Side:みほ


Ⅲ突がマチルダを待ち伏せ作戦で撃破した後に、別のマチルダに撃破されて白旗判定。
梓ちゃんと小梅さんは、めんたいパークの駐車場で、壮絶な戦車戦を演じた挙げ句に、双方白旗判定の痛み分けで、大洗も聖グロも、残る戦
力は3輌か……大洗の練度を考えると、聖グロ相手に此処まで出来たのは大したモノだよ。

だけど、本番は此処からだから気を抜く事は出来ないね。



「うんうん、気を抜かずに行こうみぽりん!
 相手はすっごく強いみたいだけど、其れでも負けるのは絶対嫌!是が非でも勝とうよみぽりん!っていうか、あんこう踊りは絶対嫌!!」

「沙織、其れは幾ら何でも無茶振りだぞ~~。まぁ、私もあんこう踊りは勘弁願いたいがな。」



うん、アレは私も絶対に嫌だから絶対に勝とう。
アレを踊ってる姿がネットにでもアップされたら完全に黒歴史……下手をしたら戦車道の試合で他校の人にネタにされるかもしれないもん!
……更に怖いのは、お母さんと菊代さん辺りは大笑いして、其れをネタに飲みそうなんだよねぇ……うん、容易に想像できるよ。

其れは其れとして、言われるまでもなく私は勝つ心算だよ沙織さん。
大洗の皆は、言葉は悪いけど、戦車道に関しては素人其の物だから、一方的にやられるんじゃないかって思ってたんだけど、蓋を開ければ、
そうは行かずに残存車輌は同じになってたからね。

でも、其れだけに難しいのは此処からだよ――僅かな判断ミスがそのまま結果に繋がるって言うのは、こういう状況の時が多いモノだから。

まぁ、其れは杞憂かな?少なくともパンターの皆は緊張してると言うよりは試合を楽しんでるみたいだし……初試合で試合を楽しむ事が出来
るって言うのは、実際凄い事だもん。
練習試合とは言え聖グロとの試合は、大洗の皆にとっては全てがプラスになるかもね。


試合はそろそろクライマックスって言う所だね?最高のフィナーレを飾らせて貰おうかな♪








ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer109
『聖グロ戦終結!その壮絶な幕引き!』










No Side


数の上では3対3のイーブンと言う結果になったが、隊員の練度その他から見れば、聖グロの方が絶対的に有利なのは間違いないだろう。
だがしかし、そんな常識を宇宙の彼方のブラックホールにまで蹴り飛ばしてしまうのが大洗女子学園だと言えるだろう。
普通に考えれば如何に経験者が5人居るとは言え、その内4人は指揮官であり、実際に戦車を動かした経験があるのはⅢ号のクロエ1人だ
けで、後は全くの素人と言う布陣……如何考えてもまともに戦車を動かす事が出来る筈がない。

にも拘らず、試合は互いに4輌ずつを撃破しての残り3輌と言う状況――戦術と戦略は練度の差を埋めると言う事を、大洗女子学園は聖グロ
相手に証明して見せたと言ってもいいだろう。
加えて大洗女子学園の地元である大洗町での練習試合と言う、フィールドアドバンテージがあるのは言うまでもない。

少なくとも、20年ぶりに復活した大洗女子学園の戦車道の試合を見に来た大洗町民にとっては、期せずして好試合を観戦する結果となった
訳だが、実際に試合をしている選手――特に聖グロの生徒にとって、この展開は恐らく予想していなかった事だろう。


「まさか4輌もやられるとは……此れは、試合後に大洗女子学園のデータを大幅に修正しなければなりません。
 試合前のデータで言えば、現時点での試合展開は、此方の損失車輌は2輌以下で、大洗の車輌は残り2輌となっていた筈なのに……貴女
 も予想外だったのではないですか、ダージリン?」

