Side:裕奈


 「「「精霊が見えなくなった?」」」

 「あぁ…」


 あのバトルロイヤルの後、何か十代の様子がおかしかったから聞いてみたら、返ってきた答えがこれ。
 いや、ユベルもハネクリボーも居るんだけど…見えねーわけ?


 「見えないし、声も聞こえないんだ…しかもユベルとハネクリボーのカードだけが真っ白に。」

 「なんやそれ…」

 「意味が分らんぞ…」


 確かに。
 十代の事だから『デュエルに負けたショック』って事は考え辛いよね?
 だとしたら、エドが何かした?……其れも現実的じゃないよね?


 『エドのデッキに仕掛けがあったようだね――尤もエド本人も自分のデッキに罠が仕掛けられてるとは思ってもないだろうけれど。

 「ユベル?…マジすか?」

 って事は何?エドを利用して十代を如何にかしようとした奴が居るって事?
 だとしたふざけんなってのよ!!

 デュエルを利用して人を如何にかするなんて業腹ものっしょ!?
 って言ってもエドも多分そんな事したのが誰かは分らないだろうし…あぁ、ムカつく!!

 取り合えず…しゃっきりしろ十代!
 多分そのうち又見えるようになるから、多分、きっと、メイビー!


 『強気なんだか弱気なんだか分らない発言じゃね其れ?

 「ほっとけ朝倉!!」

 取り合えず十代が元気じゃないと調子狂うのよ!!












  遊戯王×リリカルなのは×ネギま  夜天と勇気と決闘者 GX72
 『白の侵食〜序章〜』












 Side:デイビット


 クソ、クソ、クソ!!こんな馬鹿な事があって堪るカ!
 Meがレッドの雑魚に負けるなど、そんな事ガ…!!

 いや、それ以上に本当にレッドは最下級なのカ?
 今日の実技授業で負けた奴は殆ど居ないじゃないカ…まさか、マックの言う通リ?


 だが、だとしても…!!

 「Meがこんな屈辱を味わったままでハ…!」

 「…此れは此れは…相当に参っているようですね?」

 「!?」

 誰ダ!?何時の間ニ!?


 「ふふふ…此れは失礼――初めまして、斎王琢磨と申します。」

 「斎王?」

 聞いた事が有る……確か世界的に有名な占い師だったかナ?
 占いなど迷信臭いが、其の占い師がMeに何の用ダ?


 「何…貴方の望みを叶えてあげようと思いましてね。
  貴方は誰にも負けたくない、最上のデュエリストでありたい……そう思っているのでは?」

 「What's?」

 「おかしな事ではありません、他の誰かより優れていたい、人より上に立ちたいと思うのは至極当たり前の事。
  ですが、同時に貴方は迷っている……自分よりも下と思っていた者に負けたと言う事実に。」


 コイツ…!
 御託はいい、目的は何ダ!?


 「さぁ?ですが、私は嘘は言わない。
  尤も、貴方が私が力を貸すに値するデュエリストであるかどうかは見極めさせてもらいますがね?」

 「フン…要はデュエルで示せカ?良いだろう、相手になってやル!」

 占い師如きがMeに挑んだ事を後悔させてやるゼ!
 思い知らせてやる、Meこそが最強であるということヲ!!


 「ソレは楽しみ…」

 「精々、余裕をかましていロ!」


 「「デュエル!!」」


 デイビット:LP4000
 斎王:LP4000




 先攻はMeかラ!
 手札から魔法カード『暴走生産ライン』を発動。
 デッキからレベル4以下の機械族モンスターを特殊召喚すル。

 さぁ、現れろ『クオンティティー』


 クオンティティー:DEF400


 更に魔法カード『機械複製術』
 Meのフィールドの攻撃力500以下の機械族を選択し、選択したモンスターと同名のモンスターをデッキから2体まで特殊召喚すル!
 デッキから現れロ2体の『クオンティティー』


 クオンティティー:DEF400(×2)



 「ほう、1ターンで3体ものモンスターを……下級モンスターとは言え中々の展開力ですね?」

 「Meの本気は此処からダ!
  Meは3体のうち2体のクオンティティーをリリース!来い、『The Big SATURN』!」

 『ゴォォォン!!』
 The Big SATURN:ATK2800



 くくく…此れがMeの最強モンスター、SATURNダ。
 如何ダ?


 「1ターン目から最上級モンスターを召喚して来るとは…侮れませんね。」

 「ふん、こうなった以上はYouは何も出来ないサ!Meはカードを1枚伏せてターンエンド。」

 Meに挑んだ事を悔やむんだな斎王。
 所詮は占い師……差を見せてやるゼ!!



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 く…馬鹿な!こんな事が、有ってたまるカ!!
 デュエルはMeが終始攻めていた!流れを掴んでいたのはMeの筈ダ!

 其れなのニ…!


