Side:しほ
出来れば、会場に足を運びたかったのだけれど、どうしても外せない用事があったから、結局テレビ中継での観戦になってしまったわね、まほと
みほの直接対決である準決勝は。
地力で言うならば黒森峰の方が圧倒的に上だけれど、みほが率いる明光大はその実力差を『工夫』と『ねばり』で補って、ともすれば全体的な
戦局では黒森峰を上回っているわ。
もしも、黒森峰がパンター2輌の遊撃隊を編成してなかったら、最初の奇襲から繋がれた頭上からの砲撃で終わっていた可能性が高いわね。
だけど、遊撃隊が居たからそうはならなかった……まほもみほも、互いに勝つ為の作戦を確りと立てて、その上でこの最終局面という訳か。
「総合能力は略互角――となれば、何方が勝つ為の三要素の一つである『運』を引き寄せられるかにかかっているわね。」
「そして、まほお嬢様も、みほお嬢様も、何方も其れを引き寄せる力をもって居る――故に予想がつかないのでしょう奥様?」
「えぇ、全く予想がつかないわ。
まほもみほも私の娘だけど、あの子達は私を凌駕する力を秘めているから、だから此処からどうなるのかが全然予想がつかないのよ菊代。」
「それで良いのではないですか?其れはつまり、お嬢様達は予想以上に成長していたという事なのですから……そうでしょう、しほちゃん?」
「ぶほあぁ!?」
げほ、ごほ……だから、その呼び方は止めろって言ってるでしょう菊代!!
全くもって、貴女にしろ千代にしろ好子にしろ、なんだって私の事をそう呼ぶかしらね!?『ちゃん』て言うガラじゃないでしょう私は!!!!
「島田流家元は、『だが其れが良い』と仰ってましたよ?」
「OK、近い内に千代はシメた方が良さそうね。主にマウスの128mm砲で。」
じゃなくて、今は黒森峰と明光大の試合よ!!
互いに護衛を引き連れてのフラッグ車同士の直接対決――まほもみほも実力が伯仲しているから、何方が勝つなんて言う事は言えないけど、
どちらも思い切りやってきなさい。
全力でやり合ったのならば、勝っても負けても、其れは良い経験になるでしょうからね。
ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer16
『燃え上がる戦車道魂です!』
No Side
事実上フラッグ車同士の直接対決となった準決勝の第2試合は、此れが決勝戦だと言っても過言ではない位に超爆裂にヒートアップしていた。
その直接対決の舞台に上がるのは、明光大はパンターとティーガーⅠ。黒森峰はティーガーⅠとパンターと言う、まるで鏡合わせのような組み
合わせなのだ。
明光大はパンターがフラッグ車で、ティーガーⅠが護衛。黒森峰はティーガーⅠがフラッグ車で、パンターが護衛と言う違いはあるのだが。
しかし、違いは此れだけではない。
「パンターならティーガーⅠの正面装甲を抜く事は出来ますけれど、『食事の角度』を取られたら抜く事は出来ません。
なので敵フラッグ車を撃破するには、側面か後面に回り込む必要があある…可也無茶な操縦をお願いしますけど、行けますかつぼみさん?」
「勿論よみほさん!!
