Side:トーマ


目は見えないけど、この声はスゥちゃんで間違いない……良かった、リリィとアイシスの事を頼める人が居てくれて。
スゥちゃん、見ての通りこの2人は瀕死状態だから、直ぐに管理局で保護してほしい……2人は俺のせいでこうなった……こうなっちまったんだ。


「トーマ……其れは良いけど、貴方は!貴方は如何するの!?」

「如何するって……如何すればいいんだろうな俺?
 俺自身、リリィとアイシスをスゥちゃんの元に連れてこられたのは奇跡だと思ってんだ……俺はもう、只の殺戮兵器に成りかけてるんだからなぁ…!」

「そんな……嘘だよねトーマ!!」


嘘じゃねぇんだスゥちゃん………今この瞬間にも、俺の中では自分でも抑えきれない破壊と殺戮の衝動が渦巻いてるんだ………!!


だから、一刻も早く此処から離脱してくれスゥちゃん!……そうじゃないと、俺は大好きなスゥちゃんすら殺しちまうかもしれないんだ……本当に…!!
それに、俺の理性ももう持たない………お願いだスゥちゃん、俺が俺である内にリリィとアイシスを連れてこの場から逃げろ!!

そして、管理局の人達と出来るだけ遠くに逃げるんだ!
俺が……俺じゃなくなったら……手加減は出来ない……さっきの『ゼロ』をぶちかますのは間違いねぇ!だから行けスゥちゃん!!
アレがもう一度放たれたら、其れこそ今度こそこの場に居る全ての者の命を喰らいかねない……いや、間違いなく喰らい尽くすんだ……だから…!!


「待って、トーマ!何処に行くの!!!」

「化け物になって死ぬのなんて絶対に嫌だ……俺は俺として死にたい!……だからその為にも!!」

「まさか……う、嘘だよね!?そんな事しないよね!!ねぇ、トーマ!!トーマぁぁぁぁぁっぁあっぁぁぁあっぁぁ!!!!」


ゴメン……だけど、バイバイ、スゥちゃん……
















魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force9
闘争の先にこそ未来はある!』











Side ルナ


飛行艇『フッケバイン』から感じた魔力――何ともすさまじいな?
恐らくは其処に捕らえれてるトーマ―が何らかの力を使って、此れだけの事したのだろうが、まさか私となのは以外の全員をダウンさせるとは驚きだ。

或はこれがゼロの特性なのかとも思うが、憶測でモノを言うべきではないか――まぁ十中八九当たっているとは思うが。
だが、トーマが此れに係わっていると言うのならば話は別だ!
ジェイルが言うにはトーマはゼロ因子適合者との事だし、今の一発は確かに危険すぎる――アレの第2射等は考えたくもないぞ。

幸い、突入した3人のバイタルは安定しているようだが、敵艦内と言うのは宜しくない。
星奈は回復の為に艦内に戻ったから、回復次第戻って来るだろうが其れでも数分は掛かる。

総じて、機能回復はエクリプスドライバーのみで構成されたフッケバインの方が早い
――さて、如何したモノだろうな?向こうから何やら通信が入ったようだが、オープンチャンネルではないから聞き取る事が―――


『待てコラクソガキ!今オバサン言うたか!?私の聞き間違いでなければオバサン言うてくれたよなコラァ!!
 こちとら未だ25やぞ!!オバサン言われるようになるんは、未だあと10年は早いわボケナス!ふざけた事言うといてこますぞコラァ!!!』(怒)

『ふ〜〜んだ、オバサンはオバサンでしょーだ!
 大体ここ数年はそっちじゃなくて、管理外世界で色々やってるんだから、態々出張ってこなくても良いじゃない!!』

『アホタレ、なんぼ管理外世界言うても、事によっては出張るに決まっとるやろ!!んな事も分からんのかい、生意気なお子様が!!』




――チーン………


何だろう、行き成りオープンチャンネルから聞こえてきたやり取りに思い切り脱力したのは……
はやて嬢の通信相手は、向こうの艦長か或は操舵責任者と言うところか――声から察するに、恐らくは年端も行かない子供だろうとおもうけれど。


「子供だけに遠慮なしに言ったんだろうね……まぁ、見ず知らずの子供に行き成りオバサン呼ばわりされたらはやてじゃなくてもキレるよ多分。
 だけど、今の状況は向こうにとっては好都合な筈なのに、態々通信をして来たって事は何かあるとは思うけど?」


確かにな。
或は、アレの影響下に於いても全く無事だった私とお前を警戒して、牽制の為の駆け引きを仕掛けて来たかだろうな。


『それにや、アンタ等みたいな鎖も付いてへん凶暴な毒蛇を野放しにしとくはずがないやろ?
 管理世界とか管理外世界とは関係あらへん――凶悪な力持った犯罪集団は、今此処で捕らえて無効化せな、後で新たな犠牲が出る。』



マッタク持ってそのとおりだな。
ならばやる事は一つだ――オイ、聞こえるかフッケバイン!!聞こえたならば返事をしろ!!


