Side:トーマ
「………?」
あ、アレ?此処は………俺は確か教会に居た筈だけど……此処は飛び出す前に居た山道の中――だよなぁ?
「トーマ、目が覚めた!?」
「…………!!」
アイシス!其れにリリィも………そっか、俺はあの銀髪と戦って気を失ってたのか。
こう言ったらアレだけど、良く殺されなかったもんだぜ――アイツの性格的に、相手に慈悲を掛けるとは思えない……つまり見逃されたのか俺は!!
くそ、助かったとは言え其れは其れで――何て言うか物凄く腹立たしい!!
見逃されたって事はつまり、『今は命を奪うにも値しない』って事だよな!?………舐めんな、俺の命はアンタに見逃されるほど安くないぜ!!!!
「と、取り敢えず落ち着こうトーマ!!」
「あぁ、ゴメン――てか、若しかしてアイシスが俺の事を此処まで運んでくれたの?……重くなかった?」
「こう見えても体力には自信があるんで……」
そっか……ありがと。
そう言えば、教会に居たのは俺だけ?銀髪でファーの付いた黒い革ジャンの男と、褐色肌で金髪で眼帯したお姉さんは居なかった!?
「銀髪は居たけど、もう1人の事は分からない……あそこで生きてたのはトーマと謎の銀髪だけだよ?」
吹っ飛んだ……って事は無いよな?あのお姉さんは銀髪よりも強かったわけだし。
だけど何だろうな、あの金髪のお姉さんと、いけ好かない銀髪にはそれほど遠くない未来に、また会いそうな気がする。
もしその時が訪れたら、その時こそ7年前に俺の故郷を破壊しつくした奴等の事を全て聞きだしてやる――覚悟しとけよ銀髪野郎!!
魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force4
『戦力集結!結成、特務六課!』
Side:なのは
「サイファーの斬撃に耐えうるとは、『EC』装備って言うのは、トンでもない代物なのかもしれないね……
しかも、保護対象のトーマが凄まじい速さで感染しているとなると、日が経てば経つほど状況は悪い方向に進んでいくのは間違いないよ。」
「だろうな……一刻も早く確保するに越した事はなかろう。
もっともそうは言っても、件のトーマには発信機を付けて居る訳ではないから何処に居るか特定するのは至難の業であろうな。
エクリプスドライバー同士は同族を感知できるとは言っても、此れでは後手後手に回るのは自明の事よ……何か有効な対策はないモノかのう…」
残念だけど、現段階で有効な手立ては思いつかないよ。
ジェイルさんでも、サイファーからの情報だけで全てを推測するのは絶対困難だと思うし、詳しい事ははやて達と合流してからの方が良いよ。
「なのはの言う通り、其れが最もベターな方法でしょうね。
現段階で私達が手にしている情報は決して多いとはいませんが、管理局が得ている情報だって多いモノではない筈です。」
「つまり、少ないながらも、今持っている情報をフル活用して事に当たった方が上手く行く場合もあると言う事ですね?」
「まぁ、誰が来ようと僕とバルニフィカスが、文字通り『一刀両断』にしてやるさ!!
例え相手が『魔導殺し』って言われてる存在だとしても、そんなの僕には一切関係ない!!悪い奴は斬り捨てる!其れが一番メンドくさくない!!」
そうだね。
フッケバインて言うのが何を企んでるかは知らないけど、何の罪もない教会のシスターの命を無意味に奪った事は許せない。
しかも話を聞く限り、その銀髪……え〜〜〜と、名前なんだっけ?
「何やら名乗っていたようだが覚えていない。と言うか覚える気などないし覚える価値もない。腐れ脳か低脳で充分だ。」
「加えて身の程知らずと小者臭も追加してやろうではないか!!」
「言うな王様?――前々から思っていたが、中々良い毒舌じゃないか。」
「フン、我は正しく相手を評価して名を授けてやってるだけよ。
貴様から聞いた話を総合すると、その銀髪とやらは『塵芥』と呼んでやるのも勿体ないわ。」
まぁ、名前なんで如何でも良いんだけどね。
兎に角、その人は奪った命を背負う事なんて絶対にしない……誰をドレだけ殺しても、私達が蠅やゴキブリを潰したのと同じ感覚なんだろうね。
恐らくはエクリプスの『凶暴化と破壊衝動の増大』に精神が侵されて、一度戦いになると真面な思考形態は殆ど失われるのかも知れないけれど。
何れにしても、此処で手を拱いていても何にもならないから、そろそろはやての所に行こうか?
