Side:エリカ


敵フラッグ車自ら出張って来たって言う事を考えると、普通ならこちらを低く見てか、或は破れかぶれの突撃の二択なんだけど、あの子は…西
住みほに限ってはその限りじゃないわ。

間違いなく『勝つ為』に、私達遊撃隊を落としに来た事は間違いないでしょうね?
ティーガーⅠを1輌失った事で、私達を無視できない存在として、隊長自ら討ちに来たという所でしょうけど、其れは願ってもない事だわ――少
なくとも私にとっては!!

正直な事を言うなら、あの敗戦の日からずっと『もう一度戦いたい』と思っていた――小学校時代の雪辱を、今此処で果たさせて貰うわ!!

「赤星、行ける?」

「バッチリですよ、逸見さん♪」



なら是非もないわね……西住みほを討つわよ!!
彼女の車輌がフラッグ車だから、アレを撃破すればその時点で私達の、黒森峰の勝ちが確定するんだからね。
とは言え、相手が相手だけに此れは決して簡単な戦いではないわ……一歩間違えば、私と赤星の両方が撃破されるかもしれないのだから。

隊長の妹である彼女――西住みほは確かに強いわ……其れこそ、戦い様によっては隊長をも凌駕するだけの力があるのは間違いない。

だからこそ、此処で負ける訳には行かないのよ!!いや、絶対に勝つ!勝ってみせる!!
西住みほ……貴女にだけは絶対にね!!!











ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer15
『準決勝、白熱しまくってます!』











とは言え、西住みほが相手と言うのは、矢張り生易しい物でないのは確かよね?ハッキリ言って、あの子は他の同年代の子とは、格が違うわ。
1・2回戦の戦いを見る限り、あの子は小学校の時よりも格段に強くなってるもの。

勿論、私も黒森峰に入学して、あの頃よりも強くなったけれど、今の私じゃ小梅と2人で挑んで、漸く互角と言うレベルでしょうね。悔しいけれど。
加えて、1輌だけじゃなくて、Ⅲ突をお供に連れて来てるから余計にやり辛いわ……Ⅲ突の主砲なら、パンターの装甲を抜けるんですもの。

さて、如何したものかしらね?

「何にしても、油断だけはしちゃダメよ赤星?
 隊長が『最強の指揮官』と言うなら、妹の方は『無敵の軍神』と言っても過言じゃないし、もっと言わせて貰えば『化け物』でも過言じゃないわ。
 隊長と戦う位の気持ちで居ないと、最悪瞬殺されるわ。」

「だとしても『化け物』は如何かと思いますよ、逸見さん?」

「だって、微妙に事実よ?」



『誰が化け物ですか、誰が!!!』

「「!!?」」


今のは拡声器での声!?しかもこの声は、西住みほ!?
まさかとは思うけど、今の会話が聞こえてたとでも言うの!?……有り得ないわよ幾ら何でも!!
互いに目視できる距離ではあるけど、距離は目測で100m以上あるから、こっちの会話なんて聞こえる筈がないのに、なんで今の会話の内容
を把握できるのよ!?



『疑問に思ってますね?……読唇術です!!』

「はぁ!?にしたって、この距離で双眼鏡も使わずに、口の動きを見る事なんて出来ないでしょうに!!」

『此れが西住流!』

「意味が分からない!!」

『因みに、やろうと思えば、お姉ちゃんもおなじ事が出来ますよ~~?』

「嘘でしょう!?」

あ、でも否定できないかもしれないわね?
訓練の時に、何度か『その距離で見えてるんですか隊長』って思った事もあったし……西住の人間は、身体機能も一般人とは異なる次元に達
するのかもしれないわね。



『本当です……と、余計な事を言いすぎましたね。
 私達にとって、貴女達遊撃隊は厄介な存在なので、此処で撃破させて貰います――覚悟は良いですね、逸見さん、赤星さん?』



この……態々拡声器使って宣戦布告して来るとか、良い趣味してるじゃない西住みほ!!
貴女に言われるまでもなく、私も赤星もとっくに覚悟なんて出来てるわ!!――其れこそ、勝利の為に必要だって言うなら、喜んで捨て駒にだ
ってなる覚悟があるわよ!!