「そうね、如何にみほさんが隊長を務め、その一番弟子である澤さんと女房役の武藤さん、黒森峰の遊撃隊でみほさんの片腕と懐刀として活
 躍していたエリカさんと小梅さんが要るとは言え、後は素人……無傷とは行かずとも、もう少し此方が有利に進められると思っていたわ。
 恐らくは、未だ始めて1ヶ月も経っていないと言うのに、如何に此方が侮ってたとは言え此処までやるとは……みほさん達の指導が見事だ
 っただけでなく、大洗の隊員は素質があったと言う事ですわね。」


其れは隊長であるダージリンと、副隊長であるアッサムの会話からも見て取れる。
みほ達の実力を肌で感じた事のあるダージリンですら、此処まで喰らい付かれるとは思って居なかったのだから、聖グロ全体が受けた衝撃
は相当な物――この状況に驚いてないのは、恐らくは聖グロではローズヒップ位のモノだろう。


「加えて、大洗の残り3輌の中にキングタイガー(ティーガーⅡ)が居ると言うのが厄介ね……スペック上では、此方の残存車輌でキングタイ
 ガーの砲撃に耐えられる戦車は居ない上に、キングタイガーの装甲を抜ける戦車も居ない。
 加えてキングタイガーの車長はエリカさん……此れは、少々此方に旗色が悪いかしらね。」


そして残存車輌の事を考えると、実は不利なのは自分達の方だとダージリンは考えていた。
チャーチルとマチルダでは、ティーガーⅡの装甲を抜けないのに、ティーガーⅡの攻撃に耐える事が出来ないのだから……そして何よりも、テ
ィーガーⅡに乗っているのがエリカだと言う事も大きい。
大洗でのエリカは特別な役職に就いてない一般隊員だが、逆に部隊指揮に一切関わらない立場である事が、エリカの持ち味である攻撃性
を最大に引き出す事が出来る――エリカ自身もそう考えているので、梓を副隊長に推したのだから。

そんな鋭い爪牙をギラつかせている猛虎が健在である以上、慎重にならざるを得ない――下手をしたら、銀狼が駆る黒き猛虎の爪牙に因っ
て聖グロの部隊は壊滅しかねないのだ。


「けれど、この状況を楽しんでいる辺り、私も戦車道に魅入られているのかも知れませんわね……ならばもっともっと楽しむと致しましょうか。
 全速前進、こんな素敵なパーティに招待してくれたホストに、最高のお礼をしに行きますわよ。」


だが、其れでもダージリンは優雅にカップの紅茶を一飲みすると、戦車を進めていくのだった。








――――――








「エリカさん、今どの辺に居る?私の方はあと500でバレー部さん達が潜んでる駐車場に到着するけど。」

『こっちも、大体其れ位よみほ。
 にしても、立体駐車場を利用するなんて、磯辺も中々考えたわね……巧く行けば此処で2輌撃破出来るわよ。』

「最低でも1輌は撃破出来るかな?
 でも、2輌撃破が出来なかった時は、後は任せて良いかなエリカさん?」

『えぇ、任せてくれていいわみほ……銀狼と黒虎の爪牙で、聖グロの喉笛を引き千切ってやるわ!』


一方の大洗女子学園は、みほとエリカが市街地の一画にある民間運営の立体駐車場を目指して進行していた――と言うのも、バレー部チー
ムの車長である磯辺典子から、『最初に陣取っていたコインパーキングから、立体駐車場に移動する』との連絡を受け、其方に向かって居た
のだ。





そして、その立体駐車場には、聖グロのマチルダが2輌差し掛かっていた。
何の変哲もない立体駐車場故に、普通なら素通りしてしまいそうなものだが、縦列して進んでいたマチルダⅡの1輌目の車長のルクリリは此
の駐車道には何かあると考えたらしく、2輌目を道路に待機させて駐車場に入っていく。


――ヴィーン


其れと同時に入庫の為の扉が上がっていく。


「分かり易い手だな!」


せり上がっていく鉄扉の向こうに潜んでいると考えたのだろう。
鉄扉が上がり切ると同時に、ルクリリは砲撃命令を下すが、上がり切った鉄扉の向こうには何もない……あったとしても、ゲート真正面に駐車
していた乗用車であり、戦車の姿は何処にもないのだ。

ルクリリの読みは外れた訳だが、ならばバレー部チーム率いるクルセイダーは一体何処に?


