Side:サイファー
「『ホワイトナイツリベリオン』だと?……確かここ数年、違法密輸組織とかをぶっ壊してる私設武装組織だったか?
――クソカスが、面倒なところに出張ってきやがって………!!」
ふっ……恨むなら、私達に協力を要請した管理局の小狸隊長を恨むんだな。
何れにせよ、私もこの少年には用があるのでな、出来れば貴様のような『人の話を聞こうともしない低脳のアホンダラ』には退場願いたいんだが?
「あぁ、舐めてんのかクソアマ――テメェの目的なんざ知ったこっちゃねえ。
こっちは其処のクソガキが盗み出したリアクターとディバイダーを手に入れられば其れで良い――邪魔すんならぶっ殺すぞドカスが……!!」
「ぶっ殺すか――やってみろ嘴の黄色いひよっこが。
大体にして『ドカス』だと?……笑わせるな、相手との力量差も見極められない三流未満の腐れ脳が!――力の差と言うモノを教えてやる!!」
やるぞ、ライオンハート!!
――グン!!
「……そいつは……」
「私用にカスタマイズされた、あらゆるモノを斬り捨てる血塗られた双剣――誇り高き獅子の魂を宿した刃『ライオンハート』。
ジェイルの手によって、『魔導殺し』とも互角に渡り合える性能を備えた我が愛刀だ……この双剣の刃を躱しきれるか、三下が!!!」
「!!!!」
対象の少年以外が居たのは予想外だが、ある意味で都合は良い。
かの少年――トーマを確保するだけでなく、この低脳を叩きのめして連れて行けば、小狸隊長様も満足するだろうしな……ま、精々足掻くと良い!
魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force3
『Eclipse Driver Thoma Avenir』
Side:トーマ
な……目の前で繰り広げられてる此れは一体なんなんだよ!?
黒服銀髪の男と、褐色肌にブロンドのお姉さんの超バトルって、こんなの流石に予想できねぇ!?寧ろあの流れから予想したら凄すぎだって!!
だけどそのお蔭で俺はこうして助かった訳だけどさ。
もっともだからと言って楽観は出来ない……ブロンドのお姉さんの方も俺に用があるみたいだし、此処は無難に離脱するのが最善だな。
色々無理にやって、管理局に逮捕されようもんなら、其れこそスゥちゃんやノーヴェ姐に迷惑掛けちゃうからな………
「テメェクソアマ……何処で感染して、その武器を手に入れた?」
「何処で感染したかは覚えていないが、この双剣は我等が組織の頭脳たる科学者が作り上げた世界でも5本の指に入る最高性能デバイスだ。
ただ一つだけハッキリと言っておくと、私は感染したのではなく、無理矢理に感染させらえれたのだ……下らん欲望の為にな。」
重い、話が重い!!……こりゃどさくさに紛れて逃げた方が絶対安全だよなぁ!?
そうと決まれば善は急げ――
「ケッ……気にいらねぇな――本気で気に入らねぇぜテメェ……!!」
「気に入らなくて結構……寧ろ貴様等に気に居られたら其れこそ全身粟立って悪寒が走るからな。」
「言うじゃねぇかクソアマが……テメェみてぇないけすかねぇ女見てると『7年前の鉱山での一件』を思い出してしょうがねぇ……!」
――え?
今こいつは何て言った?7年前?――俺が親も故郷も失ったあの日にこの銀髪は俺の村に居た―――!!!
――ゴォォォォォ!!!
「「!!?」」
そうか……やっぱりアンタが7年前の事件に係わってたんだな?
俺以外の村人を皆殺しにしたのにも、アンタは無関係じゃない……寧ろアンタがやったんだろ!!!
そして今日、似たような手口で何の罪もないシスター達を殺した………絶対に許さないぜ――覚悟は出来てるんだろうな銀髪野郎ぉぉぉぉ!!
「――!!拙いな、病化の初期症状の一つ『破壊衝動の増大と凶暴化』が発症したか……!!」
「ほう………悪くねぇ殺気だ。只のガキじゃねぇって事か――コイツは面白れぇ!
少しばかり気が変わった、テメェが持ってる其れは渡さなくても構わねぇが――如何して連中からそいつを盗んだ?聞かせてみな?」
……別に欲しくて盗んだ訳じゃねぇ――女の子を助けたら勝手に付いて来ただけだ。
「女の子?………あそこで確保した研究員がシュトロゼックが如何の言っていたが、若しかして其れがお前の助けた女の子かな?」
「……本人はそう名乗った。」
「クックック………そうかい、そうかい。」
何がオカシイ?
