Side:なのは
「侵入したフッケバインのメンバーが、行き成り暴走したか……其れだけやったら大した事やないけど、なのは達を振り切って逃走したとなると、そうも
言ってられへんね?こう言っちゃなんやけど、なのは達は零次感染者とも言うべき、最強クラスのエクリプスドライバーや。
その3人を振り切った言う事は、暴走した奴は、なのは達に勝てないまでも、逃げる事が出来る力を有しとるって言う事やからね。」
そう言う事になるよはやて……あの暴走は本当に凄かった、まるで空腹の限界を超えて理性の飛んだ肉食獣を相手にしてる感じだったよ。
尤も、戦闘能力だったら私達の方が絶対的に上だけど、本能のままに行動するって言うのは、此処まで面倒なモノなのかって言うのを身をもって知っ
たって言う感じかな?なんせ、こっちの牽制とか何かには、殆ど反応しないで、自分のやりたいように暴れまくる訳だからね。
「何や其れ!?………ホンマに厄介なモンやなぁ……
んで、其れを引き起こしたのは、略間違いなくハーディス・ヴァンデインであると……つまりそう言う事でえぇんかな?」
「良いよ……物的証拠はないけど、そんな事が出来るのは現状ではヴァンデイン以外には考えられないでしょう?
彼がどうやってその力を手に入れたかは知らないけど、間違いなくヴァンデインは『原初の種』の力を――エクリプスを支配する力を得ているからね。
私やルナやトーマには効果が無いけど、ゼロ因子適合者を除いた、一次感染者以降のエクリプスドライバーを手駒に出来るのは脅威だよ。」
「正に狂った神とも言うべき力やな……いや、エクリプスで世界を統率して、ホンマに神を気取る心算で居るのかもなぁ……」
それは否定できないかもだね。
だけど、リオンさん――お父さんが、見つけ出しながらも封印した力をイタズラに使うのはやっぱり許せないよ――そうでしょはやて?
「確認不要やそんなモン。
事が事やから、まだ動く事はせんけど、ヴァンデインが行動を起こしたその時が、私等が本当に動く時やろなのは?
エクリプスの力を、その本質を理解せずにイタズラに使ってる輩は撃滅上等やからな……その時が来たら頼むでなのは、頼りにしとるからな?」
勿論、その時が来たら暴れさせて貰うよ?――白夜の反逆者全員が、その力を全開にしてね。
魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force36
『覚醒と成長と、そして暴走』
Side:ルナ
フッケバインの襲撃から数日が経ったが、今のところは大きな事件も無く平穏無事と言う所か?まぁ、嵐の前の静けさと言えなくもないけれどね。
だが、其れのおかげで出来る事も有るからな?
平穏無事であるならば、トーマの訓練も集中して行う事が出来ると言う訳だ。
尤も、普段はアインスやツヴァイが訓練を行っているのだが、司令殿の秘書官ともなると中々に忙しいらしく、今日は私が指導しているのだがな。
「さてトーマ、リリィとロサ、夫々とのリアクトは可成り良くなって来た――其処で、今日からは更なるステップに進もうと思う。」
「更なるステップ、ですか?」
そうだ……今度は、リリィとロサの2人と同時にリアクトして貰う。前になのはが言っていたダブルリアクトと言うやつだ。
勿論簡単ではないし、2つの力を同時に使うのは難しいが、此れが完璧に出来るようになれば、お前の力は今の3倍にも4倍にもなるかもしれない。
まぁ、其れはあくまでも数字の上での計算だが、ジェイルが計算した以上は多分大きな間違いはない筈だ。
其れに、今は平穏だが、何時またフッケバインや野良感染者が暴れ出すとも限らないだろう?――その時に備えて、会得しておいた方が良いと思う。
「其れは確かに言えてるかも知れません
リリィとのリアクトも、ロサとのリアクトも大分良くなって来たけど、今のままじゃ足りないって言うのは俺も思ってたんです――今の俺じゃ護れない。」
「自分の弱さや至らない部分を認められるのは、良い事だトーマ。其れが出来て、初めて上に進む資格を得る訳だからね。」
加えて、君は自分の持つ力の大きさを理解しているようだから、其れを間違った方向に使う事もないだろうさ。
さてと、ダブルリアクトだが行き成り完全同調は無理だから、先ずはリリィとロサの出力を40%の状態でリアクトしてみようか?
此れならば、2つの力が下手に鬩ぎ合って、トーマの能力の限界を超える事もないし、互いに出力を抑えた状態であるにならばリリィとロサだって、自
分の役割分担を把握しやすいだろう?