「其れが良かろう。
丁度今、お前の姉からメールが来てな?次元港でナカジマ姉妹達と合流し、此れから局の方に向かうんだそうだ。」
姉さんが……うん、なら尚の事早く行こうか?
恐らくは、エリオとキャロも管理局の方に向かってる最中だろうし、遅刻は良くないからね。
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「な〜のは〜〜!久しぶりね、元気にしてた?」
「うん、私もルナ達も元気だよ。姉さんは………聞くまでもなさそうだね?」
「今日も今日とて元気よ♪……さっすがに三十路超えると十代の時みたいには動けなくなるってのをヒシヒシと感じてるけどね……」
「……見てくれ17歳のままでありながらそれを言いますか………」
ホントに何で16年前のままなんだろうね姉さんて?
ジェイルさんに遺伝子解析して貰えば、この有り得ない程のある意味『不老』の謎は解けるのかな?………多分ジェイルさんでも解明不可能だね。
時に姉さん、ヴィヴィオちゃんは………
「お久しぶりです、なのは………お姉さん。」
「やっぱり一緒に来てたんだ♪
ふふふ、良いよ『叔母さん』で。実際関係的にはそうなんだし、姪っ子に叔母さんて言われたくらいで怒る何て言うのは絶対オカシイ事だもん。」
「い、何時の間にかなのはが物凄い大人になってるわ………」
何時までも子供じゃないよ姉さん。
6年前から今まで色んな事が有って、色んな事をして来たから、否が応でも精神的に大人にもなるって。
「せやなぁ、大人にもなるやろな。
子供の頃の天真爛漫で太陽みたいななのはも良いけど、大人の落ち着きを身に付けた三日月みたいななのはも魅力的やと思うで私は♪」
「はやて……武隊長自らお出迎え?」
「まぁなぁ……と言うかぶっちゃけ待っとるのも飽きたし、暇やったし、リイン姉妹が居るから隊長室空けて来ても別に問題ないもんでお出迎えや。
……ま、部隊長自ら出迎える言うのも悪ないと思うんやけどね――エリオとキャロは既に到着して待って貰っとるから、隊長室にいこか?」
エリオとキャロは既に到着してたんだ……って言うか、隊員待たせておくのは如何かと思うよはやて?
「大丈夫や、私が居らんでもリイン姉妹が2人の相手してくれとるからマッタク持って問題ない!」
「1部隊を預かる立場の人間の発言としては大問題だけどね。」
ある意味はやてらしいとも言えるけどね。
だけど、皆と会うのは6年ぶりか……エリオとキャロはきっと凄く成長してるだろうね。
特にエリオは男の子だから、若しかしたら身長が180p超えてるかも。担当する事件は面倒だけど、懐かしいメンバーとの再会は楽しみだよ♪
――――――
Side:ルナ
私達が隊長室に入ってから、程なくしてフェイトとティアナも到着したようだな。
ふむ、ティアナはフェイトと同じ黒い制服を纏っていると言う事は、執務官とやらになって居ると言う事か……着実に成長しているようだな。
いや、ティアナだけでなく旧機動六課の新人達が軒並み実力を付けているのは間違いない。
特にスバルとノーヴェは其れが顕著だ――今の2人を変身しないで1人で相手をするのは少々骨が折れるかも知れん。
「ほな全員揃ったな?先ずは私の招集に応えてくれた事に礼を言うわ……ありがとう。
皆にこうして集まって貰ったのは、他でもない『エクリプスウィルス』に関する案件が、『機を見る』なんて悠長な事が出来んようになったからや。
――数年前からマークしとった犯罪組織のフッケバインが、本格的に動き出したみたいでな?奴さんがやらかしたと思われる事が最近多発しとる。
一番新しい所では、数時間前に起きた聖王教会の惨殺事件がそうやね。
連中が何を目的としてこんな事をしとるかは知らんけど、せやかて連中の好き勝手にさせる事も出来へん。
単刀直入に言うなら、フッケバインと、そしてエクリプスを使って何かをしようとしてる連中を一網打尽にする為に皆の力を今一度貸して欲しいんや。」
……断る奴が居ると思っているのかはやて嬢?
