Side:ルナ


ちぃ……能力そのものは決して高くはないが、エクリプスによって殺戮衝動が増大され、本能に任せて暴れ回る感染者は、少々厄介なものだ。
恐らくは痛覚も麻痺しているだろうから生半可な攻撃では足止めにもならんだろうし、コイツ等は四肢を切り落としたところで即時再生するからなぁ?


「ぎしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「其れを寄越せぇぇぇぇぇっぇぇぇ!!!」


等と言う事を、コイツ等と戦いながら考えている私自身が、相当にトンでもないのかもしれないけれどね……うん、その攻撃は見えているよ?


――メキィィィィィ!!


「げぴぃぃぃぃ!?」

「破壊と殺戮の衝動に呑まれ過ぎて、攻撃の軌道が丸見えだ馬鹿者。
 大体にして、殺気全開で放つ攻撃が決まる筈がないだろう?――その程度の稚拙な攻撃が、私に通ると思ってか?」

「……うるさい……其れを……一次感染者の心臓を、俺達に寄越せぇぇぇ!!!」


やれやれ……聞く耳持たずか?まぁ、期待はしていなかったけれど――貴様等の要求に対する答えは『否』だ。渡す筈がないだろう、弩阿呆共が。
マッタク、同じエクリプスドライバーとして情けなくなってくるぞ、貴様等のその醜態にはな。

何れにしても、私の前に敵意を持って現れた以上、貴様等の死は絶対と思え……其れはエクリプスドライバーであっても例外ではないからな。

本能のままに、襲撃を懸けて来た事を、地獄の閻魔の前で後悔するが良いさ!













魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force33
『エクリプスを求めて三者三様』











とは言え、相手は数が多いのもまた事実だ。
当初襲撃をかけてきたのは2人組だったが、何処から聞きつけて来たのか、何時の間にやら10人以上の野良感染者が集まってきている様だな?

もっともこの程度の相手ならば如何と言う事はないが、数の利を使われてトーマ達を追う奴が居るとなると、些か面倒くさいのは否めない事だ。
纏めて、一撃で吹きとばせる攻撃でもあればまた変わってくるのだろうが……


「そう言う事なら、アタシにお任せですよルナさん!」

「アイシス!!」

成程……アイシスの爆薬術ならば、エクリプスドライバーにも効果があるし、煙は其のまま煙幕としても利用できるからな……だが、大丈夫か?


「大丈夫ですって!こう言うのは得意だし、何よりも、トーマ達の邪魔をしようとするズべ公を、黙って見てられませんての!!」


ふ――その意気やよし言ったところだな?
ならば、先ずは後ろの方から来てる奴等に、一発派手なのをかまして貰えるか?……手加減などしない、全力全壊の一撃をな!!


「了解です!
 んじゃまぁ、喰らえ!!黒の香 No.33 コンドルダイヴ!!


――ゴォォォ……ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!


此れは、爆薬で出来た巨大なコンドルが突撃すると同時に爆発するとは、凄まじい攻撃だな此れも?
あの大きさと速度では回避は難しいが、迎撃しようと知れば当然爆発してその余波でダメージを喰らいかねない――よく考えられた、良い技だね。


「ありがとうございます!……でも、まだ来ますよアイツ等!
 幾ら充填式とは言っても、パフィに入れられる爆薬って限界があるんですけど――」

「其れなら大丈夫だ、君の攻撃のおかげで、私も準備をする事が出来たからね……新技の披露と行こうじゃないか!!」

「新技って……何ですか、その右腕に練り込まれた異常なほどに高密度な魔力は!?その拳だけで、高層ビル破壊できますよ、冗談抜きで!!」


だろうね?スターライトブレイカーの要領で集めた魔力を、右拳に集中した訳だから、やろうと思えばこの拳はダイヤモンドですら砕くさ。
まぁ、相手が魔導殺しのエクリプスドライバーであるから、本来の効果は発揮できないだろうが、其れでも確実に戦闘不能には出来るだろうね。


「エクリプスドライバーは魔導殺しの概念が、ルナさんとなのはさんとサイファーさん限定で通じない気がしてきました。」

「まぁ、エクリプスドライバーで魔導師のなのはとサイファー、エクリプスドライバーでありながら騎士の私だからね?一般的な概念など通じんよ。
 だが、取り敢えず今は、君の作ってくれた最大のチャンスを、最高のフィニッシュで彩らせて貰うとしようかな?」

空の王者たるコンドルが落とした敵にトドメを刺すのは、地上の孤高の王者である狼だ。
Sind Sie in Ordnung?Kumpel wolf!(アーユーOK?バスターウルフ!!


