Side:はやて


精霊世界で始まりの魔法使いを倒して、私達はアカデミア島に戻って来る事が出来た。遊奈の身体も一緒にな。
やけど、此の遊奈は空っぽやった……まぁ、当然やな。此の遊奈の身体は健康体その物やけど、その身体には魂が入ってない状態なんやからな……

身体に魂が戻って来れば目を覚ますんやろうけど……

「遊奈………」

あれから1週間が経ったにも関わらず、遊奈はまだ目を覚まさない。
十代……と言うか、ユベル曰く『魂が死んでしまったら肉体は生命活動を続けられない』って言う事やから、遊奈の魂が生きてる事は、多分間違いない。

でも、だとしたら、如何して遊奈は目を覚まさへんの?

「私、あんまし待つのは得意やないんやけどなぁ?」

今の裕奈には、生命維持の為に、点滴と酸素マスクが着用されてる……こんな、重病人みたいな姿は、アンタには似合わへんのにね。


あぁ、ホンマに似合わへん……遊奈は、何時でも太陽みたいな笑顔浮かべてガンガン突き進むのが一番やろ?……なぁ、幾ら何でも充分寝たやろ?
もうそろそろ目を覚ましても良いんとちゃうかなぁ?


と言うか、目を覚ましてよ遊奈……此のまま眠ったままなんて、絶対嫌や。
1週間も眠ったままなんやから、もう充分寝たやろ?……だから、もう起きなあかんで?……起きなアカンて……なぁ、起きて……起きて一緒にデュエル
しよ?十代も準も、岬ちゃん達も、遊奈とデュエルしたがっとるんやからね……











遊戯王×リリカルなのは×ネギま  夜天と勇気と決闘者 GX185
『新たなる胎動の序章』











Side:十代


「万丈目、はやては……」

「今日も今日とて何時も通りだ……アレは、梃子でも動かんだろうな。」

「そうか……」

精霊世界から戻って来て1週間が経つけど、遊奈は未だに目を覚まさない。魂が死んだら肉体は生きてられないって事だから、遊奈の魂が生きてる事
は間違いないだろうけど、だとしたら、如何して未だに遊奈の魂は身体に戻ってこないんだろうな……分からないぜ。

でも、それ以上に心配なのははやての事だぜ。
こっちに戻って来てから、毎日遊奈に付きっ切りだからな……真面に食事もしてないんじゃないのか?食堂には全然来てないみたいだし。



「其れについては大丈夫ザウルス。
 幾ら何でも食べないのは良くないから、学食のパンを適当に見繕ってはやて先輩に差し入れしておいたドン!」

「食べてるみたいだから、多分大丈夫じゃねぇかな?一緒に持ってったパックの牛乳も飲み干してるみたいだし。」



って、剣山と岬が巧い事やってくれてたのか……サンキューな。

だけど、なんだってはやては、あそこまで遊奈の事を?……魂は死んでないのは確実だから、何れ目を覚ますって言うのに……何か理由があるのか?



原因ははやてちゃんの前世だよ。

「うおぉ!?…び、吃驚したぁ!!
 でも、はやての前世が原因て、如何言う事だよなのは?」

はやてちゃんは、前世で私を含めて、多くの仲間を喪ってしまった。其れこそ目の前でね。
 そのせいで、はやてちゃんは何よりも仲間を喪う事を恐れているんだよ……だから、遊奈ちゃんの傍から離れる事が出来ないんだと思う。
 遊奈ちゃんの魂は生きてるって信じてても、自分が其処から離れていた間に、生命活動が停止してるかもしれないって言う恐怖が…ね。



其れは……其れは確かに考えたくない事だけど……だけど、このままじゃあはやての精神が参っちまうぜ!!
如何にも出来ないのかよ、俺達には!!!




