Side:アイシス


トーマの方には、フッケバインの首領が現れたみたいね……まぁ、リリィとロサのダブルリアクト状態のトーマなら負ける事は無いだろうから安心だわ。
で、アタシの方には……


「よう、まな板娘!また会ったな!!」

「出たわね、この無駄おっぱい……!!」

嘗てアタシをひん剥いてくれた無駄おっぱいが参上!
あの時の事を差し引いても、何て言うかコイツは生理的に受け付けないわ……兎に角、顔がムカつく、態度がムカつく、兎に角腹立つ、よって爆殺決定!


「なんで、そんなに殺気だってんだお前?」

「自分の胸に聞け、この無駄おっぱい!!」

爆殺確定とは言ったけど、トーマが『不殺』を貫く事を決めてるから、アタシもアンタを殺さない。アンタを殺したら、きっとトーマが悲しむからね。
だけど、アンタをタダで済ます心算もないわ……不殺の覚悟を決めた爆薬使いの脅威ってもんを、その身で味わわせてやるから、覚悟を決めなさいよね?


「言うじゃねぇかまな板の分際で……テメェこそ、アタシにぶっ殺される覚悟をしておけよな?」

「あ、其れはお断り。てか必要ない――勝つのはアタシ、アイシス・イーグレットだから!!」

「ほざけ、まな板小娘が!!」


ふん、胸の大きさは兎も角、歳は大して変わらないでしょアンタだって?
寧ろアンタの方こそ吼えるなっての――正直言って耳障りなのよ、凶鳥とか名乗ってるアンタ達の、ピーチクパーチク五月蠅い鳴き声ってのはね――!!












魔法戦記リリカルなのは~月の祝福と白夜の聖王~ Force46
『Don't Be Afraid~闘う者達~』











Side:ルナ


――ガキィィィィィィン!!


ふむ……ドゥビルは兎も角として、裏方の参謀格と思っていたが、其れなりに戦闘力は高いみたいで驚いたぞフォルティス?これ程とは思ってなかった。
だが、其れはあくまでも並の使い手と比較しての事に過ぎんけれどな。

「この程度の実力では、戦乱のベルカでは生き残る事など到底できはしないぞ?」

「!!!」


エクリプスの力を当てにしたのだろうが、生憎と私は零次感染者でお前達よりも遥かに強くてな?一次感染者の力如きに屈する程軟ではないのだ。
加えて、アインスは嘗て『第一級封印指定ロストロギア』とされていた『闇の書』の管制人格だぞ?それこそ、エクリプスの力だけで超える事は出来ない。

まぁ、お前達もトーマが暴走した時と比べれば、幾分強くなったようだが、私達とてあの時よりも力を増している故に、お前達など相手にもなりはしないな。


「まさか、此処までの差があるとは――!!」

「相手との力量差を読む事の出来ない三流には、過信の果ての破滅が待っていると言うモノだ――相手が絶対強者ならば尚の事な。
 何れにしても、お前達は此処でゲームエンドだ……精々神様にお祈りでもしているが良い。――遊びは終わりだ!!」

泣け、叫べ、そして……逝けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


――ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ……バガァァァァァァァァァァァァン!!!


「そんな……これ程までとは……」


予測が甘すぎたと、精々後悔すると良いさ。

アインスの方も、そろそろ終わるだろうしね。


「く……馬鹿な、如何して当たらぬ!其れに、何故貴様は死角からの攻撃に其処まで対処できるのだ!?」

「身体が大きいのに加え、そのバカでかい武器のおかげで、お前の攻撃は直線的で至極読みやすいのだ。
 其れに、瞬間移動を使っての攻撃も少し考えれば、対処するのは難しくない。大概の場合、瞬間移動からの攻撃は相手の死角と相場が決まっているも
 のだろう――そして、人の最大の死角と言うのは背後に他ならない。
 そしてその武器での攻撃は、斬り下ろすか薙ぎ払うかの二種類。更に、お前は右利きだから攻撃が来るのは上か右側からの二択故に、お前が消えた
 瞬間に、背後に意識を集中して居れば、瞬間移動を使ってのカウンターにも充分対処できるという訳さ。」

