Side:ルナ
「…………」
「ルナお姉さま、如何かしましたの?窓の外を眺めて黄昏て……」
クアットロか……いや、何となくだが、近い内に此度のエクリプスを巡る彼是に関係した大きな戦いが起きる気がしてね……その時に零次感染者として
如何動いたモノかと考えていてね――如何にも、ハーディス・ヴァンデインは一筋縄でいく相手ではなさそうだからな。
「あのインテリ変態眉毛は、確かに一筋縄でいく相手ではないですわね……でも、ルナお姉さまとなのはお姉さまの敵ではありませんわよ?
何やら強い力を秘めているようですが、あの変態眉毛は、所詮は力に取り憑かれた愚者……力の意味を理解して居るお姉さまには勝てませんわ。
大体にして、ルナお姉さまとなのはお姉さまは次元世界最強ですのよ?そんな御二人が、あの程度の変態眉毛に負ける筈がないですわ!!
えぇ、ありませんとも!!強く美しいお姉さまは正に最強!!あの変態眉毛を撃滅して、勝利宣言をするお姉さま……はぁ〜ん素敵すぎますわ〜!」
――パリン、プシューーーー!!
……毎度のことながら一体何を想像したんだこの貴腐人は?
私とて、なのはとアレで何な状態だから人の性癖をとやかく言う資格はないが、コイツの此れは流石に理解し難い物があるな……此れが腐の力か。
ともあれ、この予感はあながち間違っても居ないだろう。
尤もそう成ったらその時はその時で、全ての元凶であろうハーディス・ヴァンデインをぶちのめすだけだけれどな。
イタズラにエクリプスの力を撒き散らし、貴様は一体何がしたいんだ、ハーディス・ヴァンデインよ……
魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force37
『最終戦争に至る影』
Side:カレン
アレ…?私ってば何で床で寝てるのかしら?――アル、ステラ、フォルティス、ビル、ヴェイ、スコール……皆無事?無事なら返事をしてくれる?
「何とか無事ですよカレン……」
「しかし、一体何があった?……記憶が今一ハッキリしないのだが……」
如何やら無事みたいね……正直言うと、何が起きたのかはさっぱり分からないね……十数分前からの記憶が全く無いんだから、殆どお手上げよ。
だけど、艦内のこの損傷を見る限り、船内で戦いがあった事は間違いないんだけど、私達は一体誰と戦ってたのかしら?
ううん、其れだけじゃなく私をはじめとするフッケバインのメンバーが気を失っていたって、相手はどれ程の使い手だったのかしらね……思い出せない。
だけど、此処で何かあったのは間違いないのよ……
ん?そう言えば、ヴェイとスコールは何処?姿が見えないけど――ステラ、艦内の2人の位置は分かるかしら?
「……解析完了だけど……二人とも何処にもいない――ヴェイとスコールは、この艦内には居ないよ!」
「何ですって!?」
まさか、2人が裏切って――そんな訳ないか。
ヴェイは兎も角、スコールが裏切ったら、私達が気絶して居ただけと言うのはオカシイものね……あの子は裏切ったら、躊躇いなく私達を殺すだろうし、
この船だって自分の物として居る筈だから、ヴェイとスコールが裏切ったって言う可能性は先ず無い……だとしたら一体何が?
「……ウソ……」
「如何しましたステラ?」
「何か手掛かりはと思って、艦内の記録映像を見てたら………こんな物があったの!
ヴェイ達が裏切ったんじゃない、私達がヴェイ達に襲い掛かったんだよ!」
此れは……アルが取り戻した心臓の移植手術が終わった直後に、フォルティスがヴェイに襲い掛かってる!?
其れだけじゃなく、私やビルまでもがヴェイを……ウソでしょう?如何してこんな事を、其れにその間の記憶が全く無いだなんて、そんな事が――――
「……同じだ。」
「アル?」
「同じだ今の状況、アタシがヴェイ兄の心臓を奪還した時と。
管理局側に居るエクリプス3人を相手にして、でも気が付いたら何時の間にか心臓を奪還して離脱してたんだ。
こう言っちゃなんだが、アタシ1人であの3人を相手にして心臓の奪還と離脱をするってのは可成り困難……てか、殆ど不可能に近い事だが、それが
出来たって事が気になってたんだけど、此れを見て分かったよ――アタシ等は、暴走したんだ。」
暴走ですって?
冗談じゃないわ、私達は独自の方法で、エクリプスの殺人衝動を抑えているでしょう?其れが暴走するなんて、そんな事は―――まさか!!
ハーディス・ヴァンデイン……!!!
自らの支配下に置いたヴェイの心臓をアンテナにして、私達を操ったとでも言うの!?
