Side:みほ


予想外のハプニングは有ったけど、結果だけを言うなら黒森峰は前人未到の大記録である大会10連覇を達成する事が出来た――プロ野球
の世界でも連覇は読売巨人軍の9連覇が最高だから、黒森峰は其れを超えたって事になるよね?



「間違いなく超えたでしょうよ?
 と言うか、古今東西ありとあらゆるスポーツの歴史を紐解いても、10連覇を成し遂げた奴なんていない――つまり、史上初めて黒森峰が大
 会10連覇を成し遂げたのよみほ。」

「史上初って、其れは凄いね?」

「そしてその立役者は間違いなくみほさんですよ?
 みほさんが率いる遊撃隊が存在してなかったら、きっと黒森峰が10連覇を達成する事は出来なかったと思いますから。」

「其れは流石に言いすぎじゃないな、小梅さん?」

お姉ちゃんの戦車乗りとしての能力は抜群に高いし、副隊長に任命された近坂先輩の車長としての能力は計り知れないからね?――特に近
坂先輩は、中学大会で全試合フィニッシャーの記録を持ってる強者だから、きっと私が居なくても10連覇を達成してた筈だよ。



「こう言っちゃなんだけど、其れは無いと思うわみほ。
 もしも貴女が居なかったら、アタシ達は狭山の戦車が濁流に呑み込まれた事に動揺して、何も出来なかったと思う――そして、結果として狭
 山達を死なせてたかも知れないわ。
 仲間と勝利の両方を手にする事が出来たのは、貴女のおかげなのよみほ。」

「エリカさんの言う通りですよみほさん!
 みほさんは狭山さん達を助け、その上で勝利したんです!!だからもっと、誇って良いんですよ!!」

「なはは……確かにそうかも知れないね。」

己の行動を誇るか……事と次第によっては、お祖母ちゃんが最も嫌いな言葉かもしれないけど、だからと言って、私は私の生き方を変える心
算は更々ないけどね。

取り敢えず、優勝記念の胴上げは、とってもいい気分だったよ♪










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer96
『大会が終わった其の後で……』










ってな訳で週が明けて月曜日なんだけど……可成り周囲から注目されてる気がするよ……まぁ、前人未到の10連覇を達成したって言う事で
盛り上がってるのかも知れないけどね。

其れを肯定するかのように、今週の戦車道関連の雑誌の多くが、黒森峰の10連覇を取り上げてたけど、第62回大会の決勝戦への意見は、
思った以上だったよ。

雑誌だって、今週の目玉記事は大きく3つに分けられてるからね?

1つ目は、黒森峰の10連覇達成を賞賛する記事。
2つ目は、あの状況下でも試合を続行させた連盟の危機管理能力の低さを糾弾する記事。
3つ目は、私達の救助活動に焦点を当てた記事。


私的には黒森峰が前人未到の10連覇を達成する記事が最も多いと思ってたんだけど、実際にはあの救助活動をピックアップした記事が、ど
のメディアでも圧倒的に多いのには驚いたよ。
中には、カラー写真を使って、一面をあの件に使ってた新聞もあった位だしね……タンクトップとスパッツだけの姿が、全国紙に載ったって言う
のは可成り恥ずかしいと言うか、複雑な気分だけど。



「まぁ、其れは私と小梅も同じよね……直下だけは、未だ肩から下が川の中に浸かってる状態だから、その姿を晒さずに済んだけどね。
 カメラマン的には真っ先にみほを撮りたたかったからこの瞬間でシャッターを切ったんでしょうけど。」

「運が良いのか悪いのか、直下さんはちょっとだけ遅れてましたからねぇ……お蔭でインナーオンリーの姿を晒さずに済んだのは羨ましい限り
 ですよ本当に。」

「ある意味では運が良いって言えるよね理子さんは……」

と言うか、普通全国紙にインナーオンリーの女子高生の写真を使うかな?
タンクトップとスパッツ(ホットパンツVer)は、黒森峰の戦車隊の隊員全員が下着の上から着用してるインナーだからギリギリセーフって判断し
たのかも知れないけど、此れは流石にちょっとアレだよね……



