Side:遊奈


「そうか……僕の正体はバレていたと言う訳か……だったらもう、マスターの姿を真似する必要はないと言う事だね?
 そうだ、君の言う通り、僕の正体はカードの精霊である『バルログ』――マスターを闇に連れ去った者を探していた、主なき放浪者と言うやつだよ…」



正体が誰であるかを言ってやったら、藤原の姿がぶれて、次の瞬間には両手に鉤爪を装備した銀髪のイケメンに変わっちゃった。やっぱりアンタは精
霊だったんだね。しかも、可成り強い力を持って居る高位の精霊だわ。



「おぉ~~、其れがアンタの正体か?肌がブロンズ色なのを除けば、ものゴッツいイケメンさんやん!!
 こんな事言ったらなんやけど、藤原の姿の時よりも今の姿の方がイケメン度がハンパ無いでホンマに!!まさか、こんな精霊が居たとは驚きやで!」

「俺としては、お前の思考回路に驚きだぞはやて……相手の見た目よりも突っ込むところが満載ではないのか?」

「だけど、相手が精霊って事は、藤原が居なくなった時の事を何か知ってるのかもしれないぜ?其れを聞く事が出来れば、何か分かるんじゃないか?」

「「確かに!」」



ま、大凡十代の言う通りなんだけど、貴方が知っている事を教えてもらう事は出来ないかしら?
今アカデミアで起こっている、異常事態には、藤原の失踪と、吹雪さんのダークネス化が深くかかわってる筈だから、其れを解決する為にも貴方の知っ
ている事を教えて欲しい。



「……ふざけるな!闇に堕ちてしまったマスターを見捨てたくせに、自分に都合のいいときだけ私達を利用するな!!
 いや……或は、お前達がマスターを闇に誘ったのか?……だとしたら、その罪は万死に値する!!お前達の命で、その罪を償って貰うぞ!!!」



……うん、大体予想はしてたけど、此処まで話しが通じないとは、ある意味で感心するよ。
だけど、貴方が知ってる情報は、私達にとっても大事なモノになるだろうから、誤解を解いて、教えてもらうしかなさそうだね?……マッタク厄介だわ。











遊戯王×リリカルなのは×ネギま  夜天と勇気と決闘者 GX192
『精霊の願いと、悪しき闇の使者』










Side:はやて


藤原の手がかりを探しにやって来た幽霊寮で、現れたのはカードの精霊『バルログ』……行方知らずの藤原優介が持ってた精霊のカードやった。
其れは良いんやけど、如何も藤原が居なくなったのは、アカデミアのせいやと思っとるみたいやね?……そんな事は無いのに、其れを妄信的に信じと
る奴には、何を言っても無駄やろうな。

この手の輩は、一発弩デカい攻撃ブチかまして大人しくさせた上で話をするのが基本なんやけど――

「ちょ、遊奈!?」

「待て、幾ら何でも危険だ!!」

「何をする心算なんだよ遊奈!?」



有ろう事か、遊奈はモンスターすら召喚せずに、鉤爪を発射しているバルログに近付いて行く!!
通常のデュエルやったら、モンスターの攻撃は演出上の立体映像やから、衝撃を感じても物理的なダメージを負う事は無いんやけど、非デュエル時に
現れた精霊からの攻撃は、物理的なダメージを受けてまう……下手したら、致命傷を受ける可能性すらあるのに、何で!!

「遊奈、戻って来て!!危ないのはアカンて!!」

「……大丈夫だよはやて。危ないのには慣れてるし、前世では此れ位は日常茶飯事だったからさ。」

「やけど!!!」

「大丈夫。大丈夫だから。」



遊奈……分かった、其処まで言うなら任せるわ。
せやけど、如何してもダメやって思ったその時には、私も十代も準も――ぶっちゃけ、此処に集まった全員で、バルログに特攻を仕掛けたるからな!!
其れ位はやっても罰当たらんやろからね!



「……うん、分かった。
 ねぇ、バルログ、貴方が藤原って言うマスターを慕っている事は良く分かったわ……だけど、私達は藤原の失踪には全く関わってないのは事実よ?
 だって、吹雪さんとクロノス先生以外は、全員が藤原が失踪した後にアカデミアに入学した訳なんだからね。
 まぁ、セブンスターズとか幻魔とか、斎王とかコブラとか色々あったせいで、闇の力が活性化してたのは否めないけど、だけど藤原の失踪と私達は、絶
 対無関係と言いきる事が出来るわ――其れでもまだ、私達を攻撃するのバルログ?」

「煩い!!大体、お前の言う事が真実だと証明する物は有るのか!?」

「私にはない。」

「ならば信じる事など――」

「私にはないけど、吹雪さんにならある。」



……はい?
ちょお待ちや、遊奈の語った事は私達からすれば真実やけど、其れが真実やとバルログに証明する術はないと思ったら、吹雪さんが其れを持ってるて
一体如何言う事やねん!?吹雪さんは、心当たり有るんか?



