Side:みほ


得意の市街地戦に持ち込んでおきながら、其れでもファースト撃破を許す事になるなんて言う事は考えてなかったけど、1輌程度のビハイン
ドは直ぐに取り戻して見せるよ。
何よりも、やられっぱなしって言うのは性に合わないからね。



「みぽりん、若干目がマジになってるけど大丈夫?」

「……ん、大丈夫だよ――初撃破は許したけど、逆にお蔭で思考がクリアーになって来たからね。」

こんな言い方をしたら、色々とアレなのかも知れないけど、私は不利な状況でこそ力が発揮できるタイプだから、これ位の差は速攻でひっくり
返して、此方が優勢な状況に持って行くよ!
そして、その上で聖グロを越える――無名の学校が4強の一画を倒したって言うのは、大きな話題になるだろうからね!
行くよ、エリカさん!!



『はぁ……アンタがそのテンションの時ってのは、大概とんでもない事を考えてる時なのよねみほ……まぁ良いわ、貴女の言うように無名校
 が強豪校に勝つって言うのが不可能じゃないって事を、聖グロの連中に教えてやりましょ!!
 其れじゃ、ここらで一発仕掛けるとしましょうか?大洗最強の戦車が、固まらずにバラバラの方向から仕掛けてくるってのは、聖グロへのプ
 レッシャーになると思うし。』

「うん、そうだね。其れで行こう。」

パンターとティーガーⅡなら、聖グロの全ての戦車の攻撃に耐える事が出来るから、後部か側面への近距離攻撃さえ受けなければ、撃破さ
れる事は先ず無いし、逆に此方の攻撃は徹甲芯弾を使えば何処に当てても撃破出来るからね。
加えて梓ちゃんと小梅さんがコンビを組んで聖グロの本隊に仕掛けるみたいだし、歴女チームとバレー部チームも、商店街に潜んで機を伺っ
てるみたいだからね。

先ずはパンター、ティーガーⅡ、Ⅲ号、Ⅳ号で聖グロの部隊を商店街でバラバラにして、チーム戦術を執らせないようにする!
そうして分断した上で、タイマンか1対2の勝負に持ち込めば、練度の差があっても撃破する確率はチーム戦を行うよりも高くなるからね。
其れじゃあ、かくれんぼ作戦改め『鬼ごっこ作戦』開始!








ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer108
『激闘!聖グロリアーナ戦です!』










No Side


生徒会チームの38(t)を撃破し、先手を取った聖グロだが、以降はこの商店街――大洗永町商店会内で、大洗女子学園の戦車を発見する
事が出来ずにいた。
此処が大洗女子学園の地元だという事を考えれば、アウェーである聖グロのメンバーには土地勘が無いので、地元民だからこそ知っている
隠れ家的な場所に潜んでいると言う事になるのだろうが、其れでも此れだけ見つける事が出来ないというのは、少々不気味であった。


「……如何やら、先程の38(t)が特別練度が低かっただけで、他の戦車はそうでもないようですわね――先程の言葉は撤回した方が良さそ
 うですわ。
 それとデータ主義の貴女としては、データのない相手と戦うと言うのはやり辛いのではなくてアッサム?」

「えぇ、実際やり辛い物ですよダージリン。
 西住みほさん、逸見エリカさん、赤星小梅さん、澤梓さん、クロエ・C・武藤さんのデータはあるとは言え、此の5人に関しては去年のデータ等
 はまるで当てになりませんからね。」

「梓さんも、去年戦った時とは別人みたいでした……まさか、大洗の副隊長になってるとは思いませんでしたが……」

「……そう言えば、貴女は去年の中学全国大会で、澤さんと戦っていたわねペコ。」


『隊長が優秀であっても、隊員が三流では話にならない』と、先の38(t)との交戦で思ったダージリンだったが、38(t)撃破のアナウンスを聞
いても、焦って攻めてくる事が無かった大洗女子学園に対し、その評価を改めつつ、同じ戦車に登場する砲手のアッサムと、装填士のオレン
ジペコと大洗女子学園について意見を交わす。
尚、オレンジペコは、去年の中学全国大会の準決勝で梓が戦った学校の隊長を務めてた『辺古蜜柑』である。

一応此の3人は、大洗女子学園の戦車道経験者とは試合経験はあるのだが、その時のデータなどはハッキリ言って役に立つものではない。
みほは言うに及ばず、エリカと小梅と梓とクロエも、一般的な戦車乗りの成長レベルとはかけ離れたレベルアップをしてるので、過去のデータ
等は、マッタク持って意味を成さないのだ。
此れは聖グロ一のデータ主義であるアッサムからしたら、何とも有り難くない事だ――己の集積したデータが、全く役に立たないのだから。

だが、そんなアッサムとは逆に、ダージリンはこの状況に心が躍っていた。
38(t)には失望したが、其の後の大洗女子学園の沈黙には『何か』を感じてならないからだ……隻腕の軍神である、みほが仕掛けたであろ
う『何か』が。


「次の一手は、如何来ますのかしらみほさん?」


ダージリンは期待を胸に抱き、聖グロの部隊が少し開けた大通りに出た所で其れは起きた。


――ズドン!バゴン!!

