Side:ルナ


うん、分かっていたが、はやて嬢が艦長を務める、ビックバイパーの航行速度は凄まじい物があるな……此れならば、あと10分もあればフッケバインに接
近出来るだろう……いよいよ、決戦の幕開けと言う所かな?……ならば、気を引き締めなくてはな。


「ルナ、此処にいたんだ。」

「なのはか……少しばかり、心を落ち着けておきたくてね。」

実際、此の甲板は心を落ち着かせるのに持って来いの場所だ。
見晴らしは良いし、流れる風も心地いい――最大の決戦前に、心を落ち着かせるには、これ以上の場所はないとすら思える。或は、はやて嬢も其れを見
越して、此の甲板を作ったのかも知れないけどね。

だが、なのはは如何して此処に?
決戦前に心を落ち着かせるという魂じゃないだろうお前は?


「そう言われたら否定できないんだけど、敢えて言うなら此処にルナが居たからかな?
 ……甲板で空を見てるルナに惹かれたって言うか、兎に角そんな感じだと思ってくれればいいよ……私も、少し考える事が有ったからね。」

「……其れは、エクリプスを巡る決戦に付いての事か?」

「!!…分かるの?」


彼是、お前と出会って16年に成るからな……何かに悩んでる事くらいは分かるさ。……悩んでるんだろう?エクリプスをどうすべきかという事を。


「うん……でも、分かってはいるんだよ、エクリプスは滅さなきゃダメだって!
 だけど……お父さんが、見つけて、その危険性を理解したからこそ封印した物を、イタズラに使う輩が許せない……だけど、私は―――!!」


迷っているか……ならば、お前が自分で足りないと思うところは私で補うと良い――私とお前は、死が分かつその時まで、一心同体なのだからな。


「ルナ?……ん……」


だからやり遂げようじゃないか、なのは。私達ならば、絶対に出来るさ。月の祝福と白夜の聖王は、あらゆる厄災を砕くのだからな!!
私の力をお前に送ったが、私も自分の足りない所をお前から貰ったから、私達は正に無敵にして最強さ……さぁ、愚者に裁きを下してやろうじゃないか!!


「そうだね……今こそ裁きの時だよ。」


判決は『死刑』以外には有り得ないけどな。
フィナーレだ、ヴァンデイン、そしてフッケバイン!!精々最終幕で、踊るが良い――破滅に向かう、滅びの舞をな!!












魔法戦記リリカルなのは~月の祝福と白夜の聖王~ Force44
『最終戦争~Limit off!~』











Side:トーマ


いよいよ出撃って所か……ヴァンデイン、フッケバイン……コイツ等が俺達の倒す敵――引いては、人類の敵って事か……やってやるぜ、クソッたれが。
ヴァンデインが居なかったら、俺はエクリプスに感染しなかっただろうけど、リリィやロサと会う事もなかっただろうから、今はエクリプスに感染したのも悪くな
いって思えるけど、カートやその他二次感染者にやった外道な行為は絶対に許せねぇ。

そしてフッケバインも、こんなクズ野郎と同盟を組んだなんてふざけてるにも程がある。
エクリプスに感染したばかりの俺には、随分優しくしてくれたけど、其れは結局の所、俺の中の『ゼロ』を欲してただけで、本物の優しさじゃなかったからな。

結局は、己の目的が全てって事なんだろ?
それが、尚の事気に入らねぇ!!ヴァンデインもフッケバインも、何方も完全に撃滅しないと、また同じような事が起こる可能性は極めて高いからな。



『各員に通達。当艦は、飛空艇『フッケバイン』を補足しました。
 此れよりフォーメーション通りに戦闘状態に入ります。フッケバイン突入組はカタパルトで待機してください。』



そう思った瞬間に、出撃準備か……まぁ、俺達とルナさん達が乗り込むんだから、フッケバインの本拠地如きは余裕だ――トコトンやってやる、全力でな!


「いよいよか……やる気の方は、聞くまでも無いかなトーマ?」

「勿論ですよルナさん!
 俺だけじゃなく、リリィとロサだってやる気充分!ダブルリアクトも、此れまで似ない位の力を発揮してくれてるんですよ!!」

「もっちろん私だってやる気は充分ですよ!!
 特にフッケバインの、無駄おっぱい…人の事捕まえといて、素っ裸にひんむいてくれちゃってまぁ……あの時のお礼は熨斗付けてやらないとですので。」


そんな事してたのかよアルナージの奴!?……まさか、クアットロさんと同じ人種だったりしないよな?
……あんまり深く考えるのは止めといた方が良いなうん。まぁ、クアットロさんの場合は、性癖はアレでも、スタッフとしては超優秀だからなぁ?普段と、戦闘
時のギャップが物凄いのは否めねぇんだけどさ。


ともあれ、カタパルトデッキには俺(INリリィ&ロサ)とアイシス、八神司令とアインスさん、そしてルナさんと、なのはさんと、サイファーが揃ってる。
此れだけでも、恐らくヴァンデインとフッケバインを倒す事は出来るだろうけど、俺達の後ろにはさらにスゥちゃんやノーヴェ姉達が居るんだ、兆に一つも負け
る要素が見つからないぜ。

加えて、飛空艇にしたって、こっちは正義のマッドサイエンティストが魔改造を施してる船なんだから、武装も航行速度もフッケバインとは段違いだ!!



