Side:ジム


魔王の正体は遊奈……かも知れないが、アレは本当に遊奈なのか?
俺の知る遊奈は、何時も太陽みたいな笑顔を浮かべて、デュエルを楽しんで、周囲に元気を撒き散らしていたけど、魔王と呼ばれたアイツは、まるで
漆黒の太陽みたいな不気味さを醸し出している……不気味な笑みが、其れに拍車をかけてる感じだけどな。


「確かに、明石遊奈と言うデュエリストを知っている人間ほど、魔王と遊奈が同一人物とは思えないかもしれないな。
 其れほど付き合いがある訳じゃない俺ですら、明石遊奈と魔王は、まるで別人のように見えるからな……だが其れでも特徴的な、左右非対称の髪
 型と、右眉の辺りに刻まれた斬り傷跡を見る限りでは、アレを明石遊奈だと言うより他にはないのだけれどな。」

「遊奈……如何して、お前みたいな奴が魔王なんかに!!
 お前は、どんなカードにも愛情を注ぐデュエリストだったじゃないか……それが、如何してこんな『弱者排斥』みたいな事してるんだ!なんでだよ!」


分からないが、魔王と化した遊奈が、俺達の知る遊奈じゃない事だけは間違いなさそうだぜ……



だが、取り敢えずはやてには連絡を入れておくか……遊奈が居なくなって、誰よりも悲しんでいたのははやてだからな。
魔王と化してるとは言え、其れでも無事が分かれば、はやてだって一応は安心するだろうから……まぁ、一種の気休めに過ぎないかもだけどな。


しかし、魔王か……一体如何してしまったんだ、明石遊奈……マイフレンド――









遊戯王×リリカルなのは×ネギま  夜天と勇気と決闘者 GX163
『恐怖の序章――魔王遊奈』











Side:はやて


ユウナから得られた情報を統合し、そんでもって総括的に判断し、熟慮した上で言うなれば――魔王は、十中八九遊奈であることは間違いないで!
なんで、如何してそんな事になってもうたのかは分からんけど、遊奈が魔道に堕ちたって言うなら、其処から助け出したるのが私の役目やで!!


とは言え、魔王の居場所が分からない今は、ある種の八方塞がりなんやけど………



――Pipipipipipipipi



こう言う時に、PDAが呼び出しをって言うのは、ある意味王道やけど……相手は『ジム・クロコダイル』!!……何か重要な物を見つけたんやろか?

「もしもし~~、何かあったかジム?」

『有ったどころじゃないぜはやて……俺達は今、魔王城って言われる砦の近くまで来てるんだが……其処から、魔王の素顔を見てしまったんだ。
 仮面に隠された魔王の素顔――其れは、明石遊奈そのものだっった!!!』



やっぱり魔王=遊奈やったか……何となく、そんな気はしとったからな。
けど、態々連絡して来たって事は、只魔王の正体を伝えるだけやない――その他にも、用件はあるんやろジム?取り敢えず言ってみや!


『今直ぐ此方に来る事は出来るか?』


普通なら無理!って言うところやけど、座標さえ分かれば、旅の鏡で一瞬でそっちに行く事は可能やで?


『ならば、座標を送るから来てくれ……アレは、魔王はトンでもなく強い力を秘めた、闇のデュエリストみたいだからな……』


勿論や!!遊奈が魔王で、闇のデュエリストなんて事は、到底見過ごす事が出来へんからな!1発打ん殴って、目を覚まさせたるわ!!
仮に、私の一撃で目を覚まさずとも、岬ちゃんの『姉御愛』たっぷりの一撃を上乗せすれば、行けると思うし、其れ出もダメな場合は、デュエルでなの
はちゃん召喚してO・HA・NA・SHIして貰えば、確実に目を覚ます筈やからなぁ!


「八神先輩、其れって下手したら、姉御消滅しちゃわないか?」

「大丈夫や、非殺傷設定やから。」

尤も、その方法が通じるのは、何らかの理由で遊奈自身の人格が変貌してしまった場合に限るんやけどね……操られてる、乗っ取られてる言う状況
やったら、其れはまた別の方法やないとアカンかも知れへんからな。

……まぁ、どんな状況でも、デュエルで戦って勝てば最終的に何とかなるような気は、バリッバリするけどな。


と、来た来た座標データ!えっと、此処から南西方向に40㎞の地点……ほな、頼むでシャマル?


はい!え~~~~っと……繋がった!


――ヴィン!


ほな岬ちゃん、行こか?クラールヴィントが形成する輪っかを通れば、あっちゅう間にジム君達の下に到着っていう、移動時間1秒の旅にな♪


「おう!って、通り抜けたら、マジで景色が変わった!!
 スゲェんですね、シャマル先生って……俺、ちょっとシャマル先生の事見直しました!!」

あらあら、お上手ね岬ちゃん♪


ま、シャマルは頼りになるバックスやからな。
其れよりも、来たでジム、オブライエン、ヨハン!魔王は、何処や!!


