Side:ヴァンデイン


ふむ……如何やら、フッケバインの連中を意のままに操る事は出来た様だね?――心臓を抉り出した彼と、隻眼の彼女は操れなかったみたいだがね。
尤も、彼にはリアクトプラグが有るようだし、彼女は0.5次感染者とも言うべき存在だから、操る事が困難であるのは当然の事だろう。

だが、一次感染者であるフッケバインを操れたのは実に大きい事だ――彼等を操れるなら、二次感染者以降の感染者は、まさに私の手駒なのだから。


まぁ、零次感染者である、リインフォース・ルナ、高町なのは、サイファーと、ゼロ因子適合者である件の少年の存在が厄介かも知れないが、何れにして
も、仕込みは大体終わったから、そろそろ仕掛けてみるのも良いかも知れない……世界を相手取った、戦争と言う物をね。


だが、何れにしても此処から出ない事には何も出来ない。


牢屋暮らしも些か飽きたし、そろそろ外の世界に出たいものだからねぇ……悪いけれど、そろそろお暇させて頂くとしようかな?


――ヴォン!!


適当な野良感染者を操って、脱獄の手助けをして貰うとしようかな?

此処は、私が居るには相応しい部屋ではないからね?――まずまずの快適さだったが、其れでもそれだけの事だから満足には程遠い物だよ。


私は世界の王となるべき存在だからね……一々立ち止まってる事など出来ないのだよ――さて、どうにも面白い事になりそうではあるけれどね?
果てさてどうなるのだろうな?












魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force38
『Countdown Armageddon』











Side:ルナ


うん、トーマの動きは日に日に良くなってるのは間違いないみたいだし、余分な力も抜けるようになったみたいだね?
緊張と脱力の関係を理解できれば、遠からず完全なダブルリアクトが出来るようになる筈さ――此れからも頑張って行こうなトーマ、リリィ、ロサ?


「「「はい!!」」」

「良い返事だな、素直な子は好きだぞ。しかし、誇張抜きで君達の成長速度の速さには驚かされてばかりだよ。
 初のダブルリアクトで、ロサとリリィが8割稼動だったのにも驚いたが、それから僅か半月ばかりで、6割程度の出力とは言え私の居合を防御し、誘導
 弾を叩き落とし、体術を捌き、挙げ句の果てにディバインバスターを斬り裂いてみせるとは思わなかったぞ?
 この分だとパーフェクトダブルリアクトに至ったその時は、私も本気で相手しなければ対処しきれなかもしれないね。」

「え?俺達そんなに強くなってるんですか?」

「そんな実感は湧かないんですけど……」

「今日もルナさんに圧倒されちゃいましたから……」


其れは、訓練の度に私も少しだけ出力を上げているからだろうな。
成長は実感し辛いかもしれないが、この方法が最も実力を伸ばすのには適した方法なんだ、君達が強くなった分だけ、私も力を出せば君達は其れに喰
らい付こうと努力して地力を上げる、そして上がったらその分だけ私も力を出すを繰り返せば、おのずと地力はドンドン強くなるモノさ。

加えて、ダブルリアクトも安定して居る上にリリィとロサも9割5分程度まではこの状態で力を出せるようになってきているし、何よりもトーマ自身がダブル
リアクトの力を使いこなしているからね?其れだけの巨大な力を、この短期間に使いこなせるようになるとは、全く持って大したものだよ。

私だって、祝福の月光の力を完全に使いこなせるようになるのに、1〜2カ月は掛かった訳だからね。


「マジっすか!?」

「大マジだ。まぁ、あの力が怒りによって覚醒したと言うのも大きいんだろうが、感情に左右されずに発動できるようになるには随分苦労したさ。
 其れを踏まえると、本当に君達の成長には驚かされる……だが、其れもまた嬉しい驚きだよ――近い内に大きな戦いが起こる事を考えればね。」

「「「!!!!」」」


そう遠くない内に、確実にエクリプスを巡る大きな戦いが起こるだろう事は略間違いない。
特務六課、ヴァンデイン、フッケバイン、そして凶暴な野良感染者をも巻き込んだ、エクリプス大戦とでも言うべき戦いがね……だからこそ、君達には強く
なって貰わないと困るんだ。そう、せめて戦場で自分の身を護る事が出来るくらいにはね。

こと、あの眉毛もゼロの力を欲しているみたいだから、奴と君達が相見える可能性は充分にあるんだ。
だからそうなった時の為に、最低でも『勝てないまでも負けないだけの力』を得ておく必要があるのは、分かるだろう?


「そうですね……何より、カートが前に『ヴァンデインに勝てるのはルナさんだけ』って趣旨の事を言ってたし、其れを踏まえると、俺達は強くならないと。
 けど、何となくだけど、ヴァンデインと事を構える事態になっても、俺達だったら何とかなると思うんですよ?
 勿論、俺1人だったらきついけど、リリィとロサが居るし、アイシスも居る。何より、スゥちゃんやノーヴェ姉も一緒だから、何が有ってもきっと何とかなる。
 ――そう思う俺って、やっぱ甘いんですかね?」


あぁ、甘々だ――が、其れで良い。
甘さを斬り捨てた非常の判断は、私達がすべきものだから君達がその判断を下す必要はないよ――最終的に奴を裁くのは、恐らく私なるだろうからな。



さてと、其れは其れとして、なのは達と訓練してるアイシスはどうなったかな?








――――――








Side:なのは


黒の香 No.2 ドラゴンファング!!


