と接敵した際、ラミーから放たれた光線を浴びた事があっただろう。
 あれはナノマシン……一種のウイルス型のガジェット擬きで、デバイスのコアに入り込みとあるプログラムを組み込んだ。誤って襲わない様に、ね。」  

「…… だからサークがフォワードの子達を襲わなかったんだ……」   

次々とリオンの口から語られる事実に、スカリエッティは成程と理解し、なのはとはやては唖然とするしかなかった。    

そんな中、はやては先程なのはから聞いた話やリオンの話に出てきた疑問を口にした。  

「……なぁ、リオンさん 『NN-H0604』『H-YT0415』って、なんなん?多分わたしとなのはちゃんのコアの番号やと思うねんけど……」  

「……2人共、誕生日は……?」  

「わたしは6月4日で、なのはちゃんが…」  

「4月15日だよ?」  

「!ふはははっ!適当に付けられていたNo.が、お互いの誕生日となった訳か!」  

「「……!あぁっ!」」  

『……成程。そういう考え方をするなら、なのは君とはやて君のイニシャルとも一致するね?』    


スカリエッティの言葉に、なのはとはやては互いに顔を見合せ、名前をアルファベットに置き換えてみた。    

「……母音を外せばわたしがNNH、はやてちゃんがHYT……」

「……幾ら適当や言うても、偶然の一致ってありえへんやろ……」

流石に呆れ顔のなのはとはやて。    

「……培養ポッドの中でも、君ら2人は良く話していたと思うよ。明確な言葉ではなかったものの、良くチカチカ明減してて端から見れば会話してる様だったし……」

調整しながらだったが、何だか微笑ましかったよ、とリオンは穏やかな笑みを浮かべながらなのはとはやてに告げるが、2人は    

「「覚えてませんっ!(覚えとる訳ないやんっ!)」」    

と、涙目で抗議した。  
そんな2人を見て、スカリエッティは忍び笑いを溢し、リオンもそれもそうかと納得した。   

『……リオン君、少々聴きたい事が……』  

「……そう、だな……。糞味噌共がいる場所は俺でも判らん……。後は……エクリプスウイルスに感染した被験者を保護したか?」  

『私の下に一人いる。因みになのは君とルナ君……『白夜の魔導書』の管制融合騎にして守護騎士の1人なんだが……。
 2人はそのエクリプスウイルスの研究所で感染したみたいでね。 問題なく馴染んでいるよ。』 

「?なんなん?そのエクリプスウイルスって……?」  

「ザックリ言えば肉体強化薬。但し、適合しなければ内側から肉体が破壊されたり、破壊衝動に駆り立てられ精神に異常をきたす。
 ……ぶっちゃけ適合したらしたで、手足を切り落とされても再生される……不死に近い身体になる訳だが……。スマン、アレの基礎理論組んだの、俺だ。」  

『「「……はあっ?!」」』    

いきなりのカミングアウトに、流石のスカリエッティもなのはとはやて同様に驚いた。  
勿論欠陥があった為、それはデータ共々破棄した筈だったのだが、評議会派の科学者がそれをサルベージ、再度利用して作り出したらしい。  

一応ワクチンの精製は可能だが、スカリエッティが保護した被験者……サイファー、なのは、そしてルナも問題なく馴染んでいる事もあり必要なかったが、
念の為そのレシピをスカリエッティは譲り受ける事にした。   

リオンはなのはにそのデータチップを手渡しながら、何かを思い付いた様にはやての方を向いて    

「……うん。この際だからはやて君達夜天の主従も、エクリプスウイルスに感染してみるか?」 

「……へっ?!イヤイヤイヤイヤ!サラッとトンでもない事、言わんといて下さいっ!……そらなのはちゃんらと一緒やったらえぇかな、とは思うけど……」  

「リオンさん、ナイスアイデア!はやてちゃんもアインスさんと一緒に、エクリプスウイルスに感染しようよ!」  

「ちょ、なのはちゃんっ?何一緒になってはっちゃけてるんっ?てかそんなキャラと違うやん!」    

青くなりながら全力で遠慮するはやてだが、ポツリ、と本音が洩れる。
それに乗っかるようになのはが同意すれば、はやては慌てたようになのはにツッコミを入れる。  
なのはとて本気で言ってる訳ではない。はやてもそれは理解している。

リオンやモニター越しのスカリエッティの目に映る二人は、リベリオンズのなのはでもなく、機動六課総司令のはやてでもない。

『なのは』と『はやて』と言う、幼馴染み同士のじゃれあい。  
それを見たリオンは、喉の奥で楽しそうに笑いながら    

「成程、相変わらず仲が良くて安心したよ……。
 それと現時点で件のウイルスに適合する人間は極端に少ないとは思うが、彼女……アルマシーも感染している可能性がある。……注意したまえ……」  

「……!そうか、評議会派の研究所で実験されてたんだ。可能性はあるって事か……」  

「完全に除去するんは無理そうやから、なんとかしてワクチンを打ち込んで弱体化させたら平気か……?」  

『……フム……。そうなると早目にはやて君達機動六課と合流……協力体制をとるべきかな?』  

「そうして貰えると助かります。冥沙達ヴァイスリッターが、得体の知れない不安を感じとるみたいで……」  

「それはルナも言ってた。まぁアルマシーが関わってる時点で、そう簡単に行くとは思ってないけどね。」   

モニターを通じながら、ある程度の打ち合わせを行うなのはとはやて、そしてスカリエッティ。    

そんな三人の姿を眺めていたリオンだったが    

「……サーク、お前達はスカリーの下で今まで通り『パレンヴァシー』として介入、機動六課とリベリオンズに協力しなさい。」  

Katalava no, plo archos.(了解しました、マスター。)      