仮にそうだとしたら、若しかしてこの間の事ですらアイツの中では想定内の事だった……?ヴェイの心臓を支配下に置き、其れを奪還しに来る事を見越
して、奪還に来た者を『種の力』でもって暴走させて心臓を奪還させ、そして其れをアンテナにフッケバイン全員を手駒にする――完全にやられた!
ヴェイが無事なのは、あのリアクトプラグの子が居るのと、己のオリジナルの心臓を取り戻したから。
スコールが無事なのは……其れは分からないけど、此れは完全にしてやられた――ファミリーとしてのフッケバインは、もう二度と機能しないわね。
「ちょっと待てよ姉貴!如何してそうなるんだよ!?」
「考えても見なさいアル、私達は実質的にヴァンデインの手駒と化した状態なのよ?
ヴァンデインが生きて居る限り、私達は奴の支配下から逃れる事は出来ないのは分かるでしょう?私達は奴を殺す事すら出来ないのだから。」
「其れはそうだけど……そうだ、唯一無事なヴェイ兄とスコール姉、或は管理局に居るあのパツキンとかがヴァンデインをぶっ殺してくれれば!!」
「其れもまた無駄でしょうね……そんな事態になれば、ハーディス氏は我々を己の兵隊として使うでしょう。
そうなれば、彼が死ぬよりも先に、僕達が死ぬ可能性のが高い――魔導師相手ならいざ知らず、同じエクリプス同士の戦いでは、不死に近い能力も
意味を成さない――こと、リインフォース・ルナ、高町なのは、サイファーの零次感染者が相手では、幾ら何でも分が悪い。
更に、管理局にはゼロの力を有するトーマが居ますからね……全戦力を投入された場合、操られて能力が120%解放された我々でも……」
勝率は極端に低いと言う事になるわ。
だけど、だからと言って抜け道が無い訳じゃない――全員分のリアクトプラグを確保する事が出来れば、ハーディスの支配だって抜けられるわ。
尤も、5体ものリアクトプラグを見つけるのは楽な事じゃないけれど、見つけないと私達の生きる意味がまるでなくなっちゃうから、頑張らないとよね。
だけど、此れだけの力を持つ原初の種……矢張り、其れは手に入れたいものだわ。
――――――
Side:ヴェイロン
え〜とだな………特上サーロイン1kgをレアで、其れから生ビールを特大ジョッキでだ。
「サーロインを1kgって、正気かお前?
いや、アレだけ激しい戦いをした後だから腹が減っているのは分かるが、あんなに脂っこい物を1kgも食べて大丈夫なのか?」
問題ねぇな。自慢じゃねぇが、以前にターキー1羽を平らげた事も有るから此れ位は余裕だ。兎に角、腹が減ってんだよ俺は。
其れとテメェも何か頼めクソチビ、いざという時にガス欠で役立たず何てのはゴメンだからな。
「だけど、お金……」
「あぁ?なんだ、そんなつまらねぇ事か。
フッケバインから脱出する際に、あの船の中にあった現金をゴッソリ持って来たから気にすんな、食いたい物をさっさとオーダーしろ。」
「えっと……じゃあ、マスタードタラモサラダサンドを……」
「コイツと比べると、相当に常識的なオーダーだな。」
るせぇよ眼帯馬鹿が。
つーか『絶!獄辛言峰麻婆丼』とか言う、危険物をオーダーしたテメェにゃ言われたくねぇ――この、味覚崩壊のドカスが。
「言峰麻婆はロマンだぞ?」
「知るかドカスが。」
テメェの味覚は間違いなくぶっ壊れてるぜ。
まぁ、其れは如何でも良い事だが――何でテメェは無事だったんだスコール?
俺はこのクソチビが居たから何とかなったが、テメェにゃこのクソチビみてぇなリアクトプラグはねぇ……如何やって暴走を回避しやがった?
「別に回避した訳じゃない。
私は、言うなれば0.5次感染者とも言うべき存在でね――姉さんの様な零次感染者には劣るが、外部からのエクリプスへの干渉には強いのさ。
だが、其れは其れとして、此れから如何する心算なんだヴェイ?」
決まってんだろ、ヴァンデインの野郎をぶっ殺す。
こんだけ好き勝手やってくれたんだ、ぶっ殺さなきゃ俺の気が治まらねぇ――この間の礼も、熨斗つけてしとかないといけねぇしな。
「こう言っちゃなんだが勝てるのか?」
「このクソチビの力が有れば、少なくともあのクソの能力は受けずに済む。
そんで、俺達があのクソ眉毛を襲撃すれば、間違いなく管理局のカス共が動くだろ?……其処で、ゼロのクソガキなんかを利用する。」
あのクソガキの力は未知数だが、アイツなら原初の種にも対抗できるだろうからな。
それと、管理局サイドのエクリプスドライバー共もな……精々野郎をぶっ殺すための、手駒になって貰うぜ――ムカつくが、アイツ等は強いからな。
「ククク……其れで正解さヴェイ。
リインフォース・ルナと高町なのは、そして姉さんが本気を出せば、大概の事は何とかなるだろうからな……勝つためには、手段を選ばずだ。」
他者の手を借りるってのが気に入らねぇが、あのクソ眉毛をぶっ殺すためなら恥も外聞もねぇ……使えるモンは全部使ってぶっ殺してやるぜ。
原初の種だか支配者だか知らねぇが、ぶち殺してやるぜインテリ眉毛……近い内に行ってやるから、覚悟しとくんだな、此のドカス野郎が――!