――キュポン!



『聖グロリアーナ、クルセイダー行動不能!』

「んな、バニラ!?」


部隊全てが大通りに出た所で砲撃が炸裂し、クルセイダーが1輌撃破されたのだ。


「2度目の奇襲……相手は何処にいますの?」

「敵は……いましたダージリン様、10時の方向にⅢ号とⅣ号!!」


その砲撃を行ったのは、梓率いるⅢ号と、小梅率いるⅣ号だ。
何方の戦車も、主砲のパンチ力はあまり高くは無いが、其れでも戦車乗りの間で『紙装甲』と揶揄される程に装甲が薄いクルセイダーの側面
を抜く事位は雑作もない。

何よりも、梓と小梅は搭乗員から大洗の町の大体の姿を聞きながら戦車を動かし、同時に『自分が聖グロの隊長だったら、ファーストアタック
後に誰ともエンカウントしなかったら如何するか?』を考えて聖グロが現れるであろう場所を予測し、其処で待ち伏せておいて今の一撃をぶち
かましたのだ。


「小梅さん、梓さん……おやりになりますわね……!」


初撃以上にインパクトのある『2回目の奇襲』で、車輌数をイーブンに持ち込まれた事に対し、ダージリンは小梅と梓を賞賛すると同時に、『大
洗女子学園は、素人集団ではなく強敵である』と認識するに至った。
まぁ、其れもある意味で当然だろう――7輌の内4輌には経験者が乗ってるとは言え、それらは全て車長のみ(Ⅲ号だけは操縦士も。)と言う
事を考えると、戦車の操作が巧く行かずに、ともすれば自滅するのではないかと思っていたのだから。

だが、実際にはすぐさま1輌のビハインドをなかった事にしてしまったのだ――4強のプライドとして、無名の弱小校に撃破されると言うのは論
外だろろうが、ダージリンはそんな事は思っていない。

寧ろ、みほが――否、黒森峰で鳴らした遊撃隊のトップ3と、軍神を継ぐ者が居る大洗女子学園を相手に、簡単に勝つ事が出来ると思ってた
事が、己の慢心だと思っていた。

少し考えれば分かる事だった――『隻腕の軍神』、『孤高の銀狼』、『慧眼の隼』、そして『軍神を継ぐ者』が居るチームが、只の素人集団等で
は無いと言う事が。


「みほさんだけに目を奪われて本質を見抜けなかった……成程、これでは私がアールグレイ様から、その名を譲り受ける事が出来なかったと
 言うのも分かりますわ。
 アールグレイ様なら、きっとこんな事にはならなかったでしょうから。
 ですが、やられてばかりと言うのは聖グロとて容認する事は出来ませんわ……此処からは、手段を選ばすに勝ちに行きますわよ!」

「あの、騎士道精神は?」

何か問題でも?

「いえ、御座いません。」


オレンジペコの突っ込みも、一言で黙らせると、ダージリンは部隊をシーサイドステーション前の大通りに移動させて、体勢を立て直そうとする
が、そうは問屋が卸さないのがみほだ。


「目標捕捉……華さん、やっちゃってください。」

「一発必中……行きます!」


「アイン……ブチかませ。」

「了解だ。リイン・E・八神……目標を狙い撃つ!!」


聖グロの部隊がシーサイドステーション前の大通りに出て来た所に、カウンター気味に一撃をぶっ放す!それも、みほ率いるパンターだけで
はなく、エリカ率いるティーガーⅡもだ。
尤も、みほもエリカも撃破目的で攻撃した訳じゃないので、聖グロの部隊は健在だが、其れでも聖グロに対して、精神的なプレッシャーを掛け
る事には成功したと言っていいだろう。

聖グロの戦車は、クルセイダー以外は堅牢な装甲を備えているモノの、最強中戦車であるパンターと、『取り敢えず動ける機能を有してる重
戦車』では間違いなく最強の攻撃力を備えてるティーガーⅡの攻撃を真面に受けたら一溜りもないが、聖グロの部隊は健在。