 デイビット:LP2500
 The Big SATURN:ATK2800


 斎王:LP3000
 アルカナフォースW−THE EMPEROR:ATK1900(正位置効果)



 何故押し切れなイ!?
 コイツのアルカナフォースとか言う運任せのモンスターもSATURNで処理してきたと言うのニ…!
 其れなのに、何故…!!


 「其れが運命…このデュエル、貴方は何度も勝つ場面があった――が、貴方は其れを尽く逃した。
  何故か?ソレは貴方が私を倒したくないからだ!私を倒してしまえば、或いは望む物が手に入らないかもしれないから!」

 「何だト!?」

 馬鹿ナ!!Meがミスミス勝利を手放しているって言うのカ?
 有り得なイ!

 其れにYouを倒したらMeの望む物は手に入らないだト!?


 「その通り。
  貴方は口では己の力だけで上に突き進むと言ってはいますが……ソレは果たして本心でしょうか?」

 「何?馬鹿を言うナ、他人の力を借りて頂点に上り詰めたとして何の価値があル!!」

 「ふふふ、気付いていないらしい――ならば教えて差し上げよう!
  私はTHE EMPERORをリリースし、現れよ『アルカナフォース]U−THE HANGED MAN』!」

 『%&#$*+≫<#?』
 アルカナフォース]U−THE HANGED MAN:ATK2200



 現れたカ、薄気味の悪いモンスター…!
 だが焦るナ、上級モンスターとは言え攻撃力は2200、攻撃力を底上げしてもこのリバース…『リミッター解除』を発動して返り討ちにしてやるゼ!


 「アルカナフォース]U−THE HANGED MANの効果発動。
  このカードの召喚、反転召喚、特殊召喚に成功したとき正位置か逆位置かの何れかの効果を得る。」


 ――カチリ、カチリ…


 チ、耳障りな音ダ。
 本来はコイントスの表裏で決まる効果らしいが、ソリッドヴィジョンではカードが回転してアトランダムに位置が決まるカ…



 ――ギュル!!


 「!?な、何だ此れは!?」

 あのモンスターの触手!?
 これじゃあMeが『吊るされた男(ザ・ハングドマン)』じゃないカ!!


 「ふふふ…これこそが此れから貴方が辿る運命。
  アルカナフォース]U−THE HANGED MANの正位置の効果は1ターンに1度、私のモンスターを破壊し私はそのモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。
  逆位置の効果は、1ターンに1度貴方のモンスターを破壊し、其のモンスターの攻撃力分のダメージを与える。
  此れがどういうことかお分かりですか?」

 「!!く…つまりはソイツの効果次第でこのデュエルは終わるという事カ…!」

 表の効果が出ても奴は其の効果は発動しなければ良イ。
 だが、裏の効果が出たラ…!


 「さて、運命が決する前に問いましょう……己の力だけで突き進む…ソレは確かに嘘では無い。
  だが……果たして微塵にも思わなかったでしょうか?デュエルに敗北した時に『どんな手を使っても勝ちたい』と。」

 「!!!」

 そ、ソレは……確かに思ったかもしれなイ。
 特にマックには只の一度も勝っていない…それどころか、ジャパンのアカデミアに来てからMeはどれだけ勝っタ?

 エドに負けたのを皮切りに、テンジョウイン兄妹、レイカ・ハラ、ショウ・マルフジに負け、挙句にはレッド如きニ!!
 Meが勝ったのはブルーの一部の生徒だけ…其れも二流ばかりダ…!

 Meに敗北を味わわせた連中には…リベンジしないと気が済まなイ…そうだ…

 「どんな手段を使ってモ!Meは勝たなけれバ!!」

 「そう!その通りです!!」


 ――カチリ!


 「!!」

 「アルカナフォース]U−THE HANGED MANが得たのは逆位置の効果!
  よって其の効果により、貴方のSATURNを破壊し其の攻撃力分2800のダメージを与える!!」

 「SATURNは相手に破壊された時互いに其の攻撃力分のダメージを受ける。
  だが、Youのモンスター効果のダメージの方が先でMeのライフは0…効果は発動しないで終るル…」

 「そうですね…ですが、貴方が負けるのは此れで最後だ…さぁ、白き光を得て新たなる世界へ!!」


 ――バガァァァァン!!!


 「あぁぁあぁぁぁ!!!!」
 デイビット:LP2500→0



 又してもMeは……ハハ、だが見えたゼ……この力があればMeハ!!
 ハハ…ハハハハハハハハハハハハハハ!!!








 ――――――








 Side:十代


 「…何してんのこんなトコで?」

 「裕奈…」

 いや、ちょっと夜風に…なんて似合わないよな?