――――――
Side:トーマ
「如何した少年?その程度の力では、本当に大切な物を護る事など、夢のまた夢だぞ?
私は簡単には死なない存在だ――遠慮などしないで、お前の持てる力の全てを出しきれ――そうでなくては面白くもない。」
今日も今日とてトレーニングなんだけど、サイファーとの一騎打ちはマジでキツイッス――ちぃ、其処だ!!!
「悪くない反応速度だったが、反撃の一発を放つのに時間が掛かり過ぎて居るな……そう言う訳で、此れで終わりだ、ディバインバスター!!!」
――キュゴォォォォォォォォ……ドガバァァァァッァァァァァァン!!
どわぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
つ、つえぇ……サイファーマジで強い、つーか強過ぎだよ!此れでホワイトナイツリベリオンのナンバー3って、其れじゃあナンバー2のなのはさんや、ナ
ンバー1のルナさんはドンだけだっての!!暗殺専門のドゥーエさんの実力だって相当だろうし、ぶっちゃけ俺勝てる気がしねえ!!
「相手が悪いと言うしかないだろうな。
如何にお前がゼロ因子適合者であろうとも、零次感染者の力はゼロの力をも凌駕するらしいからな?――模擬戦でもこの結果は当然の事だよ。」
「そうだとしても、コンだけコテンパンにやられると自信無くすよ……次なる目標が見えて来るのは良いんだけどさ。」
だけど、今の俺じゃ何も護れない……だったら、大切な物を護る為には強くならなきゃならない。だから―――――
サイファー、もう一本頼む!
俺はもっと強くならなくちゃダメなんだ……だからこんな所でへこたれてなんていられない!……本気で相手してくれ、そうじゃなきゃ意味は無いから!
「ヤキになった――と言う感じではないな?……良いだろう、貴様の要望通り鍛えてやる。
だが、私の稽古はきついからな?……途中で耐えきれなくなって夜逃げなんて事だけは止めてくれるか?」
夜逃げなんて、そんな事はしないよ――俺は俺の道を進む、只それだけだからさ。
「良くぞ吼えた!気に入ったぞトーマ……!お前ならば、誰かに屈服する事もないだろう――その心意気を忘れるなよ?
お前の持つゼロの力、頼りにしているからな。」
「はい!頑張ります!!」
ゼロの本質は破壊の力だけど、破壊の力だって使い様によっては救いになる、ルナさんとリリィがそう教えてくれた!
だから、俺はもう迷わない!!
人非ざる存在になっちゃったかもだけど、俺は俺だ、トーマ・アヴェニールだ!!此の力は、人を助けるために有る……其れを現実にするだけだぜ!!
――――――
Side:ルナ
「………戦いの時は近いな。」
「うん……近いね。」
なのは!……何時から居たんだ?――流石に少し驚いたぞ?
「ついさっきだよ……ルナが屋上で佇むのが見えたからね……何かなと思って来たって言う訳だよ。」
「見えたって、トンでもない視力だなお前は――まぁ、お前と共にこの夕焼けを見るのも悪くないか。」
水平線の向こうに沈む夕日……何とも美しい――お前と見れたと言うのは嬉しいが、まさか私と共に夕陽を見に来たと言う訳ではないだろう、なのは?
「まぁね……ジェイルさんが近々大きな戦いが起きるって言ったから、其れを伝えとこうかと思って――まぁ、ルナなら気付いてるかもだけど。」
あぁ、気付いてたさ――予感めいたものだけれどね。
近い内に必ず、エクリプスを巡っての大きな戦いが起きる筈だ――確証などないが、私の魂がそうだと警鐘を鳴らしているから信憑性は高いだろう?
「其れは確かに高いけど――だからと言って負ける心算は無いんでしょう?」
「ある訳がないだろう?……この件の黒幕は、欠片もないほどに粉々にしてやるさ――エクリプスの力でも再生できないレベルでな。」
「頼もしいね♪」
此れ位でなければ、勝つ事など出来んだろうからな。
最終決戦が始まったその時には、思い切り暴れてやれば良いさ――其れ位やらないと満足できそうにないからね。
再びハーディスが動いた時、或はハーディスが襲撃された時が最終章の幕開けにななるのは間違いない――精々やらせて貰うさ、全力全壊でな!!
To Be Continued… 
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