サークはリオンの言葉に了解すると、プログラムの書き換えを自ら行ってなのはとはやてに向かって『宜しく』と言う様に頭を下げた。  
そしてリオンに対して    

 D skalos e nai o m nos Lion  po s gia mas. Met  vl poume  lo tou yp  Scaglietti,  po s, tha  rthei sto archik  master.
 (我らにとってマスターはリオン様ただお一人です。スカリエッティ様の下で全てを見届けた後、マスターの下に戻って参ります。) 


それは暗に、全ての機能を停止し、リオンと共に永遠の眠りに就く、と言う事。  
そんなサークを見てリオンは軽く目を見開き、やがてヤレヤレと言わんばかりに首を降ると   

「……我ながらハイスペックなリ・ロイを造ったモンだが……。
 スカリー、済まないが事が全て終わった後で構わない。彼に……サークに身体を与えてやってはくれないか?」  

『彼にかい?それは構わないが……と言うか、性別があったのか……』  

「まぁな。姿形は違えども、サークはなのは君やはやて君と同じ『意思のある人工リンカーコア』をその身に宿している。……ある意味二人の弟分みたいなモノ……。
 だからこそ『人として』いろんな事を経験して欲しいんだ……。
 サーク、これは製作者としてではない『父親としてお願い』だ。なのは君やはやて君……『二人の姉達と共に』いろんな事を学んで生きていきなさい。」    

サークの正体に驚くなのは達。  
まさか第4使徒の姿をしているサークが『意思のある人工リンカーコア』をその身に宿しており、更に男性型だと言うのだから。





「……さて、随分と引き留めてしまった……。本来あるべき場所へと転送してあげよう……」

そろそろ限界だ、とリオンはなのはとはやてに告げる。 

 

限界。  

 

それが何を意味するのか、なのはとはやてが判らない筈もない。 
まだまだリオンに聞きたい事や話したい事もあるが、何をどう言えば良いのかわからず押し黙る。  


しかし只一言だけ。たった一言だけ伝えたい言葉がある。    

「はやてちゃん達機動六課と私達リベリオンズ、それからパレンヴァシーのサーク達と一緒に頑張るから!」  

「時空管理局に蔓延る膿、一回で出し切る事は無理かも知れんけれど、取り敢えずは最高評議会の腐れ脳髄共に引導渡して来る……うぅん、渡すから!」  

「「だから(そやから)安心して、ゆっくり休んでね ()『お父さん!!』」」  

「っ?」

「「例え血の繋がりが無くてもリオン・アークヒールと言う人は、私達のもう一人の『お父さん』である事には間違いないです。
  だから私達を産み出してくれて、世界を見るチャンスをくれてありがとう。」」

一から二人の人工リンカーコアを作った訳ではない。
廃棄寸前のコアを拝借し、自分用にと調整を進めて行くうちにコアの魔力値が上がり、意識に似たなにかを宿し、それをリオンが管理外世界に逃しただけなのだ。  


本来なら二人共魔法に関わる事も無かったかも知れない。ある意味人生を狂わされたにも関わらず、それでも二人はリオンを『父親』と呼んでくれたのだ。  

そんなリオンに対してなのはとはやては膝をつき、左右からリオンを抱き締めて温もりと感謝を伝えてきた。

二人の言葉に、ふ、と優しい笑みを口元に浮かべながら、同じように2人の背中に手を回して優しく抱き寄せ

「……君たちの人工リンカーコアは、特殊なプログラミングを施しているせいで、あらゆるウイルスに対して抗体が出来ている。
 それが関係しているか判らんが、一般人より寿命が延びている。
 これからも色々な事があるだろう……。だがこれだけは……『魔法は絶対ではない』事と『絶対正義』なんてない、と言う事だけは覚えていてほしい……。
 ……管理局を変えようと頑張るのも、管理局とは別の勢力として頑張るのも良いが、一人の女性として幸せになりなさい。
 ……『父親として』それを願っているよ……。それと二人の『弟分』であるサークの事も頼んだよ……。ありがとう……」    

そう言って別々の転移魔法を展開し、なのはとはやてを各々今いるべき場所へと転送した。

「……済まんな、スカリー。結局はあんたに押し付けちまう……。サーク達も暫くは此処を拠点に介入を続ける……」  

『なに、本より君の協力があっての計画だったんだ。感謝こそすれ、迷惑だなんて微塵も思ってないよ。サーク達の事も了解した』  

「……そうか……。彼女達はまだ再会する予定では無かったのだろう?だから記憶の封印を施しておいた……。最も2、3ヶ月もすれば封印は解けるがね……」    

それが精一杯だったよ、と穏やかな笑みを浮かべながら、リオンはスカリエッティに告げた。  
そんなリオンに呆れた、とばかりに溜め息を吐くと   

『全く君は……。あぁ、そうだ。君に私の家族を紹介したいのでね……。全てが終わった後に、なのは君とはやて君そしてサーク君と共に君に逢いに行こう……』  

「……そう、か……。楽しみに、してる……。……済まん……流石、に眠く……」  

『っ、……あぁ、色々酷使して疲れているんだろう……。ゆっくりと休みたまえ……』  

「……ありが、とう……。やっと……夢を見れそうだ……」    

何処までも穏やかな笑みを浮かべながら、リオンはゆるりと瞼を閉じる。    

『……あぁ、お休み。我が真友、リオン・アークヒール……。叶うならば、また同じ時代に友として逢おう……っ!』















 To Be Continued…