Side:ルナ


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!


「さてと、こうなった以上は加減は出来んぞヴァンデイン……今ならば、降参し大人しく投降すれば命まではとらんが、さて如何する?」

祝福状態で更にTran-S・A・Mを発動した私と、聖王の力を解放したなのはと、冥王の力を解放したはやて嬢、そして己の持つ力を全開放し、己の力で顕現し
たレヴァンティンのカートリッジをロードしたアインス――万に一つも、貴様に勝ち目などないが?


「ぎあははははははは!!其れが何だね?
 確かに君達は強い、其れは認めるが、自己進化の権利を得た私の敵ではないよ?寧ろ今の私からしたら、君達如きは虫けらだ……踏み潰してあげよう!」


「……如何やら、暴走した事で冷静な思考すら失われたらしいな――此れは、正真正銘の化け物と言ったところか。」

こうなってしまった以上は、トーマのゼロでもヴァンデインとエクリプスを分断する事は不可能だろうね。

よしんば、分断できたとして、此れだけ変異してしまった身体を元に戻す事など出来ないからな………だから、せめてこの手で葬ってやろう。


「葬る?この私を?……笑えない冗談だね。
 其れに、神となった私に対して、君は些か頭が高い――其処で頭を垂れていると良い!!!」


――ドゴォォォォォォン!!



誰が貴様如きに……まぁ、外したとは言え、床を抉るその拳打は大したモノだけれど――其れがお前の本気だとしたら、矢張り私達の敵ではない様だな?


「なに?」

「だが、おかげで理解したよお前は力を手にしただけの三流以下だとね。」

今から私達が其れを証明してやる――精々『絶望』を胸に抱えて地獄に落ちて行くが良い……薄ら笑いのクズが!!!












魔法戦記リリカルなのは~月の祝福と白夜の聖王~ Force49
『終息の光~Starlight Breaker~』











Side:なのは


うん、私とはやての傷も完全回復したから、此処から反撃だね。
しかも、反撃メンバーにはルナとアインスさんも加わってるから、何が如何なっても負ける気はマッタク起きないよ……精々、双天の主従の力を見ると良いよ。


「死ねぇぇぇぇぇぇえぇぇぇ!!!」

「誰が死ぬか……死ぬのは貴様だ!!」


――メキィ!!!


「ぐぼぉ!?」


「其処を見ている……これで終わりではない!!!」


――ズバァァァ!!!


「そんな……反応できないとは!!」


「マダマダ此処からや!!穿ち貫け、クラウソラス!!!


――ドゴォォォォォォオォン!!!


「が……馬鹿な!!……この私が、独自進化の権利を手にした私が、こんな所で朽ち果てる等、そんな事が認められるか!!否、有ってはならない事だ!」


自意識過剰って、多分こう言うのを言うんだろうね……マッタク、聞いてる方が呆れて来る内容としか言いようがないよ。
この期に及んで、あまつさえ化け物になり下がってなお、其れだけの事が言えるって言うのは、別の意味で大したものと言えるかもしれないけど、馬鹿だね。


「なに?この私が馬鹿だと?
 流石に其れは聞き捨てならないねぇ?死にたいのかな君は……お望みなら、殺して差し上げるよ?」



望んでないから要らないよ。
と言うか、馬鹿って言われた事が解せない?……だとしたら、凄まじい盆暗だね彼方は――貴方の言ってる事は只の誇大妄想で中身は何処にもないよ。

だから全ての言葉が軽い――信念も何もない誇大妄想を口にしてるだけじゃ、私達に勝つ事は出来ない。尤も、貴方は手にした力そのものも完全に使い熟す
事が出来ていないみたいだけれどね。


「使い熟せていない?」

「その、醜く変異した姿が証明しているでしょう?
 その姿になっても尚、人間としての思考を維持しているのは大したモノだけど、そうなったという事は、つまり貴方は『種』に身体を乗っ取られたって言う事。
 身体の変異は、体内のウィルスが宿主を生かそうと、無理矢理作り替えた結果であって、決して進化の結果なんかじゃないんだから。」

「何を言うかと思えば……下らないね。
 ウィルスが宿主を死なせないためとは言え、其れはつまり致死量のダメージを受ける度に、其れに耐えられる身体に変化すると言う事だ。
 果たして、此れを進化と呼ぶ事が出来ないのかな?」



まぁ、如何思うかは人夫々だから、貴方が自身のモンスター化をどう捉えるかは自由だけどね――でも、少し私とのお話に集中し過ぎだよ。


「Sind Sie in Ordnung?Kumpel wolf!(アーユーOK?バスターウルフ!!)」


――ドゴォォォォォッォン!!!