「何だと…!?」


確かに、アインスの言う通りだ――其れを実戦で行うのは、中々に難しい事なんだけれどな。
まぁ、更に付け加えるならば、お前のその『エクリプス特有の濃密な殺気』も攻撃を読まれる原因だな?
可也抑えてはいるようだが、私やアインスの様な『絶対強者』からすれば、ダダ漏れの状態と大した差はないのでね?それじゃあ、攻撃は読まれるさ。


「馬鹿な……ヴァンデインと手を組んだ事で、我々の装備はAEC装備相手でも優位に立てる筈だったのに、そもそも触れる事すら出来ないだと?
 其れ以前に、そっちの零次感染者ならば兎も角、私の相手は局の魔導師だと言うのに……!!」

「訂正して貰おうか、私は魔導師ではなく『騎士』だ。其れも正真正銘、古代ベルカの――その中でも最強最悪と言われた『闇の書』の管制人格さ。」

「や、闇の書だとぉ!?」


今は『夜天の魔導書』だがな。
だが、戦乱期のベルカに於いては、『限りなく死に難い』という点を除けば、お前位の使い手は其れなりに戦場に存在して居たよ?尤も、そいつ等はその
時の守護騎士達に倒され、全て書の糧になってしまったがね。

ともあれ、お前達では私達に勝つ事など出来ん。
アインスはお前達の50倍は強いし、私が全ての能力を全開にすればアインスの更に20倍は強い――早い話、戦う前から詰んでいたんだよ、お前達は。

さて、フォルティスには少々聞きたい事も有るのだが、そっちの筋肉達磨には得に用もないからね?……遊びは終わりにして、幕引きと行こうアインス。


「そうしよう。レヴァンティン!!」

「む!?」


夜天の魔導書の管制人格故に、アインスは守護騎士のデバイスと技を、全て自分の物として使う事が出来る。そして今取り出した剣は、守護騎士の筆頭
たる烈火の将の相棒である『炎剣・レヴァンティン』……此れは完全に終わったな。


「斬り刻め、シュランゲバイゼン!

「チェーンエッジ!!……まさか、此れを本当に武器として使うとは!!
 そして何と言う精度だ……防ぎきれん!!ぐぬ……ぐおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


効果は抜群だな。
と言うか、アインスがイミテーションとして再現するデバイスにまでAECコーティングを施すとは、本気でドレだけの頭脳と技術力を持ってるんだジェイルは?
流石『目的は?』と聞かれたら、爽やかな笑顔で『世界征服だよ』と答えてしまうだけの事はあるな。……此れが正義のマッドサイエンティストの真髄か。


「此れで終わりにする。翔けよ隼……シュトルムファルケン!!

「ぐぬ……ウオォォォォォォォォォォォ!!」


――キィィィィィン………バシュゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!………ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!


「お前にも聞こえたか?風の声が……」


で、あっさりとドゥビルは爆散。
シュランゲバイゼンで散々斬り付けられた上で、音速を超える炎の隼を放たれたら瞬間移動で逃げる間もなかったか――あれでは、再生も不可能だろう。

「船の壁に大穴を開ける結果になったが、所詮お前の相手ではなかったか。」

「ツヴァイを連れてこようかとも思ったんだが、その必要は無かったよ。
 そして確信した、今までコイツ等がのさばる事が出来たのは管理局が『AEC装備』の開発が大きく遅れていたからだったという事をね。
 此方の攻撃が利くならば、フッケバインとて脅威にはなり得ない――現実に、今のアイツは私に負け、大した花火にもならなかったのだからな。」


マッタク持ってその通りだな。

さて、手加減をしてやったから生きてるだろうフォルティス――貴様を地獄に叩き落す前に、少しばかり聞いておきたい事が有るのでな…答えて貰うぞ?


「拒否権などないでしょうに……とは言え、僕が答えられる事など殆どないと思いますよ?
 カレンが原初の種とゼロの力を欲しているのは知っていますが、其れを手にした暁に何を成さんとしているのかは僕の感知する所ではありませんから。
 加えて言うと、同盟を組んだとはいえハーディス氏の目的だって知らないんですよ僕達は。」

「なら、何を知ってるんだお前は?」

「敢えて言うならば、この船はもうすぐ何処かにランダム転移すると言う事ですかねぇ?
 此の戦闘空域から離脱してしまえば、少なくとも逃げる事は出来るでしょうし、転移と同時にフッケバインでないメンバーは弾かれますからね。」


そんな事を狙ってたのか……だが、其れも無駄な事だ。
私達が突入してから10分……もう終わった頃だろうからな――首尾は如何だクアットロ?


