Side:ヴェイロン


ハッ、あのクソガキが恨む奴等だからどれ程かと思ったが、所詮は『普通の人間よりは相当に強い』程度の、言うなれば1.5次感染者か……興醒めだ。


「ぐ……貴様、一体何者だ?……私達が手も足も出ないなんて…!!」

「テメェ等みたいなドカスに名乗る名は持ち合わせてねぇよ、タコが。
 逆に聞くぜ……テメェ等こそ何モンだ?なんだって、半端モン風情が『フッケバイン』の紋章をその身に刻んでる?分かり易いようにシンプルに答えろ。」

「誰が、そんな事を!!」


うるせぇ、雑魚が。答える気がねぇなら其処で死んでろ。


――ドン!!


「ぺにゃ……」

「んな!?エクリプスなのに、一撃で!?」


アホが、如何にエクリプスとは言え脳味噌ふっとばされたら生きてる事は出来ねぇだろ?そんな事も分からねぇのかテメェは……使えねぇ、粗大ごみが。
まぁ、見ての通り、俺はテメェをぶち殺す事なんざ造作もねぇ事だ――其れを踏まえて改めて問うぜ?何モンだテメェ等は?


「答える義理はないわ……と言うよりも、私達ですら答えは知らない――貴方が何を望んでいたかは知らないけど、私達は最大級の『ハズレ』なのよ!」


そうかい……なら用はねぇ、大人しく死んどけクソアマ。
それに、テメェ等が口を割らなくても、クソチビの力でテメェ等の所持品からある程度の情報を引き出す事は出来るからな……精々使わせて貰うぜ。












魔法戦記リリカルなのは~月の祝福と白夜の聖王~ Force43
『最終戦争に至る狼煙』











Side:トーマ


フッケバインに襲撃を仕掛けるまであと数時間か……やっぱり実戦となると緊張して来るけど、此処はやるしかない!やらなくちゃならないんだ!!
其れに、戦うのは俺だけじゃない――リリィとロサ、アイシス、六課とリベリオンズの皆に、カート達だって居る……此れだけの仲間が居るなら大丈夫!!

俺の力はまだまだ小さいけど、其れでも精一杯やってやる!俺の前では1人の死者も出さない様に!!


「うぇ~~い、良い気迫だなゼロの坊や?
 初めて会った時とは違う、覚悟と意思の固まったその闘気……大したモンだ。仲間として戦う時には、相当に頼りになるってもんだぜコイツは♪」

「カート!そう言う君こそ、何かお気楽じゃない?
 何て言うか、大きな作戦の前とかは、もう少し緊張とか何かするもんだと思うんだけど?」

「そりゃ一般ピープルの場合だろ?俺にはそんなモン必要ねぇのよ!
 いつ何時でも、自分のやりたいようにやって、その結果が良かろうと悪かろうと、その全てを受け入れて次に進む、それが俺の人生哲学ってやつだ!」


うん、ちょっと聞くと立派な事言ってるみたいだけど、其れってつまり、怖いもの知らずの行き当たりばったり人生って事だよね?本気でアホなのカート?
確かに其れもアリだけど、ちゃんと道筋立てないで事をやったら絶対に失敗するぞ!?


「かも知れねぇが、此れからはリベリオンズの精鋭が道筋立ててくれるから、俺等は其れに従って動けばいい――滅茶苦茶楽だよな其れって!
 何よりも小難しい事を考えないで、結果を残せるってのがスンバラシと思わねぇか坊や!?」

「ちょっとだけ思ったけど、其れが出来るのは、リベリオンズに極Sクラスのバックスが居るからだって言う事を忘れないでよカート?」

「カカッ、分ーってるって。大体にして、此れからは行き当たりばったりの生活じゃねぇんだから、精々楽しませて貰うさ。」


本当に分かってるのかなカートは?……まぁ、実際リベリオンズはフォワードが次元世界最強トップ3って言っても過言じゃないし、バックスの能力だって
半端ないからなぁ?……ドクターは『まぁ、やろうと思えば管理局のデータベースを書き換えてしまう事くらい可能だよ?』とか言ってたし。

其れだけでも凄いのに、更に六課はスウちゃん達をはじめとしたフォワードに、エース・オブ・エースが居て、バックスにシャマル先生とかルキノさんとか居
て、其の2つが手を組んでるって言うんだから――あれ?フッケバインとヴァンデイン、始まる前から詰んでない?割とマジで。


「まぁ、詰んでるだろうよ。ヴァンデインのとっつぁんも年貢の納め時ってこったろ?
 エクリプスに手を出しちまった俺が言えた義理じゃねぇが、正直言ってとっつぁんはやり過ぎちまったからなぁ?
 特に俺等みたいな『二次感染者』を作る事に関しちゃ、俺等に使った甘言以外に、街一つを実験場にした『無差別強制感染』なんて事もしたらしいし、そ
 れらの影響で、適合できずに死んじまった奴等がドレだけ居たかは、数える事も出来ねぇんじゃねぇか?
 グレンデル一家は、幸いにして全員が適合したからアレだが、俺のホームのギャング仲間の何人かは、適合できずに死んじまったろうからな……」


