Side:はやて


フィヨルド君から齎された、遊奈にそっくりな子の情報……此れを無視する事は出来へんな。
他人の空似な別人の可能性は勿論あるけど、遊奈本人の可能性かてゼロやない!――件の子と、何とか接触したい所やけど、此れは結構難義や。

フィヨルド君が言うには、遊奈似のこの子は連れて行かれたって言う事やから、暗黒界の砦に居る言うのは先ず間違いないんやけど、そうなると如何
やって、彼女と接触するかが課題になってくるわ……流石に正面切って、暗黒界の砦に乗り込む訳にもいかへんからね?

なんか、えぇアイディアは無いモンやろか?


「有るには有るんだが、此れはあまりお勧めできる方法ではないぞ?」

「準!……ドナイな方法でも良い、何かあるんやったら教えたって!!!」

「そう言うとは思って居たが……平たく言えば『囮』戦術だ。
 俺達の内、誰か1人が囮となって、態と暗黒界に捕らわれて砦に侵入し、件の少女と接触する――此れが一番面倒は無いと思うんだが……」


囮戦術は、囮役が危険だから提唱したくなかったか……まぁ、当然やろね。

けど、そう言う事やったら問題なしやで?―――囮役は、私が務めるさかいな!!!



おっと、異論は認めへんよ?――此れが私の選んだ道やからね。

まぁ、通信は繋がるようにしておくし、いざという時はシャマルに『旅の鏡』で取り寄せて貰えば、大概の事は何とかなる筈やからなぁ?


何よりも、遊奈は私の旦那や――やったら、其れを助けるのは嫁の仕事やからね。










遊戯王×リリカルなのは×ネギま  夜天と勇気と決闘者 GX157
『暗黒界の砦~Fort in the dark world~』











んでもって、目出度く囮役になった私は、物の見事に20秒程で捕らえられて、暗黒界の砦に連れ込まれて――有無を言わさずに投獄されました!



ったく、何やねんアイツ等!!理由も聞かずに人を投獄するってドナイな事やねん!!!
まぁ、目的である潜入は出来たけど、私を投獄した事に付いては、万倍にして返してやるから覚悟しとくとえぇわ……残らず叩き斬ったるからな!!


其れでも、死なないで投獄されたって事はある意味でチャンスや――囚人達の持つ情報って言うのは、余り馬鹿に出来ない部分もあるからな?


「……新入りさん?」

「へ?」

そんな中で隣りの牢屋から人の声?……私以外にも居ったんか、感激するで~~~!
ヤッパリ1人は寂しいからなぁ……まぁ、短い期間やけど仲良くしよか?……取り敢えず、こっち向いてくれてもえぇかなぁ?


「……初めましてかな?……あんまり愉快な出会いじゃないけどね。」

「!!!」

此れは……まさか、隣の牢屋の人が件の遊奈(?)やとは、流石に予想外や!鉄格子だけで仕切られてた事が幸いしたな此れは。

囮になって態と捕まって速攻でとは………けどこの子は、遊奈やない。
遊奈やったら私の事は分かる筈やし、何よりこの子には『右目の上の傷痕』が無いからなぁ?良く似とるけど、他人の空似、全くの別人さんやね……


けど、其れなら其れで僥倖や。


遊奈本人やないって言う事は、この子はこの世界の人やから、何だってデュエルモンスターズの精霊が、こないな事してるのかを知ってるかも知れへ
んから、その辺を聞いてみる価値はあるしな?


「如何したの?」

「あ~~~……貴女が、知り合いにそっくりやったんで驚いてもうただけや。
 えっと……私は八神はやて言うんや、貴女は?良かったら、名前教えてくれへんやろか?」

「ユウナ・シャインストーン。」


顔が似とるだけやなくて、名前もユウナってドンだけの偶然や此れ!?しかもシャインストーン……明るい石……つまり『明石』って嘘やん?
異世界の存在で、容姿が瓜二つで、名前もドンピシャリってドンだけのミラクルな確率やねん!初手にエクゾディアが揃う位の衝撃やろ此れは!!!

