Side:アイシス
トーマの方は大丈夫だとして、覚悟は出来てるわね無駄おっぱい!!
私の切り札『白の3000・白龍』と『黒の2400・黒竜』を発動した今、アンタには億に一つも勝利の可能性は無いわ――大人しく降参するのを勧めるけど?
「――!!舐めんなよ、俎板が!
幾ら強力って言っても、テメェの其れは所詮爆薬だろ?……だったら、こちとら対処の方法は幾らでもあるんだよ、タコ助が!!
大体にして、爆薬如きじゃ、アタシ等には致命傷にはなりゃしねえんだぜ?――詰まる所、テメェじゃアタシを止める事は出来ねぇって事だ、理解したか?
分かったら、その道を開けな――大人しく従えば、何もしないで置いてやるぜ?」
そりゃ、何とも優しい事ですこと。
だけど、アンタの提案を受け入れる積は毛頭ないから、その取引は御破談!!――と言う事は、如何言う事か分かるわよね、無駄おっぱい?
「アホが……大人しくしてりゃ長生きできたものを……けどまぁ、お前がその気なら仕方ねぇ。
精々テメェのアホさ加減を後悔しながら逝けや、まな板娘!!――せめてもの手向けとして、アタシの最高の技で逝かせてやるからよ!!!」
そのセリフ、熨斗付けて返してやるわ赤毛無駄おっぱい!!
アタシの切り札2枚が、只の爆薬術と思ったら大間違いなんだから!!――この2体は、爆薬で構成されていても、実体を持ってるドラゴンなんだからね!
「なに!?」
「其れを、その身で知ると良いわ!!焼きつくせ黒竜『ダーク・メガ・フレア』!!
そして、その力で全てを薙ぎ払え白龍!!滅びの……バーストストリィィィィィィィィィィィィィイィィム!!!!!!!」
――キュゴォォォォォォォォォォォォォォォォ……ドゴバガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
手応えあり!!
こう言っちゃなんだけど、アンタはアタシを甘く見過ぎじゃないの?旅歩きの服屋さんでも、護身の為の装備は備えてるから、甘く見てると火傷するわよ?
恐らく、其れを身をもって知る事にはなったと思うけどね。――けど、そんな事より、トーマの方は大丈夫かな?
結構大きな力が弾けたから、流石にどうなったのかは気になるわ……ドレだけ友達として信頼しているとは言え、此ればっかりは――ね。
魔法戦記リリカルなのは~月の祝福と白夜の聖王~ Force47
『Eclipse Zero Resolution』
Side:トーマ
一切の手加減抜きでブチかました『ディバイトゼロ・エクリプス』――其れこそ無差別に放ってたら、この世の全ての命を喰らい尽くしてたかもしれない一撃だ
が、其れだけに、対象をしっかりと指定してぶっ放した今の一撃は相当なもんだと思うぜ?
リリィとロサ、其れに銀十字のサポートも有ったおかげで、手加減なしでブチかます事が出来たからな。
この一撃が成功してくれてると良いんだが――
「く……やるじゃない坊や?
でも、派手な見た目の割に、威力は其れほどでもなかったみたいね?――こうして、私はピンピンしてる訳だし……少し、絶望したかしら坊や?」
まさか無傷とはな――まぁ、俺もアンタをぶっ殺す為にゼロを放った訳じゃないから、生きてくれてたのは逆に僥倖だけどな。
けど、誰が絶望するってんだババア?寧ろ絶望すんのはテメェの方だろ?
「?何を言っているの?――私が絶望する要素なんて、其れこそ何処にもないのよ?」
「……そいつは如何だろうな?」
「え?」
――ガクン!!!
「へ?え?えぇぇぇぇぇぇえっぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇえ!?
な、何で!?如何して飛ぶ事が出来ないの!?空を飛ぶ事くらいは、エクリプスドライバーには造作もない事なのに、どうして!?如何してこんな事が!」
このまま地面とご対面したら地獄に真っ逆さまだから、その辺で助けてやるか――銀十字!
『了解、対象を捕獲します。』
――トサ
「銀十字のページが、クッションに……今まで戦ってた相手に助けられるだなんてこの上ない不覚ね。
でも、どうして行き成りエクリプスの力が使えなくなったの?……魔導書と、ディバイダーもまるで反応しなくなってるし――何をしたのかしらぼーや?」
知りたきゃ教えてやるから、耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ!
