Side:みほ


さて、今日は部活勧誘当日なんだけど、此れは予想していたよりも好感触って言う感じかな?
黒いティーガーⅡに乗り込んだ『黒のカリスマ』な隊長チームは去年同様のインパクトがあるのは当然だけど、今年は其れに加えて、副隊長
車としてパールホワイトに塗り直したティーガーⅠに『アイドル衣装』を纏った梓ちゃん達が搭乗して勧誘をしてくれてるから、宣伝効果は去年
の倍は間違いないよね。



「だろーな。
 黒装束のみほのカリスマ性に、アイドル衣装の梓の可愛らしさがプラスされたら、此れはもう無敵の広告塔だろマジで?――去年の倍の数
 が入部するかは分からねぇけど、最低でも3チーム分は確保できるってアタシは確信してるぜ?」

「『隻腕の軍神』の名は、戦車道関連の雑誌で戦車女子達には広まってるけど、澤も去年の大会で大分活躍した事と、今年副隊長を務めて
 る事で『軍神を継ぐ者』って話題になってるみたいだしね。」

「何よりも、去年の全国優勝の肩書はとても大きいわ!
 名門黒森峰、強豪愛和学院に続いて、王者明光大ですもの!これなら、結構な人が戦車道部に入部してくれる筈よみほさん!!」



だと良いなぁ♪
取り敢えず入部希望者は全員入部させるって言う事については、美姫さんもOKを出してくれたから、その上で、練習や訓練を行って本気で
戦車道をやりたいって言う人達を選別しないとだね。

戦車道は勝つだけが全てじゃなくて、楽しまないとなんだけど、だからと言って中途半端な心構えで臨んでいい物じゃない――他のスポーツ
武道と違って、戦車道は幾ら戦車内部が特殊なカーボンコーティングされてるとは言え、一歩間違えば一生モノの怪我を負う事になるから。

私もお姉ちゃんも、戦車道の始動が本格化する前に、お母さんから体を鍛えておけって言われて、西住流フィジカルトレーニングを熟して、お
かげで、戦車道は生半可な気持ちで臨むべきじゃないって言う事を確りと身体に刻み込んだからね。

でも、其れは其れとして、どんな子が入部して来るのが楽しみなのは否定できないかな?
梓ちゃん並みの人材は稀だけど、その上でドレだけの子が入部して来るのか、考えるだけでも楽しいよ――若しかしたら、其れなりの掘り出
しモノがあるかも知れないからね。


ふぅ、取り敢えず新入生諸君、弩の部活に入ろうか迷っているのならば、先ずは我が戦車道部においでませ!
経験者、未経験者問わず、私達は新入部員の皆さんを歓迎します――仮入部の期間を存分に使って、戦車道の素晴らしさを知って下さい。



「入部待ってまーす♪」



で、私の演説に合わせる形で梓ちゃんが、腕にぶら下げたかごからチラシを投げ飛ばした!!
OK、良い演出だよ梓ちゃん!――このパフォーマンスのお陰で、去年以上に新入生に戦車道部をアピールする事が出来たからね――後は
結果を待つだけだね♪










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer47
元気一杯の新入部員です』









そして部活勧誘会から、仮入部期間を経て1週間後――私達戦車道部の練習場所には、1年生達20人が整列してる。
如何やら宣伝効果はバッチリだったみたいだね?20人て言う事は5チーム分の人員が確保できた上に、いざと言う時の為の補充メンバーを
考えたら充分過ぎる数だよ。
校内模擬戦をやる時でも、7vs7って数が振り分けやすいからね。

其れに、集まった子達は中々に良い目をしてるよ?
梓ちゃん程のオーラを感じる子は居ないけど、其れでも戦車乗りとしては平均値をクリアしてる子が多いから、其れをどれだけ生かす事が出
来るのかは、私と美姫さんの指導次第だね。

お母さんが送ってくれた戦車もレストアが完了してるし、戦力は充分揃ったって言う感じかな。



「そんじゃあそろそろ行くか?あんまし待たせるのも1年坊達に悪いからな?」

「行きましょうみほ、先ずは隊長が確りと締めないとね。」

「まぁ、みほさんのカリスマは半端ないから、新1年生の8割5分は陥落すると思うけれどね――ホント、みほさんは上に立つ人なのよ♪」



自分では自覚無いんだけどね。
だけど、最初が肝心なのは間違いないから、此処で確り締めておかないとだよ。あ、私が隊長として挨拶するのは当然だけど、ナオミさんに
も部長として挨拶して貰うからその心算で。



