Side:ルナ
ふぅ……此れで一区切りと言った所かな?
ヴァンデインを滅した事で、支配されていた野良感染者は支配から解放され、フッケバインの操縦士でもあった少女もこうして確保出来たから、エクリプスを巡
る一連の事態は、取り敢えず何とかなったと見ても良いだろう。
「フッケバインの首領は、トーマの力でエクリプスの力を失い、ステラ・アーバインもエクリプスとしての力はとても弱くなってるからね。
懸念材料があるとすれば、現場から立ち去ったヴェイロンだけど、彼はリアクトプラグを手にした事で、大分性格的に丸くなったみたいだから、現状は放置し
ても問題ないと思う……何かしでかしたらその時は、私達が出張れば何とかなるだろうしね。」
「マッタク持ってそのとおりだな。」
まぁ、ヴァンデインコーポレーションへのガサ入れやら何やら、面倒な事はあるんだろうが、其方は管理局に一任するとしよう。
私達はあくまでも『私設武装組織』――必要があれば、戦力を貸す一種のテロリストだからね?……政治的な事にまで干渉する心算は更々ないからな。
だが、ヴァンデインコーポレーションに対する制裁は生温い物では許さんぞ?
如何に、奴の独断の部分があるとは言え、ハーディス・ヴァンデインの暴走を見抜けなかったのは企業の管理体制に問題があると言わざるを得ないからな。
「まぁ、その辺は私等に任せて貰おか?
末端の社員まで処分する事は出来へんけど、少なくとも係長以上のポストに着いとる連中に関しては、逮捕するには充分過ぎる証拠が出そろっとるからね。
――其れもまた、ドクターとウーノさん、クアットロさんが色々頑張ってくれたおかげやけどな♪」
まぁ、ヴァンデインを倒してはいお終いとは行かないだろうからな。
しかし、社内の重要機密を、ハッキングして引き摺り出すとは全く持って見事な物だなジェイルもウーノもクアットロも。
兎も角、此れでエクリプスは、本当の意味で終焉を迎えるのだろうな。
魔法戦記リリカルなのは~月の祝福と白夜の聖王~ ForceFinal
『月の祝福と白夜の聖王』
――其れから数日が経ち……
「うわ、また新たな埃が出て来たよ此れ!
ヴァンデインコーポレーションが、今度は脱税と粉飾決済の疑いだって!!――エクリプス云々以前に、トンでもないブラック企業だったんじゃないの此れ?」
「否定……出来ねぇよなぁ流石に。
違法にエクリプスの実験してたってだけでも、トンでもねぇのに、社員の横領に脱税に粉飾決済……後は、どんな埃が出て来るんだろうな……」
マッタクだな。
ハーディス・ヴァンデイン1人が狂っているのかと思って居たら、会社全体が色々ぶっ壊れていたとは冗談にしても酷過ぎると言うモノだ……流石に笑えんよ。
何にしても、ヴァンデインコーポレーションは企業としては完全に死んだと言って過言ではないだろうね。
重役ポストは軒並み逮捕され、研究成果も押収され、更にこの不祥事が発覚して以降、企業株は大暴落と来ているからな……まぁ、此れまでの報いと思え。
「ですよねぇ……エクリプスがなければ、アイシスやリリィと出会う事は無かったかもしれないとは言え、やっぱアレは存在して良いモンじゃないと思うし。
――時に、ルナさん達は此れから如何するんですか?俺としては、もう少し色々教わりたい事もあるんですけど……」
「……まぁ、もう少しだけ此方に居る心算だが、六課はスタッフが優秀だから、事後処理に手を貸す事もなさそうだ。
恐らく、なのはがはやてと話を付けるだろうが、どんなに長くても3日後には管理局からはお暇する事になるんじゃないかと思うよ。矢張り、私達の様な組織
と、管理局が表立って協力体制を結んでいたと言う事実は、あまり許容される物ではないからね。」
「そう、ですか……」
そんな顔をするな、何も今直ぐ居なくなる訳じゃない。
管理局を正式に去るまでの間位ならば、幾らでもトレーニングや、新しい服のモデルになってやるから安心しろ、トーマもアイシスも。
「「本当ですか!?」」
「おや?少なくとも私やなのはは、お前達に嘘を言った記憶はないが?」
「「確かに。」」
だろう?
それに、私だってもう少しトーマを鍛えてみたいし、アイシスのデザインした素敵な服を来てみたいのでね――残り短い時間を、有意義に過ごそうじゃないか。
それにしても、随分と長い時間が経ったように感じたが、今回の件に係わってからは、まだ半年程度しか経って居ないんだよな……其れだけ濃い時間だった
と言う事か――其れとも、久しぶりの大きな戦いがそう感じさせたのか、其れは分からないがね。
――――――
Side:なのは
それじゃあ、此れで良いかな?