みほもエリカも『ギリギリ有効打にならない攻撃』をして、態と撃破せずに自分達の存在を聖グロに認識させたのだ。


一見すれば只の挑発的な物に思えるかもしれないが、其の効果は実はとても大きいものだった。


「く……完全に囲まれてしまいましたわね?
 こうなってしまった以上、固まって動くのは不利であるのは間違い無いですわ……仕方ありません、聖グロの戦い方とは大きくかけ離れてし
 まいますが、負けない為にはこうするより他に方法も手段もありませんわね……!
 各員散開――街中に逃げ込み、夫々の判断で行動する様に。……ですが、敵戦車を見つけたその時は、相手がパンターがティーガーⅡで
 ない場合は、此方から攻めて叩きのめしてさし上げなさい。」


この状況で戦うのは不利と見たダージリンは、此処で部隊を散開して、大洗の町中に部隊を広く浅く展開していく――だが、此れこそがみほ
の狙っていた状況だとは、ダージリンであっても思っていなかっただろう。


「ふふ、乗って来たねダージリンさん……本番は此処からだよ!」


そして、自分の作戦が決まった事に、みほは笑みを浮かべると、『此処からが本番』を宣言!
大洗女子学園vs聖グロリアーナ女学院の練習試合は、互いに1輌を失った此処からが本当の意味での試合開始と言っても過言では無いだ
ろう――此処からが、全力全壊である。








――――――








さて、パンターとティーガーⅡとⅢ号とⅣ号の集中砲火から逃れる為に散開した聖グロの部隊だが……土地勘のない大洗での単独行動と言
うのは可成りの難易度の高さだったのだろう。


「え~っと、ここ何処?」


中には完全に迷ってる者すらいた……『事前にマップをグーグルアースで調べて来いよ!』と思わなくもないが、相手が無名の新参校だった
と言う事も有り、下調べなどはマッタクしていなかったのである。
聖グロは高校戦車道4強の一角と言う事を考えれば、隊員が無名の大洗女子学園を『格下』と見て、試合会場の事を碌に調べていないのも
仕方ないのかも知れないが、其れは余裕ではなく慢心と言えるだろう。


――ズドン!

――パシュン!!


「へ?」

『聖グロリアーナ、マチルダ行動不能。』


其れを示すかのように、道に迷っていたマチルダⅡは行き成り横っ腹に砲撃を喰らってしまい、敢え無く行動不能に。
見れば、すぐ傍の薬局の幟の間から硝煙が立ち昇っている……歴女チーム率いるⅢ突が、車体にあの弩派手な幟を装着して、薬局の幟の
中に紛れて身を隠していたのだ。
Ⅲ突の車高の低さと、大洗の町を巧く使った、見事なカモフラージュ戦法だったと言えるだろう。


「我々の作戦勝ちだ。次行ってみよー!」

「うむ、矢張りⅢ突の低い車体はこう言う市街地戦に於いては力を発揮してくれるものだな。」


対外試合での初撃破をしたと言う事も有り、歴女チームは意気揚々と次の獲物を狩る為に場所を移動し始めたが、しかしそう簡単に何度も狩
る事が出来る程、聖グロリアーナと言う学校は生易しくない。


「馬鹿め、姿が丸見えだ!」


――ドォン!

――パシュン!!


「のわぁ!何故バレた!?」

「しまった、幟を仕舞い忘れたぜよ~~!」

『大洗女子学園、Ⅲ突行動不能。』


ルクリリ率いるマチルダⅡに、今度は自分達が横っ腹をぶち抜かれて行動不能に。
初撃破に浮かれ、幟を仕舞い忘れたまま移動してしまっていたせいで、Ⅲ突の低い車高と言う利点を完全に潰してしまい、幟が移動している
所をルクリリに見つかってしまったと言う訳だ。

初心者故のケアレスミスで撃破されてしまったが、其れでもマチルダⅡを1輌撃破したと言うのは悪くない結果だろう。








――――――








一方で此方は、少しばかり開けた道路――に面した『かねふくめんたいパーク』の駐車場では、梓のⅢ号と小梅のⅣ号が、マチルダⅡとクル
セイダー(ローズヒップ機)のコンビと戦車戦を展開していた。
遮蔽物が何もない、見通しの良い広い駐車場での戦車戦は、搦め手が使えないので純粋な力量差ではローズヒップ達の方が有利に思える
が、マチルダとクルセイダーの主砲では、Ⅳ号の装甲は抜けてもⅢ号の正面装甲を抜く事は出来ない為、決着が付いていないのだ。