「がぁ!?……後ろから……私の注意を逸らす為に長話を――!!」


こんな単純な手に気付かないだなんて、本気で呆れかえるね。
それ以前に、種の力を手にしてるとは言え、貴方は戦いに関してはマッタクの素人だって確信したよ。――もしも玄人だったら、こんな手には引っ掛からない。

だから、此れを避ける事も出来ない。

此れで決めるよ?ディバイィィィィィィィィン……


――瞬!!


「消えた!?一体何処に………ま、まさか………!!」


そのまさか、貴方の目の前にだよ。
流石に瞬間移動とはいかないけど、エクリプスの力と聖王化を併用すれば『目にも映らない速さ』を出す事は出来るんだよ私でもね。

其れを利用して、チャージの瞬間に肉薄させて貰った。
そして、この一撃は避ける事は出来ない――零距離からの砲撃は、発動したその時に必殺必中が確定してるんだから!!


消え去れ……バスターーーーーーーーーーーーー!!!



――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!



――シュゥゥゥゥゥゥゥ………




ふぅ……上半身は完全に吹き飛んだみたいだね。
如何にエクリプスと言えど、心臓と、再生を命じる脳の両方が無くなってしまえば再生をする事は出来ないから、此れで完全決着って言うところかな……?


「だと思うが……如何にも、アイツが此れで終わるとは思えんのだが……」

「やっぱりそう思う?」

「奴さんのエクリプスに対する執念とかを考えると、如何してもなぁ?」



――ムクリ……



「そして、その予感は如何やら『大当たり』の様ですね。」


ホントにね……下半身だけが起き上がるって、B級ホラー映画そのものの光景だよ。それに、起き上がって来たって言う事は――


――ブシュルゥ!!!


其処から、新たな上半身が生えてくるわけだからね。
しかも、只再生しただけじゃなくて、また姿が変わってる――両肩が肥大化して翼のようになり、手には鋭い爪が生え、背中からは3本目の腕が生えて、此れ
はもう、誰が何と言おうと『正真正銘の化け物』だよ。

だけどヴァンデイン、頭と心臓を吹き飛ばされて、如何して再生が出来たの?


「さっき自分で言っていただろう、エクリプスが宿主を生かす為に、強引に体を作り変えていると。
 上半身は吹き飛んでも、下半身のエクリプスが其処から再生を行うという仕組みだ――故に、私を殺すには細胞レベルで焼き尽くす以外に方法は無い!」



成程ね……だけど、其れ位はこの面子には雑作もない事だよヴァンデイン。


「確かに、君達を纏めて相手にするのは少々骨が折れると思い知ったが、1対1で各個撃破ならば、その限りは無いのではないかな?」


え?


――ヴィオォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!


な、此れは封鎖結界!?
それも、只の封鎖結界じゃなくて景色すら一変させるほどの結界って……これも『種』の力だって言うの?


「くははははは!此れが最終決戦のステージだ。君達には、此処で私が神となる為の生贄になって貰おうじゃないか。
 古来より、生贄は美女に限ると言うが、君達クラスの美人ならば申し分もないからね?――先ずは、リインフォース・ルナ君を血祭りに上げるとしよう!!」



ルナ!?


「君達は其処で大人しくして居たまえ。
 この結界内部では、私と1対1で戦う権利を持って居る者しか動く事は許されない――精々、月の祝福が血の海で溺れ死ぬ様を眺めていると良いさ。」


「ふぅ……その程度で、私を倒そう等とは大した自信だなヴァンデイン?だが、貴様では私を倒す事など絶対に出来ん。
 其れに、私達が貴様が神となる為の生贄だと?……冗談は顔だけにしておけ、寝言は寝て言え、戯言はラリッテから言え、寧ろ身の程を弁えろ大馬鹿者。
 大体にして、誰が血の海で溺れ死ぬって?……血の海で溺れ死ぬのは貴様の方だヴァンデイン――私を最初の相手に選んだ事を、冥獄で後悔しろ。」


そう言う絡繰が……だけど、動けない以上はルナに任せるしかないね。
でも、ルナだったら絶対に負けない――だって、私達4人の中でもずば抜けて強いんだから、負ける筈がない。あり得ないよ。

身体が動かなくなった事には驚いたけど、ルナがヴァンデインの相手をするなら全然問題は無い――だから、白夜の主として、月の祝福に命ずる。

「力に溺れた愚者を、欠片も残らずに殲滅せよ――出来るよね、ルナ?」

「出来るに決まっているだろう?其れが、白夜の主直々の命であるならば尚更だ――ヴァンデインは、欠片すら残さずにこの世から消し去ってやるさ。」


其れを聞いて安心したよルナ。

どうやら、最終章は此処が最終幕になりそうだね。








――――――








Side:ルナ


ふぅ、まさか私とのタイマンをお望みとは、相当にお前も狂っているなヴァンデイン?私とタイマンで戦おう等、正気かお前?