相手は大戦期最強の重戦車だけれど、明光大一の俊足からは逃げられないし、捕らえる事も出来ないって教えてあげるわ!!」
「お願いします。
近坂部長は、敵パンターの牽制をお願いします。ティーガーⅠの主砲なら、パンターの何処に当てても撃破出来ますから、狙われるだけでも
可成りの牽制になる筈です。」
『OK、任されたわ……隊長!』
「パンターは最強クラスの中戦車だが、ティーガーⅠの88mmならばどこに当てても撃破出来る。
だから、何処でも良いから敵パンターに当てろ――逸見も敵ティーガーの隙を見て敵フラッグ車を狙え!!」
「了解!!」
『了解しました、隊長!!』
戦っているのは明光大も黒森峰もパンターG型とティーガーⅠだが、フラッグ車と護衛の立ち位置が反対であるため、その戦い方はまるで違う。
まほは、フラッグ車の攻守力で勝る点を生かし、その火力でみほの乗るアイスブルーのパンターを押し切ろうとし、エリカの乗るパンターにもフラ
ッグ車を狙わせる――最強クラスの重戦車と中戦車のコンビで蹂躙する戦術だ。
逆にみほは、凛の乗るティーガーⅠにエリカの乗るパンターの牽制(または足止め)を頼み、自分はまほの乗るティーガーⅠと1対1の状況下で
の戦いを挑む。
普通なら、パンターでティーガーⅠに挑むのは分が悪いのだが、みほは仲間を信じているからこの戦い方を選択したのだ。
凛ならば敵パンターを何とか此方に攻撃させないようにしてくれるだろう。
つぼみならば、相手の攻撃を回避または直撃を喰らわないように、そして多少は無茶な操縦だって熟してしまうだろう。
ティーガーⅠの弱点である後面を取る事が出来たら、ナオミが確実に其処を撃ち抜いてくれるだろう。
青子も、頼めば持っと速く装填してくれるだろう。
何よりも、残った仲間達は、試合が終わるまで絶対に持ち堪えてくれるだろう――これ等の、仲間への絶対的な信頼があればこそ、機動力以
外の性能では劣るパンターで、最強重戦車の名を冠するティーガーⅠに挑んだのだ。
「回避!そして撃て!!」
「多少の被弾は無視しろ。食事の角度を取って居れば正面装甲が抜かれる事はない。後面を取られないように注意しろ!!」
その戦いは正に熾烈!
機動力を武器にティーガーⅠを攻めるみほのパンターに対し、まほのティーガーⅠは装甲の堅さに物を言わせて多少の被弾は無視し、強力な
88mm砲でパンターを攻め立てる。
鋼鉄の豹と虎の戦いは何方も一歩も退かずなのである。
そして其れは、夫々立引き連れてきた者達も同様だ。
「攻撃の手を休めるんじゃないわ!主砲だけじゃなく、機銃も使って兎に角攻撃!
相手のパンターに、西住のパンターを攻撃する機会を与えるんじゃないわ!!さっきの『ドッカン作戦』を応用してでも、アイツ等は止める!」
「この……なんて激しい攻撃――!此れじゃあ、フラッグ車を狙うどころじゃないわ!!
てか、此れだけの戦車乗りが居たのに去年まで1回戦負けって、去年の隊長って言うのはトンデモナイ盆暗だったとしか思えないわよ!?
この戦車の動かしかた、大凡弱小校の選手の物じゃないわ。」
凛の乗るティーガーⅠが、エリカの乗るパンターを果敢に攻め立て、みほの乗るパンターへの攻撃を封じていたのである。
無論エリカとて、其れを振りきろうと砲撃し、機動力を生かして距離を開けようとするのだが、砲撃は『食事の角度』で受け流され、距離を開けよ
うとすれば、先刻の『ドッカン作戦』宜しく、空から降ってきた砲弾が進行方向に着弾して、一瞬とは言え足を止められる。
こんな状況なら、並の戦車乗りならば参ってしまうだろうが――しかしエリカは並の戦車乗りではない。
元々気の強いエリカだが、その期の強さは戦車道でもぶれる事なく発揮され、剥き出しにされた闘争本能はあらゆる相手を喰い破って来た。
その苛烈さは凄まじく、小学校の時分に、当時ジュニアユースの代表に選ばれていたまほに勝負を挑んだくらいなのだ。――負けはしたが。
更に言うなら、小学校時代のエリカの公式記録はみほ以外には負けていないと言う、事実上の小学生ナンバー2だったのだ。
だから、このままやられている等と言う選択肢は存在しなかった。
「このままじゃ埒があかないわ……だから、此れより敵ティーガーⅠとやり合うわ。アレを何とかしない限り、隊長の援護は出来ないからね。
とは言え、あのティーガーの車長は、下手をしたら隊長と同レベルかも知れないから、気合入れて行くわよ!!」
「「「了解!!」」」
此処で、防御と回避から一転しての攻勢に出る。
此れは或いは、『みほのパンターがティーガーに挑んでいるのならば、私にだって其れは出来る筈だ』と言う、エリカのみほに対するライバル心
が取らせた行動なのかも知れないが、しかしその効果は小さくないだろう。
「此処で攻勢に回った?……成程、アンタは私と同類って事か。攻撃上等って事ね!!
