Side:カリム


此れは……また何とも、如何ともしがたい予言が出てくれましたね?
しかも、予言とは言いながらも、極めて詳細な未来予測と言っても過言ではない内容が……願わくば、現実になって欲しくは有りませんが、其れは恐らく
無理でな願いと言うモノでしょうね……せめて、一つの命も失われる事が無いように、祈るしかありませんか…


「如何しました、騎士カリム?」

「な〜〜んか、元気ないみたいだけど?」

「シスター・シャッハと、シスター・セイン……如何にも、困った予言が出てしまいましてね……見て見ますか?」


「え?…はぁ……」

「ドレドレ……って、此れってマジかよ!?……コイツは幾らなんでも!!」


――種の力を得し者は、凶鳥をも支配下に置いて、世界を殺す毒を撒き散らさんとする。
   法の番人は其れに立ち向かうも、世界を殺す毒を浄化するには至らず、毒は着々と増殖を試みるだろう。
   その毒を浄化できるのは、不死の力を得た冥王と聖王、そしてその従者たる祝福の名を冠する騎士と零の黒騎士のみ。
   だが、故にその王と騎士が倒れた時、世界は死の種によって支配されるだろう。



無視できないでしょう?
この内容は、明らかにエクリプスを巡る大きな戦いを示唆しているとしか思えないわ……そして、少なからず犠牲が出るとも取れるでしょう?

私の予言は絶対ではないけれど、6年前の様に、この予言もまた無視して良い物じゃないと思って居るの――特務六課に連絡を入れた方が良いわね…


自分の予言が外れて欲しいなんて思ったのは、随分と久しぶりかも知れないわね…












魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force39
『Glocke des letzten Krieges』











Side:ルナ


聖王教会のカリム・グラシアに呼び出されたとかで、聖王教会にやって来た訳だが、一体何の用があるのやら。
其れに、六課全員ではなく、私となのは、そしてはやて嬢とアインスだけが呼び出されたと言うのも、些か気になる点ではある…其れだけの事なのか?

まぁ、其れも直ぐに分かる事だろうがな。


「お待ちしていました、どうぞこちらに。」

「待ってたよ、ルナさーーーん!!」


おぉっと、相変わらず元気だねセイン?
最近は、余りサボらずに真面目にシスター業を熟しているらしいじゃないか?流石に6年も経つと、聖王教会シスターの自覚も出て来たと言う所かな?


「まぁ、アタシも良い大人だし、そろそろやんちゃも程々にしといた方が良いかな〜って思って。
 加えて、最近シャンテが昔のアタシ以上にやんちゃになってきちゃったから、アタシも確りしないと、冗談抜きでシャッハの胃に穴空きそうだからさ〜?」


シャンテ?――あぁ、確かヴィヴィオやアインハルトと同様に、魔法戦技会に出場していたあの子か。
確かにあの子はやんちゃそうだし、お前以上に協会のシスター何て言うのは肌に合わなさそうではあるが、後輩の教育と、先輩の負担軽減を考えて、己
を律する事が出来るのは立派な事だぞセイン?其れだけ、お前が人として成長したと言う事だからな。


「ま、其れもゆりかご内でルナさんと僅かとは言え共闘したからかもしれないけどね〜〜〜。
 って、うお〜〜〜いシェンテ、お客様にお茶は〜〜?其れとお茶菓子〜〜〜!管理局のお偉いさんが来てるんだから、急いで〜〜?」


「ごめーん、今忙しくて手が離せないから、セインが自分でやって〜〜〜。」



「……ディープダイバーリバースVer3!!!



――シュン!!



「うわぁぁぁぁぁぁあぁ!?」

「シャンテーーーー!
お前此れの何処が忙しいんだよ!!
 普通に仕事サボって、PSV○taで鬼退治とは良い度胸だな……真面目に仕事しないと、メモリー内のセーブデータ全部消すぞ?