こう言っては何だが、お前と私では月と鼈どころか、太陽とビー玉程の実力差があるんだぞ?――其れすら、理解出来ない程に壊れてしまったのか貴様は?


「ぎひひ……ぎががが……その差は、既にない……私は神となるべき者だからね!!」


ヤレヤレ、此れは完全にぶっ壊れてしまったようだな。
だが、戦う前に一つだけ答えろ――6年前、キスティにエクリプスを与えたのは、貴様だなハーディス・ヴァンデイン?


「キスティ?……あぁ、そう言えばそんなのも居たねぇ?
 確かに彼女にエクリプスを授けたのはこの私だ――まぁ、彼女は所詮三流だったが、其れなりに貴重なデータは採れたので、其処は感謝しているがね。」



エクリプスの暴走の果てのモンスター化を見て『もしや』と思ったが、ビンゴだったか。――ならば尚の事、貴様を生かしておくことは出来ん。
イタズラにエクリプスの力を使い、其れを撒き散らした下衆が……そろそろ此処で朽ち果てるが良い!!


「私に勝つ心算かい?1対1で。
 単体を各個撃破する位は、私にとっては児戯に等しい!!!――君はもう死んでいいよ!!」


言うが早いか、身体から杭を伸ばして攻撃か――避けるのに難は無いが、あの位置は正確に私の心臓を狙っていたか……だが、小賢しい!!!!



―――メキィィ!!!!



「なにぃ!?……そんな、馬鹿な…!!
 この結界の中では私の能力は倍になり、君達の能力は1/10に制御されると言うのに、何故だ……何故攻撃を喰らうのだぁ!?」


「簡単な事だ、貴様の倍化した力であっても、私の一割の力には遠く及ばない――つまりはそう言う事だ。理解できたか、インテリ眉毛よ!!
 其れだけの力の差が在ったって言う事だ――精々言い訳のネタとして考えておくが良い『相手の方が強かった』とな!!」

此処からは一方的な蹂躙だ……精々お祈りでもしていろ、居るかどうか分からない偶像の神にな!!








――――――








No Side


其処からは、文字通りの蹂躙だった。


「貴様は神となるのだろう?ならば、反撃してみるが良い!!……っらぁ!!!」


――バキィィィィィ!!!


ヴァンデインの攻撃はルナを捉えられないが、ルナの攻撃は的確にヴァンデインに突き刺さり、確実にダメージを蓄積させていく――其処には明らかな『差』が
あるのは間違いないだろう。


「がはぁ!?……何故だ、何故私の攻撃が当たらない!!!」

「何故だと?――愚問だな、貴様が人でなくなったからさ。」

「なにぃ?」


其れでも、此れに納得できないヴァンデインは『何故だ』と喚くが、ルナの一言が其れを一刀両断した。
自分とヴァンデインの差を『人でなくなったから』と言いきったのだ。


「人には心があるが、貴様は種の力を手にしてそれを失ってしまったのだろう――お前の攻撃からは何も感じ取る事は出来なかったよ。
 もしも貴様の一撃に魂が籠って居たら私達も危なかったもしれないが、魂が奈落の底にまで堕ちた貴様の攻撃など、蚊ほども感じない!消し飛べぇ!!!」


――ドガバァァン!!


「ガハぁ!?」



そして其れを証明するかのように、ルナの攻撃は激しさを増していく。
殴りつけ、蹴り飛ばし、肘を落として膝を喰らわせ、時には関節をも破壊していく――正に、文字通りの修羅場が、確実にこの場には形成されていたのだ。


「馬鹿な……そんな、馬鹿なぁ!!」

「喚くな鬱陶しい。
 何れにしても、此れが貴様の限界だ………だから、ここ等で幕引きと行こうじゃないか!!」



――キュゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!


「こ、此れは!!!」

「白夜の主にして聖王『高町なのは』直伝の集束砲だ……此れで貴様を跡形もなく吹き飛ばしてくれる!!


だが、その修羅場もルナからしたら何のそのだ。


「咎人達に滅びの光を。星よ集え、全てを貫く光となれ!貫け閃光――スターライトブレイカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!



――ドゴォォォォッォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!



全てを決着する覚悟は既に決まっているのだから、今更迷う必要などどこにもない。


其れを証明するかのように、なのは直伝の、星をも砕く集束砲が、ヴァンデインであった異形を、文字通りのみ込み、そして貫いたのだった――












 To Be Continued…