「それは、そうかも知れません。」
「頑張ってみる。」
「頼むよ2人とも……行くぞ!!」
「「うん!リアクトエンゲージ!!」」
――キュイィィィィィン……バチィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!
こ、此れは……何と言う力だ!!出力を40%に制限した上でこれ程までの力が出ると言うのか!?……正直予想外だな。
「リアクト・オン!モード……暗黒騎士!!」
「出力を制限したとは言え、行き成りのダブルリアクトを成功させるとは驚いたよトーマ。此れもまた、君の持つ『ゼロ』の特性と言ったところかな?
だがまぁ、成功したのは良いが銀髪が逆立って、稲妻纏って、防護服の金属の部分が更に鋭くなって、ディバイダーも刀身が伸びて、身体の赤い紋
様も、より派手で禍禍しくなってるな?……うん、見てくれの『悪者』っぷりが、今までとは比べ物にならない程にアップしたな。」
しかも暗黒騎士と来たか?マッタク実にピッタリのネーミングだよ。
だが、其れは闇の騎士ではなく、人々を護る為に闇の力を選んだ『正義の暗黒騎士』と言ったところだろうけれどね?……見た目は悪役全開でもな。
「ダブルリアクトだと、見た目の悪役っぷりも上昇するんですね……」
「その姿でスラム街を歩けば、チンピラに喧嘩を売られて、マフィアのボスには勧誘されるかもしれないな♪」
「楽しそうに言わないでくださいよ!!!」
冗談だ。
それで、リリィとロサは如何だ?何か不具合とかは無いかな?
《えっと、大丈夫です。トーマの戦闘支援は行えます。》
《私も大丈夫……感覚情報の強化も問題ないです。》
ならば良いが、トーマはどんな感じだ?身体に違和感とかは?
「特に感じないですよ?……って言うか、出力を制御してのリアクトだったのに、通常のリアクトよりも強いのが自分でも良く分かるんです。
リリィとのリアクト時の能力と、ロサとのリアクト時の能力を夫々出力8割で使ってる様な……戦闘能力と反応速度の両方が上がってる感じですよ!」
単体リアクトの最大値には及ばないが、夫々の利点が8割の状態で併用されているというのは凄い事だな?しかも、夫々の出力が40%状態でだ。
今の状態で此れならば、夫々出力制限なしでのダブルリアクトが可能になった暁にはドレだけ強くなるんだトーマは?其れこそ、並の一次感染者如き
では、足元にも及ばない位の存在になるのではないだろうか?……其れだけの可能性を秘めて居るならば、成程フッケバインも欲しがるわけだな。
「って言うか見て下さいルナさん!ディバイダーの刀身が伸びて大きくなったのに、ダブルリアクトのおかげで、こんなに高速で振る事が出来ますよ!」
うん、確かに凄いな?
袈裟斬り、払い斬り、ぶん回し斬り、逆袈裟二連斬、連続突き、斬り上げ、斬り下ろし、一文字斬りのコンボをその大型武器でやってのけるとはね。
ふむ、出力制御状態で其処まで出来るのならば御の字だな?――試しに私と模擬戦をしてみるか?
「いぃ!?幾ら何でも、ルナさんが相手じゃ瞬殺されますって!!」
「そう言うな、勿論ハンデはつけるさ。
魔法での遠距離攻撃と、祝福の月光状態と、トランザムは封印し、攻撃方法を月影での剣術とブライトでの体術に限定しよう。其れなら良いだろ?」
「其れなら良いですけど……其れでも、勝てる気が全くしねぇ……」
《が、頑張ろうトーマ!》
《私とリリィも、一生懸命頑張るから!》
「うん……頑張るよ!
こうなりゃトコトンやってやります!何度撃墜されようと、俺が動けるうちは終わりにしないでくださいルナさん!徹底的にお願いします!!」
その意気や良しだ。ならば、徹底的にやらせて貰うさ。
君の持つゼロの力が、エクリプスを巡る一連の事件に大きな影響を与えるのは間違いないんだ……だから、強くなれトーマ。今よりもずっとな。
――――――
Side:アイシス
さてと、トーマ達はトーマ達で頑張ってるみたいだから、私も頑張らないとなんだけど、私は何をどうすればいんですか冥沙さん?
「うむ、貴様の爆薬での広域攻撃は、既に中々のレベルに達しているが、まだまだ甘い。
爆薬を使う故に魔法を使う我とは違うが、爆薬をより広域に拡散する方法を身に付ければ、お前独自の戦闘スタイルは更なる進化を遂げる筈だ。」
より広域にって言うのは確かに考えたんですけど、それだと爆薬を広げる訳で、広がった分だけ威力が落ちるんですよ流石に。
だからと言って、爆薬の量を単純に増やすだけじゃ私も危ないし……如何したもんでしょうか?
