Side:みほ


まさか、更衣室で着替え中に先輩達に因縁をつけられるとは思ってなかったよ……平和的な解決が出来る雰囲気じゃないから、事を構える
しかないんだろうけど、ちょっと待ってもらっていいかな?



「何?怖気付いたの?」

「そうじゃなくて、せめて着替える時間くらいくれませんか?
 流石に下着姿で喧嘩は出来ないので。」

今の私達の姿を言うなら、私がブラとパンツ、エリカさんが上はブラで下はスカート、小梅さんは下はパンツで上は制服のシャツって言う、可成
り刺激的な格好だからね?
この格好で乱闘とかは冗談じゃありませんので――って言うか、絶対嫌だから……ねぇ、エリカさん、小梅さん?



「この格好で乱闘とか、どんな罰ゲームよ其れ――取り敢えず、シャツは着たいわね。」

「私も、スカート穿きたいです……」

「……確かに、その姿のアンタ達と戦うのは気が引けるわね?……なら、さっさと着替えなさい。
 取り敢えず、着替える間は大人しくしておいてあげるから。」



……其れは其れは、意外ですね?
てっきり、私達に着替える猶予を与えた上で不意打ちを仕掛けてくると思ったんですけど、如何やら、最低限の武士道はあるみたいですね?



「敵であっても、相手の臨戦態勢が整うまでは攻撃してはいけないってのがお約束でしょ?」

「成程、確かにそうかも知れませんね。」

特撮ヒーローものは、変身が終わるまで攻撃しないのがお約束だからね?……だけど、そのお約束から行くと、貴女達に待ってるのは、敗北
の未来一択だよ。

何時の時代だって、悪が栄えた試しはないんだからね!










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer97
『終焉を告げる鐘の音、です!』










さてと、そんな訳で着替え終わった訳だけど……其処から睨み合いが続いて互いに動く事が出来なくなってた――下手に動けば、此方の情
報を相手に与える事になるから、動く事が出来なかったんだけど……



「ま~ったく、アホみたいに固まっちゃって……そんなにみほの事が怖いのかしら先輩?」



此処でエリカさんが先輩達を挑発!
獰猛な笑みを浮かべながら腕を組み、鋭い眼光で先輩達を射貫くその姿は、正に銀狼……今にも相手を噛み殺さんばかりの迫力があるか
らね――うん、先輩達も圧倒されてる。



「くぬ……腰巾着の分際で調子に乗るなよ逸見!」

「はぁ?調子に乗ってるって誰が?
 私は、ただ事実を正確に口にしただけよ、調子に乗ってる訳じゃないわ――寧ろ、貴女達の方が調子に乗ってるんじゃないかしら、先輩?
 私や小梅がみほの腰巾着だって言うなら、先輩方は何?頭数だけ揃えて、襲い掛かる雑魚敵の集団かしら?と言うか、小梅も言ってた事
 だけど、大した実力もないのにみほを敵視するってどんな神経してるのか聞きたいモノね?
 あぁ、その程度の神経だから3年経ってもレギュラーに昇格出来なくて2軍のままって事か!あ、2軍じゃなくて最下層の3軍でしたっけか?
 其れだけ芽が出なくとも、整備科とかに鞍替えしなかった根性だけは認めても……あぁ、鞍替えした所で根性が腐ってるから、戦車の整備
 が真面に出来る筈ないわね。
 ぶっちゃけて言うと、先輩達に引退勧告を突きつけなかった隊長や副隊長の優しさに吃驚よ。――私だったら、速攻でリストラしてるわ。
 兎に角、やるってんなら来なさいよ?こっちはとっくに着替え終わってるんだから……Bitte kommen Sie?(かかって来なさい?)」



辛うじて、調子に乗るなとは言ったけど、其れに対してエリカさんが10倍近いカウンター……流石、相手を罵倒&挑発をさせたら黒森峰一だ
って噂されるだけあるよ。
腰に手を当てて、左の人差し指をちょいちょいって動かすって言う、分かり易い挑発行動までしてるからねぇ……絶対に今のエリカさんは、先
輩達に向かって、見下すような笑みを浮かべてるよね……

となるとまず間違いなく……



「良い気になるなよ逸見ぃ!!」



――バキィ!!