「今のは危なかったけど、今ので撃破出来なかったと言うのはローズヒップさんにとっては結構来るかも……だとしたら、少し動きが激しくなる
 かも知れませんね?
 ローズヒップさんは熱くなると、車長の任を忘れて操縦に集中するみたいですし。」

「でも、其処に付け入る隙がある、そう言う事ですよね赤星先輩。」

「はい、その通りです澤さん。流石は副隊長、よくお分かりですね?」

「此れ位は予測できないと、西住隊長の副官は務まりませんから。」


そして其れは同時に、梓と小梅の連携が見事である事に他ならない。
防御面では回避のⅣ号と、防御のⅢ号と言う形を取り、攻撃面では何方も小回りが利く戦車性能を生かしてのヒット&アウェイを繰り返し、徹
底してクルセイダーを狙っていたのだ。
これは単純に、クルセイダー、其れもローズヒップが搭乗しているモノを野放しにしておくと危険だと判断したからであるが、其れが逆にローズ
ヒップ側からしたら得意の機動力を封じられているにも等しい事であり、ローズヒップは可成りのストレスを貯めてしまっていたのだ。


「もう辛抱なりませんわ!リミッター外しちゃいますわよ!!」


此処で我慢の限界が訪れ、ローズヒップはクルセイダーのリミッターを解除すると、その凄まじい機動力で動き回りながら、同時に装填士への
連続装填と、砲手への連続砲撃を命じ、クルセイダーを『動く機関砲』と化す。

其の効果はすさまじく、Ⅲ号とⅣ号は次々と色んな方向から飛んでくる砲弾に当たらないようにする為に右へ左へせわしなく動き回る。
其れでも、操縦士が経験者のクロエであるⅢ号は見事な回避をして見せるが、操縦士が初心者の根津であるⅣ号は、全てを回避する事が
出来ずに、クリーンヒットはしないモノの少しずつ被弾してしまう。

一発一発は大した事なくても、ダメージだって塵も積もれば山となるであり、此のままでは何れ撃破されるのは間違い無いだろう。


「此のままでは……根津さん、マチルダに向かって突撃してください!」

「はいぃ!?」

「良いから早く!」

「イ、イエッサー!!」


そう考えた小梅は、回避するのを止め、マチルダⅡに向かって突撃!その間もクルセイダーからの攻撃は止まらず、更にマチルダⅡから攻
撃も飛んでくるのだが、それらをギリギリ撃破されないレベルで受けながら突撃し、遂にマチルダⅡに肉薄!!


「貴女、まさか……!」

「此れは、勝利の為の敗北です――!」


そして同時にⅣ号とマチルダⅡの主砲が火を噴き、互いに相手の装甲をぶち抜く!!


――キュポン!

――シュポン!



『聖グロリアーナ、マチルダ、大洗女子学園、Ⅳ号、共に行動不能!』


その結果は壮絶な相討ち――小梅は、相討ちに持ち込む事でマチルダを撃破し、梓が相手にする相手をクルセイダーのみに絞ったのだ。
もしも搭乗員が経験者であったのならば、もっと別の手段が取れたのだろうが、経験不足の初心者ばかりでは、この状況に於いてⅣ号が無
駄死にしない為にはこれ以外の方法が無かったのである。

だが、此の小梅の決死の行動が、梓の闘志に火を点けた。


「赤星先輩……貴女の犠牲は無駄にはしません!」


瞳からハイライトが消え、瞳孔が極端に収縮した『超集中状態』になると、ローズヒップの変態軌道とも言えるクルセイダーの動きに対応して
攻撃を加え、その足元を徹底的に崩しにかかる。

如何にローズヒップの操縦技術が神懸ってるとは言え、徹底的に足元を狙われてしまったら回避の比率が大きくなって『攻めの超高速機動』
は鳴りを潜めざるを得ない。
そして、攻めの超高速機動が鳴りを潜めたのなら、其れは梓にとって絶好のチャンスだ。


「此れでも喰らえ!!」

「へ?」


――カッ!!