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


その答えは、出庫用の昇降機!
バレー部チームのクルセイダーは、入庫すると同時に駐車道内を疾走して出口まで行き、出庫の為の昇降機の上で待機していたのである。

そしてその効果は抜群!
完全にマチルダの後を取る事に成功したのだから。


「しまった、後か!!」

「喰らえバックアタック!!」


――ドッガァァァァァァァァァァン!!


そして炸裂する至近距離での砲撃!
可成り見事な作戦から放たれた一撃は会心の一撃と言えるだろうが、しかし此処に居るのはルクリリのマチルダだけではなく、道路で待機し
ていたマチルダも居る訳で。


「ならば、貴女方はサイドアタックを喰らいなさいな。」

「へ?」


――ズドォォォォン!!

――キュポン!




『大洗女子学園、クルセイダー行動不能!』


その待機していたマチルダに側面を撃ち抜かれて敢え無く白旗判定に――加えて悪い事に、ルクリリのマチルダは後部装甲が多少凹んだ
モノの白旗判定にはなっておらず、生き延びていた。
此れで車輌数では聖グロが1輌だけ有利になったが――


「撃破したからと言って即油断……馬鹿は死ななきゃ治らない。」

「隙ありだよ!!」


――ズドォォォン!!

――キュポン!!



『聖グロリアーナ、マチルダ行動不能!』


そこを狙ったかのようにみほのパンターとエリカのティーガーⅡの砲撃が炸裂し、ティーガーⅡの砲撃が道路脇で待機していたマチルダを撃
破!
みほのパンターもルクリリのマチルダを撃破する事は出来なかったものの、砲塔の装甲を大きく凹ませて強度を格段にダウンさせる事は成功
させていた。


「……ルクリリさんの事は任せるよエリカさん。」

「OK、任されたわみほ――貴女はあの紅茶格言の首を取って来なさい!」

「うん、勿論その心算だよ!」


此処でみほは、ルクリリの相手をエリカに一任すると、パンターを反転させて市街地を進んで行く――ダージリンとの決着をつける心算なのだ
ろう。

となると、エリカの役目はルクリリ車を撃破した上で生き残る事なのだが……


「折角1輌撃破したって言うのに、即座に其れを巻き返されたらザマ無いわねルクリリ?
 アンタってば中学の時から詰めが甘い所があったけど……其れはあんまり克服されてないみたいね?――まぁ、短所を直すよりも長所を伸
 ばせって事なのかも知れないけど、アンタに伸ばすべき長所なんてあったっけか?」

「逸見……あんまり舐めてると痛い目見るぞ?」

「痛い目?
 是非とも遭わせて貰いたいわねぇ……まぁ、アンタじゃ無理でしょうけどね……中学時代に2回戦でみほに完封負け喰らってる訳だし?」

「完封じゃないわ!2輌撃破してるわ!」

「ハン、そんなの殆ど完封負けでしょ?
 野球だって何本ヒット打った所で、0点に抑えられたら完封負けなのよ!って言うか、アンタの戦術全部みほに見破られてたんだから、ヤッ
 パリ完封じゃないのよ?
 よくもまぁ、アンタみたいのが聖グロでレギュラー獲得できたモンだと感心するわね……」


此処でもエリカ節が炸裂して、ルクリリのボルテージを上げて行く。
何を隠そうルクリリは、中学3年の時に全国大会でみほ率いる明光大付属中学校と戦い、略略何も出来ずに負けているのである。


「まぁ、所詮は試合内容端折られて、しかもオチじゃなくてタイトル前のアバンでキンクリされたアンタの実力なんて高が知れてるか?
 今更こんな事言うまでもなかったわね――因みに、こんだけ私に色々言わせてるけど、作者はダージリンやルクリリが嫌いな訳じゃないの
 で悪しからず!!」