其れにキレた先輩がエリカさんに一発!
まぁ、ボクササイズで鍛えてるエリカさんからしたら蠅が止まるような遅いパンチだったから、点と軸を巧くずらして殆どダメージは受けてないと
思うけど……小梅さん、撮った?



「はい、バッチリと。
 其れから、先輩達が因縁つけて来た時の会話もちゃんと録音して、私達の部屋のノートパソコンにマルチ送信しときました――遊撃隊の皆
 にもマルチ送信できますけど、如何します?」

「ん~~、其れは良いかな?下手に係わらせる事も無いからね……でも、これでどうなろうとも其方が先に手を出した動かぬ証拠が手に入り
 ましたよ先輩?」

「あんな安っぽい挑発に乗るなんて、単細胞も良い所ね?
 まぁ、そのお陰でこっちには大義名分が出来たけど……そっちが先に手を出して来たから、身を守る為に戦った『正当防衛』が成り立つって
 訳よ!――今の一撃、3倍にして返してやるわ!!」



言うが早いか、私達は3年生軍団に突撃!
数の上では1:4の戦力比だけど、場所が更衣室って言う限られた空間だと、数の差はあんまり関係ないんだよね?……限られた空間だと、
一度に襲い掛かる事の出来る人数も限られてくるから。

「シャラー!!」

「どりゃぁぁぁぁぁあぁ!!」

「其処です!!」




先ずは、私の一足飛びからの空中前蹴り、エリカさんの踏み込みからの右ストレート、小梅さんのダッシュからの手刀→サマーソルトキックの
コンボが決まり、先ずは3人をKO!
って言うか小梅さんが使った技って何?明らかに『シャキィィン!』って、手刀じゃない音がしたよね!?……KOされた先輩の制服が鋭利な
刃物で斬られたみたいになってるし!
私は西住流護身術&西住流格闘術で、エリカさんはボクシングだけど、小梅さんの戦闘スタイルは一体……?



「ハイデルン流暗殺術です。」

「「暗殺術!?」」

「ちょっと待て赤星!暗殺術って、お前アタシ等を殺す気か!!」

「大丈夫です、明るい所では死なないのが暗殺術だって教官が言ってましたから。」



何だろう、絶対に間違ってる筈なのに、妙に納得しちゃうのは……確かに暗殺って言うのは『暗い所で殺す』って書くから、明るい所では死な
ないのかも知れない――訳はないよね。
まさかの暗殺術には驚いたけど、逆に言うなら私達の中では最も実戦的な戦闘スタイルって言う事が出来るかも知れないかな。
其れに、実戦向きの戦闘スタイルは頼りになるからね?――小梅さん、殺さない程度に思い切りやっちゃってくれる?



「其れは、命令ですか?」

「うん、遊撃隊隊長として命令します。」

「なら、応えるまでです!」



其処からは正に大乱闘って言うのが相応しい状態だね。
私が西住流護身術と西住流格闘術で先輩を叩き伏せれば、小梅さんは得意の暗殺術で次々と先輩達の意識を刈り取っていくし、エリカさん
に至っては、ジャブ×2→一度後ろを振り向いてジャブ→ジャブ×2のコンボ……所謂『パンチ嵌め』で先輩に反撃の隙を与えずに撃破してた
からね?

「エリカさんて、コー○ィー好き?」

「個人的にはガ○の方が好きだけど、私のスタイル的には○ーディーの方が合ってるわね。……ちなみにみほの推しキャラは?」

「其れは勿論ハ○ー市長だよエリカさん。」

なので、○ガー市長に敬意を込めて、向かって来た先輩をボディブローで怯ませて、そのまま掴んで連続ヘッドバッドからのドロップキック!
この一撃で先輩は気絶したんだけど、ドロップキックを放った後の隙を突かれて羽交い絞めにされちゃったか……普通に考えるなら、絶対絶
命のピンチだけど、私を舐めないで欲しいかな?



――ゴスゥ!!