「……ネットでもこの新聞は話題になってるみたいよ?
 『スポーツ放置の一面はヤバい!』『記事は劇的な救出劇の事で、一面写真も救助の決定的な瞬間なのに、インナー姿の西住妹と逸見と
 赤星が可成りエロい。直下のも見たかった!』『全国紙に載せる写真か?だが、ありがとうございました!』とかその他色々とね。」

「其れって、色々と如何なんだろうエリカさん?」

「エロいって……心外と言うか何と言うか……まぁ、少々刺激的な格好だったかもしれないのは否定しませんけど。」



刺激的なのは間違い無いよね確かに……だけど小梅さん、こう言ったら身も蓋も無いけど、私とエリカさんと小梅さんの中で、一番エロいのは
小梅さんだよ?
性格とかじゃなくてね。



「えぇ、何でですか!?」

「いや、下着は基本黒でしょ小梅は?
 其れだけでも充分エロっぽいってのに、下は紐パンが半分で、残り半分はオーバーニーソックスとセットのガーターベルトじゃないの!!
 正にアニメやマンガに於ける『性格は大人しいけど、脱ぐと誰よりもエロい女子』の条件満たしてるじゃないのよ!!」

「加えて小梅さんはスタイルも良いから、何て言うかこう、色っぽさも凄いんだよね?」

「其れを言ったらみほさんとエリカさんの方がスタイル良いじゃないですか~~!」



まぁ、スタイルが良いって言うのは否定しないかな?
今年の身体測定の時のスリーサイズは、上から82・56・84だったから――エリカさんは?



「上から83・57・84ね……其れで小梅は?」

「う、上から84・57・85です……」



……誰が、小梅さんよりもスタイルが良いって?
聞いてみたら、小梅さんが一番スタイル良いよ!って言うか、私達3人の中で一番胸も大きいし!!……同じ位だと思ってたのに、2cmも差
があったなんてね……



「自分でも驚いてます。
 だけどみほさん、エリカさん……聞いた話では、直下さんは上から85・58・85らしいですよ?」

「「何、そのモデル体型!?」」


まさかの伏兵は理子さんだった!?……そう言えば理子さんは、小梅さんの黒の上を行く紫だったっけか。
だけど、お姉ちゃんと近坂先輩は更にその上を行くからね?……お姉ちゃんは上から86・55・84で、近坂先輩は上から88・59・87って言う
ダイナマイトボディだからね。



「こんな事を聞くのはアレかも知れないけど、因みに師範は?」

「お母さんは上から89・59・89だよ。因みに菊代さんは上から91・60・90だった筈。」

「師範と菊代さんもハンパないですね……」



尤も、そのプロポーションを維持するのは簡単な事じゃないみたいだけどね。
事実、お母さんと菊代さんは、今でも毎日『西住流フィジカルトレーニング:お試し版』を続けてるみたいだから――あの素晴らしいプロポーショ
ンは、日々のハードトレーニングで培われてるんだよきっと。

まぁ、其れは其れとして、今日は大会後の休養日って事で一日フリーだから結構暇なんだよね……本日はどう過ごそうか、エリカさん、小梅さ
ん?何かプランはあるかな?



「ん~~……プランって言われると難しいわね?
 此れが陸なら映画とかウィンドウショッピングとか有ったんだけど、黒森峰の学園艦じゃちょっと難しいわよね?……こんな事を言ったら罰が
 当たるかもしれないけど、黒森峰の学園艦は娯楽施設に乏しいもの。」

「あ~~……其れは確かに。」

「剛健質実は良いですけど、もう少し娯楽施設が欲しいですよ。
 ゲームセンターは無理だとしても、カラオケボックス位は欲しいですよね?……思いっきり歌ってストレス発散って言うのは気持ちが良い物
 ですから。」

「確かに其の通りだね小梅さん。」

だけど、黒森峰の学園艦にそんな施設はないから、今日は部屋でのんびり過ごす事になるのかな?
其れも悪くは無いけど、たまには女子高生らしく思い切りはっちゃけて楽しみたい気分があるのは否めないよ……此れは、真剣に生徒会と学
園側に交渉してみる必要があるかも知れないね。

其れじゃあ今日は、部屋でボードゲームでも……



――バババババババババババババババババ!!