上等!否、面白いじゃない――西住に任された以上、アンタを徹底的に足止めするのが私の役目だからね――望み通り受けてやるわ!!」
「一気呵成に攻めて撃破する!!隊長に頼まれた以上、護衛にかまけて何も出来なかったなんて言うのはゴメンだわ!!
敵ティーガーを撃破出来ないまでも、何とか隙を作って隊長の加勢に行くわよ!!――此処を突破できるかどうかが勝負の分かれ目だわ!」
エリカの乗るパンターは、すぐさま方向転換し、凛のティーガーⅠに向かって行き、凛も其れに応える。
互いに『西住』の命令を受けた以上、退く事は出来ない――否、元より退くなどと言う選択肢が有り得ないのである!
「私とやり合う気?……良い度胸ね、嘴の黄色い鼻垂れの青二才が。
まぁ、可也できるみたいだけど、敢えて言わせて貰うわ――己の格ってモノを知りなさい?」
「その言葉、そっくりそのまま貴女に返すわ――貴女こそ、私を1年生だからって甘く見てると痛い目を見るわよ?
尤も、万年1回戦負けの弱小校のレベルなんてたかが知れてるけどね。」
「OK、買ったわその喧嘩。」
だからこそ、この挑発合戦。
凛もエリカも互いに笑顔だが、その笑顔は穏やかなモノではなく、獲物を見つけた肉食獣が牙を剥いたかの如くである『獰猛な笑顔』その物。
フラッグ車同士だけでなく、そのお供である鋼鉄の虎と豹もまた、凄まじいまでの攻防を繰り広げているのだった。
――――――
もっと言うのならば、苛烈な戦闘状況なのはみほとまほだけではない。
残された明光大と黒森峰の戦車もまた、熾烈な戦いを展開していた――其れこそ、此れが決勝戦ではないのかと思わせる位にだ。
明光大のⅢ突2輌と、黒森峰のラング2輌とパンターの、合計5輌の戦車が凄まじいまでの戦車戦を展開してくれていたのである。
無論戦車の性能的な事を言うならばパンターを有する黒森峰に圧倒的なアドバンテージがあるのは間違いないだろう。
そもそもⅢ突には回転砲塔がない事を考えれば、何方に利があるかなどは、戦車道の素人でも分かる筈だ。(ラングにも回転砲塔はないが。)
だがしかし――
「絶対退くな!試合が終わるまであきらめるなーーーー!!!」
「王者黒森峰が如何したぁ!!明光大付属舐めんなよぉ!!!」
圧倒的に劣る戦力でありながら、明光大付属の残存戦力は、黒森峰の残存戦力と同等に……否、僅かながらに上回って戦っていたのだ。
勿論戦車の性能と地力では黒森峰の方が上だが、この局面で隊員の質が顕わになったと言えるだろう。
決して黒森峰の隊員の質が低いという訳ではない。
寧ろ、黒森峰の戦車道の隊員は、今直ぐにでも有名高校からスカウトが来ても不思議ではないレベルの手練れだが――しかし、それは隊長で
あるまほが居ればこそのモノでもあるのだ。
まほの指揮下にあれば、成程彼女達は確かに最強だろう。――だがしかし、まほの指揮下から離れてしまったらどうだろうか?
