Side:トーマ


カレン・フッケバイン……エクリプスを有した凶悪な犯罪集団の首領――其れが直々に俺の前に現れるって言うのは予想してなかったけど、逆に手間が省
けたって所だぜ。此処で、テメェをぶっ倒せば、態々探して確保する必要もなくなる訳だからな!


「口が悪くなっただけじゃなくて、随分と威勢が良くなったじゃないの?
 こんな事言うのは何だけど、六課のお嬢ちゃん達と訓練した程度で、私に勝てると思ってるのかしら?……だとしたら、余りにも甘いわよゼロのぼーや。」

「言ってろババァ。
 自慢じゃねぇが、俺は毎日の様に、冗談抜きで気を抜いたら死ぬかもしれないってレベルの訓練をして来たんだ。攻撃は非殺傷だったとは言えな。
 しかも、相手は局のエースや、最強を超えた絶対強者だったんだ……テメェなんぞ、其れに比べたら全然怖くねぇんだよ、若作りの厚化粧ババァが!!」

「……ど、如何やら本気で死にたいみたいね、ゼロのぼーや……」(ヒクヒク)


この程度の挑発で気を立てるなよ?
あんまし顔を引きつらせると、要らない小じわが増えて余計に老けちまうぜバアさん?――つーか、大人しく隠居して老後を静かに過ごす事を勧めるぜ?


――ブチィ!!!


「このガキ、言わせておけば調子に乗って!!
 いいわ、ヴァンデインとの約束があるから殺しはしないけど、死にたくなるような状態にしてあげるから覚悟なさい……私を怒らせた代償は大きいわよ!」


あ~あ、ブチ切れちゃった……オバタリアンのヒステリーは手に負えないぜ。

まぁ良いや、元よりぶっ倒す心算だったからな。

来いよババア、エクリプスに魅せられて捕らわれた感染者と、リアクターと絆を紡いだゼロ・ドライバーの力の差を、その身に叩き込んでやるぜ!!!












魔法戦記リリカルなのは~月の祝福と白夜の聖王~ Force45
『Frontrhine Force your way』











「うおぉぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいい!!」


――ガキィィィィィィィィン!!!


……やっぱ、場数を踏んでるだけあって、戦闘技術そのものは可成り高いな、ヒステリーババアは。
尤も、ルナさんの足元には全然及ばないレベルだけど、まぁ一般人と比べたら遥かに強いのは間違いねぇだろうな……AEC装備なかったらスゥちゃんでも
キツイレベルだとは思うけど……だけど、其処までだぜ!!

「でぇりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「んな!?」


幾らレベルが高くても、戦闘経験があっても、アンタの剣には信念や思いってモンが感じられねぇんだよ!!
ルナさんやサイファーの剣、なのはさんの砲撃には『ダークヒーローの信念』が、スウちゃんや八神司令の攻撃からは『法の番人の正義』が感じられたんだ
けど、アンタも剣からは何も感じない……ギリギリ感じられるのは、ルナさん達の信念や思いとは比べるまでも無い小さな欲望だけだ!!

そんな軽い剣じゃ、俺には切り傷一つ程度も、負わせる事は出来ないぜ!!!


「言ってくれるわね?
 でも、揚げ足を取るようだけど、ぼーやの剣には意思は感じられても殺気が篭ってないわよ?そんな温い剣で、私を殺す事が出来るのかしら?」

「誰が、殺すかよ。元より俺は、アンタを殺す心算はない。――否、誰も殺さないし殺させない。
 殺さずにアンタを倒して、そして生きて罪を償わせる!殺さない事、殺させない事……不殺が、俺の決めた覚悟!!其れを貫き通すだけだぜ!!!」

「そんな甘っちょろい事を言うなんてねぇ……命のやり取りをする戦場では片腹痛いわよ、ぼーや!
 私の事を倒したいなら、殺す気で来なさいな。そうじゃなかったら、勝つ事なんて絶対に出来ないわよ――経験の差を考えれば尚の事ね!!」


だから何だよ?
確かに俺とアンタじゃ相当に経験の差はあるかも知れないけど、俺に稽古付けてくれたのは、アンタの10倍は強い人達ばっかりだった――アンタの剣なん
て、その人達に比べたら全然止まって見える程に遅いんだよ!!

喰らえ、クリムゾンスラッシュ!!!


――ズバァァァァア!!!


「く……流石はゼロの保有者、甘っちょろい戯言を吐くクセに、中々の力を見せてくれるじゃない?
 原初の種と併せて、ゼロの力も益々欲しくなったわ――ヴァンデインに渡すのが、本当に惜しくなる位……貰うわよ、ぼーやのその力!」


誰がやるかよ!
リリィ、ロサ、一切の手加減抜きでやる!!