って、思ってた所に、ヘリの爆音!?
一体何事かと思って外を見てみたら、一機のヘリが学園艦に着艦する所だったけど、あのヘリは黒森峰の物じゃない――アレはロシアと言う
かソ連のヘリだし、機体にはプラウダの校章が刻印されていたからね。

だとしたらプラウダの生徒が来たのは間違い無いけど、一体何が目的で黒森峰にやって来たんだろう?
まさかとは思うけど、あの試合のお礼参りじゃないよね?



「流石に其れは無いでしょ?
 確かに試合は黒森峰が勝ったけど、それ以上にプラウダのIS-2の乗員はみほ率いる遊撃隊によって救われたんだから、感謝こそされ恨ま
 れる理由はないわよ。」

「だよね?だとしたら、如何してプラウダのヘリが黒森峰に来たんだろう?」

これは、お姉ちゃんに事情を聴いた方が良いかも知れないね。



――ピンポンパンポ~ン


『緊急呼び出し。
 機甲科1年の西住みほ、逸見エリカ、赤星小梅、直下理子の4名は、至急隊長室に集合せよ。
 繰り返す。機甲科1年の西住みほ、逸見エリカ、赤星小梅、直下理子の4名は、至急隊長室に集合せよ。』



と思ってた矢先に、お姉ちゃんからの隊長室への呼び出しが!それも、この間の救出劇で川に飛び込んだ私達4人に対して。
しかも、至急って言ってるから、これは速攻で行った方が良いよね?

「エリカさん、小梅さん。」

「はい、速攻で隊長室に。ですね?」

「直下の奴ももう向かってるだろうから、適当にだべりながら、でも急いで行く事にしましょうか。」

「そうだね。適当にお喋りするだけでも楽しいから♪」

と言う訳で、寮の部屋を出て本館の隊長室へレッツゴー!
其れと、隊長室への呼び出しだと戦車道関係の事かもしれないし、さっき着艦したプラウダのヘリの事も当然あるだろうから、私服から制服に
着替えるのも忘れなかったけど。

寮の玄関で理子さんと合流し、そのまま少し早歩きで本館へ。走って息が上がった状態って言うのは、礼儀がなってないからね。
機甲科の生徒は休みとは言っても、今日は平日だから普通科の生徒は授業がある訳で、本館に到着してからは、何故か休み時間中の普通
科の人達が遠巻きにスマホで写真撮ってたり……まぁ、原因は決勝戦での事なんだろうけどね。
なんて言うか、これは少し凱旋帰国した有名スポーツ選手の気分が分かるかも……



「マッタクだな~~。これで新聞部辺りがインタビューとかして来たら、マジでその状態だし。」

「てか、写真撮るなら写真撮るで、『写真良いですか?』位は言いなさいよ……もしも、今撮ったと思われる写真がSNSにアップされてたら、肖
 像権の使用料払って貰おうかしら?」

「まぁまぁ、悪意がある訳じゃないから良いじゃないですかエリカさん?
 もしも、写真が売りに出されてたその時は、犯人を特定して確りお仕置きしてあげれば良いだけですし……みほさんの写真が校内で売買さ
 れるような事態になったら、黒森峰で一番怖い人が黙ってないでしょうし。」

「うん、お姉ちゃんは間違いなく黙ってないよ。」

速攻で回収して、売買してた人にお母さん仕込みのキッツイお仕置きを喰らわせると思うから。――子供の頃、悪戯した後に喰らった『88mm
砲弾2本背負っての廊下の雑巾がけ10往復』はキツかったなぁ。
で、写真を回収して終わりなんだろうけど、回収した写真がどうなるかは分からないんだよね……まぁ、然るべき処理をしてるから大丈夫だと
は思うんだけど。