「其処で、魔力を使うのだ。」
「魔力を?」
「左様。爆薬の量は其のままに、広域散布の際は炸裂魔力弾とも言うべき爆発性の高い魔力弾も爆薬と共に放ってやる。
さすれば、爆薬が爆発した瞬間に、炸裂魔力弾も破裂し、破壊力を余り落とさずに、更なる広域攻撃が可能になるのだ――ならば、分かるだろう?」
炸裂魔力弾の会得ですよね……此れはまた、何とも難しそうだけど、此れを進めて来たって事は、アタシには此れが出来るって言う事の証明に他なら
ないでしょ?出来ない事を、無理に勧めて来るような事はしないからね冥沙さんは。
ならその期待には応えなきゃ♪
宜しく、ご指導ご鞭撻をお願いします、冥沙さん!!!
「良き心掛けだアイシス――広域攻撃の真髄を、その身に叩き込んでやるから、覚悟しておけよ?……言うまでも無いだろうがな!」
「スパルタ特訓、寧ろ上等!
トーマもリリィもロサも、アタシの大事な友達!!その友達と一緒に戦う為の力を得られるなら、アタシはどんな特訓だって耐える事が出来ます!!」
「其処まで吼えるか小娘!……良いぞ、気に入った!
特訓の暁には、貴様に我のとっておきをくれてやる……精々精進するが良い!!!」
はい、頑張ります!!
成り行きとは言え、此処まで係わった以上は、最後まで付き合わないと中途半端すぎるから、トコトンまでやる心算よ!えぇ、トコトン徹底的にね!!
トーマ達は、アタシにとっても初めての友達だから、絶対に護り抜いてみせる!!フッケバインなんかの好きにはさせないわ、絶対に!!!!
――――――
Side:ヴァンデイン
彼の心臓は、如何やら無事にフッケバインの本拠地に辿り着いたようだね……態々力を貸してやった甲斐も有ると言う所だね。
まぁ、君達のお蔭で、私の計画も大分早まるのだがな……ククク………先ずは手始めに、フッケバインに私の手駒になって貰うとするかな?
彼の心臓を持っていたのならば、取り敢えずは準備は完了と言ったところかな?
アレをアンテナにすれば、フッケバインを支配する事など造作もない事だ……君達には精々暴れて貰おうかな?私の野望を成就する為にもね。
さぁ、最終章の幕を上げるとしようか……!!
――――――
Side:ヴェイロン
く……白い天井って事は、此処は医務室って所か?……手術は成功しましたって所だろうが、何とく身体がだるいのは、仕方ねぇって所だろうな。
だが、本来の俺の心臓を取り戻した事で、すこぶる調子は良いな?コイツを取り返してくれたアルには一応礼を言っておくか。
おい、フォルティス、アルは何処行った?
「………」
「フォルティス?」
「………殺す。」
!!!テメェ、行き成り如何言う心算だこの野郎!
メスで斬りつけて来るとは、随分をふざけた事をしてくれるじゃねぇか、此のドカスが……喧嘩を売ってるなら買ってやるぜ、クソ野郎が。
「ダメ……今直ぐ此処から逃げて。」
「あぁ!?どっから湧いたチビガキ?……誰が逃げるかよ!!」
「逃げて……私は貴方にしか力が使えない……だから、貴方が無事であってほしい……だから死なないで、今は生きる事を考えて。」
ケッ……メスガキがほざくじゃねぇか?……今回は特別に、テメェの提案を受け入れてやるぜ。
「うあぁぁぁぁぁあぁあぁぁあぁぁ……」
「死ねぇぇ………」
「殺す、殺す…殺す!!」
フォルティスのみならず、ドゥビルとカレンとステラもか……フッケバインファミリーは今日が終焉だったか……なら、暴れさせて貰うぜクズ共が。
テメェ等に恨みはないが、この場に居合わせた事を呪うんだな!!
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んで、結局無事だったのは俺とテメェか……お前が生き残るのは予想外だったぞスコール?
「あの程度で闇に堕ちる心算は毛頭ないとは言えな……だが、おかげで面白い事になって来たのは間違いないだろう?」
面白いどころか、面倒な事この上ないの間違いだろドカスが。
だが、ハーディスの奴は滅殺してやる……俺の心臓を抉り出してくれた礼は、1000倍にして返さねぇと俺の気が治まらねぇからな!!!
覚悟しとけよインテリ眉毛……テメェの事は、俺が直々にぶち殺してやる……精々独房で、お祈りでもしていやがれドカス野郎が――!!
To Be Continued… 
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