「んな、バックヘッドバットで、羽交い絞めにしてた奴をKOしたですって!?」

「はい、そうさせて貰いました……そして、其れだけじゃありません――どぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「羽交い絞めにしてた奴を、腰と背筋の力だけで投げて来た!?」



生憎と、私の身体は西住流フィジカルトレーニングのおかげで、地球人類最強のレベルにまで引き上げられてるので、これ位は余裕ですよ?
もっと言うならエリカさんと小梅さんも同じ事が出来るだろうからね。

でも、これで残るは貴女を含めて僅か5人……まだ続けますか?――続けると言うのなら付き合いますけど……






「ほう?此れは、私のあずかり知らない所で、こんな事が起っていたとはな?
 矢張り隊長と言うのは、機甲科の生徒全員が帰るまで残って居なくてはならないらしい……」

「お姉ちゃん!?」

「「隊長!?」」



「西住姉……!」

「嫌なタイミングで現れたわね……!!」

「……別にいいじゃない?こいつもちょっと〆てやれば!!」



此処でお姉ちゃん登場!
先輩達は吃驚してたけど、その内の1人が、お姉ちゃんにまで殴りかかろうと!……まぁ、お姉ちゃんなら全然大丈夫だろうけど。



――ガッ!ギリィィィ!!



「ぐぎゃあ!折れる、折れる!!」

「3軍の隊員による、隊長への暴行未遂……其れだけでも重罪だが、遊撃隊の隊長と隊員に対する集団暴行とはな?
 マッタク持って呆れてモノが言えん――何故お前達のような連中が黒森峰の機甲科に居るのか、不思議でならないよ。」



突き出された拳を軽々と受け止めて、そのまま体を反転させて腕を逆に極めて見せたからね?……尤も折ってない辺り、可成り手加減をして
るんだろうけど。
だけど、この光景を見た残りの先輩は一様に顔が青ざめてるね?今のお姉ちゃんの動きは、マッタク隙が無い上に、目にも留まらぬ早業だっ
たから、当然と言えば当然だけど。
それ以前に、こんな所を隊長に見つかったって言うのが大きいのかもね。

「取り敢えず、助かったよお姉ちゃん。ありがとう。」

「何、大した怪我が無いようで良かったよ。エリカと小梅もな。」

「まぁ、この程度の相手に大怪我はしませんよ隊長。」

「私もみほさんもエリカさんも、軟な鍛え方はしてませんから♪」

「だろうな。
 さてと、大体予想は付くが、どうしてこんな事になったのか説明して貰えるか?……隊長室に連行して、凛と天城さんも交えての事情聴取を
 するとは言え、取り敢えず概要だけは知っておきたいのでね。」



まぁ、お姉ちゃんの考えてる通りだと思うよ?
私とエリカさんと小梅さんが着替えてる所に、この先輩達が現れて、因縁つけられて乱闘になった。因みに先に手を出したのは先輩達だよ。
エリカさんが殴られたからね。



「エリカの頬が少し赤くなってるのはそのせいか……良く分かった。
 因縁と言うのも、大方1年生でありながら、新設された遊撃隊の隊長を任され、そして黒森峰の10連覇の立役者とも言うべきみほが気に入
 らない。いつも一緒に居るエリカと小梅もと言った所か。
 ……マッタク持って、呆れてモノが言えんな此れは……みほに戦車道で喧嘩を売るなら未だしも、集団暴行と言う手段を取るとは……黒森
 峰の生徒として、恥を知れ馬鹿者が!!」

「ヒィ!!」



……お姉ちゃんの纏う空気の温度が5度くらい下がったね此れは。
腕を極められてる先輩は完全に涙目になってるし……今更ながらに、馬鹿な事をしたのを後悔してるのかもね?時既に遅しだけど。
それで、如何するのお姉ちゃん?