「えぇい、言ってる意味が分からん!!」

「気にしたら負けよ、瑠玖李理(ルクリリ)。」

「妙な漢字で書くな!誰だ其れ!!」

「お前ー!m9(^Д^)」

「うおわぁ、自分がやられるとめっちゃムカつく!ダージリン様がキレるのも納得したわぁ!!……逸見、お前絶対にぶちのめす!!」

「ティーガーⅡの砲撃に耐えられない装甲と、ティーガーⅡの装甲を抜けない主砲の戦車でタイマン勝負ぅ?」


其処から炸裂するエリカ節の数々。
此処でエリカのティーガーⅡが急発進し、ルクリリのマチルダⅡも其れに続いて急発進し、戦車を使ってのカーチェイスならぬタンクチェイスが
勃発!!
決して広いとは言えない商店街の道路を突き進みながら、互いに砲撃を行っていく――が、行間射撃である為に決定打には至らない。


「その程度の豆鉄砲でティーガーⅡの装甲を抜けると思ってんの?
 私の戦車を撃破したいならブラックプリンスかトータスでも持ってくんのね!――まぁ、アンタ等の所じゃ無能なOG会の無意味な派閥争いの
 せいで無理でしょうけど。」

「あぁ、其れには同意見!OG会のババア共は余計な口出しするなっての!マジでムカつくわ、あのクソババア!」

「クソババアだなんて下品よルクリリ……大便お婆様と言いなさい。」

「そっちの方が言われた側としちゃダメージデカくないか?」

「でしょうね……同じ要領でクソ喰らえって言ったら、本気でダメージでっかいわぁ……ところでルクリリ。」

「なによ逸見?」

「バーカ。」

「うおぉぉぉぉぉ、シンプルにムカつく!!」


が、エリカの方は敢えて決定打にならない砲撃を行っていただけであり、これも一種の挑発だ――『やろうと思えばお前なんて何時でも倒す
事が出来る』と。
そんな攻防を続けながら、ティーガーⅡは少し長めのストレートに入ると、其処で速度を上げ、同時に追ってくるマチルダに挑発弾ではない一
撃の照準を合わせる。


「坂口、そのまま進みなさい!アイン、行けるわね!?」

「あいー!!」

「ふ、任せろ……この一撃でアイツ等を仕留める!Das ist entschieden!(これで決まりだ!)」


――ズドォォォォォン!!

――キュポン!



『聖グロリアーナ、マチルダ走行不能!』


放たれた一撃は吸い込まれるようにルクリリのマチルダⅡに向かって行き、そのまま正面装甲をぶち抜いて白旗判定に!……撃破直後に
キューポラからルクリリが煤塗れの顔を出してなんか文句を言っていたが、其れはまぁ当然の事だろう。
ともあれ、これで聖グロの残存車輌はチャーチルのみなので、みほとエリカが健在である大洗が絶対有利と言える状況になったのだが……


「よし!此れで残るはダージリンだけね?……って、坂口!もう良いわ止まりなさい!これ以上進んだら――!!

あいーーーーーーー!?


此処で操縦士の桂里奈が痛恨の操縦ミス!
本来ならば減速しなければいけないカーブで、誤って加速してしまい、カーブを曲がり切れずにコーナーにある旅館にダイレクトアタック!!

虎の王と呼ばれる重戦車が突っ込んだ旅館は物の見事に崩壊!――可成りの被害ではあるが、保証は連盟の方でしてくれるから問題は無
いのである。


「よっしゃー!此れで建て替えられる!」

「運が良かったな、マッタク。」


実際に観客である、この旅館の主人は、事実上無料でリニューアルできると言う事に歓喜の声を上げていたのだから。

だが、其れだけの事があっただけに、誰も気付いてはいなかった――ティーガーⅡの撃破アナウンスが流れていないと言う事に。








――――――








エリカがルクリリを撃破した頃、みほは大通りの交差点でダージリンと対峙していた。――大洗女子学園の隊長である隻腕の軍神こと西住み
ほと、聖グロリアーナの隊長であるダージリンが、互いの戦車のキューポラから上半身を乗り出して睨み合ってる様は実に迫力がある。
尚、この練習試合、みほとエリカと小梅は黒森峰から持って来たパンツァージャケットから黒森峰の校章を取り除いた状態の物を纏って居る
だが、此処でみほは上着を脱ぎ、肩に上着を引っ掻ける形で羽織り、上着がまるで外套の様に見えている。


