Side:はやて


魂が肉体に戻った事で、遊奈は無事に目を覚ました。其れ自体は喜ぶべき事で、目出度い事なんやけど……肉体と言う器に対して、魂が小さいって言
う事が、まさかこんな形で現れるとは思いもしなかったで?



「如何したの、はやて?」

「あ~~~、何でもないで遊奈。ちょっ~~~~~っとばかし、思考の海で漂流しとっただけで、特別何かが有った訳やないから心配せんといてや?」

「そう?なら良いんだけど。」



器に対して魂が小さいせいで、目を覚ました遊奈は一切の感情表現が出来ない状態になってしまってた。
加えて、表情も殆ど変わらず、口調も淡々としとるから、何て言うかシュテルを相手にしてる錯覚に陥ってまうわ~~……幾ら何でも、遊奈じゃない感が
満載やろ此れ!!敢えて言おう、誰やお前!!!



「?明石遊奈だよ?忘れちゃったの?」

「でもって、普通に返して来た!!突っ込みも無しに返して来た!事実のみを武器に!!……ある意味で、遊奈以上の強敵やで、此の遊奈は!!!
 って、自分でも何言ってるのか分からんように成って来たわーーーーー!!!」

「どうどう…落ち着けよはやて……暴れ牛かよ!!」

「まぁ、その気持ちは分からんでもないがな……だが、当の遊奈が困惑している――ように見えるからその辺にしておけ。」



……其れもそうやね。
遊奈が困惑してもうたら、本末転倒で何にもならへんからな――やけど、一日でも早く遊奈が元に戻ってと思わずには居られないんや。
あの太陽みたいな笑顔が有ってこその明石遊奈やからね……











遊戯王×リリカルなのは×ネギま  夜天と勇気と決闘者 GX186
『新章は嵐と共に開幕する』











でもって、其れとは別に、私等が精霊世界から戻って来てから、何とも妙な事件が頻発するようになって居た……アカデミアの生徒が、突如デッキだけ
を残して居なくなってしまうって言う事件が。

加えて、アカデミアの生徒の半数近くが、『記憶障害』とも言うべき症状を発症してしまっとるからね……これは、偶然の一致では済まん筈やで?



「その通りです。
 科学的根拠による裏打ちが無いので、ハッキリとした事は言えませんが、端的に言うならば、此の神隠しと記憶障害は無関係とは言えないでしょう。
 そして、私の下に上がって来てる報告書を見ると、神隠しに合う直前に何らかの呪文の様なモノを呟いていたという事例も見受けられます。
 何れにしても、学園で何かが起こっているのは間違いないでしょうが……」

「ならば、俺達の手で真相を解明すべきでしょう。
 最上級生にして、アカデミアの四天王と謳われる俺達が率先して動く事で、アカデミア全体に広がる不安を、払拭できるかもしれませんから。」

「私も準の意見に同意やな。
 下手に外部の人間入れて調べるよりも、私等で調べた方がずっと正確な情報を得る事が出来ると思うからなぁ?それで、ドナイやろ?」

「……此処が落としどころでしょうね。
 分かりました、此度の異変に関しては、君達『5人』に一任しましょう。宜しく、頼みましたよ。」

「「「「「了解しました!」」」」」



って、ちょっと待って?5人て何?私等は四天王やから4人やろ?
其れなのに5人て……せやけど、言われてみれば学園長室に居るのは、私も含めて5人……何かが違う、其れは分かるけど、一体何が違うんやろ?



「如何したのはやて?大丈夫?」

「あ、あぁ大丈夫やで遊奈。少しばかり、考え過ぎたのかも知れへんからね。」

「そう?無理はダメだよ?」



分かっとるよ……うん、おかしい所は何処にもない。
遊奈が居て、十代が居て、準が居て、そして藤原優介が居る――せや、四天王には僅かに劣るって事で、祐介は四天王とは別カウントやったんやな。


なのに、何で違和感を感じるんやろか?……此れは、何時もの風景やった筈なのに……一体、私は何に関して違和感を感じてるって言うんやろ…?
まぁ、えぇか、何れ分かるかも知れへんしな。

ほな、校内パトロールに行こか?十代は、剣山君と翔君を引き連れて、島の西側を周るらしいから、私等は島の東側やね。
でもって準は、優介と一緒に行方不明者のデッキに何らかの手掛かりが残されていないかを調べる為に、情報処理室にやったな……パトロールか、デ
ッキの解析で、何か分かるとえぇんやけどなぁ?



「大丈夫、きっと何とかなる。
 三幻魔、光の結社、コブラ、始まりの魔法使い、全部最終的にはなんとかなってきたから。」

「それもそやな。」

大体にして、ウダウダ考えるんは性に合わへん。足りない脳味噌で彼是考えるよりも、先ずは動く事が結果に繋がるからからな。其れこそ、六課時代
から、そうやって来たわけやしね。

其れに捜査の基本は『足を使え』や!!米粒程度の手がかりでも逃さへんでーーーー!!