『Buster wolf.』


――バキィィィ!……ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!


此れでも大ダメージは確実だろうが、念には念を入れて……喰らえ、真・昇龍拳!!!


『Catch this Riging Dragon.』


――ゴス!バキ!!ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!



此れで終わりだ……Nehmen Sie leicht.(楽勝だったな。)――で、如何したアイシス?


「いえ…ルナさんの無敵チートっぷりに改めて驚いてただけです。
 つーか、ぶっちゃけルナさんとなのはさんとサイファーさんが力合わせたら、其れだけで世界を獲れると思うんですが如何でしょう?」

「まさか、馬鹿言っちゃいけない………全宇宙を統一出来るに決まっているだろう。」

「真顔でサラッと恐ろしい事言わないで下さいよ!!本当に出来そうなんですからルナさん達だと!!
 ……まぁ、其れは良いとして、如何するんですかコイツ等?ルナさんの攻撃喰らって、完全に伸びちゃってますけど、放置は出来ませんよね?」


あぁ、出来ないからジェイル特製のAECコーティングが施された、このワイヤーチェーンで縛り上げて管理局に持ってく。
ジェイルが作った、このワイヤーチェーンは、野良感染者が解けるような柔なモノではないよ?…本気モードの私基準で強度が作られているからね。


「其れって絶対切る事できないんじゃないですか?」

「正義のマッドサイエンティストの作るモノは、超一級の性能を秘めて居ると言う事さ。」

私だって驚いたよ……祝福状態で、更にTran−S・A・Mまで発動して、漸くワイヤーを千切る事が出来たんだからね。
ともあれ、此れがエクリプスドライバーに有効なのは明白だからね?――近い内に、このワイヤーチェーンを使ったAEC装備を開発するんだそうだ。


「正直に言って、スカリエッティ博士が味方で良かったです。」

「その意見には諸手を上げて賛成するよ。」

アレが敵になった事など想像したくもないよ――まぁ、取り敢えずコイツ等を連れて行くとしようか。


「時に、どうやって連れて行くんですか?」

「面倒だから、ワイヤーチェーンで縛ったままぶら下げて行く。
 落とさないように、複雑にチェーンは巻き付けておくが、落ちたらその時はその時だ――運が悪かったと思って、頭から地面に突き刺さっておけ。」

エクリプスドライバーならば、野良感染者と言えどその程度なら如何と言う事は無いだろうからね。


さてと、襲撃をかけてきた馬鹿共は鎮圧したから、トーマ達を追うか。



しかし、こうも簡単に野良感染者が出て来るとは、エクリプスがドレだけばら撒かれたのかは想像も出来ん……此の件は、予想以上に厄介だな。








――――――








Side:美由希


其れにしても凄いね、このスラム街は?
建物とかはボロボロの廃屋だけど、其処で暮らしてる人達の『生きる力』は半端な物じゃない……生きるための覚悟を感じる事が出来たわ。

明日も分からない人達にとって、その日を如何に生きるかは、誇張抜きでの死活問題なんだろうね――此れも、何れ変えて行かないとだけどね。
其れでクイン、エクリプスドライバーの反応は?


「今のところない……何処行った、半端者――


反応がないなら、如何しようもないけど、だけど、此処の連中が普通じゃないのは言うまでもない事だからね。
街のあちこちから色んな念を感じる事が出来るからね――エクリプスドライバーの反応を感じ取る事が出来ないって言うのが脅威なんだよねきっと。


「……アイツは……」


クイン?如何したの?何かあった?


「グレンデルに対抗してたギャング組織の一員だけど、アイツからは私と同じ匂いがする――アレは多分、エクリプスドライバーだ。」


煮詰まってたところで、大当たりと会ったか……願わくば、話し合いで如何にかしたいけど、エクリプスが相手じゃ其れは望むだけ無駄だよね………
やるなら、それ相応の対応をするけど、相手に戦闘の意思がないのに、斬り捨てるのは心が痛むからね……取り敢えずは、『見』に回りましょうか?

不穏な動きをしたら、その瞬間に打って出る――準備は良いわねクイン?


「誰に言ってる、準備はとっくに完了している。
 と言うか、ファミリーの特攻舐めんな。此処に来ると決まったその時から、武装その他は準備完了だ――お話しの準備だって出来てるだろ多分?」


出来てるわよ勿論――なのは直伝の全力全壊をね!!
早速、話を聞かせて貰おうかな……エクリプスの力に魅入られた愚者よ……せめて、有効な情報を教えてくれるとありがたいかな……


まぁ、時間は有るし、たっぷりと『O・HA・NA・SHI』する時間も充分だからね?
彼方達にエクリプスを渡した人が誰であるのか、其れだけを聞きたいだけだから――落ち着いて話を聞いてくれるかな?