「其れは勘弁!!」

「なら仕事しろ!取り敢えず、即お茶の用意!
 其れから、仕事が終わるまで此れは没収!ったく、アタシが言えた事じゃないが、お前もそろそろシスターとしての自覚を持ってくれ、今年で16だろ?」


確かにそろそろ自覚を持つべきだな。
16の時に、なのはは既に誰もが認めるリベリオンズのリーダーとしての自覚やら何やらが備わっていたからな――まぁ、立場が流石に違いすぎるが。

其れよりもセイン、今のは何だ?名前から察するに、ディープダイバーの亜種なんだろうが……


「ん?あぁ、今のはディープダイバーの応用で、アタシじゃなくて他の誰かや何かを無機物の中を移動させてアタシの下に呼び寄せるって技。
 呼び寄せる対象の大まかな位置が分かってる事と、大きさが精々家庭用冷蔵庫までって言う制限は有るけど、此れは中々に便利だよ。」


旅の鏡の劣化版と言ったところだが、独学で其処まで辿り着いたのは凄いな……この子も努力家と言う事か。





「んじゃ、此れ此処に置いとくね騎士カリム?」

「はい、ご苦労様。」



と、お茶が入ったらしいな。

さてと、お茶が来たところで早速本題に入りたいんだが、今日は一体どんな用件で私達を呼び出したんだカリム?
其れも、白夜と夜天の王と、其れに仕える祝福を呼び出すとは、如何考えても穏やかじゃないのは確実だ――6年前の様な予言でも出たのかな?


「貴女の洞察力の鋭さには、感服しますねルナさん。
 はい、仰る通り私の能力で予言が出ました……其れも6年前よりも、ずっと明確で夫々が何を指しているのかがハッキリと分かる位の予言が――先ず
 は、此れを見て下さい。此れが件の予言です。」



――種の力を得し者は、凶鳥をも支配下に置いて、世界を殺す毒を撒き散らさんとする。
   法の番人は其れに立ち向かうも、世界を殺す毒を浄化するには至らず、毒は着々と増殖を試みるだろう。
   その毒を浄化できるのは、不死の力を得た冥王と聖王、そしてその従者たる祝福の名を冠する騎士と零の黒騎士のみ。
   だが、故にその王と騎士が倒れた時、世界は死の種によって支配されるだろう。




「ほうほう此れが……ふぅん?此れはまた、分かり易い予言やなぁ?なのはは如何思う?」

「此処まで来ると、此れはもう予言じゃなくて『略確実な未来予知』に近いと思うな。
 最後の一行は兎も角として、2行目までの事は、此れから確実に起こる事だし、其れに対処できるのは私とルナ、はやてとアインスさん、そしてトーマだ
 って言う事は、略間違いない事だからね……まぁ、まかり間違っても倒されて上げるなんて気はないけどね。」


確かに、負ける気は更々ないな。

しかし、なのはの言う通り、此れはもう確実な未来予知の類だろうね?
不死の力を得た冥王と聖王は、はやて嬢となのはの事で、その従者たる祝福の名を冠した騎士は私とアインス、零の騎士はトーマで間違いないからな。

そして、種の力を得し者はヴァンデイン、凶鳥はフッケバインを指しているんだろう。――つまりフッケバインはヴァンデインの手駒になると言う訳か。


「今回の事は私も聞き及んでいますので、如何考えてもそう言う解釈しか出来なかったんです。
 そして、最後の1行……貴女達が負けるとは思えませんが、この様な予言が出た以上、きっと何かがあると、そう思ってしまって……せめて、この事を
 教えておいた方が良いと思ったのです……知っていれば、対処も出来ますし、戦闘の際の警戒レベルも上がるでしょうから。」

「確かに、知ってるのと知らないのでは、その差は大きいからね。
 実際に教えて貰って良かったよカリム。この予言を見なかったら、私達は無意識のうちに慢心して、其処を突かれて何て言う事が有ったかも知れない。
 だが、此れを見せて貰ったおかげで、その無意識の慢心すら霧散したよ――私達が負けたら世界は滅びると言う事なのだからね。」

「そうだね……私達の敗北=世界の破滅なんて言うのは、流石にゴメン被るよ。
 それに、そう言う事なら私達は尚の事負けられないよ?まぁ、白夜の聖王と月の祝福、夜天の冥王と祝福の風に、敗北の二文字は有り得ないけど。」