「流石ですわねみほさん……正直、無名校が此処までやるとは思っていませんでしたわ。」

「うん、私も此処まで出来るとは思っていませんでしたダージリンさん――如何やら大洗女子学園は、私が思っていた以上に戦車道の才能に
 恵まれた人が多かったみたいです。」

「其れは何とも……本来なら埋もれていた人材が、みほさんと出会った事で開花したと言う事かしら?
 戦車道の発展の事を考えるならば、戦車道の神様が貴女を大洗に転校させたのかも知れないわ……今の貴女は、黒森峰に居た頃よりも
 生き生きしていますもの。
 ねぇ、みほさん、戦車道は楽しいかしら?」

「はい、とっても!!」

「其れは、素晴らしいわ――其れが聞けて安心したわみほさん……決着をつけましょう!!」

「望む所です!!」


今のみほは、正に『軍神』その物だが、ダージリンもそのオーラに怯む事無く、『決着をつけよう』と提案する。
そして、其れを拒むみほではない――売られた勝負は買うのがみほであり、そもそもにして西住流に撤退の文字は無いのだから、この状況
で売られたタイマン勝負は断る理由が無い。

とは言えこのタイマン勝負は派手な戦車戦ではなく、一撃のタンクジョスト!


「行くよ!」

「行きますわ!!」


みほとダージリンの掛け声とともに、パンターとチャーチルは発進!
互いに真正面からのぶつかり合い――になる直前で、パンターが急旋回してチャーチルの側面に回り込み、其れを追う形でチャーチルの砲
塔が回転し、パンターが停車すると同時に、両者の主砲が火を噴く!!


――ズガァァァァァァァァァァァァァン!!

――キュポン!

――シュポン!



『大洗女子学園、パンター行動不能。
 聖グロリアーナ、チャーチル行動不能!!』



結果は相討ち!
ダージリンは装甲で覆いようのないターレットリングを狙い、みほもまたターレットリングを狙ったのだが、其処で練度の差が出てしまい、チャ
ーチルのターレットリングから僅かに外れてしまったのだ。

が、これならば撃破されたのはパンターのみとなるだろう。
だが実際には、チャーチルも白旗判定になっていた……ならばチャーチルを撃破したのは誰なのか?


「ギリギリ間に合ったわね……」

「あい~~……」


其れを行ったのはエリカだ。
旅館に突っ込んで爆破炎上した事でティーガーⅡは沈黙したかたと思われていたが、大ダメージを受けても白旗判定には至らず、ギリギリの
状態ではあるがみほのもとに駆け付け、チャーチルを撃破して見せたのだ。


「とは言え、可成り無茶したし、此処までね。」


――キュポン!


『大洗女子学園、ティーガーⅡ行動不能!』


だが、その無茶が祟って、チャーチルを撃破すると同時にティーガーⅡからも白旗が上がる……ダメージレベルが限界超え、撃破判定されて
しまったのだ。


『大洗女子学園、残存車輌0!
 聖グロリアーナ、残存車輌0!――よって此の試合、引き分け!!』


結果、試合は引き分け。
初陣を勝利で飾る事は出来なかったが、4強の一角である聖グロリアーナを相手に壮絶な痛み分けの末の引き分けならば、結果としては上
々だろう。








――――――








Side:エリカ


ふぅ……終わればドローか……大洗の練度を考えると、引き分けに持ち込めただけでも僥倖って言えるわ――普通なら完封されて負けてる
所だけど、そうはならなかったからね。
だけど、大洗の控室は若干――と言うか相当な殺気に満ちてるわ。
まぁ、原因は言わずもがな河嶋先輩なんだけどね。