貴女を撃破して、勝利をこの手にして見せる――勝負よ、西住みほ!!








――――――








No Side


みほが、エリカと小梅の遊撃隊と交戦を開始したのと、略時を同じくして、まほ率いる黒森峰の本隊は、明光大付属の本隊に追い付いていた。
履帯を切られたとは言え、其処は王者黒森峰。隊員の戦車修復技術でも、他の学校を上回る水準である為、基準とされている履帯修復タイム
を大きく上回った上で修理を完了して、極めて短いタイムロスで追撃が出来たのだ。


「(敵部隊を捕捉したが、ブルーのパンターが居ない?……別行動を取っているというのか?
  フラッグ戦に於いて、フラッグ車が本隊から離れての独自行動と言うのはあまり考えられないが……みほならば、簡単に其れを選ぶか。
  恐らくはエリカたちを倒しに行ったのだろうが……だが、逆に此れは好機かも知れんな。)」


それでも、捕捉した相手にアイスブルーのパンターが居ない事で、まほは即座に状況を判断する――この辺りの状況判断能力の高さは、流石
は王者黒森峰で隊を指揮するだけの事はあるだろう。

或は、姉としてみほの事を知っているからかもしれないが……だが、まほはみほが不在の本隊を相手に、此れは好機と考えていた。
其れは決して間違いではない。

此の準決勝に於いて、明光大付属は隊長車がフラッグ車なのだ。
そのフラッグ車が居ないという事は、明光大の本隊には明確な指揮官が存在していない状態であるとも言える――つまりは、指揮系統が最悪
な状態であると考えられるのである。

確かに其れは間違いではない。否、限りなく正解に近い考えだろう。
だがしかし、みほが隊長を務める明光大付属に限っては、通常の正答が正答とは限らないのである。



――スドォォォォン!!

――パシュ!




『黒森峰、ヤークトパンター、行動不能。』



其れを証明するかのように、黒森峰のヤークトパンター1輌が撃破された――明光大戦車道部の部長である近坂凛が搭乗するティーガーⅠに
よってだ。


「(……如何にティーガーⅠとは言え、こうも簡単に撃破するとは――!しかも、最も装甲の薄い部分を的確に狙ってくるとはトンでもないな。
  いや――其れ以前に、彼女は1・2回戦でフィニッシャーとなった子だったじゃないか……侮って良い相手ではなかった。少し慢心したか。)」


此処にきて、まほは凛の能力の高さを思い知った。
みほの陰に隠れていたから気付かなかったが、思い起こせば1・2回戦でフィニッシャーとなったのは、凛の乗るティーガーⅠだったのである。
無論それは、みほの指示があったからだと言えるかもしれないが、連続でフィニッシャーになっているという事は、みほが凛の乗るティーガーⅠ
に、絶対的な信頼を寄せている証とも言えるだろう。
信頼しているからこそ、フィニッシャーを任せることが出来るのだから。


「西住が戻って来るまで、部隊を任されたものだから、そう簡単には負けないわ――たとえ相手が、最強の王者である黒森峰であってもね!」

「ならば、楽しませて貰おうか?」


すれ違いざまに放たれた僅かなセリフ――だが、此れだけでも互いの思いを伝えるには充分だろう。


「気合入れなさいアンタ達!!西住が戻るまで、何としても耐えきるわよ!!」

「「「「「「はい!!」」」」」」


「向こうのフラッグ車が本隊と合流するまでに、可能な限り相手の戦力を削ぐ!王者の力と言うモノを、連中に思い知らせてやれ!」

「「「「「「了解!!」」」」」」


かくして、隊長不在の明光大を一気に叩こうと言う黒森峰と、隊長が戻って来るまで耐える明光大との、両軍入り乱れての戦車戦が開始!!
構図的には、攻める黒森峰と守る明光大であり、此れだけ見れば黒森峰が圧倒的に有利なのは火を見るよりも明らかだろう。
言うまでもないが、黒森峰は徹底して相手を正面から『押し潰す』戦いを得意としており、本格的に攻勢に出た場合は重戦車主体の圧倒的な火
力が、瞬く間に相手の部隊を壊滅させてしまう。