「ま、そうでしょうね。
 部長と隊長が別途分かれてるなら、双方から挨拶があって然りだわ――なら、先ずは部長として私が挨拶して、其の後隊長からって感じで
 行った方が方が良いわね?」

「だね。」

さてと、倉庫の前には新入部員の皆がちゃんと整列して待っているね?
梓ちゃんやクロエちゃんが中心になって纏めてくれたんだろうなぁ。――取り敢えず、直前までは雑談してても、私達が現れたのを見て雑談
を止めたのは評価できるね。

じゃあ、先ずはナオミさんお願い。



「先ずは、我が戦車道部に正式入部してくれた事に礼を言うわ。
 仮入部の時に自己紹介したから知ってるだろうけど、明光大戦車道部部長の吉良ナオミよ――西住流フィジカルトレーニング(体験版)を、
 仮入部期間に体験しても入部してくれたって言う事は、貴女達は本気で戦車道に取り組む気が有るのだと思ってる。共に頑張りましょう。
 其れじゃあ続いて、戦車道部隊長の西住みほから挨拶を貰うわ。」



出番だね。

皆さんこんにちわ。明光大付属中学校戦車道部の隊長の西住みほです。
仮入部期間を経て、皆さんが戦車道部を選んでくれた事はとても嬉しい事だと思っています――其れだけ戦車道の魅力が皆さんに伝わった
と言う事だと思いますから。
さて、知っての通り、明光大は昨年の全国大会で優勝しています。故に、今年の大会は各校からのマークがキツク成ると思いますが、それら
を全て倒して、私達は優勝する心算で居ます。
そして、連覇する為には新たに入部してくれた貴女達の力も必要になりますから、共に頑張っていきましょう。
ですが、連覇を狙うとは言いましたが、勝つ事以上に戦車道を楽しんでください。――楽しむ事を忘れて勝利だけを求めてしまったら、それは
もうスポーツや武道ではなくなってしまいますから。

約束ですよ?



「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」



はい、良い返事だね♪
それじゃあ、私達の挨拶はここまでにして、今度は新入部員の皆に自己紹介して貰おうかな?
名前とクラスと、小学校からの経験者の子は、小学校時代にはどのポジションを担当してたのかを言ってくれると助かるかな?そっちの方が
後でチーム分けもしやすいからね。

じゃあ、私から見て列の左側の先頭の子から始めようか。



「は、はい!
 1-1の沢渡姫子(プリンセス)です。小学校時代は砲手を担当していました。宜しくお願いします!!!」



……此れは、1人目から凄いのが来ちゃったなぁ?
性格は普通っぽいけど、名前が凄すぎるよ。ナオミさんから新入部員の名簿リストを見せて貰ったけど『姫子』と書いて『プリンセス』と読むの
は、幾ら何でも無理があるって言うか、キラキラネームにしてもやり過ぎ!
まさかとは思うけど、騎士と書いて『ナイト』って読む兄弟が居たりしないよね?



騎士(ナイト)は兄です。」

「「「「マジか!!!」」」」


まさか本当に血縁者に居たとは驚きだよ……行き成りの凄いインパクトだったから、今年の子達は名前や性格にある程度のインパクトが有
る子が多いのかもね。








――自己紹介中だから、少し待ってね♪







で、恙無く自己紹介は進んで残るは1人。
それにしても、今年はキラキラネームが多過ぎだよ…『姫子(プリンセス)』に始まり『萌華(もか)』『神姫(アテナ)』『銀世界(ユキ)』と来て、は
ては『女王(クイーン)』なんて言う子も居たから、今年の新入部員は名前を覚えても、顔と名前を合致させるのは意外と難しそうな感じだよ。

さてと、此れで1年生の自己紹介も最後の1人だね。



「大阪府立浪花小学校出身の新藤歩美です。小学校時代は車長をやってました。」



新藤歩美ちゃん……経験者だけあって中々の戦車乗りのオーラを纏ってるね?
私達にはまだ及ばないけど、其れだけのオーラを纏っているっていう事は、歩美ちゃんの実力が途轍もないモノなのは間違いないと思うな。



「まぁ、車長以外のポジションも一応一通りは出来ます。」

「へぇ?戦車道って、割とポジションが専門職になるのにオールラウンダーって言うのは凄いね?――ポジションごとの役割を全部覚えるって
 言うだけでも、結構大変な事だし。」

「お褒めに預かり光栄です西住隊長。チームを全国優勝に導いた将に評価して貰えるとは思いませんでした。
 が、非常に不躾とは思いますが、私と勝負して頂けませんか西住隊長?」