必要な事は書き込んだし、印も捺したから書類としての体裁は整ってるでしょはやて?
「……OKや。
六課とリベリオンズの協力体制は、あくまでも『契約』の上に成り立ってるもんやから、契約が満了した後に契約の継続を行わなければ、其のまま契約終了
やで……まぁ、ぶっちゃけて言うと、書類上でちゃんとしとかんと、要らん問題も出て来るから作っただけに過ぎへんけどな。
けどまぁ、其れは其れとして、改めて礼を言うでなのは――リベリオンズの協力がなかったら、多分今回の件は解決出来なかった筈や。
それどころか、対処が後手後手に回って、被害をもっと大きくしてた可能性もある……やから、ありがとうなのは。六課隊長として、そして友達としてな。」
「礼だなんて……当然の事をしたまでだよはやて。
エクリプスの事は見過ごせなかったし、何よりも『友達からのお願い』を無碍にする事は出来ないし、私は其れが出来る程薄情じゃない。
って言うか、正しい事をしようとしてる友の願いを聞き入れないって言うのは、私の――高町なのはの『流儀』に反するからね。」
「己の流儀は曲げないか……ホンマ、かっこえぇなぁなのはは!!同じ女性でも惚れそうやで!!
でも、その流儀と信念が心強いで――もしもまた、今回みたいな弩デカいトンでもない事が起こりそうなその時は、また力を貸してもろてもえぇかな?」
勿論だよ。
白夜の聖王が率いる反逆者の集団は、この世界の理不尽や不条理、蔓延る悪に反逆の刃を向ける一団だからね。
余り表立って協力するのは問題かも知れないけど、私達に出来る事なら可能な限り力を貸すからさ。
「そん時は頼むわ……まぁ、そん時なんぞ来ない方がえぇんやけどね。」
「其れは確かに。」
「そやろ?」
マッタク持ってね。
確かに、私達が協力する事態が訪れないって事は、其れは平和の証でもあると同時に、協力しなくても夫々で対処できる程度の事しか起きていないって言う
事に他ならないからね。
「まぁ、またお互い違う世界で生きる事になるけど、元気でななのは?」
「はやてもね。」
そしてこの日から三日後、特務六課は一応の解散を迎え、私達もまた六課との協力体制に一応のピリオドを打ち、夫々の元の生活に戻って行くのだった。
――――――
No Side
其れからの事を少し話そう。
あの事件後、トーマは自ら志願する形で正式な管理局員となり、エクリプスの特性を生かして危険な災害現場などに出向いての人命救助などに尽力し、数年
の後に、高町美由希、スバル・ナカジマに次ぐ『三代目エース』として、管理局内で名を馳せる事になる。
リリィとロサの2名もまた、トーマと同様に管理局員となり、トーマのパートナーとして忙しい日々を送っている。
両名とも、管理局の癒し存在となっており、特に災害現場に於いては、被災した人々を励まし勇気づける存在として頼りにされている。
因みに、マッタクの余談ではあるがリリィは紆余曲折を経て、トーマとは恋人関係になる事が出来たらしい。
アイシスは、事件後『嘱託』となり、有事の際以外はフリーのデザイナーとして、各地を旅しながら己のスキルを磨いている。
元々器用だったアイシスだが、あの事件の際に『色々』鍛えられた影響で、より手先が繊細になり、結果として生み出される服や装飾品は、物凄くレベルの高
い逸品となり、旅先で大人気となって居る。
そして、この人気に後押しされる形で、数年の後に『トップデザイナー』として、アイシスの名は全国的に知られるようになるのだった。
この3人以外の面子については、其れほど変わりはないと言って良いだろう。
誰もが、充実した日々を送り、人生を楽しんでいるのだ。
そうして時は流れ、世代交代が起こり、新たな世代が台頭していくのが世の常だ――が、その流れの中で、何時しか、伝説が生まれて行った。
世界に危機が訪れた時に現れる一団の伝説。
その一団を率いるのは黄金色の髪の聖王と、茜色の髪の冥王。
其れに尽き従うのは、月の祝福と祝福の風――そして、聖王の従者でありながら紫天の王である者と、力の雷と理の炎と無限連環の盟主。
何処からともなく現れた、その一団は圧倒的な力を以ってして、世界に仇なす存在を塵芥に変えてしまったらしい。
そしてこの伝説は、何時しか御伽噺として語り継がれる事になるのだった――
――――――
Side:ルナ
アレからもう数百年の時が経ち、なのはとはやて嬢も、遂にその寿命を終える時が来たか……
「さ、リオン殿がお待ちです……。お二人とも、ごゆるりとお休みを……」
「……そやね……。ほんならおやすみな、アインス、リイン、アギト、ルナさん、なのは、王様に星奈、雷華にゆうり……」
「うん、おやすみ、ルナ、アインスさん、はやて、ツヴァイにアギト、冥沙に星奈、雷華にゆうり……。なはとも、一緒にね?」
言われずとも、我等の魂は何時でも貴女達ともある――其れだけは、1000年経っても変わりませんよ。
「かも知れないね……ふふ、ありがとう皆。――大好きだよ。」
「ありがとな、皆……」
「「おやすみなさい…………」」
…………午後4時31分、なのはとはやて嬢の脈の停止を確認――長い間、お疲れ様だったな2人とも。
さて、我等の主は眠りに付いた故に、我等も暫しの眠りに付くとしよう――次なる白夜の主が現れるその時までな。
「うむ……そうであるな。」
「待ちましょう、新たな主の現れるその時を。」
「流石に疲れたし、ぐっすりと眠ろうとしようかな~~~♪」
「雷華ってば……でも、ゆっくり休むのも良いかもしれませんね。」
其れが、我等の使命でもあるからな。
ふふ、アインスとツヴァイ、其れにアギトも機会が有ればまた会う事が出来ると良いな?