うん、思いっきりやろうトーマ!

シュトロゼック4th&6th、ダブルリアクト、出力最大!!


――ゴォォォォォォォォォォォォォォォォ!!


「な!?……この力は……まさか、今までは力を抑えてたって言うのぼーや!?」


違う、此の出力最大状態になるには、まず『準備運動』でダブルリアクト状態の身体を温めないとダメなんだ。
どんなスポーツでも、準備運動をしないで、行き成り動いたら身体に負担が掛かって悪影響を受けるだろ?其れと同じで、準備運動が必要だったって訳。

まぁ、もっと慣れれば其れも必要ないみたいだけどな。

けどまぁ、此処からが俺の本気の本気って事だから……取調室での言い訳位は考えとけよ、若作りの厚化粧ババア!!


「ホントに口が悪いわね……マッタク、親の顔が見て見たいわ!」

「親は居ないから見せられないけど、少なくとも俺の『姉』達は、どの人もアンタよりも遥かに美人だよ!!」

つーか、コイツと比べる事自体が、スゥちゃんやノーヴェ姉に失礼極まりねぇか。

何れにしても、コイツを倒しちまえば、少なくともフッケバインのメンバーに関しては全員捕縛が可能になるのは、略間違いないだろうな――サイファーと戦
ってるスコールは、その限りじゃ無いかもしれないけどな。

なら、こっちは俺が何とかするから、ヴァンデインの方は頼むぜ、ルナさん、なのはさん、八神司令、アインス補佐官!!








――――――








Side:サイファー


ククク……トーマめ、この戦場に於いて、本気であの甘っちょろい理想を口にするとは、如何やら私が思っている以上に『大物』らしいな。
しかも、その理想は曲げないと来たからな?……マッタク、ある意味で本物の馬鹿としか言いようがないが――だが、其れで良い。其れが正解だトーマ。

何時如何なる時でも、例えそれが達成できない可能性があるとしても己の意志を貫くと言う姿勢が何よりも大事なんだ。
其れを貫ければ、例え戦場で全員とは言わずとも、自分の手の届く範囲の者を、殺さずに、殺させずに済ます事が出来る筈――否、お前なら出来ると、確
信させて貰ったよ。実に良い気分だ。

そんな良い気分になったと言うのに、私の相手がお前だと言うのは、実に不満が残るなスコール?
まぁ、妹の不始末を処理するのは姉の役目とは言え、何と言うか此れは、最強の武器を装備して、ステータスを限界まで育てた状態で、ゲーム序盤の雑魚
を、一撃でオーバーキルするような気分を覚えて仕方がない……せめて、一撃で沈むような事だけは無しで頼むぞ?


「何処までも、私をムカつかせたいようだな姉さん……?そんなに私を怒らせて、そして私に殺されたいらしいな……?」

「誰が誰を殺すって?過去2回私に負けたお前が、まさか私を殺すとか言わないよな?
 しかも、2回目は私は本来の装備ではなく、AEC装備の試作品でお前と戦った筈だが?……試作品装備の私にすら勝てなかった雑魚が、吼えるな。」

お前如きが吼えたところで、所詮は負け犬の遠吠えに過ぎんと知れ。
とは言え、お前の顔ももう見飽きた……そろそろ死んでもらおうか?――そして、貴様が己の欲望の為に殺した、父さんと母さんに、精々あの世で詫びろ。


「誰が死ぬか……私を格下に見ている、その油断が死に直結するぞ姉さん?」

「油断?バカを言うな、此れは絶対強者にのみ許された『余裕』と言うモノだ。其れの区別も付かんとは、貴様は本物の三流以下のようだなスコール?
 まぁ良い、三流は三流らしく、海の藻屑と散って、精々その残骸を美食家の魚に喰われる事を願うと良いさ――そして知れ、己の力の矮小さをな!!」


――轟!!!


「!!!こ、此れは!!!」


ライオンハートのカートリッジをロードした。つまり、私の力は数倍に跳ね上がったと言う事さ――圧倒的な、力を感じているだろうお前も?

此れだけの力を見せられれば、人ならば理性で退き、犬畜生でも本能で察して戦いを避けるが、エクリプスに喰われたお前はそうは行かないだろう?

だから相手になってやる。
全ての能力を全開にした私の相棒『ライオンハート』の、この漆黒の双刃が、貴様の魂を冥府の底に叩き落してやる。


「何処までも馬鹿にして……殺す!!」

「やってみろ。」

如何足掻いても、貴様等に未来はない。
フッケバインの首領はトーマが制すだろうし、ハーディス・ヴァンデインとか言うクソは、ルナとなのは達が倒す事は決定事項で、お前は私が殺す事が決定
しているんだ……足掻くだけ無駄と知れ愚妹が!!

