Side:みほ


桜舞い散る4月のはじめ、今日から私も中学校の最高学年!
当然進級に当たってクラス替えは行われたけど、今年も隊長チームは同じクラスになれたから、中学校最後の1年もよろしくね、青子さん、ナ
オミさん、つぼみさん♪



「此れでアタシは、3年連続でみほと同じクラスだな~~♪
 ま、この面子が一緒のクラスってのは最高だから、今年も息を合わせてバッチリ行こうぜ!!」

「若しかしたら、校長先生が私達が一緒のクラスになれるように取り計らってくれたのかも知れないわね?校長先生も昔は戦車道女子だった
 らしいから、隊長チームの大切さは分かるのかもね。」

「真実は兎も角、今年もみほさんと一緒と言うのは嬉しい限りだわ!
 バッチリしっかり頑張って、今年も大会で優勝を掻っ攫っちゃいましょう!!って言うか、明光大が黒森峰に代わって絶対王者になってやる
 ってモンだわ!!!」



あはは……うん、その心算だよ私もね。
去年初優勝を飾ったけど、其れだけで満足する事は出来ないよ――今年も勝って、連覇して明光大の強さは本物だって言う事を世間に見せ
付けないと満足出来ないからね。

全力で戦車道を楽しんだ上で、優勝を狙いに行く心算だよ♪


――ピンポンパンポーン


『呼び出しをします。3-1の西住みほさん、至急職員室まで来てください。
 繰り返します。3-1の西住みほさん、至急職員室まで来てください。』




って、此処で予想外の呼び出し?
一体なんだろう?放課後の寄り道はしてるけど、その程度で職員室に呼び出される事はないだろうから、別の事なんだろうと思うけど……職
員室に呼び出されるような事したかなぁ?
……取り敢えず、行ってみない事には分からないね。










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer46
中学最高学年の始まりです』









で、やって来ました職員室。
呼び出されたのは私だけだけど『何かあった時の為に』って言う事で、青子さんとナオミさんとつぼみさんも一緒に来てくれた――此の友情に
は感謝感激だよ。


――コンコン


「3-1の西住みほです。」

「同じく吉良ナオミ。」

「続いて野薔薇つぼみ。」

「最後に辛唐青子。アタシ等はみほが心配だからくっついて来た♪」

「え~~と、そう言う事で西住みほ以下4名来ましたが、入ってもよろしいでしょうか?」

「あぁ、西住さんか……うん、他の子達も一緒に入って来てちょうだい。」



失礼します。……って、此れは一体何がどうなってるんですか?
校長先生が居るのは良いとして、学年主任の先生と、蝶野教官と同じ位の年頃の女性教諭が何やら言い争ってるみたいなんですけど……

あのぉ、一体何が原因でこうなったんですか?って言うか、何で私は呼ばれたんですか!?



「うん、あの若い子は今年此方に赴任して来たのだけれど、部活の顧問決める会議で戦車道部の新顧問を決める段階になって途端に『私が
 やります』って言い出してね。」

「ナオミ、お前戦車道部の顧問の顔知ってたか?」

「知らないわ。見た事ないし。」

「って言うか去年も一昨年も、練習はおろか大会の会場でも見なかったわよ?……居たのですか、顧問の先生。」

「居たわ――と言っても、部活の時間は自分の仕事の整理に当ててたから会った事は無いと思うけれど。
 だけど、前の顧問は今年の異動で別の学校に移ったから、形だけでも新顧問をと思ったら彼女がね?
 いや、別に彼女でも良いのだけれど、教頭先生が『全国大会優勝チームを新人に任せる事は出来ない』って言ってこの状況。」



へ~~~……で、だからってなんで私が職員室に呼び出される事になったのでしょうか?
部活動の顧問を決めるって言う事なら、其れこそ校長先生の鶴の一声で決める事が出来るんじゃないでしょうか?……話を聞く限り、今まで
戦車道部の顧問は名ばかりだったので、誰がなっても活動に支障はないと思いますから。



「私もそう思ったのだけれど、彼女は『私は経験者であり、戦車道教官の免許も持ってる』って言う事でね?
 それで、隊長である西住さんに実際に会って貰って、彼女が戦車道部の顧問に向いているかどうかを見極めて貰おうと思ったのよ。彼女が
 本当に経験者であるかどうかは、現役の西住さんには分かるでしょう?」