「ワオ!本当に一瞬で来るとはな!」

「旅の鏡……侮れないスキルだな。実に見事なモノだ。」


旅の鏡万能説は真説やな。


「んで、魔王だけど……其処から見える砦に居るぜ。
 向こうからは、こっちは死角になるみたいだけど、くれぐれも驚いて身を乗り出すなよ?……見つかったら、厄介な事になりそうだからな。」



うん、勿論分かっとるよヨハン。こちとら元一部隊の隊長や、態々相手に見つかるような阿呆な真似はせんて。
其れに、岬ちゃんかて口ではアレな感じでも、実は意外と冷静やから、要らん事して向こうに見つかるような事だけはないと思うから大丈夫やで。

ほな、魔王を拝ませて貰おか―――



「……………」



――え?


「八神先輩……アレって、姉御……だよな?」

「サイドポニーは下ろしてるけど、右眉の傷痕と、左右非対称の髪型は、遊奈やと思うけど……敢えて言うで、誰やのアレは?」

容姿は確かに遊奈やった。特徴的な髪型と、何よりも私を庇って負った傷痕は間違いないと思うんやけど、身に纏う雰囲気と言うか、オーラ的な何か
が、まるっきり別人の其れやった。

言うなれば『遊奈の姿をした遊奈でない何か』って所やろうか?
正直な事を言うなら、アレを遊奈と思えない……思いたくないんやけど、其れでも本能的に察してまう……どんな形で在れ、魔王は遊奈であると。

認めたくないのに分かってしまう。違うのに納得してまう……トンでもない矛盾やな此れも。

まぁ、此れはしゃーないし、何で遊奈があないな事になってもうたのかは調べなアカンけど、魔王は一体何をしとるんや?


「アイツは……今し方一つの村を滅ぼしたところなんだ……!俺達が来た時には、手遅れだった……!!」

「奴は、本気でこの世界を支配する心算で居るらしい。
 普通に考えれば、狂った誇大妄想としか言えんが、僅か1時間足らずで1つの村を灰燼に帰すと言う、魔王軍の戦力は無視できる物じゃないな。」


確かにその通りや。
せやけど、遊奈は魔王となって、どうやってアンだけの部下を集めて、一大軍団を築き上げたのか……キッチリ問い詰めたらなあかんのやけど、その
村の襲撃は、遊奈が直接的に手を下したんか?


「いや、部下達で制圧したみたいだ。
 魔王は、最後に出て来て状況を確認しただけだったみたいだぜ?実際の戦闘には、参加してないと思うんだよな俺は。」


やとしたら、まだ救いは有るか?
戦闘に参加しなかったのを『人を殺したくない』って言う遊奈の深層での思いが、魔王に前線に出る事を止めさせたのだとしら、やけどね。

でもホンマに、遊奈に何があったんや!?……誰よりも明るく元気で『元気が最強』がモットーの遊奈が、そんな凶行に出るとは信じられへんわ!!


「俺達だって信じられないが……お、おいちょっと見ろ!!」


ん?……な、誰かが魔王に突撃して―――アレは『魔法剣士ネオ』!?何をする心算や!?




「魔王!貴様の数々の暴挙を見逃す事は出来ん!!今此処で私とデュエルだ!!貴様の凶行を、今此処で止めてやる!!」

「私に挑むか……良かろう、その蛮勇を砕いてくれる!!」




って、デュエルかい!!
まあ、精霊世界では当たり前なのかも知れへんけど……このデュエルでの敗北は『消滅』と言う名の『死』……其れでも挑むとは……!!



「私は一人ではない……貴様等によって葬られた同胞の魂と共に在る!!覚悟は良いな、魔王!!」

「私に挑む愚かさと言う物を、その身をもって知るが良い。」


「「デュエル!!」」


魔王:LP4000
ネオ:LP4000




けど、止める事は出来へんから、デュエルは始まってもうた……どうなるんやこのデュエルは――遊奈……



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「バトルだ!ダーク・ホルス・ドラゴンで、ジャンク・ウォリアーに攻撃!!!」


――ドォォォン!!


魔王:LP2700→2000




で、デュエルの方は、思った以上にネオが食い下がっとるなぁ?
魔法使いとドラゴンを主体としたデッキで、意外な程にバランスが良いし、此れやったらアカデミアでも上位に食い込めるかもしれん程の腕前や。

対する魔王は、のどかちゃんと和美ちゃん、其れからスターダストとエフェクト・ヴェーラーを除いた遊奈のデッキその物……まぁ、当然やろうなぁ……


「……トラップ発動『終わりを告げる虚無』
 私のフィールド上のモンスターが破壊された時、手札を1枚捨て、デッキか墓地から攻撃力0の闇属性モンスターを特殊召喚する。
 私は、手札のボルト・ヘッジホッグを捨て、デッキから攻撃力0のダークチューナー『DT-ナイトメア・フォース』を特殊召喚する。」

『&%$#*?‘><?』
DT-ナイトメア・フォース:ATK0



って、ダークチューナーってなに!?
レベル12で、攻守は共に0!チューナーで最高レベルって、此れはシンクロ出来へんやろ流石に!!