「いや、僕も無いけれど、遊奈ちゃんがブラフであんな事を言うとは思えないからね?
 だとすると、僕がその証拠を持って居るって言う事になるんだけど、ダークネスのマスクは違うだろうから、ん~~~?見当が付かないかなぁ?」

「……真紅眼のカードを貸して、其れが証拠になるから。」

「真紅眼の黒竜のカードが?此れが証拠になるって言うのなら、構わないけど……」

「吹雪さんのエース言うても、其れが何だって証拠になるんやろか?……分からへんな?準と十代は分かるか?」

「いや、見当が付かんぞ?」

「ゼンッゼン分かんねぇ。」



一体、真紅眼のカードで何をする心算なんや遊奈?



「貴方はカードの精霊なんだから、カードに宿った記憶を見る事くらいは出来るわよね?
 この真紅眼の黒竜のカードは、貴方のマスターであった藤原優介の友達であり、自らも一度は闇に堕ちてしまった吹雪さんのエースカードだから、吹
 雪さんが体験した事は、真紅眼も記憶している。
 人の記憶だと、都合が良いように作り変えてしまう部分があるけど、カードの記憶なら其れは無いから、此れは確かな証拠になる筈よバルログ。」

「…確かに、カードの記憶ならば信ずるに値するな。」



カードの記憶!その手が有ったか!!
確かに、長年一緒に戦って来たカードには、其れが精霊のカードでなくともデュエリストとの日々が記憶されて行くもんやから、其れを見れば語るよりも
真実を見る事が出来るかも知れへん。

バルログも、真紅眼のカードの記憶を読んどるみたいやしな。



「……確かに、お前達がマスターの失踪と無関係だと言う事は分かった。
 それどころか、闇に堕ちた者を救い出し、このアカデミアに降り注いだ幾多の闇の脅威を退けたと言う事だから、その力についても正統に評価しよう。
 だが、そうなると一体誰がマスターを闇に誘い、そして闇に引き込んだのだ?一体誰が……」

「其れを私達も知りたいんだけど、その様子だと貴方も知らないみたいねバルログ?」

「生憎と、私は闇に堕ちる前のマスターによって、その箱に閉じこめられてしまったからね……誰が、どうやって闇に引き込んだかまでは分からない。
 だが、少なくとも只の人間でない事だけは確実――」



――ドスゥ!!!



「ぐあぁぁぁぁ!!!」

「「「「「「「バルログ!!!」」」」」」」


「マンマミーヤ!何事なの~ネ!?」



なんや、今の攻撃は!?一体誰が何処から!!
おいコラ、不意打ち闇討ちなんぞし腐ってからに、姿を見せんかい、クソダボ野郎!!!



「フッフッフ、君が真実を知る必要はないぞバルログ。まさか、活動できるようになっていたとは驚きだが、過ぎた真似はしない事だ。」

「アンタは……ミスターT!!」

コイツ、カードの精霊にダメージを与える攻撃をするとか、ホンマに人間やないな?
如何やら、バルログはアンタにとって都合の悪い存在みたいやけど、せやかて背後からの不意打ちってのは如何かと思うで?大丈夫かバルログ!!



「バルログ……大丈夫?」

「ぐ……不覚を取ったか……だが、おかげで全てを思い出したよ。
 遊奈、私はマスターと共に、もっとデュエルがしたかったんだ……その願いがあの日で終わってしまった……私の願いは、只それだけだった。」

「バルログ……その気持ちは良く分かるよ。」

「ふ……ならば、敢えて言おう――私に変わり、マスターを闇から救い出してくれ……お前達を疑った手前、都合が良すぎるかも知れないがな……」

「……OK、その依頼は承ったわ。」

「……ふ、感謝するぞ。」



――キュゥゥゥン



消えた……いや、大ダメージを受けたせいで強制的にカードに戻ったんやな。



「ククク……フハハハハハハ!実に素晴らしい、正に感動的!アカデミー賞レベルの感動のシーンだったよ今のは。私からすれば三文芝居だがね。」

「お前……!!」

「貴様……!!」

「性根が腐ってるわね……」

「此処まで邪悪な存在が居るとは……かつて闇に堕ちた僕であっても、途轍もない闇を感じるぞ――!」

「外道ここに極まれりネ。」



ホンマに、コイツはスカリエッティ以上の外道悪党やな……やったらやる事は、一つや!!此のクソッ垂れの外道を、今一度デュエルで成敗して――



「オイ、デュエルしろよ。」

「って遊奈!?」

「おぉ!来たな名台詞!!」


「まるで感情が籠っていないが、久々に聞いた気がするぞ。」



うん、随分久しぶりに聞いた気がするで。此のセリフが飛び出した以上は、遊奈がデュエル一択なんやけど、大丈夫なんか遊奈?
こう言っちゃなんやけど、私や準とのデュエルでは、コイツは本当の意味で本気は出してなかったから実力は未知数やで?其れに、デッキだって同じや
ないから、今度はどんなデッキを使って来るか分からへん。其れでもやるんか?