「其れは現役とか関係なく、本気で戦車道に取り組んだ事がある人なら分かると思いますよ校長先生。
 ……でも、そうですね?経験者であるのは間違いないし、教官免許を持っているって言うのも嘘ではないと思います。あの人からは、私が
 車長専任免許を取る時にお世話になった蝶野亜美教官と似たような匂いを感じますから。」

「成程ね?
 はい、教頭先生も不知火先生も其処までです。西住さん以下、戦車道部の隊長チームが来てくれました。後は、彼女達の判断に任せるとし
 ましょう。」



って、此処で丸投げですか校長先生!?
部活動の顧問を部員が決めるなんて言う話は聞いた事が無いけど、このフリーダムさはある意味で明光大の特色なのかな?……少なくとも
黒森峰だったら絶対にあり得ない事だと思うからね。

でも、此れは責任重大だよ?
幾ら経験者で教官免許を持ってるとは言え、自分の戦い方を押し付けて来るような人だったら絶対にお断りだよ――明光大の戦車道は型に
捕らわれない無形が持ち味だからね。

先ずは――



「西住?……って、貴女は!!みほちゃ~~~~~~~~ん!!!」



――グワバ!!



って、はい!?
な、何で私は件の先生に抱き付かれてるの!?ちょっと……って言うか滅茶苦茶理解が追い付かないんですけど、此れは一体如何言う事
なんですか~~~!?



オイこら、みほを放せ!盛大に困ってんだろうが!!」

「と言うか、普通生徒に行き成り抱き付く?

 同性だから兎も角、貴女が男性教諭だったら、間違いなく『淫行』と認定されて教師生命断たれてるのは間違い無いと思うわよ?絶対に。」

「何て言うアクティブな先生……此れなら、戦車道部の顧問でも良いかも知れないけれど――って言うか、みほさんの知り合いなの?」



し、知りませんよつぼみさん!
すみません放してください!って言うか、貴女は一体誰なんですか?私の事を知ってるみたいですけど、私は貴女の事を全く全然知らないん
ですけど?



「え?若しかして忘れられちゃってる?
 ……あ~~~~、でも仕方ないか、最後に会ったのは10年も前の話だからねぇ。
 なら改めて自己紹介するわみほちゃん。私は不知火美姫。今年から明光大に赴任した教師で、教師になる前は西住流の門弟だったわ。」

「「「「なんだってーーーー!?」」」」


隊長チーム驚愕です!いや、此処に戦車道部のメンバーが居たら間違いなく驚いてますよ!?
西住流の門弟だったって事は、つまりお母さんの弟子な訳で……だから、蝶野教官と同じ匂いを感じ取ったんだ――となれば、戦車乗りとし
ての能力は疑う余地もない位に抜群なのは間違いないよ。

でもって思い出した。
不知火美姫さんは、当時師範になったばかりのお母さんの下でメキメキ頭角を現した凄い戦車乗りの人だよ!――お母さんが言うには『私
が育てた戦車乗りの中では亜美と美姫が最強クラスでしょうね』って言ってたから実力は折り紙付きだよ!

「思い出しました、お久しぶりです不知火さん。」

「あ、思い出してくれた?其れは良かったわ~~~。――貴女が思い出してくれなかったら、このバーコードと不毛な舌戦を続ける事になって
 たかも知れないらね。」

「いや、一教師が教頭に向かって面と向かってバーコードって如何かと思うんだけど……」



まぁ、流石に其れは如何かと思うようん。
多くの生徒が『校長先生不在時の代理以外に何の仕事してんの?』って思われてる教頭先生だけど、一応は学校のナンバー2なんだから。



「其れもそうね、口が過ぎました教頭先生。
 でも、此れで私が経験者で教官免許持ってるって事は信じて貰えましたよね?
 其れに、天下の西住流の門弟であり、現師範が太鼓判を押して下さる私以外に戦車道部の顧問を務められる方がいますでしょうか?」