聞いてるだけで気分が悪くなってくるな其れ……ヴァイゼン鉱山での事も、若しかしてヴァンデインが画策した事だったのかも知れないな。
何れにしてもアイツを野放しにしとくのはダメだ。フッケバインと接触したって言うなら尚の事だ。


「まぁ、この面子なら負けるこたぁねぇだろ?クインの奴も、隻眼の姉ちゃんに稽古付けて貰ってるみてぇだしな。」

「まぁ、負ける気なんて無いんだけど……ところでカート、前に君はヴァンデインはルナさんじゃないと倒せないって意味の事を言ってたけど如何言う事?
 確かに、俺じゃあヴァンデインに勝つ事は難しいだろうけど、なのはさんやサイファー、八神司令やアインスさんだったら勝てると思うんだけどさ?」

「ん?……ん~~~……まぁ、確かに聖王様や隻眼の姉ちゃん、総司令様に銀髪の姉ちゃんだったら確かに『勝てる』ぜ?100回やったら100回とも。
 だけどな、其処までなんだ。勝つ事は出来るけど、とっつぁんを完全に、二度と再起出来ないほどに『倒す』事が出来るのは、月の姉ちゃんだけだ。」


勝てるけど倒せない?
え~~~と、戦えば勝つ事は出来るけど、ヴァンデインは何れ復活してしまうって事か?


「そう言うこった。とっつぁんをぶっ倒すには、他を圧倒する絶対的な力ってモンがねぇと多分ダメだってのが、俺の予想でな?
 確かに聖王様や隻眼の姉ちゃんは最強レベルだが、マジに本気出した月の姉ちゃんに勝てるとは思えねぇ……何つ~か、格ってのが違いすぎんだ。
 聖王様と隻眼の姉ちゃんの本気が最大で超サイヤ人2だとしたら、月の姉ちゃんの本気は超サイヤ人ゴッド超サイヤ人レベルって言えば分かるか?」


うん、この上なく分かり易かった!てか其れって物凄く壁厚くない!?ルナさんマジ最強すぎ!!
因みに八神司令とアインスさんはどれ程のレベル?


「総司令様が超サイヤ人2で、銀髪姉ちゃんは通常の本気で超サイヤ人3、ユニゾンして超サイヤ人4だな♪」

「何その最強軍団!?――ダメだ、勝てる気がしねぇ。」

てか、其れってつまり、スウちゃん達でも普通に本気だしたら超サイヤ人レベルって事だよな?普通に人間辞めてるよな!?……俺はマダマダだな…


「如何足掻いても、敵わねぇ相手ってのは、ガチに存在するもんなんだなぁ……」

「其れを、絶賛感じてるところだよ俺……」

まぁ、上も下も見たらきりがないんだ、俺達は俺達に出来る事を全力でやるだけだ!現場では頼りにしてるぜカート!


「おうよ、任せなゼロの坊や!
 悪ガキには悪ガキの誇りってもんがあるんでな?精々暴れさせて貰うぜ!!」


――カツン!!


ホント、カート達と共闘する事に成るとは思わなかったけど、味方だとグレンデル一家の力は頼りになる部分があるからな。


『テステステス!あ~~~、六課全員&リベリオンズは、今直ぐビックバイパーXX03のブリッジに集合!』


と、八神総司令から招集が掛かったって事は、準備が完了したって言う事か……つまり、いよいよエクリプスを巡る最終決戦が始まるって言う事だよな。


7年前のヴァイゼン鉱山、俺のゼロとしての覚醒……俺自身の因縁にケリを付ける時だ!!
リリィ、ロサ、そしてアイシス……もう少しだけ、俺に力を貸して欲しいんだけど、良いかな?


「当然だよトーマ。」

「断る理由がないもの。」

「てか、何を水臭い事言ってんのよトーマ?アタシ達は友達でしょ?
 友達が正しい事をしようとしてる時に力を貸すのは当然の事だし、良いに決まってんでしょ?其れに此処まで来たら一蓮托生!トコトンやってやるわ!」


そっか……ありがとう皆!

行こう、ヴァンデインの狂った目的を止める為に!フッケバインのイカレタ思想をぶち壊す為に!!――俺達なら出来る!!俺はそう信じてる!!


《《リアクトオン!モード『暗黒騎士』!》》


――轟!!


テメェ等は纏めてぶっ倒してやる……精々覚悟を決めとくんだな。――俺の中の『ゼロ』を起こした事を、精々後悔させてやるぜ。








――――――








Side:ヴェイロン


本気ではずれだったな此のカス共は。
収穫はディバイダーと、魔導書だけだが……何か分かったかクソチビ?どんな些細な事でも構わねぇから言ってみろ。


「…………」

「如何した?」

「……こ、この2人は『カレン・フッケバイン』と『ハーディス・ヴァンデイン』本人……だけど、あのヴァンデインとカレンも本物……!!」


んだと?如何言うこったそりゃ!?
このクソ共が、カレンとクソ眉毛だと?……容姿もまるで違うし、能力だって違いすぎる……意味が分からねぇ。
いや、まさかコイツ等はコピーか?カレンとクソ眉毛が、容姿だけ変えたコピーを夫々作り出して、感染状態なんかを見る為のモルモットだったとしたら…


「その可能性は否定できないかも知れない。」

「……カレンとクソ眉毛が内通してたとは思えねぇから偶然の一致なんだろうが、何とも胸糞悪い事この上ねぇな。…益々ぶち殺さないと気が済まねぇ。」

だが、クソ眉毛に勝つのは難しい。このクソ共の力を取り込んでもだ。
――犬死なんてのは御免だから、何か良い手があると良いんだが……何か思いつくかクソチビ?