砲撃を行いながらクルセイダーに突進すると、擦れ違い様に閃光弾を炸裂させ、一瞬でローズヒップの視界を奪う――だけでなく、自身は確
りとサングラスで防御しているのだから大したモノだろう。


「此れは……目が眩んで何も見えませんわ~~~!!」


だが、真面に喰らってしまったローズヒップは一時的に視界を失い、周囲を目視する事が出来なくなってしまった――故に、状況を把握する事
が出来ず、決定的な隙を曝し出してしまう。
無論、其れは梓の狙い通りなのだが、其れでも此処までうまく嵌る辺りは、流石は『軍神を継ぐ者』と言った所だろう。みほの一番弟子である
梓には、確りと『西住みほ流』が受け継がれているのだ。


「これで決まりです!あゆみ、ブチかまして!!

ほいさぁ!此れでも喰らえ!!


――ズドォォォォォォン!!

――キュポン!



『聖グロリアーナ、クルセイダー行動不能。』


動けなくなった戦車は只の的と言うかのように、ローズヒップのクルセイダーに対して容赦ない砲撃をブチかまして撃破完了!!
梓は見事に副隊長の任を果たし、難敵であるローズヒップのクルセイダーを撃破したのだ……この練習試合に於いて、この功績は決して小さ
く無いだろう。
梓の戦績は、事実上聖グロの機動力を完全に捥ぎ取ったのだから。


「よし、此のまま西住隊長と合流して一気に攻勢に回ろう。逸見先輩も健在だから、私達が力を合わせれば聖グロに勝つ事は可能だから。
 クロエ、大洗駅前まで行ってくれる?」

「了解だよ梓。」


更には戦況を見極めて、みほ達との合流を考えるが、此処で誰もが予想だにしなかった事態が起きた。


――ヒュー……ドッスーン!!

――キュポン!!


「……はい?」

『大洗女子学園、Ⅲ号行動不能。』


ローズヒップの無差別攻撃でダメージを受けていためんたいパークのマスコットキャラクターの像が根元からポッキリと折れ、其れが梓のⅢ号
に向かって降って来たのだ。
あまりにも突然の事で梓も対処しきれずに直撃を受け、結果として主砲と装甲をぶち抜かれて、Ⅲ号は行動不能になってしまったのだ。


だが、これで大洗女子学園も、聖グロリアーナ女学院も残る戦車は3輌となった事で、此の試合も佳境に入って来たと言えるだろう。――そし
て、此処からが練習試合の最終幕だ。

役者は充分に揃っている……故に、その幕が、今上がったのだった。








――――――








Side:みほ


Ⅲ突はマチルダを撃破するも、幟を仕舞い忘れていた事で撃破され、梓ちゃんと小梅さんは、激しい戦車戦の末に相手を撃破したけど、小梅
さんは特攻で相討ちし、梓ちゃんは予想外の落下物で撃破判定を喰らっちゃったから、残存車輌数では互角だね。

私達の残存車輌はパンターとティーガーⅡとクルセイダーMk.Ⅱで、聖グロはダージリンさんのチャーチルにマチルダが2輌……攻撃力と機動
力では私達が勝ってるけど、防御の堅牢さでは聖グロの方が上か。
総じて戦えば五分五分って言いたい所だけど、練度の差を見ると良くて五分って言う所だから安心はできないかな?……だけど、この状況を
『楽しい』って思ってる私が居るのも事実だからね。



「みぽりんてば本当に楽しそうだよね?」

「マッタクであります!――して西住隊長、我々は何をすればいいのでしょうか?」



今は何も……此処は待ちに徹するのが一番だね――下手に動いて撃破されたなんて言うのは、其れだけで笑い話にもならない事態だから
ね……でも、試合が動いたら一気に決めにかかるからその心算で居てくれるかな?



「OK、了解したよみぽりん。」

「了解いたしましたみほさん。」

「了解であります西住殿~~!」

「お~~、任せとけ。」



うん、その意気があれば大丈夫だね♪とっても頼もしいよ!


さてと、互いに残り3輌って言う事は燃えてくる展開だね?――この練習試合のクライマックスと言っても過言じゃないと思うね。
なら、そのクライマックスを最高に盛り上げた上でフィナーレに持って行かないと締まらないからね……最高のパフォーマンスを、最高の戦車
道をやらせて貰うよ。
エリカさん、磯辺さん、行きますよ――勝ちましょう!!!



『了解よみほ……聖グロに目に物見せてやりましょう?』

『ガンガン行きます!根性で押し切ります!!』




あはは……磯辺さんは相変わらずの根性論だね?
でも、其れは案外馬鹿に出来ない事だから、若しかしたらバレー部チームが何かしてくれる気がしなくもないね――ふふ、楽しくなって来た♪

さぁダージリンさん、決着をつけましょう!!










 To Be Continued… 





キャラクター補足