「知らねぇってのは面白いモンだな?
テメェが手にしてる其れが一体どんなシロモノなのか、其れも知らねぇで、其の『部品』を『助けた』?
ハァッハッハッハッハ!!コイツは良いぜ最高傑作だ!!スゲェな、トンだバカガキだぜ!!クハッハッハッハッハ!!!!!」
――ドクン
なんだ?何でこいつは笑ってる?
俺がリリィを助けたのがそんなに可笑しかったのか?
シスター達を殺したのも、こんな風に笑いながらやったってのか?……其れとヴァイゼンの時も――
「笑うな……」
「あん?」
「少年?」
「テメェの人を見下したような下衆な笑いには反吐が出るって言ってんだ銀髪野郎!
其れとリリィが『部品』だって?……ふざけるな、リリィは只の女の子だ、テメェ如きの尺度でリリィを部品扱いするんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
――轟!!
テメェをぶっ殺す前に、もう一度だけ答えるチャンスをやるぜ銀髪。
7年前、俺の故郷をあんな風にぶっ壊したのは、テメェ等なのか?
「知りてぇか?……そうだろうなぁ!!!」
「答える気はないか……なら力尽くで答えさせるまでだ!!」
「!!待て少年!!」
覚悟しろ……否が応でも『答えます』って言いたくなるような状態にしてやるからな……!!
――――――
Side:サイファー
件の少年、矢張りエクリプスに感染していたか――病化の初期症状に完全に呑まれてしまっているな。
もっとも感染自体は予測の範囲内だから問題はないが……如何せん症状が出るのが速過ぎる。昨日の今日でもう発症しただと?
更に気になるのは、少年の姿が大きく変わった事だ。
纏った服の変化は、エクリプスドライバー特有の固有技能『鎧装』で説明が付くが、瞳や頭髪の色の変化となるとその範疇では済まん。
其れこそなのはやルナ、小狸隊長の様な特殊な能力でも持たない限り『肉体的変化を引き起こすほどの強化』は有り得ない筈だ。
尤も、エクリプス自体がまだまだブラックボックスに包まれている存在故に、アレもまたエクリプスの影響である可能性は捨てきれないのだが――
其れよりも今はこの場を何とかする方が先決――なんだが、此れはある意味都合が良いかの知れないな?
少年の方はエクリプスの影響のせいで私の事は目に入ってないようだし、銀髪低脳も少年に集中して私の事は完全に忘れている様だからな?
……よし、なのは直伝の砲撃で銀髪低脳を吹っ飛ばして、其の後で少年を当て身で気絶させて確保するとしよう。
其れが一番だ、一番に決まっている。
「如何したぁ、もう終いかぁ!?」
「うおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
『Silver Hammer.』
!?……オイオイ本気か少年?……その一発はなのはのディバインバスターに匹敵する威力だぞ!?
そんなモノを手加減無しで放ったら、こんな教会など一溜まりもないぞ!?
ちぃ……予定変更だな――此方も同レベルのエネルギーをぶつけて相殺せねば、対象確保どころではなくなってしまう!!
カートリッジ3発ロード!間に合え……!!
「ディバイン………バスターーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
――ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!
――――――
Side:アイシス
な、今度は爆音!?
一体如何なってんのこの教会!?色々ぶっ壊れてるし、シスター達は殺されてるし……何よりもトーマは何処!?
リリィの事はスティードに任せて来たから最低限の安全は確保できるけど、こんな物騒な場所に居るトーマは――
「ち……あのクソアマの事を忘れてたぜ……とんだ一発を持っていやがったか……
けどまぁ、あのクソアマは瓦礫の下敷き、俺は弾切れでテメェは限界………何ともつまらねぇ結果になっちまったなオイ。」
誰アイツ?
其れよりもこっちに背を向けてるのって……若しかしてトーマ?
「……おう、其処のメスガキ、ソイツの連れか?」
バレてる!?
だったら隠れてる意味は無いけど、トーマには何もさせないからね!!
「……良い動きしやがるな?
まぁ良い、そのクソガキが目ぇ覚ましたら伝えとけ。
『命もディバイダーも、今は取り敢えず預けといてやる。テメェの故郷での事も誰がやったかは大体見当はつく。
知りたきゃ俺の所に来い――フッケバイン一家のヴェイロンだ』ってな?……ま、近い内に会う事になるだろうが、次はもっと楽しみてぇな。」
コイツ……OK、伝えとく。
だけど此れを聞いたトーマが何をするかは分からないし、最悪アンタを殺しに行くかも知んない……そうなっても責任は持たないからね?
