Side:ルナ


と、言う訳で、特に苦戦する事も無く、宛らムダ毛の如く湧いて来た野良感染者は、来た端から撃滅してやった訳だが――

「収容しきれるのかコイツ等?」

「本局の収容施設、軌道上の収容施設、S級犯罪者用の地下施設をフル活用しても、多分入り切らないと思うよ?………だって、500人以上だからね。」

「だよなぁ……」

まぁ、はやて嬢の事だからその辺は巧くやってくれるだろうさ。更生の余地のある連中は、医療班の治療を受ける事を前提に釈放とかそんな感じでな。



だが、コイツ等よりも気になるのは、ヴァンデインの動向だ。
なにやらフッケバインのヴェイロンとスコールと交戦状態になっていたみたいだが、如何にも其処にフッケバインの本体が現れた様だからな…?

奴の力を考えれば、フッケバインなどおそるるに足らんだろうが、もしも利害の一致で奴等が手を組んだら面倒な事この上ないだろう――エクリプスの力を
妄信している『原初の種』の所有者と、凶暴な一次感染者の集団が手を組んだ一団など、悪夢以外の何物でもないな。


まぁ、其れはまた後だ。
先ずは、此の野良感染者の山を局に運び込まねばな……ヤレヤレ、いっその事、工事用のダンプカーでも借りて来ればよかったよ。












魔法戦記リリカルなのは~月の祝福と白夜の聖王~ Force42
『Die Welt die sich windet』











Side:ヴェイロン


クソカスとの戦いの最中に現れた『飛空艇フッケバイン』……カレンの奴、一体何を考えて居やがるんだ?
コイツは俺の予測だが、俺を襲った時のテメェ等は、このクソカスの支配を受けて操られてたってのが本当の所だろ……そんな奴と、何をする気でいる?


「お久しぶり~~~!此れは此れはご機嫌麗しゅう、ハーディス・ヴァンデイン専務。」

「おやおや、君の方こそ元気そうじゃないか、フッケバインファミリーの首領殿。――此度は、一体如何なる要件かな?」

「あら?話が早いわね……ま、面倒な事が無くていいけど。
 単刀直入に言うわ、ハーディス・ヴァンデイン、アンタは私達と手を組みなさい……いえ、寧ろ組むべきよ。」


はぁ?何言ってんだコイツ?脳味噌の螺子が2~3本吹っ飛んでるとは思ったが、遂に全部の螺子が吹っ飛んだか?
テメェ等を支配出来る相手に、取り引きが成立すると思ってる時点でアホクセェ……三文芝居に付き合う気はねぇから、俺は此処で行かせて貰うぜ。


「気持ちは分かるけど、少し待ちなさいヴェイ。
 貴方が如何しようとも勝手だけど、単独行動をするのは全てを聞いてからでも遅くはないんじゃないかしら?」

「聞く価値がアンのかそりゃ?」

「其れは貴方次第よ♪」


……相変わらず、テメェはノリが軽いなカレン――其れで居て、やる事はキッチリと熟すんだから大したモンだって褒めてやるよ。不本意だけどな。
それ以前に、このクソカスと組む事でテメェ等はどんなメリットを受け、このクソカスは其れこそ何のメリットがあるってんだ?説明してみろ、ドカス共が。


「答えは簡単よヴェイ。フッケバインは原初の種を欲し、ヴァンデインもゼロの坊やの力を欲しがってる……其処に利害の一致があるって事よ。
 ヴァンデインはゼロの力を欲してるけど、ゼロの坊やに簡単に近づく事は出来ない――ゼロの坊やは、私達の方が接触しやすいでしょう?」

「成程……其れは其れは、確かに利害の一致はしているね?
 まぁ、其れが賢い選択だと言えるんだけれど……その提案には賛成だ、カレン・フッケバイン。」


確かに理屈は分かるが……其れでも俺は、其のクソカスと組む気は更々ねぇ。
そのムカつくにやけ顔を目の前で曝されるのは我慢できそうにねぇからな……テメェ等はテメェ等で好きにやれ……俺もやりたいようにやらせて貰うぜ!


「其れはフッケバインからの脱退と言う事で良いのかしら?」

「好きにしろ……何にしても、俺とテメェ等の付き合いは此処までって事だ――精々達者でな、カレン・フッケバイン。」

「そう……残念だわ……」


恨むなら、インテリ眉毛を恨むんだな……奴のせいで、こっちが迷惑被ってるのは火を見るよりも明らかだからな……ソイツと馴れ合う心算は毛頭ねぇ。
精々、其のクソカスに寝首を掻かれないようにな――そいつはまだ何かを隠し持ってるだろうからな。

フッケバインとは、此れでおさらばになるんだが――テメェは如何すんだスコール?