「全員隊長室に連行する。そこで事情聴取をした上で処分を下す。
 但しみほ、エリカ、小梅、正当防衛とは言え、割とシャレにならない怪我をしている奴等も居るから、お前達も無罪放免と言う訳には行かん。
 ……と言うか、明らかに鋭利な刃物で斬られたような傷のあるそいつは一体誰がやったんだ。」

「「小梅(さん)です。因みに、其れは手刀でやりました!」」

「小梅……お前、一体何をしたんだ?」

「暗殺術を使いました♪」

「殺す気か?」

「みほさんに殺さない程度にって言われてますので大丈夫です――何より、明るい所では死なないのが暗殺術ですから♪」

「そうか、明るい所では死なないのか……ならば安心だな。」



……エリカさん、お姉ちゃんは小梅さんのトンでも理論に納得しちゃったんだけど、其れで良いのかな?こう言っちゃなんだけど、あのトンデモ
理論で納得するって言うのに、可成りの不安を覚えるんだけど……
なんて言うか、お母さんも納得する気がするんだよね此れ。



「確かに師範も納得しそうねぇ……まぁ、実害は無いから良いでしょ。
 取り敢えず、コイツ等を隊長室に連行しましょ?……流石に4人で12人を連行するのは厳しいから、直下達に応援を要請した方が良いと思
 うけれどね。」

「確かにそうだね。」

1人ずつ運んでたら、その間に目を覚まして逃亡する人が居るかも知れないから。
なので、理子さん達を呼んで、先輩達を隊長室に強制連行――理子さんとサトルさんが、思い切り先輩達に対して悪態ついてたのは、可成り
怒ってたからなんだろうね。


で、そのまま隊長室で事情聴取が行われ、その結果、喧嘩を吹っ掛けて来た先輩達は1ヶ月の謹慎及び、機甲科から普通科への転属にな
り、私とエリカさんと小梅さんは1週間の謹慎が言い渡された。
私達への処分は、相手を怪我させた事と、無罪放免にすると『妹を贔屓してる』って思われるからだろうね。

それにしても、今回の件は、何だか嫌な予感がするんだよね……本当に先輩達の嫉妬から来る乱行って事だけなら兎も角として、如何にも
その裏側に何かある気がしてならないよ。

其れが、私の杞憂であると良いんだけどね……








――――――








Side:まほ


ふぅ……マッタク、馬鹿共のせいで余計な時間を使う事になってしまった――凛と天城さんも、付き合って貰って悪かったね。



「まぁ、これも副隊長の仕事だから気にしないでまほ。」

「最高学年の生徒として、付き合わない訳には行かないしね。」

「本当に感謝するよ、2人のおかげで事情聴取が円滑に進んだからな……正直、私1人では3倍では済まない時間がかかっていた筈だよ。」

「3倍って……其処までは無いと思うけど、役に立てたのなら光栄ね。
 時にまほ、みほ達の処分は兎も角として、あの馬鹿共への処分が少し軽くない?――みほ達に喧嘩を売っただけじゃなくて、その内の1人
 は、貴女に殴りかかって来たんでしょう?
 隊長への暴行未遂……其れだけでも、退学にする充分な理由になるでしょう、黒森峰なら?」



其れは其の通りなんだが……よくよく考えてみると、今回の一件は彼女達が自分達の意思で行ったとは考え辛いんだ。
もしも、本当にみほ達の事が気に入らないのなら、大会前に行動を起こして、みほ達を出場できないようにするのが一番の筈だ。――にも拘
らず、大会が終わったこのタイミングで因縁をつけると言うのは少しばかり解せん。
其れに、問題行動を起こせば内心に影響し、進学や就職で不利になるのは火を見るよりも明らかだろう?……にも拘らず、今回の凶行を起
こした事を考えると、誰かに入れ知恵されたのかも知れん。



「そそのかされたって事?」

「有体に言えばな。」

尤も、其れが誰なのかは分からん――黒に近い灰色なのはOG会だがな。
アイツ等は、結果を出しているにも関わらず、みほの戦車道が『黒森峰の王道に反する』と言う下らん理由で認めようとはしなかったからね。
つまり、アンチみほのOG会が、西住に対して良い感情を持ってない連中を焚きつけた可能性はゼロじゃない。
其れを考えて、退学には待ったをかけたんだ。