まぁ、えぇわ。


なぁ、何で暗黒界の奴等はユウナの街の人達を捕まえたりしとるんや?
街の感じを見る限りでは、争ってると言うよりは、暗黒界の連中が一方的に攻めて来た言う感じやった――何が起きてるんや、この世界で?


「……一ヶ月くらい前、此処から遥か南に在る砂漠の方から凄い力と眩い光が観測されたんだ。
 その時は、何かなと思っただけだったけど、その光から3日後、突如『魔王』を名乗る人物が凄まじい軍勢を引き連れて、世界各国を侵攻し始めた。
 其れが原因で、暗黒界をはじめとしたこの世界の住人達は、魔王に対抗しようと夫々が力を蓄えはじめたって言う訳。
 で、暗黒界は『超強力なカード』を生み出すための生贄を必要としてるって……つまり、私達は如何足掻いても殺される運命にあるって事だわ……」


ふざけんなや!んなモン全力拒否やアホンダラ。


にしても、砂漠方面からの大きな力と強烈な光――幻魔と神の激突なのは間違いないけど、其れが1ヶ月ほど前とは、こっちと現実世界では時の流
れが違う言う事か?……やとしたら、ヨハン君は良く1ヶ月も生き延びたなぁ~~~……本気で尊敬するわ此れ。


しかし生贄とは物騒なモンやけど、暗黒界の奴等はドナイなカードを生み出そうとしてんのや?
まぁ、間違いなく碌でもないもんやろうし、ともすれば世界のバランスを崩しかねないカードやろうけど、生憎とそないなモンを作り出すためのサクリファ
イスコストになる心算は毛頭ないからなぁ?……此処から逃げるで、ユウナ!!


「逃げる?そんなの無理だよ……この牢屋は、特殊合金で出来てるから剣じゃ斬れないし、人力じゃ曲げられないんだよ?
 そんなモノで出来た牢屋からどうやって脱出するって言うの?」

「物理で無理なら、魔法でぶっ壊すだけやで?レイジングハート!!」

『All right Captain.Divine Buster.』


――バガァァァァァァァァァァァァァァン!


「すご!」

ヤレヤレ……流石はなのは直伝の魔法と言うか何と言うか、僕でも脅威を感じる威力だよ此れは?


なのはちゃんを舐めたらアカンでユベル。

そうそう、ユベルのカードは今は私が持っとる。
デッキは没収される可能性があるからって十代達の所に置いて来たんやけど、いざという時の為にって十代がユベルのカードを貸してくれたんや。

なんでも、ユベルは強いから色々頼りになるとかなんとか………まぁ、最高レベルの精霊やさかい頼りにしてるけどな♪


まぁ、其れは其れとして、此れで牢屋はブッ飛ばしたから逃げる事は可能やろ?
流石に捕らわれてる人達全員を救出するのは無理やけど、砦の外には私の仲間が居るから、皆と協力すれば、捕らわれてる人達だって助けられる。

先ずは此処を脱出すんでユウナ!!


「う、うん!!」


願わくば、私等が逃げるのを目撃されると都合がえぇわ。
目撃された瞬間に、シャマルの旅の鏡で取り寄せて貰えば、追撃は不可能やし、此処の奴等に『トンでもない力を持った奴が居る』って印象付けが出
来る上に、必要以上の警戒をさせる事も出来る。

警戒をするに越した事は無いけど、必要以上の警戒は視野を狭め、逆に隙を作り出すもんやからね?

その隙を的確に突けば、少数で大軍に勝つ事は難しくない――嘗て、一部隊取り仕切ってた総司令の頭脳を舐めたらアカンで?
正面からの正々堂々も、搦め手を使った裏技も、勝つための戦術は幾らでも思いつくからなぁ?前世の経験は、思いのほか役に立つもんやね。



「む?脱獄か!!!」

「おぉっと、見つかってもうたか?」

で、出口に向かっていた私等の前に現れたのは『暗黒界の騎士ズール』。
暗黒界には珍しい通常モンスターやけど、レベル4で攻撃力1800を誇る、優秀な下級アタッカーやったな……先ず先ずの奴とのエンカウントやね?