アンタは、もうエクリプスドライバーじゃなくなったんだよ、フッケバインのババア!俺が放った『ゼロ』を喰らったその瞬間からな!
「ど、如何言う事!?」
「エクリプスドライバーの最大の特徴は『分断』で、ゼロの力を有する俺は『生命活動すら分断』するほどの力を持ってる――そいつを利用したんだ。
つまり、俺はゼロの力を最大限発揮して、アンタとエクリプスウィルスを『分断』して切り離したんだよ!だから、アンタはもうエクリプスドライバーじゃねぇ!」
「何ですって!?」
今の医療技術じゃ、エクリプスウィルスに対する有効なワクチンは作り出せてねぇし、既に感染しちまった奴に対する治療法もありゃしねぇんだけど、俺の持
つゼロの力なら、唯一エクリプスドライバーを元の人間に戻す事が出来るんだよ!
つっても、此れは俺1人じゃ到底できなかった事だけどな?
ゼロの力と、リリィとロサって言う2人のリアクター、銀十字の書、そして何よりも『絶対に出来るから』って応援してくれたアイシスが居たからこそ、俺は分断
の能力で、ゼロの力でエクリプスと人を分断出来るようになったんだ!!
でもって、ぶっつけ本番の実戦テストだったけど見事に成功って事だぜ!!
完全にエクリプスと融合してる、ルナさん達『零次感染者』を分断する事は出来ないだろうけど、テメェ等一次感染者と、野良感染者である二次感染者だった
ら分断できる事は証明できたしな?
「野良感染者もですって?」
「ゼロの射線上に居た野良感染者は、纏めて分断してやったぜ?適当に落下してるけど、其処は六課のラプター達がフォローしてくれてるから問題なしだ。」
「そんな……ゼロは究極の破壊の力だと言うのに、其れを使ってエクリプスドライバーを元に戻すなんて、正気なのぼーや!?
貴方が如何に足掻こうとも、その力の本質が破壊であることに変わりはない――その力で誰かを救う事なんて出来はしない……貴方は破壊者なのよ?」
うざってぇな……下らねぇ力だけ溜め込んだテメェにゃ未来永劫理解出来ねぇよババア。
力は所詮『力』でしかなく、大事なのはその力の使い様だろ?
病気を治すための薬も、過剰に摂取すりゃ毒になるし、逆に毒物だって使い様によっちゃ薬に成るんだぜ?
なら、破壊の力であるゼロだって、使い方によっては誰かを助ける事が出来るとは思わないのか?
アンタは兎も角、望まずしてエクリプスに感染して苦しんでる人を、此の力で救う事だって出来るんだ――なら俺は、ゼロの力を誰かを救う為に使うだけだ!
ゼロの力を持ってエクリプスを滅し、そしてエクリプスから人々を解放する……其れが俺の得た答えだ!!
そして、誰も殺さない!!エクリプスじゃなくなったアンタじゃ、俺に勝つ事は絶対に不可能だからな――無駄な抵抗はしない事を勧めるぜ、ババア?
「――!!……まさか、こんな結末が待ってるとは思っても居なかったわ。
確かに、エクリプスの力が使えないんじゃぼーやとやり合ったところで、一方的にやられるのは目に見えてるから投降させて貰うわ――此処が潮時ね…」
なら、身柄を拘束させて貰うぜ?
1139時、凶悪犯罪集団『フッケバイン』の首領、カレン・フッケバインを捕縛!!
――ガチャ!!
分かってると思うけど、無駄な抵抗はするなよ?
此の手錠は、ドクター・ジェイルが開発した特殊電子キーでのロック式で、手錠そのものは人工ダイヤモンド製だから絶対に外す事は出来ねぇからな?
「この期に及んでおかしなことはしないわよ……はぁ、フッケバインも今日が終焉か~~……」
「今まで散々好き勝手やって来たんだ、そろそろ年貢の納め時って奴だろ。」
アンタ等みたいのが、何時までものさばってるのは迷惑極まりねぇしな。
其れに、アンタの飛空艇には六課最強の八神司令とアインス師匠、其れにリベリオンズのトップ2であるルナさんとなのはさんが乗り込んでんだから、直に落
ちるのは間違いねぇよ。
「おーい、大丈夫トーマ!?」
「アイシス!マッタク持って問題ねぇよ、今し方終わった所だ。
つーか、その手に持った消し炭は何?若しかしなくても、爆薬で全力全開ブチかましちゃったのか?」
「……否定はしない。
だけどまぁ、こんな状態だけど生きてるから大丈夫よ――こんな状態になってなお、人の事『俎板』呼ばわりして来た時には、本気で殺意が湧いたけど。」
……其れだけで相手が誰だか分かったぜアイシス。
だけど、此れでフッケバインの戦力は壊滅状態だろうな。
飛空艇内部の事は分からないけど、打って出て来た戦力の最後の一人――スコールは、サイファーが対処してるから、負ける事だけは絶対に無いぜ。
終焉は、もう間もなくかも知れないな。
――――――
Side:サイファー
如何した、粋がって出て来た割にはその程度か?