「む……其れを言われるといない。
 我が校の教師で戦車道経験者は校長先生のみであるからな……仕方ない、戦車道部の顧問は君に任せるとしよう不知火美姫先生。」

「はぁい、お任せあれ♪」



……多分、って言うか絶対にこんな形で部活動の顧問が決まるなんて全国初だと思うなぁ。
でも、不知火さんが顧問なら安心かな?実力は蝶野教官と同等クラスだった訳だし、『お母さんの西住流』を習ったなら、自分の理想を押し付
ける様な事はしないだろうから。

「それじゃあ、顧問の先生をお願いします不知火さん。」

「はい、任せといて♪
 とは言っても、去年までの話を聞く限り、隊員の皆で練習が巧く行ってるみたいだから、練習に関してはあんまり口を出さずに、練習試合を
 組んだりとかが仕事になると思うけれどね。」



其れだけでも充分です。
そうじゃなかったら、そっちの方まで部長のナオミさんがやる事になっちゃって、負担が凄い事になっちゃいますから。――そう言う意味でも、
ちゃんとした顧問の先生が居るって言うのは有り難い事だよ♪

それにしても、まさか顧問の先生を決める為に呼び出されるとは思ってなかったからびっくりしたね。



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と言う訳で時は進んで放課後。
今日の部活は全国大会に向けての練習――じゃなくて、3日後の部活勧誘を如何やるかと、お母さんがこっちに寄越してくれた戦車の詳細
を皆に伝える、いわばミーティングだね。

「さて、全国大会で優勝した以上、今年は去年とは違って、出場校は完全に明光大をマークして来る事になると思います。
 其れを考えると今年の大会は去年以上に激しい戦いになるのは確実であり、私達もレベルアップをしなければならないし、戦車道部の部員
 も増やさないといけません。
 部員勧誘の件に関しては後で話し合いますが、まず最初に、去年話した西住流師範が明光大に戦車を譲ってくれると言う話ですが、譲って
 くれる戦車は全部で4輌。
 ティーガーⅠの前期型が1輌と、パンターG型が3輌になります。――明日には此方に船での輸送が完了すると言う事なので、其処から直
 に東雲工場に運んでもらおうと思ってるんですが、大丈夫ですか椿姫さん?」

「ん、問題なし。
 親父には既に話通してあるから何時来ても大丈夫。って言うか、親父ッてば『俺に戦車を整備させろ、おんだりゃぁぁ!』って絶叫してたから
 ね……多分、3日もあれば普通に使える物になってると思うわ。」



其れは心強いです。東雲工場の整備技術は折り紙付きですので。
只、『此れを送るわ』って見せられた時の感じだと、大きな破損は無いにしてもターレットリングや転輪が大分錆び付いていたので整備するの
は一苦労だと思うけどね――其れでも、きっと何とかしちゃうんだろうけど。

だけどティーガーⅠとパンターの追加は嬉しいかな?
此れでティーガーⅠが3輌になったし、試合に出す中戦車を全て最強のパンターにする事が出来るからね?
攻守に長けたティーガーと、圧倒的な総合力の高さを誇るパンター、待ち伏せに適していて強力な主砲を搭載したⅢ突の組み合わせは、戦
力的にもバランス的にも可成良いから。

自走砲の総合性能で言うなら、装甲厚と主砲の威力で勝るヤークトパンターが最強なんだけど、Ⅲ突には極端に低い車高って言う待ち伏せ
に適した利点と、ヤークトパンターよりも足回りが強いって言う利点があるから、私の戦い方にはⅢ突の方が合ってる。
だから、今年の明光大は去年よりも強いよ?
ティーガーにパンターにⅢ突、此れだけの戦力があるなら負ける気はマッタクしないし、場合によってはⅢ号にも出て貰う事があるから、戦車
を切り替えて戦う事も出来るからね。

だけど、其れも部員が潤沢でないと出来ない事だから、3日後の部活勧誘は重要だね?
去年は隊長チームが黒のティーガーⅡに搭乗して、全員が黒のカリスマ的衣装を纏って大々的にやった事で部員を確保する事が出来た訳
だけど、今年は如何行こうか?



「今年も、去年と同じで良いんじゃね?
 アタシ等の黒衣装は、去年の文化祭でも披露したから割と知られてるし、黒衣のみほはカリスマ感が大幅にアップしてっから、去年の澤み
 たいに陥落する生徒は少なくねぇって。」

「まぁ、そう来るとは思ったけどね?
 だけど、去年と同じだと面白くないから、今年は副隊長チームも一緒に来てもらおうかな?」

「へ?其れって、私達がですか!?」



うん。そうだよ梓ちゃん。
隊長チームと副隊長チームが一緒に部活勧誘を行えば、結構なインパクトになると思うんだ?――其れに、梓ちゃんと一緒に部活勧誘する
って言うのは、私としても楽しみだからね。
やってくれるよね梓ちゃん?