例えば今みたいに、まほが敵フラッグ車との直接対決状態になって他の部隊に指示を送る事が出来なくなっている状態になったのならば……
答えは言うまでもなく、大混乱とは行かずとも、残された部隊は困惑するだろう――何をすべきかの指示がなくなってしまったのだから。
いや、それでも残存部隊に副隊長が残っていたならば話は変わったのだろうが、その副隊長の乗るティーガーⅠは、みほが駆け付けた際に撃
破されてしまい、本当に指示なしの状態に陥っているのである。
隊長の援護に向かうか、それとも明光大の残存戦力を押さえつけるか、そのどちらを行えばいいのか判断がついていない。
それに対して明光大の残存戦力は、黒森峰のフラッグ車の事は完全にみほと凛に任せ、自分達は黒森峰の残存戦力を足止めする事だけを考
えて行動している。
もっと言うのならば、みほが凛を引き連れて行った瞬間に、自分達が何をすべきか悟ったと言ってもいいだろう。
誤解なきように言っておくと、黒森峰の隊員の質は決して低くない。寧ろ、戦車道における最上級の名門校であるのだから、其処でレギュラー
を務める隊員は、出場校の中でも最高水準なのは間違いない。
がしかし、だからこそこれまでの経験が、必ずしもプラスに働くとは限らない。特に、黒森峰だとそうだろう。
常に圧倒的な力を持ってして、圧倒的な勝利をもぎ取って来ただけに、多少の抵抗ならば兎も角、今回の様に徹底して食い下がられると冷静
さを欠いてしまう部分があるのだ。
逆に明光大付属の残存戦力であるⅢ突2輌のクルーは全員が1年生であり、今年から戦車道を始めた素人と言っても過言ではない集団だ。
だが、それだけに変な癖はついておらず、よく言えば臨機応変な、悪く言えば行き当たりばったりな対応が出来る故に、ある意味では柔軟な対
応が出来るのである。
「撃てー!!ぜったいにアイツ等を、隊長の方に行かせるんじゃないわよ!!」
「王者黒森峰がなんぼのモノよ!!叩きのめすわよ……おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「く、応戦よ!!応戦しなさい!!」
「先ずはコイツ等を撃破するわ!其の後で隊長の援護に向かうわよ!!」
――バシュン
『黒森峰、パンター走行不能。』
「あ、ごめん。やられちゃった♪」
「「何してんのよこの大馬鹿者ォ!!」」
その混戦の最中で、黒森峰のパンターが撃破され、残存戦力は互角となった。
しかも何の因果か、残っているのは明光大がⅢ突2輌で黒森峰がラング2輌と言う、自走砲同士のぶつかり合いになったのである。
加えて、Ⅲ突とラングは夫々能力の差異はあるが、総合的な能力で言うのならば略互角――其れを考えれば、残存戦力同士のぶつかり合い
がどちらも譲らずの戦いになるのは火を見るより明らかだ。
「Ⅲ突の底力、見せてあげるわ!!」
「ぽっと出の弱小校風情が思い上がるなぁ!!」
そしてぶつかり合う弱小校の意地と、絶対王者のプライド。此方の戦いも、まだ決まりそうにはなかった。
――――――
一方で、みほとまほの直接対決も、未だに決着がついていない。
互いにノーダメージではないが、しかし決定打も喰らっていない……装甲に多少の傷はついているが、其れだけであるのだ。
鋼鉄の虎の牙は敵を捕らえきる事が出来ないが、鋼鉄の豹の牙もまた敵の喉笛を嚙み千切る事が出来ない故に未だに決着付かずなのだ。
とは言え、此のままでは埒があかない。
このまま戦い続けた所で、互いの砲弾を打ち尽くしても決着はつかないだろう――だからこそ、此処でみほは決断した。
「ティーガーⅠの後を強引に取って、其れで決めます!
可也無茶な操縦をする事になりますけど、行けますかつぼみさん?」
「勿論よみほさん!!
可也無茶な操縦でも、必要ならばやって見せるわ!!」
「お願いします。其れと青子さん、装填速度をもっと速くできますか?」
「任せな!コンマ1秒単位で修正してやんぜ!!」
「なら問題ないですね。――ナオミさん。」
「任せなさい、敵フラッグ車の後面を取ったら、確実に撃破してやるわ。」
此処でまほのティーガーⅠに本格的に仕掛ける事を。
其れは綱渡りのような選択で、一つ間違えば即死に直結しかねない物だったが、みほはこの仲間達ならば出来ると信じていた。だからこそ、無
茶とも言える命令を下したのだ。
「行きます!!」
そして、みほの号令と共にアイスブルーのパンターは、まほのティーガーⅠに向かって突進!!
無論ティーガーⅠからは砲撃されるが、其れはつぼみの類稀なる操縦技術で回避!回避!!超回避!!当てられるモノなら当ててみろだ。
88mm砲弾の雨嵐を掻い潜って、あと少しでティーガーⅠに肉薄する――
――グラァ……
その瞬間で、みほ達にとっては何とも不運な事が起きてくれた。
この戦いの中で、砲弾を受けて幹を抉られた木が限界を迎えて根元から折れ、突撃を開始したみほ達のパンターの方に倒れて来たのである。
「!!き、緊急回避!!!」
「り、了解!!!」
これに押し潰されてしまったら、白旗判定は免れない。
だからこそ緊急回避をしたのだが……
――ブチィ!!