「その機会がある事を願っているよ。」
「楽しみにしてるです♪」
「ま、アンタ達も達者でな!」
お前達もな……さぁ、暫し眠りの時だ――――
――――――
――数百年後
Side:???
私の家には、昔から伝わる一冊の魔導書がある。白いハードカバーで、其れに鎖が巻きついた不思議な魔導書が。
この鎖には継ぎ目が無く、しかも鍵もないから外す事が出来ないみたいで、此の魔導書を使う事が出来たのは、私の御先祖様の中でも1人だけだったの。
だけど、そんな不思議な魔導書が、私には物凄く大切な物に思えた。
物心ついた時には、此の魔導書が傍らに有ったし、有るのが当然の生活になって居たからね。
そして―――
――カッ!!!
「此れは……!!!」
私の10歳の誕生日、魔導書が突然活性化して、大きく脈打ち始めた……此れは一体、如何言う事なの?
――バキィィィン!!!パラララララララララ!!!
しかも鎖が砕けて、勝手にページが!!
『Ich entferne eine Versiegelung.……Anfang.(封印を解除。……起動します。)』
な、なんなの?
「白夜の魔導書の起動を確認。」
え?
何時の間にか、私の周りに人が……長い銀髪のお姉さんと、長い栗毛のお姉さん、青髪を一本に纏めたお姉さんと、銀髪ショートカットのお姉さん、そしてウェ
ーブの掛かった金髪が特徴的な女の子……此れは一体?
「我等、白夜の主を守護せし守護騎士なり。」
「白夜の空に集いし反逆の剣………」
「ヴぁいすりっちゃ―――」
……はい?
「~~~!!この戯け、肝心の所で噛みよってからに!!
貴様が締めをやりたいと言うから任せたのに、何と言う体たらくか!!其処に直れ、我が直々に制裁を下してくれるわ!!!」
「そんな~~~!!だって、意外と言い回しが難しいんだよ王様!!
書の中で、何度も練習したけど、僕達の凄さと強さとカッコよさを伝える為の言い回しを考えてたら、つい噛んじゃったんだって!!」
「知らぬわアホンダラ!!
貴様がとちったせいで、数百年ぶりとなる覚醒が台無しだ!!」
えっと、此れは一体何なのかな?――取り敢えず、喧嘩はダメだよ?みんな仲良くね?
「……そう言う事ならば仕方あるまい。」
それで、貴女達は一体誰なんですか?
行き成り魔導書から現れて……
「我等はヴァイスリッター……白夜の主を守護を司る守護騎士です。
貴女が正式に、白夜の主となった事で書が起動し、我等が現れたのです―――と、申し遅れました、私が騎士の将『リンフォース・ルナ』です。」
「星奈です、以後宜しくお願いします。」
「ゆうりです♪」
「えっとね~~、僕は雷華だよ~~!
僕に掛かれば、どんな相手だって、一撃必殺!!頼りにしてよね♪」
「こやつはマッタク……我は冥沙、白夜とは異なる力を統べる力を持っておる……まぁ、宜しく頼むぞ。」
私の騎士達……白夜の騎士達――にゃはは、何となく信じられないよ。
でも、そうなった以上は私も頑張るよ!!――宜しくね、皆♪
「此方こそ……と、時に名を覗っても宜しいでしょうか?
使えるべき主の名を知らないと言うのは、守護騎士としての汚点となりかねませんからね。」
其れもそうだね。
私の名は『ナノハ』。
ナノハ=ゼーゲブレヒト=タカマチ――其れが私の名だよ。
「ナノハ!……よもや、もう一度その名を聞く事が出来るとは思ってもいませんでした……では、改めて宜しくお願いしますよナノハ――我等が主よ。」
うん、目一杯頑張って行くよ!!!――何よりも、今日というこの日が、私の新たな始まりの日になりそうだからね。
宜しくお願いね、皆!!
「「「「「応!!」」」」」
The End
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