「ちょ!何!?何すんのや明日香ちゃん、マック!!」

「つべこべ言わない!貴女、精霊世界から帰って来てからずっとこの状態で、碌にシャワーすら浴びていなかったでしょう?」

「食事はしているみたいだけど、お風呂もちゃんと入るべきだワ。……流石に、1週間分の汗やら何やらで、少し臭うわヨ?」

「やんわりと『お前臭い』って言われた~~~!?」

「だから、此れからバスタイムよ。遊奈が目覚めた時に、こんな状態じゃ最悪極まりないでしょうからね。」

「全身くまなく洗ってあげるから、覚悟しなさいハヤテ?」

「制服と下着は、適当に洗濯機に入れておいて。それと、遊奈の事は確りと見ておいてね岬。」

「うぃ~っす、了解っす明日香先輩。」

「あ~~~れ~~~~~!!」




って、何かはやてが明日香とマックに連れて行かれちまったぞ?風呂が如何とか言ってたけど………何なんだ一体?



「アカデミア島に戻ってきてから、碌に風呂にも入ってないはやてに対して、天上院君とマックが強硬手段に出たと言う所だろうな。
 まぁ、確かに不潔なのは良くないし、女性であるならば尚の事だが……梃子でも動きそうになかったはやてを、あれ程簡単に連行して見せるとはな…
 尤も、其れも同じ女子同士だから出来た事なのかも知れんが……何れにしても、久しぶりの風呂は、はやてにとっても良い気分転換になるだろうさ。」

「そうだな、そうなると良いよな。」

だけど、其れは根本解決にはなってない。
幾ら気分転換をしたって、遊奈が目を覚まさない限りは、きっとはやてはあのままだからな………いい加減に、目を覚ましてくれよ遊奈。

俺も万丈目もはやても、そろそろお前とデュエルしたいんだぜ?
いや、俺達だけじゃなく、翔も剣山も……ぶっちゃけて言うとエヴァですら、おまえとのデュエルを望んでるんだぞ?だから、目を覚ましてくれ!!



……所で、ふと思ったんだけど、眠ってる遊奈の前でデュエルしたら、そのデュエルに誘われる形で遊奈の魂が戻って来て目を覚ますとかねぇかな?



「面白い案だとは思うが、室内だと色々問題がありそうだから止めておいた方が良いと思うぞ十代。
 と言うかだな、遊奈オンリーの個室なら兎も角として、アカデミアの保健室に個室は無いから、他の利用者の迷惑になりかねんだろう?」

「あ、そうか!頭いいな、万丈目!」

「貴様がアホなだけだ!
 デュエルではアレだけ天才的な戦術を披露するんだから、普段の生活でも其れを少しは発揮したらどうなんだお前は!!」

「あ、其れは無理だぜ♪」

「此の生まれながらの天然デュエル脳!!」

「いや~、其れほどでもねえって♪」

「褒めてないわ!!」



「「…………プッ!………ハハ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!アハハハハハハハハハハハハハハハッハ!!!」」



は、腹痛ぇ!!なんか、随分久しぶりに心の底から笑った気がするぜ。
なぁ、遊奈は大丈夫だよな?絶対に目を覚ますよな万丈目?



「くくく……はぁ……分かり切った事を聞くな十代。
 アイツは、遊奈は少しばかり時間にルーズな所もあったから、今回も此方に戻ってくる間に無用な寄り道をしている可能性は排除できない……大丈夫
 だ、アイツは必ず戻ってくるさ。」

「だよな。」

なら、俺達は信じて待つだけだよな。

出来るだけ、早く目を覚ませよ遊奈?楽しいデュエルが、マダマダお前の事を待ってるんだからさ!!