実際に観客の多くは、黒森峰が攻勢に出た事で『決着がついた』と思ったのだが――しかし、そうはならなかった。

確かに攻めているのは黒森峰だが、であるにも拘らず明光大の戦車は未だ撃破されていないのだ。
無被弾と言う訳ではないが、兎に角直撃を喰らわないように動き、黒森峰自慢の大火力攻撃をものの見事に凌いでいる……が、此れは一つ
は戦車の性能もあるだろう。
明光大の戦車は、2輌のティーガーⅠを除けば、残りは中戦車と中戦車クラスの自走砲であるが、それ故に機動力だけは黒森峰に勝る。
強大な火力も直撃しなければ怖くない。足回りの良さを生かしながら、回避と反撃を行っているのである。

そしてもう一つの要因として、普段の訓練の中で行われている『校内紅白戦』がある。
文字通り実戦形式の訓練だが、この訓練の際にみほと別チームになった隊員はハッキリ言って地獄に叩き落されたと言っても過言ではない。
味方なら頼もしいが、敵に回ると誰よりも恐ろしいのがみほであり、みほ率いるパンターブルーなのだ。
的確な指示に、普通では考えられない様な軌道、恐ろしいまでの装填速度に正確無比な砲撃……一瞬でも気を抜いたら即撃破されてしまうが
故に、パンターブルーを相手に回したチームは、少しでも生き残ろうと動き回り、結果として回避能力が向上して行ったという訳だ。


「強いし、正確な砲撃だけど……」

「隊長の青パンターの化け物ぶりに比べたら……」

「何て事ないのよ、おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「よし、よく言ったわ貴女達!!!」


だから直撃は喰らわない。
黒森峰の精鋭の砲撃を搔い潜りながら反撃をし、兎に角フラッグ車が戻って来るまで耐えようと必死に、全力で格上の相手とぶつかって行く。
其れは、弱小校の大健闘を超える戦いぶりであると言えるだろう。


「よもやこれ程とは驚いたが、一体みほはドレだけ厳しい訓練をしているというのだ?……お姉ちゃん、ちょっと心配になって来たぞ。」


その明光大の奮闘ぶりに、まほはみほが凄まじく厳しい訓練をしているのではないかと勝手に想像して、勝手に心配になっていたのであった。








――――――








激しい戦車戦を展開している本隊とは別に、明光大の別動隊と黒森峰の遊撃隊の戦いも、本隊の戦車戦に引けを取らない激烈なものとなって
いる……いや、激しさだけならば、此方の方が上かも知れない。

サンドイエローのパンター2輌を相手に、1輌で互角以上に戦っているアイスブルーのパンター。
そして、そのアイスブルーのパンターを援護するオキサイドレッドのⅢ突――計4輌の戦車による戦いは、極めて激しい物になっていたのだ。


「く……流石ね西住みほ!!」

「こっちは2輌なのに、其れが全然アドバンテージにならないなんて……凄すぎますよみほさんは――!」


しかし実際の所、サンドイエローのパンター――黒森峰の遊撃隊を務めている、エリカと小梅は結構一杯一杯だった。
エリカと小梅は、今年の黒森峰の新入生の中でも特出しており、それだけにまほに目をかけて貰って徹底的に鍛えられた……故に、1年生で
あるにも拘らずレギュラーになったのだが、その2人の力を合わせてもみほには苦戦を強いられていたのだ。

それでも、みほが単騎で乗り込んで来たのならば未だ楽だっただろうが、お供のⅢ突が厄介だった。
殆ど動かずに、支援的な砲撃をしているにすぎないのだが、その砲撃がエリカと小梅にとっては邪魔以外の何物でもない――かといって、撃破
する事も出来ないのだ。

否、撃破する事は難しくないが、Ⅲ突に意識を向けたら、その瞬間にみほのパンターに撃破されるのは目に見えている故にⅢ突に意識を向け
る事など出来ないのである。



「逸見さんと赤星さん、お姉ちゃんが期待の新人だって言ってただけあって強いなぁ……此れは、楽しくなって来たよ。」


そんなエリカと小梅の心情など知らずに、逆にみほはこの戦いに充実感を感じていた。
みほ自身は自覚がないだろうが、西住みほと言う人間は、戦車乗りとしては破格の能力を有しているのだが、それ故に同年代には同じ位の能
力を持つ者が殆ど居ない――ともすれば0と言っても過言ではないだろう。