此処で、アイスブルーのパンターの履帯が切れた。
激しく動き回り、更に倒木を避ける為にドリフトめいた動きをしてしまった事で、遂に履帯が限界を迎えてしまったのだ……不運としか言えない。
それでも、戦闘行為は可能なので白旗は上がって居ないが、足が死んでしまったら、其れは相手にとって格好の的でしかない。
当然、まほの乗るティーガーⅠはみほのパンターに照準を合わせているが……
「させないわよ!!敵フラッグ車に攻撃!」
此処で凛が、黒森根のフラッグ車に攻撃を敢行!!
其れは正しい判断だったが、フラッグ車への攻撃を敢行したという事は、エリカの乗るパンターがフリーになる事でもある。
「隙が出来た……これで終わりよ!!」
その隙をエリカが見逃す筈もなく、みほの乗るパンターに対して即座に攻撃!!
――ズガァァァァァァァァァァァァァ!!!
夫々が放った砲弾が炸裂した影響で、煙に包まれているが………
――バシュン
『明光大付属中学校、フラッグ車行動不能――黒森峰女学院の勝利です。』
煙が晴れると其処には、白旗を上げるアイスブルーのパンターの姿が。
其れはつまり、フラッグ車が撃破された証なのだが……みほのパンターを撃破したのはまほではない。
「漸く、小学校の時の借りが返せたわね。」
其れをやったのはエリカ。
凛の乗るティーガーⅠの砲身がまほのティーガーⅠに向いた隙に、みほのパンターに照準を合わせ、その後面を見事に撃ち抜いたのである。
これにより試合は終了。
勝ったのは黒森峰だが、絶対王者を相手に此処まで食い下がった明光大付属も見事と言うべきであろう。
否、此の大健闘を目にして、明光大を『弱小校』と称する者は居ないだろう――明光大付属は、今この瞬間に、強豪の仲間入りをしたのだった。
――――――
Side:みほ
負けちゃったか……やっぱりお姉ちゃんは強いね。やっぱり敵わなかったよ。
「そうでもないんじゃないか?
あの倒木がなかったら結果は違っていたかもしれない――否、アレがなかったら負けていたのは私の方だ……結果的に、私は2度も木と言う
モノに助けられたんだな。
みほが小学校の時に私に挑んで来た時も、結果的には私が勝ったが、木に助けられた部分があったからね。」
「其れって、エミちゃん達と一緒に戦った時の……言われてみればそうかも知れない。」
でも、其れは逆を言うなら運がお姉ちゃんに味方したって言う事も出来るから、私は運を引き寄せる事が出来なかったんだね?
だけど、今度は負けないよお姉ちゃん?――そして逸見さん!!
こう見えて、私は負けず嫌いなんです!!負けっぱなしって言うのは性に合わないから、必ずリベンジさせて貰うから!!
「あぁ、何時でも挑んで来い。リベンジを楽しみにしているよみほ。」
「リベンジって……此れで戦績はイーブンでしょ?――ま、最終決着戦て言うのも悪くないかもしれないけどね?けど、次も勝たせて貰うわ!」
上等です!!
次に戦う時は絶対に負けないからね!!!
――――――
Side:まほ
逸見が機転を利かせてくれたおかげで勝つ事が出来たが、もしも逸見と赤星の両名が撃破されてしまっていたらこうは成らなかっただろうな。
倒木に助けられたとはいえ、逸見が生き残っていたからこそ、勝つ事が出来たと言っても過言ではないのだから。
何とか勝つ事が出来たが、同時にみほの凄さを肌で感じ取る事になったか……まぁ、姉としては妹の成長は嬉しい物だけれどね。
ともあれ次は決勝だ。
安斎が率いる『愛和学園』は、間違いなく、みほが引き連れて来た明光大付属よりも強いだろうからな……十分な準備をしておくべきだろうね。
此処まで来たら優勝以外には有り得ない……王者黒森峰の力を持ってして愛和学院を粉砕する!――其れが、王者の務めだからな……!!
悪いが、今年も勝たせて貰うぞ安斎――!!!
To Be Continued… 
キャラクター補足
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