「は?何言ってんだお前行き成り。
 正式入部一日目に隊長に勝負申し込むとか正気かオイ!?」

「元気が良いのは悪い事ではないけれど、其れは幾ら何でも少々失礼じゃないのかしら?不躾とは思って居るみたいだけれど……」



ふぅん?私に勝負を挑むか……良いね、そう言う元気な子は嫌いじゃないよ♪
だから、青子さんとつぼみさんも気にしなくていいから。――其れに、全国大会優勝の肩書に加えて、『西住』を名乗ってる以上、今年は若し
かしたらこういう子がいるんじゃないかとは思ってたから。

だけど、此れは私1人じゃ決められないかな?
勿論私は勝負を受ける事に対しては全面的にOKだけど、此れは完全に私闘になるから、部長から許可が下りないとやる事は出来ないよ。
で、如何しますか部長?



「分かり切ってる答えを聞く必要があるみほ?って言うか、貴女が渋ってるなら兎も角、別に構わないなら許可するしかない流れでしょ此れ。
 但し、勝負は明日よ。今日は新入部員の歓迎会をやる予定だから。」

「だね。
 そう言う訳だから、貴女との勝負は了承されたよ歩美ちゃん――で、試合形式は何がお望みかな?」

「5対5の殲滅戦で如何でしょう?」

「良いよ。
 其れじゃあ使用戦車は、互いにティーガーⅠ1輌、パンター3輌、Ⅲ突1輌で良いかな?」

「はい、それで結構です――隻腕の軍神の力、見せて頂きますよ。」



まぁ、その期待には応えようかな。
態々勝負を挑んできてくれたんだから、私の――私達の戦車道って言う物を、確りとその身で感じ取って欲しいし、その上で更に上を目指し
て欲しいって思うからね。

はい、其れじゃあこの話は此処まで!
皆倉庫の中に入って。もう歓迎会の準備は出来てるから、今日は無礼講で思いっきり楽しんで行ってね♪倉庫内の戦車も、自由に乗ってく
れて構わないから。――勿論動かすのはNGだけどね♪








――――――








Side:青子


あ~~~、騒いだ騒いだ。
アンだけ騒いだら、普通は他の部活から顰蹙買う所だけど、戦車道の部室(倉庫)は他の部活とは違って練習場所共々裏庭にあるから、ど
んだけ騒いでも文句が来る事はねぇんだよな。

今年入ってきた奴等も結構ノリのいい奴が居るから、あぁ言う宴会の場も結構楽しめたな。
んで、帰り道な訳だが――

「みほよぉ、本当に良かったのか?」

「え、何が?」



何がって、あの1年坊との勝負だよ。
アイツが強いってのは分かるんだが、口調は兎も角、アイツは絶対に自分の方がお前よりも強いって思ってるタイプだと思うぞ?言い方は悪
いが、アイツ下克上狙ってるのかもしれないぜ?



「うん、知ってる。知ってるからこそ敢えて受けたんだよ青子さん。
 私は負ける心算は毛頭ないよ?って言うか、負ける要素が何処にもないから。だけど、あの子みたいなタイプは負けた際にどうなるかは2
 つに限定されるんだよ。
 1つは敗北のショックで戦車道を止めてしまうタイプ。もう1つは、負けた悔しさをバネに私を倒そうと努力して伸びるタイプ。
 歩美ちゃんがどっちのタイプになるかは分からないけど、あの子はきっと小学校で負けなしのタイプだったと思うから敗北を知らないと思う。
 負けを知らない者の成長はいずれどこかで止まってしまうから、あの子は一度負ける事を知るべきなんだよ――其れも決定的なね。
 其れを経験して、止めるのか進むのかを選ぶのは歩美ちゃん次第だけど。」

「そう言うもんかねぇ?」

「そう言う物だよ?
 私もお姉ちゃんも、戦車道の訓練を始めた頃は、お母さんや菊代さんに数えきれない位にコテンパンにされたからねぇ?お母さんと直接戦
 う事は少なかったけど勝った記憶はないし、菊代さんとの対戦成績だと私もお姉ちゃんも勝率2割切ってるんじゃないかと思うよ?
 対戦してたのは小学生までだから、今戦ったらどうなるかは分からないけどね。」



うわお、しほさんと菊代さん半端ねぇな?
みほとまほ姐さんが勝率2割切るとは、ドンだけだあの人達……でも、そんだけ負けても戦車を止めようと思わなかったみほだからこそ説得
力があるな。