「そらそうやろ?私等が負けて堪るかい。
 確かに、エクリプスの力は脅威的なモンやけど、お父さんが見つけた力を掠め取っただけの奴なんぞ、原初の種の所持者とて相手やないで?
 寧ろ、その危険性を察知して、お父さんが封印した劇物を我が物顔で使いこなした気になっとる奴は、正直言って胸糞悪い事この上ない所やろ?」

「徹底的に潰し滅する……其れが一番でしょうね、我が主。」


だが、そうだとしても私達は絶対に負けんさカリム。
お前が予言を見せてくれたおかげで、其れは更に確実なモノとなった――私達には絶対に負ける事のない理由が出来たからね。

時に、此れのコピーを貰えるかな?事が事だけに、トーマにも見せておいた方が良いと思うのでな。

あの子は、少々甘い部分もあるが、スバル達の弟分として過ごしてきたせいか、己の芯を貫き通すという一本筋の通った性格だから、此れを見れば覚悟
も決まるだろう……あの子は責任感も強いし、何よりもゼロの力は矢張り強大だからね。


「これのコピー位ならば幾らでも……ですが、くれぐれも気を付けて下さい――戦いに『絶対』は無いのですから。」

「分かっているさ……だが、其れでも敢えて言おう、其れは私達を除いての話である……とな。」

戦いに絶対はないだろうが、そもそもにして私達の勝利は必然だからね。
故に予言の最後の一行は有り得ん……種の力を得し者諸共、世界を殺す毒はこの世から抹消してやる心算だからね。








――――――








Side:カート


くあぁぁ〜〜〜〜〜……やっぱし暇だなぁコイツは……特にする事もないし、マリーヤの乳でも思い浮かべて暇つぶしするか。


ふざけんなクソヘッド!ぶっ殺すぞ!!


だって暇だしよぉ……俺等が出来る事は特別ねぇしな?
まぁ、ヴァンデインのとっつぁんがそろそろ何かするかも知れねぇが、俺達にとっちゃ如何でも良い事だしなぁ?種の支配も俺達には効かねぇだろうしよ。


は?如何言う事だ?
 種の力は全てのエクリプスを支配するんだろ?其れなのに効かないって、遂に脳味噌イカレタか?


ちげーよ。
とっつぁんの力は支配出来る範囲が意外と決まってんだわ此れが。
一次感染者を操る場合は、アンテナの役割を成す物から種の力を使って支配するらしく、俺達の様な二次感染者の場合は、問答無用と思うだろ?

だがそうじゃねぇ。
とっつぁんが二次感染者を手駒にする場合は、其れが自分の支配下にある事が絶対条件になる――つまり自壊ユニットを内包してる奴だけだ。

俺等の自壊ユニットは、吹っ飛んじまったからアイツの手駒になる事は先ずねぇだろ?
加えて、俺等は少なくともゼロのぼーやから敵としては認定されてねぇから、少なからずゼロの加護を受けてるからな…俺達が操られる可能性は0だ。

だが、事と次第によっちゃ俺達も打って出るから、戦闘の準備だけはしとけよ?
流石にとっつぁんとやり合う心算はねぇが、攻め込んできた有象無象を見過ごしたら、散らなくても良い命が散っちまうだろうからな。


俺達はギャングだが、無用な殺しは好まねぇからな……何時でも戦闘に入れるように、準備だけはしといてくれ。



それにしても、ヴァンデインのとっつぁん、アンタ一体何がしたいんだ?

俺達をエクリプスドライバーに仕立て上げ、更には種の力でエクリプスドライバーを手駒と化す……トンでもない外道の所業だぜ此れは?


其れを、野放しにする六課やリベリオンズじゃねえからな……ここらが潮時なんだろうが、あのとっつあぁんが此処で退くとは思えねぇからな……事次第
によっては、ゼロのぼーやと共闘する事も頭に入れといた方が良いかもしれねぇ。

まぁ、良いさ。そうなったらそうなったで暴れるだけだからな!
俺達は、所詮ギャングスターにはなれなかった半端モンだが、半端モンには半端モンの意地ってのがあるからな、精々やるだけやらせて貰うぜ!!!