「如何するかか……逆に聞きたいんだが、お前は如何するんだ?」

「この場は退くぜ?此処で、このクソ眉毛を攻撃しちまったらカレン達をも敵に回す事になる……この人数相手に喧嘩しかけるほどアホじゃねぇよ。
 何れ其のクソ眉毛をぶち殺しには行くだろうが、その為には『力』を手にしなきゃならねぇみたいだからな――あのクソガキが言ってた『鉱山を襲った2人
 組』ってのを探してぶちのめして、そんでそいつ等の持ってる力を取り込む。他者の力でも、このクソチビの力がありゃ取り込めるだろうしな。」

「成程な……なら、私はフッケバインに戻るとしよう。
 此処に居れば、管理局ともやり合う事になるだろうから、そうなれば姉さんをこの手で殺す機会もより多くなるだろうからね。」


そうかよ……ま、好きにしろ。
其れじゃあなテメェ等、今まで世話になった……オメェ等と色々やるのは、まぁ其れなりに楽しかったぜ?――だが、次に会うときゃ敵同士だからな?

そうなったら手加減はしねぇ……其のクソ眉毛共々覚悟しとけよ、クソ野郎共!!おい、リアクト解除だクソチビ。急げよ。


――シュゥゥゥン


「ヴェイロン……」

「行くぞ、もう此処に用はねぇ。」

「うん……」


……辛気臭ぇ顔してんじゃねぇ。何がどうなっても、あのクソ眉毛をぶち殺せば全てが丸く収まる……そうなりゃ全てが元通りだ。
アイツが死ねば、アイツの持ってる力をカレンが手に入れる事も出来るから、そうなればフッケバインもあるべき姿に戻る……ただ、そんだけの事だ。

それに、あのクソは局から脱走したんだから、六課の連中だって奴を追ってるだろうからな……アイツ等は俺等と六課の両方の相手をしきゃならねぇ訳だ
し、六課にはゼロのクソガキと、スコールの姉貴とか言う奴を元とした『零次感染者』が居やがるから、アイツだって只じゃ済まねぇだろ。

何れにしても、あのクソ眉毛に待ってるのは『破滅の未来』だけだろ?


俺だけじゃなく、あのクソは色んな物を敵に回し過ぎた……其れだけ『原初の種』とやらがスゲェのかも知れないが、其れを超える存在ってのは、如何やら
考えてねぇみたいだ……上等だぜクソカスが、テメェが取るに足らねぇ存在だと思ってた奴が、テメェの命を刈り取ってやるぜ。


其れは其れとして、道中は歩きになるから、キツクなったら言えよクソチビ?次の街まで距離があるときゃおぶってやる。


「そうなったら、リアクトした方が負担が少ないと思う……」

「言われてみりゃ、其れもそうだな。」

取り敢えずは、ゼロのクソガキが言ってた2人組だな。


だが一体何モンだそいつ等は?
エクリプスドライバーだったらカレンの奴が知ってる筈だが、知らない感じだったし……まぁ、見つけだしゃ分かる事か。
エクリプスドライバーで、該当する2人組を見つけて狩ってきゃ、何れはターゲットに大当たりだからな――覚悟しとけクソ共、まとめて狩ってやるからな。



「ヴェイロン、喉乾いた。」

「……もうじき次の街に付くから我慢しろ。着いたらジュース買ってやるから。」

「うん。」



……如何にも調子の狂う道中になりそうだけどな。








――――――








Side:ルナ


取り敢えず、野良感染者は全員を(半ば無理矢理)収容して、随時取り調べが行われてる訳だが、此れは全員の取り調べが終わるのには、取調官が交
代しながらでやっても、24時間じゃ終わらないだろうな。

流石にはやて嬢が『嘘吐いたり、口割らん奴は問答無用で虚数空間に落とすからな?』って脅しが効いたのか、取り調べそのものはスムーズだがな。

が、取り調べが進むにつれ、二次感染者たる野良感染者は、ヴァンデインが生み出したという事が確定して来たな。
今までは限りなく黒に近いグレーだったが、此れだけの証言があるならば、証拠としては充分だ――奴を、脱走した一級犯罪者として手配も出来る筈だ。


「勿論、既に手配済みや。
 此れより、特務六課はハーディス・ヴァンデインを『重要参考人』から、此度のエクリプス事件の黒幕と断定し、第一級犯罪者として全力で逮捕するで!」

「って言うか、当然じゃないかなはやて?
 彼はエクリプスの力をイタズラに使いすぎた……強力な力を使う際に払う代償を、そろそろ纏めて払う頃だよ?フェイトも、そう思うでしょ?」

「そうだね、なのは……特に『選別』と称して、村一つを滅ぼす様な感染実験をしたって言う事実は絶対に許せるものじゃないよ。」


そして、予想通り、なのはもはやて嬢もフェイトもやる気は充分だな――いや、この場合は特務六課とホワイトナイツリベリオン全員がか。



「おい、本気で此れで良いのかアホヘッド?」

「良いんだよ。アウトローはアウトローとつるむ分にゃ問題ねぇし、スラムの悪ガキの意地を、ヴァンデインのとっつぁんに見せてやるのも悪かねぇだろ?」

「あの眉毛ムカつく……ぶち殺す。」


そして、新たにホワイトナイツリベリオンのメンバーとなったグレンデル一家もな。



この面子なら負ける事は無いんだが、肝心のヴァンデインは何処に行ったんだ?美由希が発信機を付けていた筈だか?