「ほな、出撃前に確認や。
 まずは、管制ルームから向こうの船に『投降勧告』を行う。けど、其れは先ず間違いないく、拒否されるやろうから、拒否した瞬間にビックバイパーの武装
 を全開にして『落とさない様に』攻撃を加える。
 んで、その攻撃に乗る形で私等が出撃し、向こうから出て来たフッケバインの戦闘員を各個撃破。
 可能ならば、生きた状態で相手を捕らえる事が望ましいけど、ハーディス・ヴァンデインとカレン・フッケバインの2名についてはその限りやない。
 事と次第によっては……その2人は殺害もやむなし……えぇな?」


やっぱり、其の2人に付いては、そうなるよな……事件の黒幕と、フッケバインの首領だから仕方ないのかも知れないけど、やっぱり誰も死なせたくない。
なら、俺はその為に全力を尽くすだけだぜ!!



――ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!



「此れは…この轟音と揺れは、始まったみたいだねはやて?」

「せやな……ほな、私等も行こうかなのは!」


んで、やっぱりフッケバインは投降勧告は無視か……如何足掻いたって、ルナさん達には勝てないと思うんだけど、何か秘策でもあるって言うのか?
なくて交戦するってんなら、只のアホだろ其れ――もしそうだったら、マジで撃滅エンドだけどな。


『交戦開始、フッケバイン突入組は、順次出撃してください。』

「了解だ。リベリオン01、高町リインフォース・ルナ、目標を駆逐する!」

「リベリオン02、高町なのは、行きます。」

「リベリオン03、サイファー、斬り捨てる!」

「六課隊長、八神はやて……出撃するで!!」

「同じく、八神リインフォース・ルナ、出る。」

「見習い其の一、アイシス・イーグレット、行っちゃいます!!」


見習い其の二……いや、エクリプス・ゼロ、トーマ・アヴェニール!!全力で行くぜ!!!

いよいよ最終決戦だ……此れで終わりにしてやる、エクリプスに関する事も、其れに関わった俺自身の因果も、フッケバイン達との因縁も、全部皆全て!!
俺の力で……俺達の力で、全ての歪みをゼロにしてやるぜ!!!








――――――








Side:カレン


ヤレヤレ、本当に無粋な連中ね、六課のお嬢ちゃん達は……こっちはお楽しみの真っ最中だったって言うのに――ねぇ、ヴァンデイン?


「マッタクだ……と言いたい所だが、此れで私は浮気者確定だな?
 一時の気の迷いとは言え、妻以外の女性と関係を持ってしまった……此れは非常に大問題だよ?」

「いっそ、白々しすぎて殴りたくなってくるんだけど、思い切りブッ飛ばしても良いかしら?」

「其れは遠慮願いたいかなぁ?」


コイツ……完全に人を喰ってるわね。でも、此れで目的は果たしたわよヴァンデイン?
貴方の支配は、性的接触をした相手には通じない……そうよね?つまり、自分の体液を体内に持つ相手を支配する事は出来ない……違うかしら?


「……正解。まぁ、態々私と同盟を組むくらいだから、支配の唯一の弱点位は調べてると思ったけどね。
 だが、そうであっても君達では私に勝つ事は出来ないのは分かるだろう?……態々、自らの身体を対価にしてまで、何を求めるのかな君は?」

「簡単な話よ、原初の種、其れを寄越しなさい。其れを確約してくれるなら、ゼロの坊やを貴方の下に連れてきてあげるわ。」

「結局は其れか……まぁ良いだろう。
 だが、種はゼロの少年と交換と行こうか?種だけを渡して、はいお終いなんて言う事は、マッタク持って御免だからね?」


……良いわ、其れで手を打ちましょう。


さて、其れじゃあ私達は六課の子達を相手にしてくるけど、くれぐれも私以外のファミリーを操ろうなんて思わないでね?
其れをやった瞬間に同盟は決裂だから。


「覚えておきましょう……まぁ、御武運を♪」


胡散臭さ120%だわコイツ。
だけど、コイツには死相が出てるから、此処で命を落とすのは確実……精々余生を楽しみなさい、ハーディス・ヴァンデイン。

アンタが死んだ其の後は、私達フッケバイン一家がエクリプスを完全支配して使ってあげるわ!!――最強のファミリーとしてね!!