実際に、校内紅白戦や練習試合、そして1・2回戦に於いて、みほ以上の能力を持つ者は存在しなかった。
だからこそ、みほは無意識のうちに『退屈』していたのだが、そんな中で出会ったエリカと小梅に、みほは久しぶりに気分が高揚していたのだ。

同時にそれは歓喜でもあった――同世代のライバルを得る事が出来たという事に対しての。
自分が率いるパンターブルーのクルーは何れも超が付くほど優秀であるから、いざ戦えば楽しめるだろうが、同じ学校であり同じチームでは、そ
れは叶わない事だからと、諦めていた。

だが、準決勝の舞台で自分と互角に渡り合える相手と出会ったのだから、此れは喜ぶ以外にはないだろう。
エリカと小梅は、みほが全力を出さねばならない位の相手であったのだから――尤も、2輌で挑んで互角という事を考えれば、個々の能力では
みほの方が上回っているのだが。

それでも、同程度の実力を持った相手と言うのは、みほにとっては有り難い物であったのだ。


だからこそ、手加減なしで、全力を持ってして相手をするのだ。
己の持てる力の全てを出して、みほはエリカと小梅と戦う――その戦いは、苛烈であり激烈であるが、しかし同時にとても美しくもある。

当然だ、互いに全力を出しているのだから。その戦いに、闘気と言う名の美しさが備わるのは当然の事であるのだ。
だがしかし、この戦いは、突如としてその幕切れを迎える事になる。



――ズドォォォォォン!!!


――ガクン……!!



「!?」


激しい戦車戦の最中、Ⅲ突の放った砲撃が、小梅のパンターの足元に着弾し、その姿勢を大きく崩させたのだ。
如何に足回りの良いパンターと言えど、足場が崩されてはどうしようもなく、Ⅲ突の砲撃で崩された地面に足を取られて動く事が出来なくなった
のである。

勿論、Ⅲ突は狙ってやった訳ではないが、それが結果として小梅の動きを封じるに至ったのだから、受勲モノの働きであったと言えるだろう。
そして、動きを止めた相手を見過ごすようなみほではない。


「頂きます!!」

「!!」


即座に小梅のパンターの側面に移動して、主砲一発!!!!



――パシュン!!



其れは効果抜群であり、小梅のパンターから白旗が上がる。
見事な撃破だが、此れはエリカからしたら最悪以外の何物でもないだろう。小梅と2人で挑んで漸く互角だったのに、小梅が撃破されたとなれ
ば、ハッキリ言って勝ち目はないのだから。

だが、そんな状況でもエリカの闘志は消えていなかった。


「(赤星が撃破されたのは痛いけど……だからと言って、負けた訳じゃない!
  フラッグ車が撃破されない限りは、負けじゃない――逆に言うなら、フラッグ車さえ撃破してしまえば其処で終わり……だから、アンタは私が
  倒すわ、西住みほ!)」


しかし、そんなエリカの思いに反比例するように、パンターブルーとⅢ突はエリカへの追撃は行わずに、その場から後退を始めたのだ。
逃げると言う訳ではない……此れもみほが決めた事なのだ。

遊撃隊を1輌撃破して、イケイケムードになりかけたのは事実だが、敵フラッグ車を撃破した訳ではないからまだ試合は終わって居ないという事
を告げると、本隊との合流を指示して即後退に打って出たのだ。


「でもさ隊長、もう1輌も撃破しても良かったんじゃない?――2輌とも撃破しちゃった方が良いと思うんだけど?」

「確かにそうかもしれませんが、其れをやったら更に時間がかかって本隊の方が全滅しかねません――そうなったら、勝率は略0%ですから。
 其れに、1輌では遊撃隊は務まりませんから、此れで遊撃隊壊滅と言っても良い感じです――だから此処は、本隊と合流して敵フラッグ車を
 撃破するのが最上策なんですよ翠さん。」