「勝てなかったからあんこう踊りと言うのは未だしも――何であそこで無理に撃破をしようとしたんですか河嶋先輩?……私言いましたよね?
 無理な撃破は狙うなって……なのになんで、無駄玉を使った上に1輌も撃破出来ずに負けるとか、戦車道舐めてます?」



みほ……此れは相当にヤバいわね。



「い、いや西住、私達は自分のすべき事をしようとしただけであって……」

「その結果が無駄玉撃って撃破ゼロじゃ笑えません……と言う訳で河嶋先輩はギルティ――そして小山先輩、会長さんは何をしてたのでしょ
 うか?」

「干し芋喰らってサボってました。」

「会長、ギルティ。」

「あはは、やっぱりか……」

「以降、川嶋先輩は装填士に専念、会長さんは砲手を務めるように。
 此れは、お願いしてるんじゃなくて隊長命令です。いいですね?」

「ちょ、西住?其れは、幾ら何でも……」

「アタシが砲手って……行けるかねぇ?」

い・い・で・す・ね?

「「はい!!」」



で、そのみほの裁きにより河嶋先輩と会長には罰が下され、共に二等兵以下よりも階級が下の三等兵へ降格となり、河嶋先輩は装填士専任
になり、会長さんは砲手へ強制コンバート。ま、当然よね。

そして試合で良い働きをした私と小梅と澤は昇進して、私と小梅が三佐、澤が二佐。
勿論みほも昇進して、一佐から准将に昇格――隻腕の軍神の二つ名にふさわしい階級になったわね。


んで、結局あんこう踊りはやる事になったんだけど、みほの参加だけは阻止したわ……片腕のみほにとって、ピンクの全身タイツを纏ってアレ
を踊るのは晒し物になる以外の何者でもないからね。

後、出港前にみほがダージリンからティーセットを送られた事も追記しておくわ――聖グロがティーセットを送るのは、好敵手だと認めた証だ
って姉さんから聞いていたからね。
聖グロにライバル判定された以上、大洗女子学園が無名の弱小校って言う事は有り得ないわ――目指すは全国大会優勝!!
その栄光をこの手で捥ぎ取ってやるわ!!








――――――








Side:まほ


みほ達が転校した大洗女子学園が20年ぶりに戦車道を復活させると聞いてもしやと思ったが、まさかこの短時間で聖グロと遣り合い、結果と
して引き分けとは思いもよらない結果だったよみほ。
まぁ、この結果はある意味で上出来なんだが――



『あ、ああん、あん!あ、ああん、あん!』



ネットにアップされたこの動画は一体……ピンクの全身タイツを身に纏って一心不乱に踊るエリカと小梅は全く想像出来ん……まぁ、何であん
な事になったのはかは気なるが、其れは追及しないのが吉だな。

しかし、素人集団を率いて聖グロと引き分けるのは至難の業――大洗女子学園、若しかしたら今大会の台風の目になるかも知れないな。

尤も、大会は荒れれば荒れる程面白くなるものだけれどね――今年の大会も、楽しみになって来た……大会で戦う事になったその時は、私
も手加減しないで行くからな!!
大会で会える日を、楽しみにしているぞ、みほ、エリカ、小梅、澤、武藤!!――最高の試合を、戦車道の素晴らしさと言うモノを見せつけてや
るとしようじゃないか。


どんな組み合わせになるかは分からないが、今年の全国大会は例年を遥かに上回る激闘が繰り広げられるのは間違い無い――私の予想
を上回る事があるかも知れないけどね。

何にせよ、聖グロ相手に痛み分けにで持ち込む事が出来た大洗女子学園は要注意だ――彼女達は、今年の大会を大きく掻き乱してくれる
だろうからね。

今年の全国大会は、面白い事になりそうだな――!










 To Be Continued… 





キャラクター補足