『バッチリですわよルナお姉さま!
 飛空艇フッケバインのシステムは、浮遊機能以外の全ての機能を此方で制圧しましたわ!よって、その船はもう浮く事しか出来ませんわ!!!』


「な!?この船のシステムを、外部から乗っ取った!?」


万が一を考えて、クアットロに頼んでおいて正解だったよ。
アイツは、平時は救いようのない貴腐人だが、いざ戦闘ともなれば誰よりも優れたバックスとしての力を発揮してくれるんだ――この飛空艇の、システムを
掌握する位は朝飯前さ。

此れでもう、此の飛空艇はこの空域に浮いている事しか出来ない訳だ――お前達に逃げる術などはないという事さ。


「はは……あはははは……全てに於いて此処までの差があるとは……システムが乗っ取られた以上、其れと直結してるステラも無事ではないでしょう。
 カレンとハーディス氏は兎も角として、僕達の運命は此処が終着駅でしたか――なんとも、呆気ない幕切れでしたね僕の人生も。
 ……こうなっては、未練も何もありませんが……最後に一つだけ聞かせて下さい、我々が手も足も出ないとは、貴女達は一体何者なのですか?」


冥土の土産に教えてやる。
我が名は高町リインフォース・ルナ――白夜の聖王を守護する、月の祝福だ。


「八神リインフォース・アインス――夜天の冥王に仕える、祝福の風だ。」

「月の祝福と、祝福の風……其れも、白夜の聖王と、夜天の冥王の従者とは――僕達では勝てない訳ですね……マッタク、色々馬鹿らしくなりますね。
 最初から、僕達に勝利などなかったという事ですか……完全に道化ですね此れでは。――余りに酷過ぎて、悔やむ感情も生まれませんよ……」


まぁ、分部不相応な力を手にした者の末路として受け入れると良い。
せめて来世では、道を誤らずにまっとうな人生を送ると良い――だから、今は此処で華と散れ…!!!


――キン!!


「がは!!……超神速の居合で、斬り刻むとは……尤も、先刻の連撃が致命傷レベルだったので、この一撃はトドメに成るでしょう………完敗ですね…」


――バガシュゥゥゥゥゥゥゥ!!!


私の本気の居合は光さえ超え、一撃で複数の箇所を切る事が出来る一種の『神技』だ――其れで、貴様の体内の神経と大きな血管を全て切り裂いた。
如何にエクリプスドライバーとは言え、此れだけのダメージを受けては再生が追い付かずに死は絶対だ。


「………」

「せめて今だけは、安らかな眠りを得ると良い……私からのせめてもの情けだよ。」

これで、フッケバインの戦力は、トーマと戦っているカレンと、なのは達が相手をしているだろうヴァンデインだけに絞られたな。
尤も、野良感染者の襲撃も有るだろうから、一概には言えないが、少なくとも残っている大きな戦力は其れほど脅威ではないのだろうね……

ともあれ、私達のやるべきことは終わったんだ、なのは達の下に向かうとするかアインス?


「そうだな、主はやても、私の到着を待っていて下さるだろうからね。」


ならば行くか――少しばかり遅れてしまったが、最終決戦のステージと言うモノにな!!








――――――








Side:トーマ


おらぁ、こんなモンかババア!!テメェの攻撃なんぞ、フェイトさんのガチモードの攻撃と比べれば蠅が止まる程に鈍いぜ?
何処からどんな攻撃が来るか丸分かりなんだよ、ババア……まさかとは思うが、その程度で俺達とやり合う心算だったのか?……なら笑えないぜ!!!


――ガキィィィィィィン!!


「この私が此処まで苦戦するとは、ゼロの力は本気で侮れないわ……」

「ゼロの力だけじゃねぇ……リリィとロサが、俺に本来の力以上の物を渡してくれたんだ……!!其れを教えててやるぜババア!!」

「き~~~!!本当に口が悪いわねぼーや!!」


見たところ、コイツは適当に力が溜まった事以外には何もねぇ……此処が決め時だ!!やるぞ銀十字、何が有っても、此処は負けられねぇ!!!