私を含め、此処に集まったのは6年前の大型テロを共に戦った仲間達だ――その仲間が再集結して、その問いに『否』と言う筈がないだろうに。
「分かり切った事を聞くな、我等『ホワイトナイツリベリオン』は既にお前からの依頼を了承しているが故に『否』と言う答えは持ち合わせてはいない。」
「ルナの言う通りよ小鴉。
例えうぬからの要請がなくとも、事と次第によっては我等は奴等に仕掛ける心算で居たのでな?……ククク、塵芥未満に地獄を見せてくれるわ!」
「僕とキャロも異存なしです。」
「捨て置けないですよ、こんな事………」
「つーか、こんだけのモンを無視するってのが有り得ねぇ――トコトンやってやりますよ八神司令!!」
「そうですよ!!少し時間が掛かってますけどギン姉も合流しますし……戦力的に不安は皆無です!!」
「エクリプスとフッケバインは、丁度私とティアナが担当してる事件でもあるからタイムリーだしね……協力するよはやて。」
「もう一度このメンバーで仕事が出来るなんて、夢にも思っていませんでしたけどね。」
と、ご覧のように、誰一人として『否』と言う者は存在していないだろう?
其れだけお前から直々の招集と言うモノを、皆が重く受け止めていると言う事だ――其れはつまり、お前がドレだけの人物か物語っているんだ。
此れだけの人がお前の鶴の一声で集まるとは相当な事だぞはやて嬢?
誰もが思ったんだよ『あの八神司令が直々に招集を掛けるなんて、相当な事があったに違いない』ってね。
そして、その結果これだけの戦力が集ったんだ……隊長冥利に尽きるんじゃないのか?
「……せやな……嘗ての戦友が、私の呼び掛けに応えてくれたなんて、これ以上に嬉しい事はあらへんわ。――ほな、此処に正式に宣言するで?
私こと『八神はやて』は、今日この時をもって『対エクリプス捜査チーム』として、新たに『特務六課』を設立する!!
分からん事は多いけど、せやけどエクリプスドライバーの犯罪集団『フッケバイン』は見逃せないし、『ヴァンデインコーポレーション』かて怪しいわ!
――何にしても、エクリプスがなんの力も持たない市民に感染したら、感染者はたちまち凶暴なモンスターになってまうから何としても止めるんや!」
一歩間違えば、ゆりかご内部に出て来た『エクリプスドライバーになれなかった者のなれの果て』みたいな事態になりかねないと言う訳か。
しかもそれが増えるとは……何とも遠慮したい事態である事は間違いないな………
ともあれ概要は分かった。
エクリプスに対応した武器の開発には時間が掛かるだろうが、ジェイルが手出しをすればそれほど大変でもないだろうからな。
ともあれ新部隊『特務六課』が、此処に設立されたな♪
――――――
Side:???
聖王教会で一発決めて来るとは、流石はヴェイ兄じゃない……その行動力にはゾクゾクするわ。
しかも、アンだけ派手にやっておきながらパトカー1台の追跡をも許さないとはお見事としか言いようがないわマジで。
「仕事自体は下らなかったが、得るモノは有ったから良しとしとけ。
だが俺の前に現れやがったクソアマ、そう遠くない内再会するだろうな……俺の中のエクリプスが再戦必至って望んでるからな。」
「……そのクソアマの容姿と名前は覚えてる、ヴェイ兄?」
「容姿は金髪の褐色肌で、右目に妙な眼帯をしていやがった……名前は確か『サイファー』とか言ってたな?
!!サイファーですって!?
あの状況で生き長らえていたととでも言うの!?――いや、もしもエクリプスドライバーとなって居たのなら有り得ない事ではないわね。
だけど、もしそうだとしても、まさか生きてエクリプスドライバーになって居たとは驚きだよ『サイファー』
何で生き延びてエクリプスに馴染んだかは分からないけれど、だけど生きながらた事をアンタは必ず後悔する…と言うか後悔させる。
もしも私の前に現れたその時には命令を無視してでも殺してやる!!
エクリプスに適応したのは意外だったけど、其れだけに嬲り殺しに出来るってもんだ……再会を楽しみにしているわよサイファー姉さん……
もっとも再会したらその時は、言葉は意味を成さない『殺し合い』をやるだけだけどね!!
何の気なしにフッケバインに加入したけど、此れは此れで中々面白い事にあり付けそうよね?――最高に面白い事が始まりそうだわ……!!
To Be Continued… 
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