「おー。」

「アカン、抑揚のない『おー』が、ある意味萌えや此れ。」

さて、パトロールでは、鬼が出るか、蛇が出るか……








――――――








Side:藤原?


集められたデッキからは、凄まじいまでの闇の力を感じるね……其れは恐らく、万丈目にも分かってるだろう。思い切り顔を歪めているからね。



「何なんだ此のデッキは?……これ程の闇の力に浸食されてるとは、普通じゃないぞ?
 其れに此れは……セブンスターズの闇に近い物を感じる。まさかとは思うが、奴等が復活し、アカデミアの生徒を襲っているとでも言うのか?
 可能性としては、決して低くはないが、先ずは此のデッキを浄化しておかなくてはな。頼むぞ、『光と闇の竜』!」

『グオォォォォォォォォォォオオオォオォ!!!』
光と闇の竜:ATK2800



「カード達に巣食う闇を浄化しろ!『シャイニング・ブレス』!!」

『ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!』



――ジュウ……




矢張り気付いていたか。そして、其れを精霊の力で浄化するとは、流石と言うべきだね。アカデミア四天王と謳われるだけの事はあるよ。
しかしこのカードに巣食っていた闇……只事ではない――其れこそ『彼』の失踪と、無関係とは思えないからね。



「マッタク…精霊世界から戻って来たばかりだと言うのに、早速厄介事が起こってくれるとはな。
 しかも、此のデッキ達を見る限り、只の神隠しや記憶障害ではないのは確実……何らかの『闇の力』が関与してるのは、疑いようもない事だ。
 …で、お前誰だ?」



!!……や、やだなぁ冗談きついよ万丈目。僕だよ、藤原優介だよ。



「あぁ、そうだったな?……如何にもお前は十代と比べると影が薄いから、忘れてしまいがちだな。」

「それって、ある意味酷くないかなぁ?」

「ならば、忘れられない様に、もっと己を主張するんだな。
 お前はデュエルの腕だって悪くないんだから、もっと自己の存在をアピールすべきだ。此のままでは、その才能を埋もれさせてしまう事になるぞ?」

「あはは……まぁ、考えてみるよ。」

……危なかった。
矢張り、高位の精霊を従えてるデュエリストに対して、僕の力は効き目が薄いようだ……其れを踏まえると、アカデミア四天王は何ともやり辛い相手だ。

とは言え、僕には僕の目的がある……何としても、『彼』を探し出さないとならないからね。








――――――








Side:はやて


さてと、粗方東側はパトロールしたけど、特に怪しいモンは見つからなかったなぁ?
それこそ、シャマルに広域エリアサーチかけてもろたけど、其れらしい物は見つからなかったし……此れは、ハズレやったんかな?



「そうとも言いきれないかも。」

「遊奈?」

「あれ。」



でもって、やって来た少し開けた場所にて、遊奈が指さした方向には……居たわ、全身タイツみたいな服を着こんだ、オールバックのグラサンって言う
『バリバリの不審者』が!其れこそ、突っ込み待ちかて言う感じやで!!

如何見ても、只者やないけど……誰やアンタ?



「お初にお目にかかる。早速だが、私とデュエルをして貰おうか!!」

「待てやこら、こっちの質問に答えんでいきなりデュエル申し込んでくるて、どんな了見やオイ。礼儀知らずの無礼者にも程がアンで、幾ら何でも!!」

「言っても無駄だと思うよはやて。多分コイツは、普通の人間じゃないから。」



まぁ、そうやろね遊奈。
物質輸送用の定期便に紛れ込んできたって感じやないし、こんだけ目立つ外見やったらすぐにでも見つかりそうなモンやけど、其れが今まで無かったっ
て事を考えると、コイツには何らかの隠密的な力があるんやろうからな。

でもまぁ、デュエルを挑まれた以上は、受けるのがデュエリストの礼儀やから、そのデュエル受けたるわ!!
寧ろデュエルでフルボッコにして、アンタを連行したるで!!覚悟はえぇな?



「「デュエル!!」」



はやて:LP4000
???:LP4000




「先攻は貰う。私のターン!『ジャイアントウィルス』を守備表示で召喚。」
ジャイアント・ウィルス:DEF100


「ターンエンドだ。」



ジャイアントウィルス……此れは、バーンダメージを与えつつ、上級モンスター召喚用のリリースを揃える戦術か。
悪くない戦術やけど、そんなモンが私に通用すると思たら大間違いやで!!!!目に物見せたるわ!私のターン!!

カードを2枚セットし、魔法カード『煉獄の契約』を発動。
 手札を全て捨て、捨て札の中から『インフェルニティ』1体を特殊召喚する…蘇れ『インフェルニティ・ジェネラル』!