そんな事をしてる間に、隊長室前に到着。


――コンコンッ



「西住みほ以下4名、呼び出しに応じ来ました。」

「ご苦労様、入ってくれ。」

「「「「失礼します。」」」」


ノックをして、お姉ちゃんから入室を促されて中に。
うん、隊長室の机の横には大会の優勝旗が、棚には10個目の優勝杯が飾られてて、改めて10連覇を達成したんだって実感出来るね。

室内に居たのはお姉ちゃんと近坂先輩、それと……

「プラウダのメドヴェージョワ隊長と、カチューシャ副隊長?其れにノンナさんも……
 お姉……隊長、如何してプラウダの隊長さん達が黒森峰に居るんでしょうか?」

「まぁ、彼女達がお前達4人を呼び出した理由だな。」



理由……って言うと、やっぱり決勝戦に関する事だよねぇ?
取り敢えず、敵意みたいなものは感じないからお礼参りの類ではないみたい――と言うか、そんなモノだったら、お姉ちゃんが黒森峰の隊長
として追い返してる筈だからね。

えっと、私達4人に何か……



「西住みほ、逸見エリカ、赤星小梅、直下理子……先の決勝戦での川への滑落事故の際、同志ノンナを始め、IS-2のクルー全員を助けてく
 れた事に、改めて礼を言う。
 試合後は慌ただしく、閉会式も有ったので碌に礼を言う事も出来なかったが、心の底から感謝する……ありがとう。」

「ちょ、そんな礼だなんて!私達は当然の事をしただけですから!!」

「みほの言う通りですよメドヴェージョワ隊長。
 私達はやるべき事をやっただけ……如何に決勝戦の相手だろうと、命の危機を助けない理由はない――でしょう?」

「だとしてもお礼を言わせて。
 ノンナが落ちた時、カチューシャは頭が真っ白になって何も出来なかった……でも、貴女達は直ぐに行動を開始して、自分達の仲間だけじゃ
 なく、ノンナ達の事も助けてくれた……感謝しても、しきれないのよ。」



要件は、如何やら決勝戦のあの事故の時に、ノンナさん達を助けた事に対するお礼を言いに来たって事みたいだね?
お礼なんていいのに……でも、態々黒森峰までお礼を言いに来てくれたのは、正直言って嬉しいかな?――少なくとも、私のした事は間違い
じゃなかったって思う事が出来るから。

「ならば、その感謝は有り難く受け取っておきます、メドヴェージョワ隊長、カチューシャ副隊長。」

「みほさん、逸見さん、赤星さん、直下さん、私からも改めてお礼を言わせてください。
 貴女達が助けてくれなければ、私を含めIS-2に乗っていた者達は、濁流に呑み込まれ、戦車を棺にしていた事でしょう……正に貴女達は、
 命の恩人と言える存在です――Спасибо.(ありがとう。)」



ノンナさんも……いえ、本当に助ける事が出来て良かったです。
所でノンナさん以外のIS-2の搭乗員の人達は来てないんですか?――まさか、実はあの事故で大怪我を負って入院とかしてるんじゃないで
すよね!?



「そうじゃないわ……単純にノンナ以外の4人は風邪でダウンしたのよ。
 マッタク、身体を冷やさないようにしておけって言ったのに、普段寒い所に居るもんだから平気だって油断して、案の定ノンナ以外は全員39
 ℃の高熱出して寝込んでるんだから笑えないわよ。」

「39度って高いよなぁ……大丈夫なんですか、その人達?」

「風邪をこじらせて肺炎とかには……」

「あぁ、其れについては大丈夫だ。
 4人ともちゃんと医者にかからせたし、薬も貰って、隊長命令で『絶対安静』を言い渡してあるからね。序に、看病の為に保険科の生徒数人
 に看病を依頼してあるから問題ない。」

「なら安心しました。」

もしも大怪我で入院とかだったら、下手すれば戦車道の選手生命に係わりますからね。
なら、プラウダに帰ったら風邪でダウンした人達にも伝えておいてください。『西住みほ、逸見エリカ、赤星小梅、直下理子の4人は、貴女達が
無事でよかったと言っていた』と。



「分かった、伝えておこう。
 其れと、これはホンの少しだが、感謝の品と言う所だ……受け取ってくれ。」

「プラウダ特製のロシアケーキよ!スッゴク美味しいんだから、食べて驚きなさい!!」



えぇ!?感謝の言葉だけじゃなくて、お礼の品って……此れは如何したらいいの!?
私だけじゃなくて、エリカさん達まで困ってるんだけど……如何すべきでしょうか西住隊長?