へぇ?此れはまた、面白い技を考えた物だね黒髪ちゃん?
爆薬で作り出した、無数の黒い龍を模した誘導性の高い爆薬弾とは、中々に実戦的な技だよ?独学で、此れを思いついたのには感心するね。

だけど、そう簡単にやられる心算は無いよ?……レイジングハート。


『All right.Accel Shooter.』


――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!バガァァァァァァァァァァァァァン!!!


「な、全弾相殺された!?」

「誘導弾も私の十八番だよ黒髪ちゃん。
 だけど、今のは見事だったよ?今の攻撃は、オーバーSランクの魔導師でも見切るのは難しいかも知れないからね。」

「ならどうしてなのはさんは見切れたんですか?」


其れは、私の動体視力と空間認識能力が異常だからとしか言いようがないかな?
逆に言うなら、其れがなかったら見切る事は出来なかった訳だし、私やルナが相手じゃない限りは、今の攻撃は極めて有効だろうね。


「其れなら納得です……なのはさんやルナさんは常識で考えたらいけない人達ですので。
 だけど、なのはさんに褒められると自信もっちゃいますよ♪こうなったら、フッケバインだろうと何だろうとドンと来いです!纏めて爆破上等ですよ!!」


その意気や良しだよ黒髪ちゃん。
魔導に頼らない貴女の戦い方は、エクリプスドライバーを相手にする際に特に有効な手段となるから、鍛えておいて損は無いからね。


「そう言って貰えるのは有り難いんですけど、ぶっちゃけなのはさんに勝てる気がしないです!!
 こっちは全力で挑んでるのに、其れを軽くあしらって、そんで涼しい顔してるって……実力差に、意気消沈しそうです……」


其処は、戦いに於ける年季の違いってやつだよ黒髪ちゃん。
私達と、貴女とトーマ達では戦いに携わった時間が月と鼈なんて言うレベルじゃなくて開いているんだから、此れ位の実力差は当然の事だよ。

だけど、貴女が強くなってるのは間違いない――なのはさんのお墨付きをあげる位にね。



恐らく、近い内にエクリプスを巡る大きな戦いが起こると思うんだけど、その時は活躍して貰うからね黒髪ちゃん?


「大きな戦いって、マジですか!?
 ――でも、大きな戦いが起こるからって、アタシは怯みませんって!!トーマとリリィとロサは、アタシが護りますから!!!」


その意気や良しだよ。
頼りにしてるからね、黒髪ちゃん♪


此れで、六課の戦力は申し分ないんだけど、AEC装備の方をもっと充実させる必要はあるかも知れないね。



そう言う意味では、魔導に頼らないアイシスの存在は有り難いよ。貴女ならエクリプスドライバーが相手であっても、決定打を打ち込む事が出来るから。


だから、私は貴女を買ってるんだよ黒髪ちゃん。
今は未だ予想の範疇を出ないけど、近い内にエクリプスを巡る大きな戦いが起きるのは間違いないからね?…その時は、頼りにしているよ。



「その時が来たら、勿論全力全壊でやってやりますって!!
 魔導の通じない相手に対しても、アタシの爆薬は有効みたいですから、精々思い切りやらせて貰いますよ!!!!」


頼もしいね。



だけど、同時にハーディス・ヴァンデインは、其れこそ覚悟を決めておくべきだね――私は貴方を絶対に許さない……例え100年が経っても絶対にね!
エクリプスをイタズラに使った事を、骨の髄にまで教え込んであげるから覚悟を決めて居おいてね…!!








――――――








Side:カレン


思った以上に居ないわね、リアクトプラグって言うのは……このままじゃファミリーが総崩れ!!――さて、如何したモノだろうかしらね?


まぁ、何れにしてもあのインテリを倒さなきゃ、私達に未来は無いからね……取り敢えずファミリーの戦力を最大に生かせる状態にしておかねばね。



だけど、私達だって、タダ手を拱いてる訳じゃない……こうなったら、直接ヴァンデインに掛けあってやろうじゃないのさ!!
リアクトプラグが無い状態なら、私達はアンタの手駒になるしかないけど、凶鳥の翼を簡単に操る事が出来ると思ったら、其れは大間違いよ。


凶鳥の翼は、まだまだ折れてはいないんですからね!――我がファミリーは無敵にして不滅よ!!

最終的に勝つのは私達フッケバイン――その事を、努々忘れない事ね!!!








――――――








Side:ヴェイロン


コイツは……ハンパモン共がいきり立ってやがるな?――あのドカスが何かしでかしたんだろうが、これ程濃密な殺気ってのはムカついてしょうがねぇ。
ともすれば、イラつきがマックスになって、目に付くものすべてをぶっ殺しちまいそうだぜ。


「殺しはダメ……」

「分かってるさ、クソチビが……テメェの能力は買ってるからな。」

あのクソ眉毛と一戦交える事になったその時は、十二分に力を貸して貰うからその心算で居ろや……アイツの事は何べん殺しても飽き足らねぇからな!



テメェは、必ず俺が直々にぶちのめす――精々遺言でも残しとけよ、このクソカス野郎が!!



俺に上等働いてくれた礼は、万倍にして返してやる――精々宇宙の藻屑になりやがれってんだ!――其れが貴様にはお似合いだぜインテリ眉毛が!


俺の心臓を抉り出してくれた礼は、万倍にして返してやるからよぉ……俺達が一発かますその日まで、精々生きて居てくれよな?


この手でテメェをぶち殺さないと、流石に満足出来そうには無いからなぁ!!――細胞の欠片も残さずにぶち殺してやるぜ、此のドカス野郎が!!!












 To Be Continued…