『ムオォォォォォォ!』
インフェルニティ・ジェネラル:ATK2700



更にリバースカードオープン、永続魔法『インフェルニティ・エナジー』を発動。
私の手札が0の時、私の場のインフェルニティ及び煉獄モンスターは、守備モンスターを攻撃した際の貫通能力を得る!!

守りを固めた心算やったんやろうけど残念やったな?無限煉獄の前には、生半可な守備なんぞ意味はないで!!
インフェルニティ・ジェネラルで、ジャイアントウィルスに攻撃!!『インフェルニティ・ブレード』!!



――ズバァァアァッァア!!!



???:LP4000→1400

「ぐ……だが、ジャイアントウィルスの効果で、貴女には500ポイントのダメージが発生する。
 そして、新たに2体の『ジャイアントウィルス』が、私のフィールド上に特殊召喚される!」


はやて:LP4000→3500
ジャイアントウィルス:ATK1000(×2)



此れは、矢張り狙いは強力な上級モンスターのアドバンス召喚やろな。まぁ、どんな戦術で来ても、全部受けきったるけどな。
私は此れでターンエンドや。



「私のターン!
 私は、2体のジャイアントウィルスをリリースし、『コスモクイーン』をアドバンス召喚!」
コスモクイーン:ATK2900


「更に魔法カード『フォース』を発動。
 このカードの効果で、インフェルニティ・ジェネラルの攻撃力を半分にし、その数値をコスモクイーンの攻撃力に加える!」


インフェルニティ・ジェネラル:ATK2700→1350
コスモクイーン:ATK2900→4250




ここで、攻撃力4250か……今更驚くほどのものでもないけどな。



「バトル!コスモクイーンで、インフェルニティ・ジェネラルに攻撃!『コズミック・ノヴァ』!!」



――バガァァァァァァン!!



はやて:LP3500→600




「流石に効いただろう此れは?私は、カードを1枚セットしてターンエンドだ。」


コスモクイーン:ATK4250→2900



確かに効いた。其れは認めるけど……せやけど、敢えて言うで?『この程度か』!
効いた事は間違いないし、誤魔化す心算も有らへんけど、十代や準やったら、もっと強烈な攻めを見せてくれるし、遊奈やったら鬼の連続シンクロでライ
フを消し飛ばしに来るからなぁ?

残りライフが僅か600とは言え、600ポイントも残ってるなら上等や!!――無限煉獄の力を舐めるな!!

私のターン!……『インフェルニティ・ミラージュ』を召喚!!
インフェルニティ・ミラージュ:ATK0


インフェルニティ・ミラージュの効果発動!私の手札が0の時、このカードをリリースして、墓地の『インフェルニティ』を2体特殊召喚する!!
その力、また借りるで『インフェルニティ・ジェネラル』!!気張っていこや、チューナーモンスター『インフェルニティ・リベンジャー』!!


インフェルニティ・ジェネラル:ATK2700
インフェルニティ・リベンジャー:ATK0



そして、リバースマジック『死者蘇生』
このカードで、墓地の『インフェルニティ・リローダー』を特殊召喚や!!



インフェルニティ・リローダー:ATK100



覚悟は良いな?私は、レベル7のジェネラルと、レベル1のリローダーに、レベル1のリベンジャーをチューニング!
 来よ、夜の帳。煉獄に響け終焉の笛!シンクロ召喚、祝福の風『煉獄騎 リインフォース・アインス』

この翼、主と共に!
煉獄騎 リインフォース・アインス:ATK2700



そして、この瞬間にアインスの効果発動!
手札0枚で、アインスのシンクロ召喚に成功した時、相手のフィールド、手札、デッキ、墓地から計3枚までカードを除外できるんや!!
この効果で、コスモクイーンと伏せカード、そしてアンタの手札1枚を除外するで!!



「ぐぬ!!……小癪な!!!」

小癪か……せやけど、此れでアンタのフィールドはがら空きや!!
 バトル!リンフォース・アインスで、プレイヤーにダイレクトアタック!!

遠き地にて、深き闇に沈め……デアボリックエミッション!!



――ドゴォォォォォォォォォン!!



???:LP1400→0

「ククク……実に見事なお点前だ。まさか、私を倒してしまうとはな。
 敗北した故に、今は退くが、また邂逅する事も有るだろう……その時を楽しみにしているが良い!!」


――シュン!!



消えた!!……ホンマに人間やない感じやね此れ。アレに付いては、別途調査をした方が良さそうやで。
……で、其処でコソコソ人のデュエルを見てた奴、出て来てもえぇで?



「気付いてたの?」

「そら当然なぁ?」

「私とはやては、そう言うのに敏感だから。」



藤原優介……彼やったか。
でも、デュエルで煉獄モードになったおかげで、今まで感じていた違和感が一気に吹っ飛んだわ……其れこそ、如何して違和感の正体が分からなかっ
たのかを不思議に思う位にな。

「藤原優介。」

「な、なにかな?」



単刀直入に聞くで?……アンタ、何モンや?














 To Be Continued… 






*登場カード補足