「其れを聞く?こんなふざけた野郎はデュエルでブッ飛ばすに限るでしょ?――大体にして、此の変態には可成りムカついたからね。」



……ちょお待って?今なんて言った?『ムカついた』やと?
肉体に対して魂が小さいせいで、今の遊奈は所謂『感情欠落』状態やった筈やのに、それが『ムカついた』て、若しかして感情が戻って来てるんか!?



「かもね。
 其れに、はやてと準がコイツとデュエルして、ダークネス吹雪とは十代がデュエルした訳だから、今度は順番的に私の番でしょ?」

「其れもそうやな?……ほな、バッチリ決めてや遊奈!!」

「うん、勿論その心算。
 覚悟は良いわねミスターT……アンタはデュエルでブッ飛ばす。」

「フフフ、デュエルならば私も望むところだ。――良いだろう、相手になってあげよう!!精々、私を楽しませてくれたまえ!」

「その余裕たっぷりの顔の面の皮を剥いでやるわ。行くわよ。」


「「デュエル!!」」


遊奈:LP4000
ミスターT:LP4000



さて、ドナイなデュエルになるか、ちょっと見物やな此れは!!








――――――








Side:遊奈


「先攻は貰う。私のターン!!『ボマー・ドラゴン』を守備表示で召喚!」
ボマー・ドラゴン:DEF0



さてと、そうして始まったデュエルだけど、如何やら今回はドラゴンデッキで来るみたいねミスターTは。
しかも、初手でボマー・ドラゴンを出してくるとか、完全にこっちの攻撃を牽制してると見て間違いないでしょうね……攻撃型のデッキに対して、ボマー・ド
ラゴンの効果は厄介極まりないからね。



「私は、カードを1枚セットしてターンエンドだ。」



だけど、そんなモノは私の前では何の意味もなさない。私のターン。
手札のレベル・スティーラーを墓地に捨て、チューナーモンスター『クイック・シンクロン』を特殊召喚。


クイック・シンクロン:DEF1400



そして、クイック・シンクロンのレベルを1つ下げ、墓地の『レベル・スティーラー』を特殊召喚するわ。



レベル・スティーラー:DEF0
クイック・シンクロン:LV5→4




「レベル1のレベル・スティーラーに、レベル4になったクイック・シンクロンをチューニング。
 集いし思いが、新たな勇気を呼び覚ます。光指す道となれ。シンクロ召喚、導け『ジャンク・ライブラリアン』。」

手加減は不要です!
ジャンク・ライブラリアン:ATK2100→2400



「ほう?行き成り上級モンスターを呼び出してくるとは流石だな?」

「お褒めに預かり光栄だけど、マダマダこんな物じゃないわ。
 手札を1枚捨て、『THE トリッキー』を特殊召喚し、更にチューナーモンスター『ハイロール・シンクロン』を攻撃表示で通常召喚するわ。」



THE トリッキー:ATK2000
ハイロール・シンクロン:ATK1000




レベル5のTHE トリッキーに、レベル3のハイロール・シンクロンをチューニング。
疾風(かぜ)に思いが集う時、その思いは(そら)に輝く星となる。光射す道となれ。シンクロ召喚、飛翔せよ『天星龍 スターダスト』



『グオォォォォォォォォォォォォ!!』
天星龍 スターダスト:ATK2500→2800



ハイロール・シンクロンはレベル8以上のシンクロモンスターの素材になった時、デッキからカードを2枚ドロー出来る。そして本屋ちゃんは、私がモンス
ターをシンクロ召喚する度に、デッキからカードを1枚ドローする。
よって、私はカードを3枚ドローするわ。

さて、一気に行くわよ?
本屋ちゃんで、ボマー・ドラゴンに攻撃!『スクラップ・マジック』


――バガァァン!!



「ふむ、良い攻撃だが、ボマー・ドラゴンは守備表示ゆえに、私はダメージを受けない。
 そして、ボマー・ドラゴンは、自身を破壊した相手を道連れにするモンスターだ。よって、ジャンク・ライブラリアンはボマー・ドラゴンの道連れとなる!」

「そんな事は言われなくても分かってるわ。……だから、此処でスターダストの効果を発動。
 フィールド上のカード1枚を選択し、エンドフェイズまで選択したカードは破壊されない。この効果を本屋ちゃんに使うわ――『ソニックバリア』。」



――バキィィィン!!



「此れは巧く防いだなぁ?……やけどちょっと待って!!
 遊奈、何やスターダストの効果が変わってへん?スターダストの効果は、他のシンクロが居る時に相手の破壊効果を無効にする能力と、己をリリース
 して、魔法とモンスター効果を無効にする効果やったはずやで!?」



あれ?言ってなかったけか?
私が精霊世界から戻ってきたその時に、スターダストは本当の力に目覚めて、その効果が書き替えられたのよ。

そして、真の力を解き放たれたスターダストは、言うなれば『絶対守護者』と言うべき、最強の守護龍となったからね……その力、存分に発揮させるわ。

一度目ははやてが、二度目は準が退けた――三度目の今回は、私が直々に叩きのめしてやるから、精々覚悟をしておくといいわミスターT。













 To Be Continued… 






*登場カード補足