「勿論其れは追跡してるんやけど、件のヴァンデインは今現在『海』の真上を高速で移動中なんや。」


は?海の上を?……アイツは飛ぶ事など出来なかった筈だが?


「私もそう思ったから、ウーノさんとクアットロさんに頼んで調べて貰ったんやけど……」

「如何やら、ハーディス・ヴァンデインはフッケバイン一味と共に居るようですね。」

「海上移動は、フッケバイン一家の移動飛空艇『フッケバイン』に乗ってる可能性が略100%ですわ……ある意味で最悪の2つが手を組んだのですわ!」


ヴァンデインとフッケバインが手を組んだだと?……其れは確かに、最悪の同盟だな。
尤も、フッケバインはヴァンデインの支配下に置かれている可能性もあるんだがな――この間のアルナージの暴走を見る限りではね。


だが、この同盟が最強最悪のエクリプスの同盟である事に変わりはないだろうな?――一般局員では、相手にすらならないだろうからな。
それら多承知した上で敢えて聞こう、『如何する心算だ』はやて嬢?


「決まっとるやろ?……準備万端整えて、そんでもって連中に特攻ブチかまして、眉毛ぶちのめしてゲームエンドや!
 何ぼ強い力言うても、その危険性からお父さんが封印した力を、己の欲望の為に撒き散らす外道は生かしておかん……全力全壊で叩き潰すだけや!」

「お父さんの、思いと覚悟を、踏み躙る行為だからね此れは――不死なる白夜の聖王と夜天の冥王を敵に回した事を、骨の髄まで後悔して貰おうかな。」


言うまでも無く全力全壊か。
確かに、リオン・アークヒールが基礎理論を確立しながら、しかし封印した『劇物』をイタズラに撒き散らした腐れ外道には裁きが下されて然りだからね。


つまりは総力戦になるんだろうが、その時はやれるかトーマ?


「大丈夫です!!
 ……勿論、まだ人を攻撃する事に戸惑いはするけど、其処で攻撃しなかったら平穏に暮らしてる人達が危ないってんなら、俺は迷わないですよ!
 最悪の場合はゼロの力を使ってでも止めて見せる……誰も殺さず、殺させない為に!!」


その意気だ。
相変わらずの、甘っちょろい理想論も有るが、誰も殺さずに、誰も、誰にも殺させないと言うその意思は評価に値するよ。

その意思を忘れなければ大丈夫だ。





ハルマゲドン、或はラグナロクの時は近いぞハーディス・ヴァンデイン?
其れが起きたその時に、貴様は一体何をどうする心算で居るんだ?……まぁ、何が来たところで、返り討ちにはしてやるけれどな。








――――――








Side:ヴェイロン



フッケバインと決別してそろそろ一週間経つんだが、新たに立ち寄った街で『謎の2人組』と思しき連中の情報を得る事が出来るとは思わなかったぜ。
そいつ等は、偶々ここに来てたんだろうが、特徴がクソガキの言ってたのと一致するからな……コイツは『当たり』を引いたかもしれねぇな。


「ヴェイロン、あれ……」

「あぁ、いやがったな、中途半端なドカスが。」

んで、目撃情報を頼りに探し回る事30分……朽ちた教会で、ようやく見つけたぜ、ゴミ以下のドカスが!!


「!!……誰?」

「何か用かな?」


あぁ、テメェ等に用があって来たぜクソカス共。
ちと聞きてぇんだが、7年前のヴァイゼン鉱山であったって言う災害について知らねぇか?如何にもそいつは一組の男と女のコンビがやったって事だが…


「ヴァイゼン鉱山?……あぁ、あそこか。」

「結構派手に暴れたよねぇ?下手したら生存者居なかったんじゃないのアレって?
 って言うか、面白いよね――私等が少し本気出しただけで、今まで生きてた奴等が死んじゃうんだからさ……まぁ、ゴミでも楽しめたけどね。」


……成程……一発目からビンゴとは、俺も中々に運が良いみたいだぜ。


――轟!!


リアクトオン。モード『闇騎士』!



「!!お前もエクリプスだったのか!?」

「しかも、私達よりもずっと強い!?……そんな、馬鹿な!!!」


覚悟は良いなドカス共……テメェ等のせいで、こっちは要らん迷惑被ってんだからな……その代償は、テメェらの命で払って貰うからな……覚悟しとけ!






テメェ等は纏めて地獄送りだ……精々残り少ない余生を楽しんどけ、クソカスが。

一匹たりとも逃がさねぇ!!テメェ等は滅殺だ!……そして貰うぜ、テメェ等の持つ、エクリプスの特性って奴をな!!



覚悟は良いなクソカス共……骨の欠片も残らぬほどに、撃滅してやるぜ!!















 To Be Continued…