――――――








Side:はやて


あ~~~……えらい目に有ってもうたわ。まさか、アカデミア屈指のダイナマイトボディの美少女に強制入浴させられるとは予想外やったわ。

でも、其れはドンだけ私が酷い生活してたって事やからね……大浴場でマックに『髪がバリバリになってるワ!』って驚かれたし、明日香ちゃんには『幾
らなんでも此れは無い。体臭も然る事ながら、垢も凄いわ』って言われてもうたからなぁ。

まぁ、おかげで久しぶりにサッパリ出来たから、其れは良いんやけど……

「まだ、目は覚まさんのやね。」

「…………」



お風呂タイム終了から、直ぐに着替えて遊奈の下に戻って来たけど、遊奈は相変わらず眠ったままや……マッタク、可愛い顔してからに。……なのに!

「!!!」

なんで、如何して眠ったままやの?何で目覚めてくれへんの?
目を覚ましてや……お願いやから目を覚まして!!もう一度、その声で私を呼んで!!もう、大切な誰かの喪うのは嫌や……絶対に嫌だよう。

遊奈ーーーーーーーーーーーーー!!!



「るせぇ!!聞こえたっての!!近所迷惑だから、大声出すんじゃねぇっての!!」

「え?」

この声は……間違える筈がない!!戻って来てくれたんやね遊奈!!



「おうよ!待たせて悪かったねはやて!!明石遊奈、今此処に帰還したぜ!!」

「あぁ……あぁぁっぁぁぁぁぁぁ……遊奈!!遊奈ーーーー!!!」

「ただいま、はやて。」



ち、遅刻やで遊奈?
私等がドレだけ待ったと思ってん?……皆が皆、遊奈が目を覚ますのを心待ちにしてたんやで?



「あ~~~、其れについては普通にゴメンね。
 だけど、私も私で色々あってさ……あの糞野郎の自爆攻撃を一身に受けて、魂がコアを残してバラバラになっちゃった訳なのよ?
 幸いにも、コアが無事だったから、再生は可能だったんだけど、集められた魂の欠片は全体の6割程度……だから、少し時間がね。分かるでしょ?」


「そう言えば、少しチッこい感じがするなぁ?」

「大体今の私の魂の大きさは、小学4~5年生って所かな?まぁ、此れでも集まった方だとは思うけどね。
 だけど、この状態だと魂に対して器が大きい状態だから、戻る事は出来ても、ちょ~~~~っと、弊害が有るかの知れないんだよ。略間違いなくさ。」




弊害やと?



「魂の大きさが器である肉体よりも小さい場合、幼児退行とか、記憶障害みたいな事も起きるらしくてさ、多分私もそうなる可能性が大きいと思うんだ。
 でも、其れも日々の生活の中で改善されてくるだろうから、1ヶ月も有れば何時も通りの私に戻る事が出来ると思うんだよね。」




そか……やけど、其れでもかまへんよ。遊奈が目を覚ましてくれるんやったらな。
其れに、足りない部分も、何れは回復するんやろ?……やったら、何も言う事は無いで……おかえり遊奈……待ってたで?其れこそ1週間もな。



「完全に遅刻だね此れ。……でもまぁ――ただいまはやて。戻って来たよ。」

「遅刻どころの騒ぎやないわ!!……ずっと心配してたんやで?もう目を覚まさないのかって……もう、起きる事は無いんじゃないのかって。
 本気で心配したんやで!!」

「あはは……ゴメン、心配させ過ぎたね。
 でもさ、私が体に戻ったら、さっき言った何らかの弊害が出るのは確実だから、悪いけど、その間の私の世話も頼んでいいかな?」




何を言うてんねんドアホ。そんなんOKに決まっとるやないか。そんな事やったら、幾らでも引き受けたるわ!!



せやけど今は……おかえり、遊奈。



「うん……ただいま、はやて。」



アンタが戻って来てくれたってう事だけで、私は充分やで――ホンマ、生きててくれてありがとうやで。


アカデミアの皆が、遊奈が目を覚ます時をずっと待ってたからな。


器に対して魂が小さい事で起こる弊害は注意せなアカンけど、其れもきっと如何にか出来る筈やから、くよくよせずに前を向いていくだけやで!!













 To Be Continued… 






*登場カード補足