「お前も西住だがな。……お前は如何すべきと思う?」

「質問に質問で返さないで欲しいかなぁと、遊撃隊の隊長としては思うのですが如何でしょう?」

「そう来たか……ならば、お母様が同じような状況に置かれたらどうするかを考えれば良いさ。」



お母さんが?
お母さんだったら……うん、受け取るだろうね。但し、只受け取るだけじゃなくて、相手の闘志に火を点ける様な事を言うんだろうけど。
と言う事は――

「分かりました、有り難く頂きます。後で、エリカさん達と一緒に紅茶でも淹れて楽しませて貰う事にします。
 ――でも、礼の品も有難いですけど、私としては其れよりも、もう一度貴女達と戦車道で戦いたい……可能ならばフィールドも天気も最高の
 状態で。
 そして、その試合での勝利を、真の礼とさせて欲しいです。」

「おぉっと、言うじゃないみほ?
 確かに、フィールドコンディションも天気も万全の状態で、貴女達に勝つ事こそが最高の礼になるわね?」

「機会があれば、また試合をしたいです。」

「ま、次にやっても勝つのはアタシ等だけどさ。」



お母さん風に返してみたら、エリカさん達も乗って来てくれたね。
其れを聞いたメドヴェージョワ隊長は不敵な笑みを浮かべ、カチューシャ副隊長はちょっとほっぺを膨らまして、ノンナさんは薄く笑ってる。
私達の意図には、多分気付いてるんだろうね。



「Понимаю.(成程。)万全の状況で私達に勝ってこそ、君達は真の勝者となる……確かに、最高の礼になるだろう。
 だが、その時は此方とて華を持たせはしないから覚悟しておく事だ……君達に勝ってこそ、礼と言えるのだからね。」

「助けられたお礼は、貴女達を倒す事で返す事が出来るようです……その機会が訪れる事を待っています。」

「大会では負けたけど、次に戦う時はカチューシャ達が勝つんだから、覚悟してなさい!!
 でもって、カチューシャ達がアンタ達を倒すまで絶対に誰にも負けるんじゃないわよ!最強の黒森峰を倒さないと意味ないんだからね!!」



はい、言われずとも其の心算ですよカチューシャ副隊長。
何時になるかは分からないですけど、次の試合の時も、全力で戦いましょう!――そして、その時が来るまで私達は誰にも負けないって約束
します!!



「……普通なら傲慢だと言う所だが、君なら其れを成してしまうのだろうね。
 まほ、良い妹と隊員達を持ったね……彼女達が居れば、来年以降の黒森峰も安泰だろう?」

「自慢の妹と、隊員達なのでね。……お前こそ、カチューシャにノンナと、隊員には恵まれているだろう?――今年は黒森峰が勝ったが、来年
 の大会がどうなるかは分からんよ。
 来年は、ダージリンにケイ、ミカにカチューシャが各校の隊長となるのだからね。」

「ふ……確かに、其れを考えるとどうなるかは分からんか……私は其れを見届ける事は出来んがな。
 ともあれ、私達の目的は果たしたので、そろそろお暇させて貰うとしよう――休みの日だと言うのに、手間を取らせたね。
 出来れば私が在学中にもう一度戦いたいものだよ――ではな、До свидания!(また会おう!)」

「ミホーシャ、エリーシャ、ウメーシャ、リコーシャ!次にやる時は、カチューシャ達が勝つからね!!」


「言ってなさい。次も勝つのは私達黒森峰よ!
 なんて言っても、私達の隊長と遊撃隊隊長は、天下無敵の西住流なんだから!」

「……天下無敵と聞いて、何故かムキムキマッチョな亀仙人を思い出してしまいました……」

「何故それを思い出したし……」



なはは……小梅さんは意外と竜玉的漫画大好きだからね……だけど、次に戦う時があっても私達は負けませんよ?
黒森峰の隊長はお姉ちゃんで、副隊長は近坂先輩、そして遊撃隊の隊長が私で、遊撃隊には黒森峰の1年生の精鋭達が集まってる訳です
からね。

次の機会があったらその時は、最高の試合をしましょう!