もしも誰かに入り知恵されたのならば、真に罰すべきは入れ知恵した奴だしね……尤も、彼女達はもう二度と戦車道に係わる事は出来ない
だろうと思うがな。
高校で芽の出なかった戦車乗りを欲しがる大学は居ないだろうし、社会人のチームでは言うに及ばずだ。
結局、彼女達は自らの手で己の未来を潰しただけだったって言う事だ……一応緘口令は敷いたが、人の口に戸は立てられんから、噂話とし
て、今回の件が学園に広まるのは間違いないしな。



「温情処置と思ってたら、実は思いっきり容赦がなかったわね?」

「容赦する筈がないだろう凛?
 アイツ等はみほに手を出した……その事実だけでも、ティーガーⅠの88mmの的にしたいくらいなんだ――其れを、この程度で済ませてや
 ったのだから、感謝して欲しい物だ。」

「流石まほ、みほちゃんの事となると容赦ないわ~~♪」



其れは、褒め言葉と受け取っておきますよ天城さん。
みほの為なら、私は悪魔にだってなれるからね……しかし、今回の一件で最も黒に近いのはOG会だから、徹底的に調べ上げる必要があり
そうだな?
連中はシラを切るかも知れないが、シラを切る事が出来ない位に証拠を集めれば其れでカタが付くからね。


それにしても、其れとは別にどうにも胸騒ぎがするな?
今度の土曜日は熊本港に寄港する事になってるから、みほと共に実家への帰省を考えてるんだが……如何にも其処で何かが起きる気がし
てならん。

如何か、此の胸騒ぎが杞憂である事を祈るだけだ……此の胸騒ぎが現実となったその時は、絶対に良くない事が起るだろうからな。








――――――








Side:みほ


1週間の謹慎が明けたと思ったら、今日は熊本港への寄港日!久しぶりの陸だね!!
とは言っても、私とお姉ちゃんはお母さんに優勝の報告があるから、実家の方に行く事になってるんだけど……エリカさんと小梅さんは如何す
るのかな?



「そうねぇ、特に予定もないし……もしも良ければ師範への優勝の報告に、同行させて貰ってもいいかしらみほ?」

「実は、私もそう言おうと思ってました。
 やっぱりみほさんが率いた遊撃隊の隊員として、優勝の報告は行いたいですからね♪」



おっと、まさかの同行願い?
だけど、全然OKだよ、エリカさん、小梅さん。――むしろ、私と姉ちゃんだけで行くよりもエリカさんと小梅さんが来てくれた方が、お母さんも喜
ぶと思うしね。



「師範に喜んでもらえるとは光栄じゃない?なら、遠慮なく御一緒させて貰うわ。」

「失礼にならないように、お土産を持って行くべきでしょうか?……此処は矢張り長崎カステラが安定ですね。」



……小梅さん、そんなに気を遣わなくて良いからね?お母さんはあんまりそう言うのを気にしないから。
まぁ、お母さんは意外と甘いモノが好きだから、カステラをお土産に持ってったら喜ぶのは間違い無いと思う――其れを表に出すか如何かは
別にしてね。



「まぁ、師範が喜ぶ姿ってのは想像出来ないわ。」

「教え子が勝っても、表情を崩さずに拍手で終わりそうですかねぇ……」

「其れが、西住流の師範だからね。」

其れは兎も角、お母さんは褒めてくれるよね?――黒森峰の10連覇を達成した訳だしね……濁流に飛び込んだ事に関しては叱られるかも
知れないけどね。

だからお母さんは大丈夫だろうけど、問題はお婆ちゃんだよ……一体何を言ってくるか分からないからね。



「そう言えば、家元……もとい、頭の固い梅干しババアが居たわね……」

「あの人は何を言ってくるのか分かりませんから、最大限に警戒しておきましょう……出来れば、何も起きて欲しくないんですけどね……」

「何も起きなければ最高だけど、そうは行かないだろうからね。」





結果だけを言うなら、何も起きないなんて言う事は無かった。
お母さんへの優勝報告を行ってる最中に、お婆ちゃんが乱入して、色々とあの試合について難癖をつけてくれたからね……だけど同時に確
信した――おばあちゃんの言う西住流は、叩き潰すべきだってね……!!












 To Be Continued… 





キャラクター補足