「私は此れでターンを終了する。」

「私のターン……墓地のボルト・ヘッジホッグの効果発動。
 私のフィールド上に、チューナーが存在する時、墓地のこのカードは特殊召喚出来る。舞い戻れ、『ボルト・ヘッジホッグ』!」
ボルト・ヘッジホッグ:DEF800


此処でシンクロの準備とは言うても、チューナーがレベル12やったらシンクロは出来ない筈なんやけど…魔王は一体、何を狙ってるねん?




「レベル12のチューナーと、レベル2の非チューナー?……シンクロなど出来ないぞ其れでは!!」

「確かに、此のままでは無理だが、チューナーがダークチューナーである場合には、素材モンスターがダークチューナーのレベルを引いたレベルでシ
 ンクロする事が出来るようになるのだ!!」


何や其れ!?
でも、そうだとしても、レベル2のボルト・ヘッジホッグから、レベル12のナイトメア・フォースのレベルを引いたら、其れはマイナスレベルになってまう。


「ふざけるな!そんな事をしたら、レベルはマイナス!マイナスレベルのモンスターなど存在しない!!」

「……それが存在するのだ、私達の様な闇の住民にはな!そして見るが良い、驚愕の『ダークチューニング』を!!」




ダークチューニング!?なんや其れは!!――名前からして、相当に凄い感じやけど。




「私は、レベル2のボルト・ヘッジホッグに、レベル12のDT- ナイトメア・フォースをダークチューニング!
 集いし闇の結晶が、希望の光を絶望で塗りつぶす。ダークシンクロ、生者を喰らい尽くせ『邪神-アバター』!!」

『………』
邪神-アバター:ATK???




ダークチューニングで呼び出されたのは、驚愕のマイナスレベルのシンクロモンスターやと!?
しかも、現れたのは黒い球体……それが少しずつ形を変えて、ネオの僕であるダーク・ホルス・ドラゴンに姿を変えたぁ!?……どうなってんねん…



「此れで終わりだ……邪神-アバターで、ダーク・ホルス・ドラゴンに攻撃!そして、この瞬間にトラップ発動『シンクロン・デストラクター』!!
 私のシンクロモンスターが、相手モンスターを戦闘で破壊した時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える。
 私を相手に、随分と食い下がったと褒めてやるが、この邪神の前では、貴様程度は塵芥に等しい……大人しく消え去るが良い屑が!!
 やれ、邪神-アバター!『ダークネス・ブラック・メガフレイム』!!」


――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!


「ぐ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ネオ:LP2500→0


――シュゥゥゥゥゥゥゥ……


「フン……取るに足らない雑魚が跳ねっ返ってからに……大人しくして居れば、もう少し長生きできたというのに、実に愚かな事だ。
 だが、貴様程度の魂であっても、其れなりの糧にはなったからな?……精々、糧となれた事を幸運と思って行くが良い。雑魚には相当な栄誉だ。」



そして、其れの攻撃でネオのライフはゼロになり、そして消えてしまった。
尤も、ネオだって負けた時には死が待って居るって言う事を分かっててデュエルを挑んだんやから、その魂が迷う事は無い筈や。



せやけど、敗れたネオを見下し、そして消えて行った事を嘲笑するアイツは、まかり間違っても遊奈やない!
少なくとも、遊奈の人格ではないのは明白や!!

遊奈は、全力を賭して戦った相手を、絶対に貶したりはせんし、何よりもあんな偽悪的な笑みを浮かべる事なんて有り得へんわ!!



「ククク……消えろ、雑魚が。」



アイツ!!!!!


「待てはやて!!此処で見つかったら大事だ!!」

「俺だって気持ちは分かるが抑えてくれ八神先輩!!
 此処でアイツに見つかっちまったら、俺等が大ピンチになるのは間違いねえ!!だから、抑えてくれ!!」



~~~~!!そうやな、軽挙妄動は控えるべきやったね。
冷静さを保てる自信は有ったんやけど、如何にも我慢できへんって事は存在するんやなぁ……それを身を持って体験したわ。

まさか、あそこまで自己本能が抑えられなくなるとは思わなかったわ。


「一度ここから離れよう。そして、落ち着ける場所で此れからの事を相談した方が良い。」

「其れには異存なしやジム。」

其れでも、魔王が遊奈である以上、凶行を止め、そして本来の遊奈に戻したるんが私等の役目やからな――





せやけど、如何して……何でアンタが魔王なんぞになってもうたんや遊奈……

或は、そうなってまう程に、アンタの心は疲れてしまってたん?……だとしたら、私は嫁失格や……旦那の不調を、分からなかった訳やからな……


だからこそ、魔王と化したアンタを救って見せるで遊奈!!

この場は、厄介事回避を重視して退くけど、何れアンタの事を倒しに行ったるから、精々首洗って待っとけ遊奈――否『魔王遊奈』!!


アンタの中の魔王をぶっ倒して、遊奈を救い出して見せたるわ!!!














 To Be Continued… 






*登場カード補足




終わりを告げる虚無
通常罠
自分フィールド上のモンスターが破壊された場合に、手札を1枚捨てて発動できる。
自分のデッキか墓地から、攻撃力0の闇属性モンスター1体を選択して、自分フィールド上に特殊召喚する。