 「うん、アンタそう言うの全然似合わねぇから。
  つーか、晩御飯も食べないで如何したのよ?今日はすき焼きだったのに。」


 マジで?うっわ〜〜…やっちまった〜〜!!
 もう残ってないよなぁ…


 「残ってる訳ねーでしょ?……………やっぱしショック?」

 「え?」

 「ユベルとハネクリボーが見えなくなった事。」


 あぁ…そりゃショックさ。
 ユベルもハネクリボーも俺の大事な仲間だぜ?
 特にユベルなんて俺がホントにガキの頃から一緒だったんだ…其れが見えなくなったら当然だろ?

 裕奈だってのどかや朝倉が見えなくなったらショックだろ?


 「そりゃあ勿論。
  って、そうじゃなくて、アンタがそうなった原因が一応だけど分ったよ?」

 「マジで!」

 何で!!どうしてこうなったんだ!?


 「シャマルが言うには『呪術的な何か』が『エドのデッキ』に仕掛けられてて、エドが十代に勝った瞬間にアンタに対して発動するようになってたらしいって。」

 「エドのデッキに!?」

 「あ〜〜、多分この事はエドも知らないと思う。
  多分エドの知り合いか関係者にそういう事できる奴がいて、エドの知らない内にそんな事がデッキにって事だと思う。
  で、ユベルとハネクリボーが見えなくなったのは、ある意味で其の2体がデッキを護ったから。」


 ユベルとハネクリボーがデッキを護った?
 どう言う事だよ?


 「ユベルとハネクリボーって、アインスが言うには精霊としての『格』が結構上位らいのよ。
  其の上位精霊を押さえつけるだけで、呪術は其の力を使い果たしたんじゃないかって。
  …ユベルとハネクリがいなかったら、アンタはデッキのカード全てを認識できなくなってたかもって事。」

 「マジかよ……だからユベルとハネクリボーだけが白紙に…」

 「多分2人とも無意識だろうけど――あ、やっぱりそうなんだ。」


 あ…裕奈には見えてるんだな。
 あ〜〜くそ、本当だったらユベルと相棒にありがとうって言いたいのに…見る事も声も聞けないないんな…


 「で?」

 「は?」

 「アンタは如何するの十代?このままショックを受けたままで居るの?
  それとも、デッキを護ってくれた2人の為に再起する?」


 え〜と…それは…


 「このまま引き下がって良いの?
  呪術の使い手は朝倉が調べてるけど…ソイツはエドまで利用してアンタをデュエリストとして再起不能にしようとしたんだよ?
  何処の誰かはマダ分らない…だけど、そいつにやられたままで良いの?」

 「良い訳無いだろ!!」

 エドのデッキを利用して、しかもユベルと相棒を…許せる訳無いじゃないか!
 其れに、2人が俺のデッキを護ってくれたんなら、俺は其れに応えなきゃ!

 そんで、ユベルと相棒と又話せるように!!


 「そう来なくっちゃ!其れでこそ『HERO』を使うデュエリストだぜ!
  ふふ、何時もの十代だね、安心した。」

 「へへ、裕奈に言われなかったら腐ったままだったぜ、ありがとうな。」

 「例にはおよばねっすよ♪アンタがそんなんじゃ調子狂うからね。
  …んじゃあ先ずは景気づけに腹ごしらえ!はい、私とはやて特製の『すき焼き丼』!沢山持ってきてるからタンマリ食え!」


 おぉ、美味そう!!
 早速頂くぜ!!いっただきま〜〜…



 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



 「「へ?」」


 な、何だ?って!!!

 「物凄くでっかい波!?」

 「いや、これ殆ど津波じゃね!?サーファーなら喜びそうだけど…つーか此処逃げ場がねーんだけど!!」


 う、嘘だろぉ!?
 アンなのに巻き込まれたら幾らなんでも無事じゃ済まないぜ!?


 「わーってるって!!一か八か…頼むよ『ジャンク・ウォリアー』『天星龍 スターダスト』!!」

 『ハァァァ!』
 ジャンク・ウォリアー:ATK2300


 『クァァァァァァァァ!!』
 天星龍 スターダスト:ATK2500



 スターダストにジャンク・ウォリアー!?
 そうか、スターダストの効果で!!


 「巧く行ってくれれば良いけど…」



 ――ドドドドドドドドド…ザブァワァァァァァッァン!!!



 「ぐ…うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 流石に防ぎきれなかったか!!



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 う、う〜〜ん……あれ?生きてる…?

 !!裕奈、裕奈は!?


 「う〜〜ん…」

 「裕奈!…はぁ無事だったか…」

 「あう〜〜…さっすがに目が回った〜〜〜。」


 俺もだぜ。
 つーか此処は?…俺達はアカデミア島の浜辺から波に飲まれたはずなのに。
 何処かの無人島にでも着いたのか?


 でもそんな感じじゃないよな?

 此処は…一体何処なんだ?















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 クオンティティー
 レベル1   地属性
 機械族
 試作段階の人型ロボット。動きに荒はあるが無限の可能性を秘めている。
 ATK500    DEF400