「はい!御使命とあらば、その任務務めさせて頂きます!」

「うん、良い返事♪頼りにしてるよ。」

で、当日の衣装なんだけど、私達は去年のアレで良いとして、梓ちゃん達は黒い衣装よりもアイドル的な衣装の方が似合うかもだね?って言
うか絶対にそっちの方が似合う。

青子さん、ネットでその手の衣装を手配する事って出来ますか?
出来れば、派手過ぎないで、それでいて梓ちゃん達の魅力を引き出す事が出来る衣装があると最高なんですけど……



「ん、問題ねぇよ。
 Amaz○nで探せばその辺の衣装もあるだろうし、購入費は部費で落とす事が出来っからな――寮に帰ったら、速攻で商品検索して、翌日
 配送希望で注文してやるから安心しろよ♪」

「其れは、安心ですね♪」

青子さんはこう言った面での彼是が凄いから、とっても頼りになるんだよね。
そんな訳で、今年の部活勧誘は、隊長チームが去年と同じ黒い衣装を纏って黒いティーガーⅡに、そして梓ちゃん達副隊長チームが、アイド
ル風の衣装を纏ってティーガーⅠに乗って行う事が決定!

最低でも2チーム分は欲しい所だから、此れは3日後は頑張らないとだね♪








――――――








Side:エリカ


ふぅ、新年度が始まったばかりだって言うのに、鬼のような忙しさね?……まさか、これ程までの量の書類を処理する事になるとは思っても居
なかったわ。

まぁ、この書類処理も戦車道にとっては必要な事だから確りとやらないとなんだけどね。
機甲科に入ってくる生徒は結構多いみたいだけど、今の所此れと言った子は居ないのよね……流石に黒森峰に進学して来ただけあって実
力は確かだけど、みほ――は言い過ぎにしても、澤にも及ばない子が大半ね?小梅、目ぼしい子は居た?



「特にこれって言う子は居ませんねえぇ?
 実力は可成りなモノですけれど、去年のツェスカの様な子は居ないと言うのが正直な所ですね……個々の能力はそれなりみたいですが。」



ソコソコの力か…其れを大会までにどれだけ伸ばす事が出来るのかは私にかかってると言う訳ね?――上等、やってやろうじゃない!!

あの子が、みほが素人集団であった明光大を全国優勝にまで持っていく事が出来たんだから、経験者が集う黒森峰に於いて、新体制であっ
て上手くやれない道理はないわ。

取り敢えずは全員機甲科への入学を認めるわ。
どうしても戦車道に向かない子が居たら、そう言った子は機甲科の整備班に回ってもらう事になるだろうけど、戦車道と完全に切れる訳じゃ
ないから、どんな形で戦車と関わって行くかを考える事は出来るからね。

何にしても、新しく入って来る子達を徹底的に鍛えて、黒森峰に名を連ねるに恥じない実力を備えさせないとだわ――そうでなかったら、あの
子に、みほに勝つ事は絶対に出来ないでしょうからね。

ふふ、精々待ってなさいみほ。
此の子達を大会までに鍛え上げて、最高の力を持って貴女に挑ませて貰うわ!――そしてその上で、貴女を倒して黒森峰に真紅の優勝旗
を持ち帰って見せる!それが、まほさんとの約束だからね。


大会で相まみえる時を楽しみにしているわよ、みほ!!











 To Be Continued… 





キャラクター補足



不知火美姫
明光大付属中学校に新たに赴任して来た教師で、嘗ては西住流の門弟だった人物。
幼い頃の西住姉妹とは交流があり、その時の縁がモノを言って、明光大の戦車道部の顧問となる。
戦車乗りの実力としては、蝶野亜美と実力を二分にしていたと言う事から相当な腕前である事は間違いないだろう。
因みに可成りの子供好きであり、教員免許の他に、保育士免許を取得して、幼稚園の先生をする事が出来るように備えていたりする。