Side:万丈目


敵の黒幕が『始まりの魔法使い』とか言う、遊奈の前世と関係ある奴だと言う事は分かったが、だからと言って現状で俺達に出来る事は殆どない。
ソイツの居場所が分かれば、今直ぐにでも乗り込んで叩きのめしてやるところだが、生憎と敵の居場所までは分からんからな。


受け身と言うのは好きじゃないが、此処は始まりの魔法使いとやらが仕掛けて来るのを待った方が良いだろう。
即刻何とかした方が良い事ではあるのだろうが、急いては事をし存じる――時には見に回って『機を待つ』のもまた、勝利の為には必要な事だ。


「その通りやで準。
 焦って勇み足かましたら、其れこそ急いては事を仕損じるなんて事じゃ済まんしっぺ返しを喰らってまうからな?今は、どっしり構えて待つ時や。」

「逆に、私達が大人しくしてれば、其れに痺れを切らせて相手の方から勇み足かましてくれるかも知れねーし……先ずは黒幕との忍耐戦だぜ!!」


流石に分かっているか。
だが十代、お前は如何だ?この『待つ闘い』を乗りきる事が出来そうか?


「無理だ~~~!俺は待つのが何よりも苦手なんだよ~~~!!
 身勝手な行動はする心算は無いけど、待ってばかりじゃストレスが溜まっちまうぜ~~!……デュエルの相手してくれるか万丈目?」

「こんな状況に置かれて尚、貴様の脳味噌はデュエル第一とは、呆れを通り越して尊敬に値するデュエル脳だな貴様は!
 良いだろう、俺とのデュエルでストレス解消になると言うのなら、喜んで受けてやる!――だが、デュエルする以上はストレス解消目的でも……」




「きゃぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



「「「「!!!」」」」


今の悲鳴は……アカデミアの内部からか!!
クソ、まさか既に始まりの魔法使いからの攻撃は始まっていたと言うのか!?――兎に角、悲鳴の聞こえた場所に急ぐぞ!!












遊戯王×リリカルなのは×ネギま  夜天と勇気と決闘者 GX141
『面倒な事案が出来たようです』











Side:十代


悲鳴が聞こえた方に直行してみれば………倒れてるあの子は、レイじゃないか!!
オイ、確りしろレイ!大丈夫か?


「う……あ……じ、十代様?」

「あぁ、俺だ!一体何があったんだレイ!
 其れに、背中の切り裂かれたような傷……誰だ!一体誰がこんな事をしたんだ!!――こんな酷い事をするなんて、絶対許さねぇ!!!」

「……マ、マルタンにやられたの。
 だけど、十代様……私を攻撃したマルタンは……普通じゃなかった……まるで、別人みたいに瞳が濁ってた……何かが取り憑いてるのかも……」


何かって……何が!!
オイ、何が取り憑いてるって言うんだよ!なぁ、レイ!!


「落ち着け十代!レイちゃん気を失っちまったって!!
 てか、背中のこの傷は決して小さくない……今まで、意識を保ってたのは奇跡的――何が何でも、自分に起きた事を伝えておきたかったのよ。
 兎に角、レイちゃんをこのままにはしておけねーでしょ?保健室に運ぶわよ!!」

「っと……確かにそうだな。」

けどマルタンて、今年入学して来た、取り立てて特徴のないイエローの1年生だよな?
そんな奴が何だってレイを襲ったんだ?――如何考えてもレイを襲う理由が見つからない……其れとも、或は何か別の思惑があっての事なのか…


流石に其処までは分からないけど、少なくとも俺の仲間を傷付けたって言うのは間違いねぇ。
レイの背中の傷の礼は、後でたっぷりとマルタンにしてやらないとな……今の内に覚悟を決めておけ――俺はお前を許さねぇぜ!!



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其れで鮎川先生、レイは大丈夫なのか?


「えぇ、制服は派手に裂けていたけど、傷そのものは浅いから傷痕が身体に残るなんて事もないわ。
 レイちゃんの身体の不調の原因も、怪我した事じゃなく『非致死性の一過性の神経毒』を喰らった事が原因だから、3日ほどあれば完全回復よ。」

「よ、良かった~~~~!!」

あれ?でも、よくよく考えたらシャマルなら怪我の治療は当然として解毒も出来るんじゃないのか?


「みなまで言うなや十代、レイちゃんの毒は、鮎川先生の話聞いた瞬間にシャマルが解毒したわ。
 勿論傷の治療もな~~~。まぁ、毒で体力消耗しとったから、目が覚めるのは最低でも三日後やろうけど。……せやけど、これまたクサいな……」


流石はシャマルだ、解毒も出来てるってんならレイは大丈夫だな。
だけどはやて、クサいって何がだ?


「レイちゃんを襲ったんがマルタン君言う事や。
 私の印象では、まぁそこそこ腕は立つけどイエローの生徒の中では平凡な部類で、ともすれば周りに埋もれてしまう位に印象の薄い子やった。
 性格も、決して積極的な方やなかったし……そんな子が、行き成りレイちゃんに対して凶刃を向けるなんて言うのは、流石にオカシイと思ってな。」


……言われてみれば確かにそうだな?
其れに、レイを襲ってマルタンに何かメリットがあるようにも思えないし――確かにクサいな。


「……そのマルタンとか言う小僧、若しかしたら始まりの魔法使いに乗っ取られたのかもしれんな。」

「「エヴァちゃん!?」」

「如何言う事だエヴァ!!」


乗っ取られたって……如何言う事だよ!!