――――――








Side:ルナ


「邪魔だ、どけ!!」


――バキィィィィィィィィ!!!


出撃した私達を待っていたのは無数の野良感染者……まぁ、雑兵位は予想していたが、此れだけの数の野良感染者を有しているとは流石に驚きだよ。
尤も個々の能力は其れほど高くないので、倒すのは楽なんだが、流石に数が多いと面倒だな……

六課の面々も出撃して対処しているが、戦力比1:10は早々簡単に覆せるものじゃないか……だが、此のままでは!!



「……死んでろドカスが。」



――ザシュゥゥゥゥゥゥゥ!!!



え?


「コイツは、思った以上にトンでもねぇ事になってやがるな?
 あのドカス、野良感染者をもテメェの手駒にしたって事か……胸糞悪いなんてもんじゃねぇな、クソッたれが……ガチでぶっ殺したい気分だぜ。」


お前は、フッケバインのヴェイロン!?
如何して此処に……何の用だ?此方は、お前には全く持って用はないんだが……それ以前に、フッケバインのメンバーのお前が何故?


「生憎とフッケバインとはとっくに切れててな、今の俺は根無し草だ。
 何の用かと問われれば、此処は共闘と行かねぇか?テメェ等にとっても俺にとっても、フッケバインとヴァンデインは共通の敵だ……悪くねぇだろ?」


敵の敵は味方と言う奴か?……確かに、悪くないが、邪魔だけはしてくれるなよ?
増援かと思ったら、足手纏いが増えただけだったなんて言うのは、流石に御免だからな……その力、信用して良いんだな?


「言ってくれるじゃねぇか、クソアマが……少なくとも、こんなクソカスに負けるほど間抜けじゃねぇ。
 俺の中のクソチビが張り切ってるからな……テメェ等はさっさとクソカス共をぶっ殺して来やがれ!ガラじゃねぇが、露払い位はしてやるからよ。」


……ならば、信用しよう。
相手が何であろうと、我等の目的はハーディス・ヴァンデインただ一人だ!!

リオン・アークヒールが発見し、しかしその危険性故に封印したエクリプスを、イタズラに使う輩には鉄槌を下してやらなくてはならないからな。


「やって来い、ルナ、なのは……如何やら私には、此処で倒すべき相手が現れた様だからな……この愚妹が…!!!」


スコールが来たのか……だが、サイファーならば負ける事は無いだろうな。
お前の方こそ負けるなよサイファー?お前はホワイトナイツリベリオンにはなくてはならないメンバーなんだから、まかり間違っても死んでくれるなよ?


「言われるまでも無い……今度こそ、奴を冥界に送り届けてやるさ。」


なら安心だな。


――さて、覚悟は良いなフッケバイン!!否、ハーディス・ヴァンデイン!!……断罪の時は近いぞ!!!








――――――








Side:トーマ


まさか、ヴェイロンが出て来るとは予想外だったけど、おかげで野良感染者も8割近く確保できたから、そう言った面では此れも良い兆候なのかもな。
実際、戦闘でもヴェイロンがやりたいようにやってるから、滅茶苦茶的確に相手を葬り去ってるからなぁ……若しかして、ヴェイロンて超強いのかもだぜ。

だけど――


「お久しぶりね、ゼロのぼーや、元気にしてた?」


俺の前に現れたカレン・フッケバイン……コイツには流石に度肝を抜かれたぜ……だけど、俺の前に立ち塞がるって言うなら、退かずぜオバサン?


「少し見ない間に口が悪くなったわねぼーや……カレン『お姉さん』よ!!」


言ってろババア!!
アンタじゃ、ダブルリアクトの俺に勝つ事は出来ねぇよ!!……それを教えてやるぜ、アンタの身体を持ってな!覚悟は出来てるな、カレン・フッケバイン!


――ゴォォォォォォォオォォォォォォ!!!


「心地いい闘気ね……精々私を楽しませてくれるんでしょう?期待してるわよ、ゼロのぼーや。」


舐めんな……その余裕を絶望に変えてやるぜ!!
アンタやヴァンデインが欲していたゼロの力、望むなら見せてやるよ――全力全壊の手加減抜きでな!!!そして、其れで全てを終わりにしてやるぜ!!


覚悟は良いな、フッケバイン?
テメェ等『凶鳥』の翼は、今この場で、二度と飛翔できない様に叩き折ってやるぜ!!ゼロの力を有した俺が直々にな!!……此れで終わりにするぜ!!













 To Be Continued…