「「「………」」」


――彼方達を、人有らざる存在に変えた、其れは一体誰なの?……一切の誤魔化しとか何かは無しで、答えて貰う事はやっぱり無理なのかな?


「……そう言う事かよ……なら誤魔化す事もねぇ……俺達をエクリプスドライバーにしやがたのは、ヴァンデインのクソ親父だ。
 目の前の餌に飛びついた俺達が言う事でもないだろうが、あの野郎はエクリプスのデータが何が何でも欲しいみたいだ…俺達の命はゴミ屑さ。」


そんな事は無いよ――どんな命だって、生まれ出た以上は何か意味がある筈なんだから、自分の命をゴミ屑なんて言ったらだめだよ?
命は何にだって一つだから、その命は貴方だけの物……エクリプスだとかそんな事は関係ないでしょう?

それに、彼方からは貴重な情報を得る事も出来たから、感謝こそすれ、罰する理由もない――情報提供に感謝するわ、野良感染者さん♪


「此れは……女神だ!!剣を携えた女神が降臨したぞテメェ等!!
 この人なら……この人とその仲間達だったら、エクリプスの呪いも如何にかなるかも知れねぇ…俺達の未来をこの人に預けようぜ!!」

「「「「「おーーーーーーーーーーーー!!!」」」」」


はいぃぃぃ!?如何してそうなるの!?
てか、女神とかガラじゃないから、本気で辞めて!眼鏡で三つ編みの女神様なんて、世界中どこを探したって存在しないから!あり得ないからね!


「つまり美由希大明神……」


クインーーーー!?
何言ってるの?って言うか、小銭投げて柏手打たないで〜〜〜〜!!あ〜〜〜、もう此れは収拾が付けられないよ〜〜〜〜!!!









で、結局、私だけでは抑えきれず、冥沙に救援をお願いして、漸く如何にかする事が出来たわ。
だけど、疲れたけれども、野良感染者の発生に、ヴァンデインが関わってるって言う証言が取れたのは大きいわ……此れは、動かぬ証拠だからね。


ハーディス・ヴァンデイン……貴方は一体、最終的に何を求めて居るのかしら?――マッタク持って、見当すらつかないわ……








――――――








Side:アルナージ


つ〜訳で、簡単に管理局に潜入完了!!――実にタイミングよく、ヴェイ兄の心臓が到着したみたいだからね……隙を見てアレを奪えばOKだぜ。
とは言っても、警備が厳重だから不用意に近づく事は出来ないが、其れでも退く気はマッタクねーよ!

必ず、何処かで隙が出来る……そいつをつくだけだぜ!!


『良い気迫なんだけど、今占ったら、アルの運勢降下気味よ?……このままだと、大凶レベルにまで落ち込むかもしれないわね……』


ミッション遂行前に空恐ろしい事言ってんじゃねぇ、此の守銭奴!!
それに、運勢が下降気味だって、ヴェイ兄の心臓は持って帰らないといけないからな……多少の危険は潜り抜けてやるさ!!!

だからこそ、アタシは此処に居るんだからな……ターゲットは、必ず奪って持ち帰るのがフッケバインのリネンなんでね!!


ま、取り敢えず適当に物色させてもらうぜ〜〜〜〜?ヴェイ兄の心臓だけじゃなく、適当に食料も貰って行くとするか。


にしても、ソニカの占いは性格だから、アタシの運勢が下降気味ってのが気になるぜ……此処まで巧く入ってるだけに余計にな……








――――――








Side:なのは


此れがエクリプスドライバーの心臓――即時、解析ルームに回して詳細を調べないといけないね。
まぁ、結果は直ぐに出る訳じゃないから、今はゆっくり休んでおいて……休むのもまた、大事な事だからね――ご苦労様、トーマ。


「はい!!」

「頑張りました!!」


うん、重ねてご苦労様、ゆっくり休むと良いよ。



さてと……一次感染者の心臓ともなれば、六課は知ってるとして、野良感染者が其れを嗅ぎ付けて、最悪管理局に牙を剥く事は想像に難くない。
その筆頭がフッケバインだけど、来たら来たで撃滅するだけの事だよ。





エクリプスに喰われた存在は、只破壊を撒き散らすだけの存在でしかないんだからね。



だけど、襲撃するなら覚悟は決めといてね?
白夜の聖王は、敵対の意思を示した相手に慈悲はない――ただ、砲撃で吹き飛ばすだけだよ!!全力全壊の手加減なしでね。












 To Be Continued…