「奴は肉体を持たない不滅の存在だ。故に、自由に活動する為には憑代が絶対必要になるのだ。
 私の世界の最後の憑代はナギだったが、強靭な精神力を持ったナギですら半分以上自我を奪われていた……其れを考えると――な。」


並の人間は簡単に乗っ取られるって事か……!
だけど、もしそうだとしたらヤバくないか?マルタンを乗っ取ったって言う事は、つまりは始まりの魔法使いとか言うのは自由にアカデミアの中を!!


「闊歩できるだろうな。
 そして、奴の下賤な思考をトレースすれば、自分の手駒を増やそうとするのは目に見えている……アカデミアの生徒が奴の毒牙にかかるぞ!!」


マジかよ!!
だったら、速攻でマルタンを探し出して何とかしないとダメじゃないか!!


「確かにそうだけど、マルタンを探し出したところで、どうにかなる?
 始まりの魔法使いの目的は分からねーけど、多分相手は無数の防御策を講じて居る筈……我武者羅に突貫しても、只の消耗戦になるだけよ!」


言われてみれば確かにそうだな……結局の所『待つ闘い』であるのは変わらないって事か。
だけど、待つばっかりってのはやっぱり性に合わないぜ?――如何にか、こっちから攻める事は出来ないモンかなぁ?


「諦めろ遊城十代。今の私達には圧倒的に情報が不足しているからな……こんな状態で突撃しても悲惨な結果が残るだけだ。
 確かに受け身と言うのは私も好きではないが、始まりの魔法使いが送ってくるだろう刺客を払って行けば何時かは黒幕に大当たりだろう?
 ならば、最終的な勝利を手にするために今は暫し我慢しておけ――我慢をする事もまた、一流のデュエリストに求められる資質だぞ?」


やっぱり待つしかないか。


ん?そう言えば、ぶっ倒す奴をぶっ倒した後、俺達は如何やって元の世界に、人間世界に戻れば良いんだぁ!?
始まりの魔法使いって奴が『何か』やって、俺達はこっちに飛ばされたけど、こっちからどうやって戻れば良いのか全然分からねぇ~~~!!


「そういやそうやった~~~~!!ドナイして帰れっちゅーねん!!」

「始まりの魔法使い倒しても、帰れねーんじゃ意味ねーし!!」

「……最大級の問題が、残っていたな。今更な気がしなくもないが……


え~~~~っと……あ、若しかしたら三沢なら、精霊世界から人間世界への帰還の事を考えてるかも知れないぜ。



「ふむ……ならば、一度聞いてみるのも良かろう。
 奴の頭脳ならば、或は現実世界に帰還手段も思いついているかもしれん――何れにせよ、此れからは戦いが待っている故に気を抜くなよ?」


言われるまでもないぜ!
デュエルで気を抜くなんて事はあり得ないしな!!


先ずは三沢がどんなデータを瓦礫から吸い出したのか、其れを知ってからだな色々と。
だけど、何だろう……この世界で起こるだろう事が俺は少し怖い……漠然としてるんだけど、二度と遊奈に会えないんじゃないかって思いがする。

杞憂であって欲しいんだが……此れは要注意で過ごして行く必要がありそうだな。



だけど、始まりの魔法使いってのは、一体何を目的にして動いてるんだ?
其れが下らないモノや、デュエリストの魂を穢す物であった時には容赦はしない――俺のHERO達が、貴様を砕いてやるぜ!!








――――――









Side:三沢


此処の時間軸と、俺達が居た現実世界との時間軸を重ね合わせると――なるほど、時間の進み方はだいぶ違うようだな。
其れを加味した状態で数式を考えると………








――此処からの帰還は滅茶苦茶難しいです








としか言いようがない。
此処から現実世界に戻るには、大きなエネルギーがなければ戻る事は出来ないらしい――だが今のままでは其れを得る事も叶わないからな。


如何にかして代替案を見つけないと―――――いや、待て大きな力だと?




有るじゃないか『大きな力』が。



遊奈の持つ『神』と、アカデミアに封印されている『三幻魔』の力をぶつければ、此処から帰還する為のエネルギーを得る事が出来るんじゃないか?
勿論リスクもあるだろうが、それ以上にメリットがある――そうと決まれば、その為に必要な事を考えないとな!








――――――








Side:始まりの魔法使い


クックック………この小僧が抱える『心の闇』は実に素晴らしい――おかげで簡単に乗っ取る事が出来た。
とは言え、まだまだ私が完全復活するためのエネルギーは全然足りん……そのエネルギーは、奴等のデュエルから貰うとしようか?


三幻魔の力も、直に我のモノとなる……後は、明石遊奈を取り込む事が出来れば私の野望は完遂する。
明石遊奈の持つ『神』の力を従える事が出来れば、何人たりとも私に刃向う事は出来なくなると言う物だからな……精々踏み台になるがいい!!


魔法世界を手中に収める事は出来なかったが、ならばその代わりとしてこの『精霊世界』を我が物とするだけだ。





我は不滅にして∞……精々足掻くが良い、矮小な人間風情が――!!












 To Be Continued… 






*登場カード補足