お前の剣攻撃程度は、ルナの剣術と比べれば蠅が止まる程に鈍いぞ?加えて、攻撃の軌道が丸見えな上に太刀筋も稚拙――マッタク持って話に成らん。
貴様程度の攻撃ならば、目を瞑っても完全に避けきる事が出来るぞ?
「おのれぇ……舐めるなぁ!!」
「その殺気が命取りだと何故気付かない?
その殺気のせいで、何処から攻撃が来るかは丸分かりだ――ほらほら如何した?貴様如きは足だけでも充分に対処できるぞ?」
――ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
「馬鹿な……何故これまでの差が!!何故だ、如何しても私は姉さんを超える事が出来ないというのか!!!!」
私とお前の差――其れは恐らく『心の差』だろうな。
私はエクリプスドライバーとなり、リベリオンズの一員となり裏の世界で生きて来たが、人としての理念を失う事だけは無かった。――が、貴様は父さんと母さ
んを殺したその時から、人の心を失ったのだろうスコール?
人でなくなっても人の心を失わなかった私と、己の欲望を満たす為に人の心を捨てた貴様では心の力に大きな差あったという事さ――其れがこの結果だ。
「心の力だと!?」
「貴様はフッケバインに名を連ねてはいたが、フッケバインのメンバーを仲間とは見て居なかっただろう?精々、駒程度にしか思って居なかった筈だ。
だが、私はリベリオンズのメンバーを本当の家族だと思っている――特にルナとなのはは、私にとっては姉その物さ。」
だからこそ、姉さん達の為に力を尽くそうと思えるんだ。
只、己の欲望に喰われた貴様では、未来永劫辿り着く事の出来ない事だけれどね……其れが、私の強さの原点になっているのさ。
「ふざけるな!!……そんな、そんな事が認められるか!!
どんな理由がアレ、貴女は此処で死すべきなんだ姉さん――エクリプスが齎す新たな世界の為に……生まれ変わるこの世界の為に、死ねぇぇぇぇぇぇぇ!」
断る!!
大体にして、そんな大振りが実戦で決まるか!!――寧ろ死ぬのは、貴様の方だスコール!!!
「躱された!?……そんな、馬鹿な―――!」
「此れで終いだ……精々あの世で、閻魔への言い訳を考えておくが良い。」
――キン……!
「うごわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
――ブシュゥ!!
そして、貴様が殺した父と母にあの世で詫びろ!!――貴様には、此れから凄まじいまでの悪夢が襲い掛かるのだからな!
「そんな……そんな、馬鹿な――」
精々『因果応報』の意味を地獄で学ぶと良いさ。
だが、此れでフッケバインは事実上の崩壊だろうな――と言う事は、そろそろフィナーレが近いという事なのだろうね。
まぁ、天地がひっくり返ってもお前達が負ける等と言う事は無いかもしれんが、頑張れよルナ、なのは――お前達の存在が、世界を左右するんだからな!!
だが、今は――
「精々両親に詫びろ――あと80年も経てば、私も其方に行くからな……其れまでは、精々大人しくしている事だ。」
恐らく、そう遠くなく幕が下りるだろうからね――
――――――
Side:なのは
私とはやての、手加減なしの直射砲を真面に受けたら、先ず無事では済まない筈なんだけど――
「如何やら、奴さんは無事みたいやね……」
恐らくヴァンデインは無傷の筈。
だって、ヴァンデインを覆うように、無数の棘の生えた蔓が立ち込めて、其れが防壁となってヴァンデインへの致命傷を回避したみたいだから、油断は禁物。
って言うか、アレはカレン・フッケバインの『茨姫』だと思うんだけど、一体何時何処で此れを覚えたんだろう?