やけど、私等は此処でお暇させて貰いますので、ご機嫌よ~~~~~♪……シャマル!!!


――シーン……


え?ちょ、シャマル?お~~~い、シャマルさ~~~~ん?返事したって~~~?
今直ぐ私等を旅の鏡で、お取り寄せして欲しいんやけど~~~………アカン、通じん!!何で?なんで通信が出来へんの!?


「外部との連絡を取ろうとしたのだろうが無駄な事だ…この砦は我等『暗黒界』の住人以外の人物の通信は強制的にシャットアウトする効果を持つ。
 故に、外部との接触は出来ず、脱獄したところで再び牢屋に逆戻りだ……無駄な足掻きだったな。」


なんやと!?其れは流石に予想できんかったで……!!
此れはちょっぴり拙いかも知れへん……レイジングハートで強行突破は可能やけど、其れをやったら余計に面倒な事になるのは間違いない。

此処はこの世界の理に習って、デュエルでって言うのがセオリーやけど、私はデッキを十代達に預けてるから其れも出来ない……八方塞がりやな…


「此処を通りたければ、私をデュエルで屈服させるが良い!さすれば先に進む事が出来るかも知れんぞ?」

言ったね?だったら、そのデュエルは僕が受けさせてもらうよ。


ユベル!!!いや、デュエル出来るんか!?
いや、十代が純天然デュエル脳やから、ユベルが出来てもオカシクは無いけど――大丈夫なん?


僕を甘く見るなよはやて?……君達には劣るかも知れないけど、こんな雑魚に負けてやるほど僕は弱くはない心算だ。
 大体にして、コイツ等は調子に乗り過ぎで、正直ムカつく事この上ないんだ……撃滅する理由は充分なんだよ、僕にとってはね。


其れはまた、何とも弩ストレートな理由やな?

せやけどそれやったら安心できる言うもんや――丸腰の私に変わって、ズールとのデュエルを託すでユベル!


その期待には応えるよ。


遠慮はいらん、思い切りやってまえ!!!!!








――――――








Side:ユベル


まさか、僕がデュエルをする事になるとはね?此れを見越して、十代は僕をはやてに預けたのかな?
そうだとしたら、十代の勘は見事としか言いようがないよ。デュエル以外でも、直感は優れているって事なんだからね。

だけど、僕と対峙した以上、君の敗北は絶対だよ?暗黒界の騎士ズール!!

下級モンスターとしては、優秀なアタッカーだとしても、君では僕に勝つ事は出来ないさ、絶対にね――何なら試してみるかい?


「レベル10の精霊か……だが、攻撃力0ならば恐れるに足らん!
 先ずは貴様から血祭りにあげてくれる!!!覚悟は良いな、謎の精霊よ!!……その力、見せて貰おう!!!」


僕の力が見たいのかい?……なら見せてあげるから、存分に堪能すると良いさ。



「「デュエル!!」」


ユベル:LP4000
ズール:LP4000



僕のデュエルは存外激しいからね?……精々遅れないように付いて来てほしいな?――付いて来れなかったら、其処には死あるのみだからね。


精々僕を楽しませてくれよズール?
こうしてデュエルするのは、実に数千年ぶりなんだ……ガッカリなデュエルだけは、しないでほしいな。








――――――








Side:十代


はやてが砦に入ってから、そろそろ1時間て所だけど、はやてからの連絡は何もない。

ユベルが一緒だから大丈夫だとは思うんだけど、無茶はしないでくれよはやて……お前まで居なくなるなんて事、俺は絶対嫌だからな!!!


必ず戻って来てくれよな……!!!












 To Be Continued… 






*登場カード補足