ソロソロ、閻魔の前に参上しても良い頃だろう?

せめて姉として、その手伝い位はしてやろうじゃないか――地獄に落ちる覚悟は出来ているな、愚妹よ?


「誰が落ちるか……地獄に落ちるのは貴女の方だ姉さん!!」

「退屈な極楽浄土よりも、鬼と喧嘩できる地獄の方が私の肌には合ってるからな?地獄行きに成るのならば、是非ともなってみたいものだな。」


――ガキィィィン!!!


其れじゃあ始めようじゃないか、史上最大となる姉妹喧嘩の最終章を。
尤も、その末に待つのは、避けようのない貴様の終焉だけれどなスコール!!――父さんと母さんを殺したその罪、今此処で全て清算して貰うぞ!!








――――――








Side:ルナ


トーマ達が出張ってくれたおかげで、すんなりとフッケバインに突入する事が出来たが、まさか迎撃にお前達が出て来るとは思わなかったよ…正に予想外
って言う奴だが、私達を止められると持っているのか、フォルティス、そしてドゥビル?

確かに1vs1のタイマン勝負ならば、私達を止める事もギリギリ可能かもしれないが――戦力は、此方の方が遥かに上だと言う事を忘れるなよ?


「それでもです……カレンが、そう決めた言うのならば、僕達はフッケバインの構成員として、其れに従うだけの事です。」

「つまり退く気はないと言う事か……」

ならば仕方ない――此処は、私とアインスに任せて、先に行けなのは、はやて嬢!
相手との力量差も分からん雑魚に、態々お前達が手を下すまでも無いだろう?――コイツ等如きは、速攻で滅殺してやるから、お前達はヴァンデインを!


「……OK、分かったよルナ。
 如何足掻いたって、ルナ達が負けるとは思えないから、此処は任せるけど――出来るだけ早く来てね?」

「アインスも、力の限りやってまえ!!――そんで、最終決戦には遅れんようにな?」


勿論だ、なのは。


「了解ですよ、はやて。」


アインスも異論はないようだからな……ラスボス前の前哨戦として、貴様等を叩きのめしてやるとしようか?



少なくとも覚悟は出来ているんだろう、似非インテリと筋肉達磨よ?――月の祝福と、夜天の祝福が、貴様等に滅びと言う名の祝福をくれてやる!!!



終焉まで、もう間もなくだな。








――――――








Side:なのは


此処がフッケバインの最深部……そして、この扉の先に、今回の件の黒幕である『ハーディス・ヴァンデイン』が居る事は間違いに無いよね、はやて?


「十中八九居ると見て間違いないやろ?――お父さんが発見し、でもその危険性故に封印した力を、イタズラに使うクソッ垂れに、聖王と冥王の裁きをぶち
 かましてやろうやないの!
 それに、万が一しくじってもその時は、アインスとルナさんがフォローしてくれるやろうから、不安は何もない――そうやろ、なのは?」


だね……恐れる事は無いもない。
相手が誰であろうと、私は聖王の、はやては冥王の、ルナとアインスは融合騎としての誇りを捨てずに戦って、そして勝つだけの事だからね!!!



なんて事を話してたら、何時の間にやら最深部……この扉の向こうに、事件の黒幕であるハーディス・ヴァンデインが居るのは間違いないね……


貴方の目的が何でアレ、お父さんが封印した力を良いように使うのは我慢できない事だよ、ヴァンデイン。


だからそろそろ終わりにしよう?……まぁ、なんにしてもエクリプスをイタズラにばら撒いた貴方は一級犯罪者ですから、此処で欠片すら残さずに撃滅して
やるだけだからね。


――バガァァァアァァァァァァァァァン!!!


「おやおや……何とも元気が有り余っている事で……元気そうだね『白夜の聖王』と『夜天の冥王』殿――貴女達に会えたのは、正に幸運の極み。」


そして、扉を吹き飛ばした先に居たのは、胡散臭い笑みを浮かべたハーディス・ヴァンデインが只1人だけ――相当に自信があるのかもね。


でも其れも此処までだよ、ヴァンデイン。
白夜の聖王と、夜天の冥王が降臨した以上、貴方の死は絶対だからね――精々、お祈りでもしてると良い……此れで、全てが終わりに成るんだから。


覚悟を決めなさいヴァンデイン……そろそろ年貢の納め時だよ!!













 To Be Continued…