アイツが負けても潰れずに立ち上がってくるタイプだったら、間違いなく明光大にとっていい戦力になるだろうし、みほの実力を目の当たりに
したら、絶対ついて行こうと思うだろうからな。



「青子の意見に賛成ね。
 まぁ、ちょっと生意気な1年生にお灸を据えてやるのは上級生の役目だから、キッチリとその役目を果たしてやろうじゃないみほ?」

「隻腕の軍神の力、見せてあげましょう!!」

「うん、勿論その心算だよ♪」



此れは、あの1年坊にゃ悪いが、下手したら完封しちまうかもな。
アイツの方は1年全員でチームを組んでくるんだろうが、みほが出張る上に梓のチームもこっちにいる以上は如何足掻いたって負ける筈が
ねぇからな。

まぁ良いか、明日はアタシも全力でやるだけだからよ!
おまえが喧嘩を売った隻腕の軍神と、そのチーム、そして其れが操る戦車隊がドレだけの物だったかって言う事を身体で感じやがれだぜ!

なんて事を話してる間に、もうヘリポートか。
そんじゃ、また明日なみほ!――明日は、絶対勝つぞ?



「うん!全力で行こう!――それじゃあ、また明日ね♪」



応!
てかよ、今年になってから送迎のヘリが変わってねぇかそう言えば?去年までは報道機関とかも使ってるよくあるタイプのヘリだったけど、今
年から使われてるのって……



「米軍の最新輸送機オスプレイ。」

「一体何処から手に入れたのかしら?」



マジでな……まぁ、西住流は色々スゲェみたいだから今更突っ込みは不要なのかも知れねぇけどさ――今度頼んで、乗せて貰おうかな。








――――――








Side:みほ


ふぅ~~~、今日も1日お疲れ様だったかな。まぁ、此れ位は何時もの事だけどね。
菊代さんと帰りの便の中でお喋りするのは楽しいし、お母さんに今日会った事を話すのも楽しんだけど、流石に2人とも『新入部員に喧嘩売ら
れた』って言ったら驚いてたなぁ。
世間的には『鉄の女』として知られてるお母さんの驚いた顔なんて滅多に見られるモノじゃないから、スマホで写真撮っちゃったよ。お姉ちゃ
んに写メ送ったら『よくやった』って返信が来たしね。

さてと、寝る前に明日の歩美ちゃんとの試合の作戦を立てないとだね。


『や~ってやる、や~ってやる、や~ってやるぜ。』


っと、スマホに着信が。――相手は、エリカさん。
はい、もしもし、みほです。



『もしもし、今時間大丈夫?』

「うん、大丈夫だけど、如何したの?エリカさんの方から連絡して来るなんて珍しいよね?」

『そうかしら?
 まぁ、良いわ――明光大は部活で戦車道を行ってるから、今日あたりが新入部員が入って来たんじゃないかと思ってね。』




あぁ、そう言う事ね?
こっちは20人の新入部員が居るよ。黒森峰の方は如何なの?



『詳細は言えないけど、概ね平均以上の子達が入って来たとだけ言っておくわ。
 そっちは20人入ったって事だけど、目ぼしい子は居た?――流石に、去年の澤みたいな逸材は居ないとは思うんだけど……』


「流石に梓ちゃん程の子は居ないけど、元気な子は居たよ?――初日から、行き成り私に喧嘩売って来た子が居たからね。」

『……は?』



だから、初日から私に勝負を挑んで来た子が居たの。其れも5対5の殲滅戦ルールで。
其れも自分の自己紹介を済ませた直後にだよ?余りにも元気が良すぎて、思わず失笑しちゃいそうになったからね――あれ位の子が入部
してくれたのはプラスだと思うけどね。



『いやいやいや、アンタに喧嘩売るって身の程知らずにも程があるでしょその子!?
 隻腕の軍神・西住みほは今や全国区の有名人――其れこそ、戦車道に係わってる者でその名を知らないのはモグリって言うレベルよ?
 其れに喧嘩を売るって、胆が据わってると言うか向こう見ずと言うか……』


「小学生の時にお姉ちゃんに喧嘩売ったエリカさんが其れを言う?」

『其れは言わないで!
 でもまぁ、負けるんじゃないわよみほ?生意気な1年生は叩きのめして、力の差を教えてあげなさい――それが、其の子の為にもなる筈だ
 からね。』




うん、勿論。
其れは其れとして、今年の大会で戦う事を楽しみにしているよエリカさん。戦う事になったその時は、互いに全力でやろうね!!