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プラウダの隊長さん達が黒森峰を訪れてから早3日。
休日が明けた翌日から、機甲科では厳しい訓練が再開されたけど、この訓練が無いと物足りないって感じてる辺り、私も可成り西住流の戦車
道に浸かってるんだろうね。其れもどっぷりと。

まぁ、このハードな訓練を乗り切ってる1軍のスタメンは流石だと思うけどね?



「此の位の訓練を乗り切る事が出来ないんじゃ、黒森峰のスタメンは務まらないって事でしょ?……って言うか、西住流フィジカルトレーニング
 を熟した身としては、この訓練で根を上げる事は無いわよマジで。」

「中学の時に初めて体験した時には、冗談抜きで死ぬかと思いましたから……」

「まぁ、アレは確かにハードトレーニングを超えてるからね……」

尤も、其れを熟しちゃったエリカさんと小梅さんは大したモノだと思うけどね。

其れは其れとして、訓練後の更衣室で着替えてる最中なんだけど……やっぱり小梅さんは凄いと思う。――黒のブラとパンティーに、今日は
ガーターベルト装備ですよエリカさん?



「この度小梅にCEY(コントロール・エロ・ユニット)の称号を贈るわ。」

「そんな称号は要りません!!」



うん、私もいらない。
――時に、エリカさんも小梅さんも気付いてるよね?



「……はい、気付いてます――此れだけのどす黒い気配を駄々洩れにしてるとは、ちょっと驚きですけど。」

「出てきたら如何なの?アンタ達が居る事は分かってるわよ先輩のお姉さま方。」

「何か用ですか?」

私達の問いに答える形で、更衣室の外から来るわ来るわ、3年生の生徒が1人、2人、3人……総合で12人も――一体何の用でしょうか?
大体予想はつきますが……



「西住妹……1年のくせに調子に乗るなよお前!
 西住だからって姉妹揃ってデカい顔しやがって……加えてあの決勝戦、客受けする事して目立ちやがって……気に入らないんだよ!!」

「先輩が如何思おうかと勝手ですけど……気に入らないなら、如何するんです?」

「決まってんだろ……テメェを2度と戦車に乗れない様にしてやる!!序に腰巾着の逸見と赤星もな!!」



……やっぱりそうか。
上級生達の中には、1年生であるにも拘らず新設された遊撃隊の隊長を務めてる私に、良くない感情を持ってる人達が居るって言うのは、薄
々感じてたけど、まさか大会が終わってから因縁をつけてくるとはね……



「腰巾着とは言ってくれるわね先輩……だけど、3年になってもレギュラーになれなかった先輩と、遊撃隊としてスタメンになってる私達じゃ、ど
 っちが上かは言うまでもないわよね?」

「大した実力もないのに、みほさんを敵視するのはお門違いも甚だしいですよ……」



エリカさんと小梅さんの言う通りだよ。
少なくとも、私達は先輩に因縁つけられる理由はあっても、其れに付き合う義理はないから――まぁ、其れで済むとは思わないけどさ。

「エリカさん、小梅さん……やっちゃってください。」

「「Jawohl!(了解!)」」



だから、此処は少し強引だけど力で黙らさせて貰うよ!!
強引な手段だとは思うけど文句は言わせないよ先輩?――だって、最初に喧嘩を吹っ掛けて来たのは貴女達の方なんだから!!
隻腕の軍神は、刃を向けた相手には容赦しない……其れが例え同じ黒森峰の生徒であってもね。

取り敢えず覚悟は良いかな?私達は出来てる。――悪いけど、返り討ちにさせて貰うから覚悟しておいてね!!












 To Be Continued… 





キャラクター補足