「いやはや、実に強烈な一撃――正に夜天の冥王と、白夜の聖王の名に恥じない素晴らしい一撃でした――ですが、私には無力ですけれどね!!」
やっぱり効いてなかったか――大体予想はしてたけどね。
だけどヴァンデイン、如何して貴方はカレン・フッケバインの能力を使う事が出来るの?其れが分からないんだけど?
「ふむ……では、教えて差し上げよう。
原初の種を持つ者は、他のエクリプスドライバーとの性的接触、或はその体液を己の中に取り込む事で、その能力を自分の物とする事が出来るのだよ。
尤も、性的接触をした相手は支配できなくなるのだが、その能力を得られるならばさした問題ではないさ。」
……成程ね。
恐らくは、支配出来なくなるって事を知ったカレン・フッケバインを逆に利用したって事なんだろうけど――実に胸糞が悪いよヴァンデイン。
お父さんが、リオン・アークヒールが発見しながらも封印したエクリプスは、有効性よりも危険性の方が高かったという事の証なのに、其れなのに貴方はエクリ
プスの力を持って、一体何がしたいのヴァンデイン?
「特に何も……強いて言うなれば、エクリプスの有効性を示したいだけさ。
魔導に頼らずとも、此れだけの力を持つエクリプスは、有効なエネルギー源になるだろうからね?――まぁ、其れを確立する為には、君達は邪魔だがね…」
――ドスゥ!!!
「あが…!!こ、此れは――!!」
「茨姫の蔦……何時の間に!!」
「君達と話しをしている最中にね――いや、カレン・フッケバインを抱いたのは正解だったよ。
彼女の茨姫は実に素晴らしい能力だ……白夜の聖王と、夜天の冥王にすら感付かれる事なく、死角からの攻撃が可能になる訳だからね……見事だよ。」
コイツ……最初から、狙ってたよね?そうじゃなかったら、こんな事は出来ないだろうし。
尤も、お腹を貫かれた程度じゃ、私もはやても死にはしないけど、内臓を可也こっぴどく抉られたから、再生には少しだけ時間が掛かる……その間に、頭を叩
き潰されたら、其れこそどうしようもない……!!
「だが、其れも此処までだ――君達は、もう死んでいいよ。」
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
く……再生が完了して、動けるまであと10秒って所だけど、ヴァンデインの一撃は其れより早く放たれる――!!
避ける事は可能だけど、避けたらミッドチルダが壊滅的な被害を受けるのは確実……なら、何としても私達で抑えないと……!!
「此れで終わりだ。」
――ドゴォォォォォォォォォォォオオォォォォン!!!
「……いや、カーテンコールにはまだ早いぞ!!」
――バガァァァァァァァァァァァァァン!!
え?攻撃が逸れた?――まさか!!
「スマナイ、少しばかり待たせてしまったねなのは。」
「申し訳ありません、少し遅れました――ご無事ですか、はやて?」
ルナ!!
「アインス!!」
マッタク……少しばかり遅刻だよ?――まぁ、来てくれたって言うだけで、其れは帳消しだけどね。
「遅れた事は素直に謝ろう――だが、ある意味で絶妙のタイミングで来たのではないかと思っているよ。
ハーディス・ヴァンデインの凶行の裏は取れたし、何よりもなのはとはやて嬢に手を出した事で『公務執行妨害』も追加で確定しているからね――奴を逮捕
するには、充分な材料が揃ったよ。」
「元より、夜天の主と白夜の主に盾突いた時点で、貴様の運命は確定済みだヴァンデイン。」
……何て言うか、迫力が違うよねルナとアインスさんは。
此れが1000年を生きて来た者のみが纏う事の出来る絶対強者のオーラなのかもしれないけど、其処から感じられる力はヴァンデインの比じゃないよ。
「ルナ、思い切りやっちゃって。」
「アインスも、力の限りいてこましたれ!!」
「「Jawohl Meister. (了解です、我が主。)」」
「あくまでも刃向うか……この私を前にして、生意気だよ君達。
身の程を超えた行い――此れは、許されざることだからね?……だから教えてあげよう、この私が身の程と言うモノを!!」
その言葉はそっくりそのまま返すよヴァンデイン。
寧ろ、貴方の方こそ身の程を知ると良いよ――白夜を守護する月の祝福と、夜天を護る祝福の風には、貴方の力なんて全く及ばないんだからね。
精々、圧倒的な力の前に屈すると良いよ。
そして後悔すべきだよ、お父さんが封印した危険物に手を出してしまった、己の浅はかさと愚かさと言うモノにね………
To Be Continued… 
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