『そうね、その舞台が決勝戦で有れば言う事はないわ。
 どうなるかはクジ次第だけど、貴女と戦う事になったその時は、持てる力の全てをもって貴女に挑ませて貰うわ――それじゃあ、大会で会
 いましょうみほ。
 Gute Nacht.Ein guter Traum.(おやすみなさい。良い夢を。)』




うん、おやすみなさい。
それにしても、態々ドイツ語でって、エリカさんて意外とカッコつけ屋さんなのかな?――其れが滅茶苦茶似合ってるから、からかう事も出来
ないんだけど。

取り敢えずは明日の試合だね――私の力、たっぷりと味わってもらうよ、歩美ちゃん。








――――――








Side:ナオミ


でもって翌日の部活、新藤との試合なんだけど……こう言っちゃ悪いけど、マッタク持ってみほの相手にはなってないわね。
殲滅戦ルールだから、真っ先に隊長車であるアイスブルーのパンターを狙って来たのは悪くないわ――殲滅戦、フラッグ戦を問わずに、隊長
車が白旗上げれば部隊は総崩れになるって言うのがお決まりだからね。

だけど、そうは行かないわ。
徹底して隊長車を狙って来たのは悪くないけど、こっちにはみほが手塩にかけて育てた澤のチームが居るから、隊長車を撃破するのは難し
いわよ?

実際に、隊長車を狙って来た車輌の内2輌が――ティーガーⅠとⅢ突が澤の乗るティーガーⅠに撃破されてる訳だしね。
更に、陣形が崩れた所でみほが攻勢に出てパンター2輌を撃破。

此れで、残るは新藤の乗る隊長車のみ。
フラッグ戦ならいざ知らず、殲滅戦で1対5の状況を引っ繰り返すのは難しいわ。

新藤は確かに強いけど、其れはあくまでも『強者』に過ぎない。
でも、みほやまほさんは其れより2段階上の『絶対強者』の領域に居るから、『強者』では敵わない――加えて、1年で強者の領域に至って、
2年目で『超強者』の域に踏みこんだ澤が居るのだから、負ける事は有り得ないわ。



「此れで決めます。ナオミさん!」

「了解。吉良ナオミ、目標を狙い撃つ!!」


――ドゴォォォォォン!!

――キュポン



『新藤チーム、全車行動不能。よって、西住チームの勝利!』



で、終わってみればみほの完封勝ちね。
どう新藤、明光大戦車道部部長の隻腕の軍神・西住みほの実力は分かって貰えたかしら?此れが、万年弱小校を優勝へと導いた指揮官の
力よ。



「……まさか、1輌も撃破出来ないなんて……凄い、此れが隻腕の軍神の力!!
 その力、感服しました西住隊長!!軍神の名は、噂に尾鰭がついたものではないと実感しました……貴女は、正に最強の戦車乗りです。」

「私は最強なんかじゃないよ――黒森峰のエリカさんと小梅さんも、私と同じ位の実力者だからね。
 だけど、私は貴女の要求に応える事が出来たかな歩美ちゃん?」

「はい!――貴女の実力を疑い、勝負を挑んだ己を恥じるばかりです。
 西住隊長、此れからよろしくご指導ご鞭撻のほど!もっともっと精進し、明光大戦車道チームの一員として恥ずかしくないように努めます!」



……って、此れはみほの圧倒的な実力を肌で感じて、完全に落ちたわね。
圧倒的な力に鼻っ柱を圧し折られてどうなるかって思ったけど、此れなら大丈夫だと思うわ――試合に参加した1年生達も、みほが相手だか
らしょうがないと思ってる感じだし。

でも、此れで懸念事項は解消されたから、此処からはチームとしてバッチリ行くわよ!
1週間後には綾南との練習試合が控えてるけど、其れにも勝って全国大会への弾みをつけて行こうじゃない?――そうでしょみほ?



「はい、綾南との練習試合に勝って勢いをつけて行きましょう!
 そして、今年の大会も優勝を目指します!!頑張りましょう!Panzer Vor!!」



Jawohl Kapitan.(了解、隊長。)
今年も優勝してやろうじゃない?――何よりも、私達にとっては中学最後の大会だから、優勝して有終の美を飾りたいって言う所だからね?

今年の大会も、精々暴れせて貰うわ!!










 To Be Continued… 





キャラクター補足



新藤歩美
明光大戦車道部の1年生。
小学校時代は負け知らずの猛者であり、入部初日にみほに戦いを挑んだ怖い物知らず。
試合其の物はみほが完封勝ちしたが、其の力を目の当たりにした事でみほの力を知り、己の小ささを知りみほに師事するようになる。
プライドが高いタイプだが、根は素直ないい子である。