だけど、其れまではやっぱし暇だから、マリーヤの乳でも思い出して、満足するか。


すんじゃねぇ……マジで殺すぞ、クソヘッド!!


未遂に終わったか…残念だぜ。
だけど、事が起きたら速攻で行くから、何時でも行けるようにだけはしとけよ?武装その他は俺の能力で取り寄せできるからな。


乗っちまった俺等も俺等だが、俺達の夢を利用したつけは払ってもらうぜ、ヴァンデインのとっつぁんよお?








――――――








Side:ヴァンデイン


さてと、そろそろ頃合いだろうね此れは。
当初はもう少し大人しくして居る心算だったんが、私を狙う者も多い故に――現場で対処できるレベルは決まっているから、そろそろお暇するとしよう。

こんな閉鎖された空間は好かないし、私が居るような場所でもないのでね?
先ずは、この独房を吹き飛ばさせて貰おうかな?――……貫け!!



――ドガバァァアァァァァァァァァッァアン!!



此れは此れは、予想以上の破壊力だね?
此れならば、管理局とて恐るるに足らないだろうさ……なら、此処からは、支配者としての力を示す事にしよう。

フッケバインは既に私の手駒だから、やりようによってはどんな事でも出来る訳だからね?……実に楽しくなって来たよ!!此れからの生活がね!!!


「そう、ならその楽しみを思い浮かべながら死ぬと良いわ、ハーディス・ヴァンデイン。」

「む…君は……どうやら、ストレートに行くわけではないようだな……ならば、私のウォーミングアップに付き合って貰おうか?其れ位ならば問題ない。」

寧ろ君の様な名のある管理局員が相手とは予想して居なかったよ高町美由希一等空尉殿……。








――――――








Side:美由希


局内で爆発が起こったって事だから来てみれば、重要参考人として召喚したハーディス氏が、白昼堂々脱獄を敢行したみたいね此れは。
だけど、逃走途中に私に有ったのは運が悪すぎたね、ハーディス氏?

「貴方の目的が何であるかなんて言う事には正直言うと興味も何もないんだけど、貴方を野放しにするのは非常に危険だからね……だからこそ、私が派
 遣されたんだよ――狂った欲望を砕けって言う事でね。」

貴方の実力は未知数だけど、私の刃に斬れぬものは無い!!


此処から先に進みたいなら、先ずは私を倒して見せなさいハーディス・ヴァンデイン?


「此れは此れは……エース・オブ・エースが相手とは光栄の極み。
 ならば、出来るだけ傷つかない様に殺してあげなくてはならないね?……君の様な美女は、可能な限り美しい死体で残したいからねぇ?」


はぁ……そのセリフにはドン引きだわ、何処の異常者よ貴方?

だけど、生憎と私は其れに応えてやる心算は毛頭ないの、可愛い娘が居るから其れを残して死ぬ事なんて言語道断だからね。


そして、其れ以前に……



――轟!!



「!!!此れは……!?……ククク、此れは面白そうだね?」

「何時まで、その余裕の態度が続くかしらね、ハーディス・ヴァンデイン?」

本気の私が、貴女の前に降り立った以上、貴方の敗北は絶対と知りなさい?――御神流正統後継者として、貴方を今此処で滅する!!

「光をも超えた、私の剣閃をエクリプスドライバーが何処まで見切れるモノか、見せて貰おうかしら?」

「此れは此れは……実に光栄ですが――この私を相手に頭が高いよ君。」


頭が高いね……生憎と、偽物の威光にひれ伏すして安目売るような教育は受けてないのよ私。

言っちゃ悪いけど、貴方の威光は所詮は偽物――其れこそなのはが発する聖王としての威光と威厳の足元にも及ばないわ。


所詮貴方は力を得ただけの紛い物――其れを私が、此処で証明してあげるわ!!


なのはとルナが出るまでも無い、貴方は此処でゲームオーバーよ、ハーディス・ヴァンデイン!!!!













 To Be Continued…