「……大した胆力だ――気に入ったぜ、名乗りなメスガキ、そのクソガキ共々覚えといてやる。」
「……別に覚えて貰わなくても良いけど、尋ねられて答えないのは礼儀違反だからね……アイシスだよ。」
「アイシスか……悪くねぇ名だ……テメェも気が向いたら、そのクソガキと一緒に来てくれて構わねぇぜ?歓迎してやるよ。」
そりゃどうも――ったく如何にもいけ好かないわあぁ言うのは……服装センスも今一つだし。
って、其れよりもトーマ!!大丈夫トーマ!?
「……………」
「え?……此れってもしかして気を失ってる?…つまり、リリィの所まで運ばなきゃならないって事?
……じ、上等上等!!こう見えても体力には自身があるし、何よりも自分から首突っ込んだ手前、こんな事で投げだしたら後味悪いからね。」
其れにトーマってそんなに重くないだろうから、リリィが待ってる場所までだったら其れほどキツクないし。
其れは兎も角、此処の事は如何しよう?
通報をした方が良いのは間違いないけど、そうしたら間違いなくトーマが面倒な事になるし、アタシだって面倒な事になる。
って言うか、此れだけの弩派手なドンパチやったんだったら、私が通報しなくても他の誰かが通報するよね?――よし、此処は即離脱が吉!!
と言う訳で、さよーなら〜〜〜!!!と、シスター達のご冥福を併せてお祈りしてまーす!!
――――――
Side:サイファー
――ガラリ………
やれやれ、少しばかり威力を間違ったな……カートリッジは2発で充分だったか。
相殺だけでは飽き足らずに、建物を半壊させた挙げ句に瓦礫の山に巻き込まれるとはマッタク持って笑えん。
と言うか、エクリプスドライバーでなかったら間違いなく死んでいただろうな。
件の少年と銀髪低脳は……居ないか――失態だな。
尤も何も収穫がなかったわけではないが。
――ヴォン
「なのは、サイファーだ。」
『サイファー?……如何なった?』
情けない話だが、取り逃がしてしまったよ。
だが、幾つか得た情報もある――件の少年、トーマは矢張りエクリプスに感染していた……しかも凄まじい速さで病化症状が出ている。
『昨日の今日で病化症状が?……其れは確かに異常な速さだね……』
「それから、この件には管理局が追ってる『フッケバイン』とやらが関わってると見て間違いなさそうだ。
そいつ等の構成員と思われる、銀髪の野郎と一戦交えたのでな………」
『やっぱり無関係じゃなかったか………』
無関係である事を期待していた訳でもないだろう?
だがなのは、この件は間違いなく大荒れになるぞ――トーマを中心にして、そして全てを巻き込んでな……
――――――
――略同刻、ミッドチルダ 西部次元港 7番エントランス
Side:スバル
「何とかぎりっぎり待ち合わせ時間に間に合ったな……高速便がなかったら完全に遅刻してた……」
「いやぁ、案外何とかなるモンすねぇ?」
「……遅刻しそうになった最大の原因は貴女だからねウェンディ………」
ま、まぁ遅刻はしないで済んだんだから良いとしようよ?
其れにそろそろあの人も来るだろうしさ?
「スバル、皆。」
噂をすれば何とやら!お久しぶりです美由希さん!!
「本当に久しぶりだね?皆と一緒に事件を担当するのは機動六課の時以来だね?」
「はい♪」
アタシ達と待ち合わせしてたのは、高町美由希さん。
元機動六課のエース級の剣士で、今は教導隊屈指の実力を持つ教導官……また一緒にお仕事が出来るなんて感激です!!
「大げさだなぁ?でも、私としても、また皆と一緒に仕事が出来るのは嬉しいけれどね。
――だけど其れだけに『旧機動六課』を再招集したはやてちゃんの本気具合が見て取れるかな?……なのは達にも協力要請したみたいだし。」
なのはさん達にも!?……其れは確かに、八神司令の本気が覗えますね……
「まぁ、私達が力を合わせれば大丈夫だと思うけどね。
其れよりも前に紹介してくれたあの子は元気?――ほら、ナカジマ姉妹の弟みたいなあの子。」
「あー、はい元気みたいです。」
「今は一人で旅行中ッス♪」
「少しやんちゃなところが有るから少し心配なところはあるけど、多分大丈夫だと思いますから……」
時々旅先からメールで写真とかも送ってくれるんですよ。
結構色んな所を旅してるみたいだから、元気で無事に帰ってきてほしいなとは、何時も思ってるんですけどねぇ………
To Be Continued… 
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