『!?』

『ルナさん、オープンチャンネルに割りこんでくるとは、中々に強引やねぇ………』


「私も居るからね、はやて?」

『はいはい、分かっとるよなのは。
 ホンでルナさん、態々オープンチャンネルに割り込んできてドナイしたん?連中に何か話したい事でもあるんか?』



あぁ……其方に突入した3名と、そしてお前達が確保している民間人3名を即時解放しろ。
そして速やかに武装を解除して投降するんだ、エクリプスの力を犯罪行為に使うお前達をこれ以上黙って見過ごす事は出来ないのでね。

大人しく従うならば、此方とて何もしない。
だが、従わないのならば少しばかり、荒っぽい事をしなくてはならなくなる――私となのはでな!!



――ドォォォォォォォォォォォン!!!



『ほへ?』

『お〜〜〜〜……なのはもルナさんも本気モードか〜〜〜〜!』



まさか、相手との力量差の計れぬ三流でもないだろう?
祝福の月光となった私と、白夜の聖王となったなのはは、この場に居るどんな魔導師や騎士よりも強い。
更に言うならば、わたしとなのはもまたエクリプスドライバーだ――最早お前達が如何足掻こうとも、万に一つも勝ち目はないと理解できたかな?


『んな、んな……私達を追っていながら、自分達はエクリプスドライバー抱え込んでるって如何言う事よ!!
 矛盾してるでしょ絶対に!!私等を追うなら、そのロン毛と片ポニだって捕縛&逮捕対象じゃない訳!?絶対オカシイーーー!!』

『ボケ、私等がやっとんのはエクリプスドライバーの排斥やなくて、犯罪者の摘発や。
 アンタ等が何もせんと、大人しく暮らす言うなら私等とてアンタ等に干渉する気は更々ないんやで?――結局追われんのは自業自得やろ?』


全くその通りだな――ん?


何だアレは?フッケバインの船から何か――アレは、トーマ!?
おい、フッケバイン!如何言う事だ!!何故トーマがお前達の船から離脱して落下している!!!


『あ〜〜〜もう、一辺に聞かないでよ!
 トーマ君は、さっき貴女が言ったように、船に乗り込んできた3人と、こっちで確保した2人を解放するように言って来たの!
 不本意ではあるけど、もう一度さっきのアレを撃たれるのは勘弁だから其れを了承して、現在その準備中――で、彼は勝手に飛び降りて……』



つまり自滅の道を選んだのか!?
自分では抑えきれない凶暴な力、ともすれば触れただけで相手を傷付けてしまう破壊の刃――其れを恐れて自己の消滅を願ったのか!!

冗談じゃない、そんな事をさせる訳には行かない!!



『兎に角、トーマ君のお願いを聞いて、侵入者3名と民間人2名はこっちで排出するから、精々うまく受け止めてよね!
 それから、其処のロン毛が言ってた武装解除をしての投降なんて絶対してやらないもんね!い〜〜〜〜だ!!!!』



好きにしろ……元よりそっちに関しては期待などしていない!!
其れよりもトーマを何とか助けなければ!!なのは、此方の方は任せて良いか?私は彼を助けに行く!!


「大丈夫、問題ないよルナ。
 如何やらはやても考えてるみたいで、ビックバイパーの甲板には冥沙がスタンバイしてるし、雷華とフェイトとノーヴェ達も出たみたいだから。
 全戦力の投入だけど、其れだけに何が起ころうと大丈夫――だからルナは、あの子を助けてあげて。」

「是非もない!!」

自分では抑えきれない力に振り回される辛さは、私が一番よく知って居る。
そして、傷付けたくないが故に他者を拒絶しながらも、しかし本心では助けてほしいと願っている事も知って居る――だからこそ絶対に助ける!!


だってトーマ、今のお前は――嘗ての私そのものだからな!!
お前を助ける事が出来なくては、私を救ってくれた『あの世界のなのは達』に顔向けできそうもないのでね!!








――――――








Side:サイファー


くふ……マッタク恐ろしいモノだなゼロドライバーと言うのは――よもや一撃であそこまで持って行かれるとは思わなかったぞ?
幸い向こうも戦闘不能になったし、トーマの脅しとも取れる交渉で、何とか私達は民間人と共に戻ってこれたが、矢張り消耗は大きいか。

2〜3分休めば回復するだろうが、トーマが船から身を投げたのをフッケバインの奴等が放っておくはずがない。
間違いなく誰かを送り込んでトーマを確保しようとするはずだ――其れだけは何としても阻止しなくてはならない事だが………


サイファー、聞こえる?