「特務六課。」

「あ?」

「特務六課は、言うなれば『敵の敵』――裏を返せば、其れは味方とも取れるから、利害の一致面で共闘は出来ると思う。」


敵の敵は味方ってやつか?……確かに、クソ眉毛とフッケバインは俺と六課の共通の敵だから、共闘状態に持ってくことは出来るかも知れねぇな?
ムカつくが、六課の戦力は半端ねぇからな……実際、凄まじいし。

「ククク……クハハハハハ!!最高だぜクソチビ!そんな事を思いつくとはな!
 六課に手を貸す気はねえが、アイツ等の力を利用する事は出来そうだ……上出来だクソチビ、次の街に着いたら、何でも好きなモン食わせてやるよ。」

「じゃあ、エビバーガーとポテトのLサイズと、コーラがいい。」

「欲がねえなテメェは。」

アルナージだったら『サーロイン3kg』とか言いそうなもんだけどな。


だけどまぁ、テメェは詰みに嵌ったぜクソ眉毛が。
幾らテメェが強いつっても、俺と六課が波状攻撃をブチかませば無事じゃ済まねえ……心臓を抉り出してくれた借りを万倍にして返してやるから覚悟しな!








――――――








Side:ルナ


いよいよ、掃滅戦が開始されるか……まぁ、フッケバインもヴァンデインも纏めて消し去ってやる心算だけれどね。


「……と言う訳で、ビッグバイパーXX03でフッケバインに接近して、其処からは各個撃破をメインにして、敵勢力を撃滅していく!
 尤も相手が相手だけに、油断は禁物やけど、私等やったら誰が相手だって負ける事はあらへん!!一連のエクリプスの彼是に、此処でケリを付ける!」

「異論はないよはやて。お父さんが見つけた力をイタズラに使う連中は、今此処で狩って終わりにする!」

「これ以上、エクリプスを拡散させるわけにはいかないからね――手加減なしで行くよ皆!!」

「「「「「「「「「「おーーーーーー!!!」」」」」」」」」」


六課もリベリオンズもやる気も闘気も魔力も充実しているから、全く持って不安などはない。
して、はやて嬢、具体的にはどんな作戦で行くんだ?


「先ずはこの船でフッケバインに接近して、艦の持てる火力を全開にしてフッケバインを足止め。
 でもって、その隙に、私となのはとアインス、ルナさんとサイファー、そしてトーマとリリィとロサとアイシスがフッケバインに乗り込んで敵勢力を撃滅!!
 残ったメンバーは、フッケバインへの攻撃と臨時戦力の撃滅に当たってや!!……此れが、最善の策やからね。」


流石に、相当考えたみたいだな?
だが、その布陣で大正解だ、はやて嬢!この布陣ならば、夫々が自分の力を十二分に発揮できるからな。――実に見事なモノだと称賛に値するな。


「泣いても笑っても、此れが最終決戦や!!
 敵はぶっ倒せ!仲間は護れ!!そして……死んでも生きて帰れ!!敵は撃滅しての全員帰還が私の望む事や……全員必ず帰還せよ!!」

「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」


出撃前に、絆は更に強くなったか……此れはもう、1%も負ける要素が無くなったな。


だが、ハーディス・ヴァンデイン……貴様の首は、私が直々に狩ってやるから、精々首を洗ってまっておくんだな……!!
エクリプスをイタズラに拡散したその罪に対する刑罰は『死刑』だからな……残り少ない余生を楽しむが良いさ――支配者を気取ってな!!


さぁ、エクリプスを巡る物語の、最終章の幕を上げようじゃないか!!








――――――








Side:カレン


!?……此れは、私の複製がやられた様ね?……まぁ、初戦は捨て駒だけれど、其れなりの働きはしてくれたわ。
貴女の得た情報はデータとして私に刻まれているからねぇ?……其れは、あのインテリ眉毛も同様みたいだけど……アイツが死ねば、其れで全て終わり。

試しにソニカに占って貰ったら、ハーディスには『死相』って言うのが出てたみたいだから、コイツの死の運命は確実だわ。


アンタが死んだら、其処からフッケバインは再び飛翔するわ。輝ける未来に向かってね!!



最後に笑うのは、六課でもヴァンデインでもない……このカレン・フッケバインだと言う事を、精々覚えておくと良いわ!




ゼロの力と原初の種……必ず両方とも手に入れてあげるわ!!フッケバイン頭領『カレン・フッケバイン』の名に誓ってね!!その力、貰い受けるわ!!















 To Be Continued…