「な~~る、納得した!」


あくまでも勝利のための戦略的撤退だが、エリカからしたら面白くないだろう。倒すと心に決めた矢先に、相手が後退し始めたのだから。
当然逃がさないと、追撃を――



『逸見、聞こえるか逸見!!』

「隊長?」


しようとしたところで、隊長であるまほから通信が入った。


『そちらの状況はどうなっている?』

「……小梅のパンターが撃破され、相手は其れを期に後退を始めました。」

『そうか……という事は、成程な。
 では逸見、遊撃はもう良いから、本隊に合流してくれ――正直、みほが本隊と合流したら、このまま押し切る事は出来ないだろうからな。』


「――!!……了解しました!!」


其れは事実上の遊撃隊解散通告だったのだが、まほの様子から全てを察して本体への合流を了解し、即行動に移す。
とは言え、其れは決して穏やかなモノではく、みほに対しての攻撃の手を休めない状態での移動ではあったのだが……ともあれ、みほもエリカ
も、夫々の本隊との合流が出来るのは間違いないだろう。








――――――








さて、場面は再び本隊の戦車戦に移るが……地力で劣る明光大は、徐々に黒森峰の圧倒的な攻撃力の前に屈して行った。
如何に回避能力が優れているとは言え、全ての砲撃を回避できる訳がある筈もなく、ギリギリで避けた所に、別の砲撃が突き刺さると言った事
が起こり、明光大本隊の残存戦力はティーガーⅠ1輌と、Ⅲ突が1輌のみ。
対する黒森峰本隊の残存戦力は、凛のティーガーⅠにヤークトパンター1輌が撃破されただけで、他は無傷で、7輌が健在なのだ。

圧倒的なアドバンテージの差……


「(此処まで……か。)」


其れに、凛も思わず終わりを覚悟するが……そうは問屋が卸さない!!



「お待たせしました!!」

「たっだいまーーーー!!!」




茂みの中からアイスブルーのパンターと、オキサイドレッドのⅢ突が現れ、其のまま黒森峰の戦車部隊を強襲!!


――ズドン!!

――ドガァ!!!

――ドォォォン!!


――パシュン!パシュン!パシュン!!




そして瞬く間に、アイスブルーのパンターがティーガーⅠ2輌を、Ⅲ突がヤークトパンター1輌を撃破し、一気に黒森峰の戦力を低下させたのだ。
これで、総車輌数はみほ達が合流した明光大4輌で、エリカが合流した黒森峰が5輌と、差はなくなっていた。


「ったく、派手な登場ね西住?……だけど待ってたわよ。
 とは言っても、可也やられちゃったから、残存戦力には不安があるけれどね。」

「いえ、黒森峰を相手によく耐えてくれました……其れに、此れだけの戦力が残っているのならば十分です――此れだけあれば、黒森峰とも充
 分にやり合うことが出来ますから。」

「マジで?……いえ、アンタがそう言うならそうなんでしょうね――ならどうする、西住隊長?」

「此処で決めます!!とは言え、お姉ちゃんは簡単に撃破出来る相手ではないので、サポートをお願いします近坂部長。」

「OK、任せなさい!」




「一気に3輌撃破とは……流石だなみほ。
 此れで戦力差は殆どなくなった上に、隊長が合流し、更には一気に3輌撃破した向こうに流れが傾いているのは間違いないか……ならば此
 処で、決めねば此方が不利になるか……
 よし、敵フラッグ車を叩く!!逸見、サポートしろ!!」

「了解!!」


だから、みほもまほも、此処が決戦の時と判断し、互いに最も信頼している相手にサポートを頼んで、フラッグ車の撃破に乗り出したのだ。
同時にそれは、西住姉妹の直接対決に他ならない――明光大も黒森峰も、フラッグ車は隊長車であるのだから。


「負けないよ、お姉ちゃん――!!」


「見せてもらうぞみほ……お前が其処で得た物をな。」



今此処に、最強の姉妹対決の火蓋が切って落とされたのだった。














 To Be Continued… 




キャラクター補足




柴沼翠
明光大のⅢ突A車の車長を務める生徒で、性格は明るく、誰とでも友達になれるタイプの子。
戦車道は初心者だが、自分が乗る事になったⅢ突を相棒の様に考えていて、その思い入れは可成り強い。