なのは!念話通信で、如何した?


トーマって言う子の確保にはルナが向かったから多分大丈夫だと思う。
 だけど、フッケバインの方からも2人ほど、外に出たのが居るみたいだから、そっちの方を何とかして貰っても良い?


ふむ、矢張り連中としてもトーマは欲しいようだな?
了解だなのは、回復し次第即時打って出る――そもそもにしてエクリプスの力で犯罪行為を重ねる連中などは言語道断の極みだからな!!




「ん……んん……あれ?此処は?」


む、目が覚めたか黒髪。
此処は時空管理局の艦船『ビックバイパーXX03』のドッグルームだ……身体の方は大丈夫か?


「こう見えても頑丈に出来てるからそっちは平気!
 でも、そんな事よりも、そこの青髪さんはスゥちゃんさん――ですよね!?」

「え?あ、うん、スバル・ナカジマで――

「無茶と無理を承知でお願いします!今直ぐトーマを助けに行ってあげて下さい!!
 トーマはずっとスゥちゃんさんに会いたがってた……トーマは、貴女の事を本当のお姉さんみたいに思ってたんです!!
 フッケバインから排出されたアタシとリリィを助けてくれた事は嬉しいけど……だけど、スゥちゃんさんにはトーマを助けて貰いたかった――!!!」

「分かってるよそんな事!!!」


ハチマキ?


「私だって、本音を言うなら誰よりも先にトーマを助けたかった!!
 だけど私は管理局員なんだよ?どんな事情があるにしたって、身内よりも民間人を優先にしなきゃ色々問題があるんだよ、本当に!!
 君の言う事も分かるよ黒髪ちゃん!だけど……だけど、トーマを優先して貴女を死なせちゃったら私はきっと後悔するから!だから貴女を助けた!」

――!!……ゴメンなさい、子供の理屈で言いすぎました。
 だけど、でも其れでも――アタシはアタシが友達だって決めた子を一秒でも早く助け出したいんです!
 だから行きます!今この瞬間も泣いてるかも知れないトーマを助けに!!」


ククク……此れは何とも――居る者だな馬鹿と言うのは?……其れも、友の為には危険を顧みない本物の『熱い馬鹿』と言う者はな。
気に入ったぞ黒髪!だが飛び出すのは少し待っていろ、直に私も回復するから一緒に行ってやる。


「少しって、其れじゃあトーマが!!」

「案ずるな、あの少年の下には、既に最強の存在が向かっている。
 それこそ、全ての騎士と魔導師の頂点に立ち、エクリプスドライバーの中でも頂点に立つであろう、無敵にして最強の存在がトーマを助ける為にな。」

「無敵にして最強の存在――?」


魔力ランク測定不能のEXSSSオーバー、魔導ランクも同様に測定不能のEXSSSオーバーにして、エクリプスドライバーと言うチート級キャラがな。
ルナが出張った以上、トーマの無事確保は最早絶対だ、疑う余地もない。


とは言え、フッケバインとか言うアホ共が何をしてくるかは分からんからな?――回復し次第、私と共に出るぞ黒髪――覚悟は出来ているな?


「上等!!友達助ける為ならば限界の1つや2つ超えてなんぼですから!!」



よくぞ吠えた――
この状況に於いても迷わないその意思は気に入った!では助けに行こうか?お前の『友達』をなぁぁぁ!!!








――――――








Side:ルナ


目標視認――其れと同時に、フッケバインと思われる2名の姿が――適当に戦いながら牽制してやり過ごすが上策だろうな。
このままいけば、数十秒後には鉢合わせだが――まぁ、その辺はなのは達が巧くやってくれるだろう――


『Silver Stars“Hundred Million”』


――イィィィィィン……ドガバァァァァァァッァン!!!



ならば私は、どんな攻撃を受けようとも、お前を本来あるべき姿に戻す!!そして救い出す!!
実に凄まじい攻撃だが、フッケバイン――お前達には未来は微笑まん!!この程度は纏めて吹き飛ばしてやる!!バスターレイジ!!!



――ドガバァァッァアアン!!!



此れで無数の射撃はシャットアウトした、寧ろ本番は此処からだろうな……



「久しいなトーマ?――実に5年ぶりだが、私の事を覚えているか?」

「…………」

『接敵確認……殲滅します。』


っと、答える前に一撃か―――如何やらとことんまでやらねば、お前を確保する事は出来ないようだな?







上等だ、お前が御しきれない力に振り回されて暴れると言うのならば、私は其れを止める!
自分では抑えきれない強大な力に苦しむなんて事は――此処で永遠に終わりにしておかねばな!!ブライトハート!!!


『All right.……!!!!』


理屈は如何でも良い……少しばかり待っていろトーマ、お前を其処から絶対に助ける!助け出して見せるからな!!















 To Be Continued…