『エクリプス・ゼロ承認。』

行こうトーマ、此処が決め時だよ。

幕を下ろそう、私達の手で。


あぁ、分かってるさ、リリィ、ロサ!!
全てを終わらせるために、俺はこの破壊の力を――ゼロの力を今一度解放する!!……うおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおおおっぉぉおぉおぉぉぉぉぉぉぉ!


「!?こ、此の闘気は!!」


どんな事だって、諦めなければ未来が見える!六課とリベリオンズが協力した以上は、絶望に包まれた殺戮の未来はあり得ない!!


皆がきっと悪しき闇を払うから!!

だから、今は此れで終わり……!!



だから俺は――トーマ・アヴェニールは、ゼロ・ドライバーとして、今此処でお前等の全てをゼロにする!!


『ディバイトゼロ・エクリプス。』


おぉぉぉぉぉぉぉ……此れで決まりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!





――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォン!!!








―――――――








Side:アイシス


のわぁあ!?……何じゃこの爆発!?……若しかしなくても、トーマが手加減不要の一撃を、フッケバインの首領とやらにブチかましたのは確実よね。
だとしても、あの白煙は……生きてんでしょうね、あのおばさん?


「大丈夫じゃねぇか?カレンはアタシ等の中で一番頑丈だし、大ダメージ受けてもそう簡単にくたばる魂じゃねぇからな。」

「ある意味で、滅茶苦茶迷惑よね其れって……頑丈さだけなら、アンタも大したものだと思うけどね、無駄おっぱい!!」

「あぁ?まだやる気かまな板が!!――良いぜ、付き合ってやるよ!!」


黙れ無駄おっぱい!!
アンタを倒すのは楽じゃないみたいだから、アタシも切り札を切らせて貰うよ――『白の3000』と『黒の2400』って言う、最強の切り札をね!!

精々ソイツに喰われて、地獄への片道切符を手にすると良いわよ――この脳足りんの無駄おっぱいが!!








――――――








Side:なのは


さてと、私とはやてのタッグなら、ヴァンデインは相手じゃないんだけど……何とも此れは手応えがないね?
私とはやてなら負ける事は先ず無いだろうけど、兎に角攻撃した際の手応えが無さすぎるよ――まるで、海中でクラゲを殴っているかのような感じだよ。

幾ら負けないとは言え、滅ばない相手って言うのは不気味な事この上ないよ。


「いやはや、まさかこの短時間に20回も壊されるとは、私の予想を遥かに上回る力を有しているようですね、八神司令と高町なのはは。
 否、不死の冥王と不死の夜天はね。」

「「!!!!」」

私とはやての事は、ごく一部の人しか知らない筈なのに、其れを知ってるとは、貴方は一体何者なのかなハーディス・ヴァンデイン?


「何度も言いますが、私は歯牙無い善良な一市民ですよ?……其れなのに、こんな事になってしまうとは、真に遺憾の極みですよ。」

「白々しい演技はその辺にしときやヴァンデイン。
 アンタがフッケバインと手を組んだその時に、アンタは重要参考人から、テロを主導した重罪人にクラスチェンジしとるんや――大人しく、お縄になれや。」

「全てお見通しだったか……ならば其れを承知で敢えて言おう――この私を前にして頭が高いよ君達。
 折角だから、生体兵器と化した野良感染者を全て解き放つのもまた一興だ――此れだけの戦力を相手に、何処まで足掻く事が出来るか見ものだよ!」



……黙れ、そのセリフはそのまま返すよヴァンデイン。
幾ら付け焼刃的な力を身に付けようとも、地力の差を埋める事は出来ない――其れをその身に刻み込んであげるよ、原初の種の適合者。


何よりも、白夜の聖王と、夜天の冥王に喧嘩を売ったその愚行――骨の髄まで、たっぷりと後悔させてあげるから、精々覚悟を決めておくと良いよ――

「死の覚悟は出来たかな?」

「そろそろ終わりにするで、ヴァンデイン!」


双天の裁きは、今此処に振り下ろされる訳だからね!!―――エクリプスにまつわる全ての事を、今此処で終わりにする!今の内に、精々祈ると良いよ。

ディバイィィィィィン……バスターーーーーーーーー!!

クラウソラス!!!




――ドゴォォォォォォォォォォォォォオォォォォォォォォォォォン!!!













 To Be Continued…