Side:ルナ
トーマ、今のところ変わりはないか?
「ルナさん!はい、今のところ異常は有りませんが……如何したんですか行き成り?
確か、サイファー達と一緒にヴァンデインの護送をしてた筈ですよね?――態々俺達の所に来て、何か緊急の事でもあったんですか、ルナさん?」
いや、そう言う訳じゃないが、如何にも嫌な予感がして此方に来たのさ。
何と言うか、明確なモノじゃないんだが、何となく『何かが起きる』と言う事を、私の第六感が告げているんだ……其れを無視する事は出来なくてね。
そう言う訳で、こっちに来たんだ。
それで、押収した心臓はどんな状態だ?エクリプスドライバーの心臓だから、止まってしまったとは思い難いんだが――
「今もこの状態で鼓動を続けて、再生しようとしています。
ともすれば、其れこそこの心臓から、心臓の持ち主が再生されてもおかしくない位のレベルで……今は私の力で抑えてますけれど……」
再生を止めるには至らないか……マッタク持って、化け物だなエクリプスドライバーは……私の言えた義理ではないが。
抉り出された心臓が鼓動を止めず、更に再生しようとして居る等、考えたくもないホラーだが、其れが現実で起きている以上は認めなくてはな……
どうやら、ヴァンデインを護送して、本局でみっちり取調べと言うだけでは終わりそうにないな、此の一件は。
まぁ良い、私はこのまま君達の護衛を務めさせてもらう……万が一、フッケバインなんかの襲撃が有った場合には、思い切りやらせて貰うけれどね。
魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force32
『複雑に絡み合う思惑と謎』
Side:なのは
其れでカート、約束の10分が経った訳だけど、説得は出来た?
「何とかって所だが一応な。
だが、クインの奴がダダこねてな……調査に出向く場合には、アンタかエースさんのどっちかを同行させろって言ってんだが、そいつは可能かい?」
私か姉さんを?……うん、其れ位なら問題ないよ。
元より、一度は逮捕した相手を野に放つ事になる訳だから、監視はつける心算で居たしね。
「やっぱりか……だから言ったろクイン、態々申立てする事はねぇってよ。」
「五月蠅い黙れ、アホヘッド!結局動くのはアタシなんだから、せめてもの要求したって罰は当たらないだろ。其れすら分からないのかこの脳筋。
って言うか、やっぱり一発殴らせろ。こんな事させるんだから、取り敢えず殴っといても良い筈だ。」
何て言うか、相変わらずの扱いだねカート?一応は一家の首領だって言うのに、此れは流石に如何かと思うよ?
「俺等は此れ位の方が丁度良いんだよ。俺が首領ってのも、建前っつーか便宜上のモンに過ぎねぇからな。
成り上がる為にギャング一家を起ち上げたが、俺一人が成りあがっても意味はねぇ……マリーヤとロロ、其れにクインも一緒じゃなきゃダメだろ?
そんな訳でよ、首領を名乗っちゃいるが、立場的に其れほど差がある訳じゃねぇんだわ俺等は。だから此れで良いんだ。」
「成程ね……やっぱり彼方達はギャングには向いてないと思うな。」
「なのは?」
だってそうでしょ姉さん?
普通ギャング組織って言ったら、首領が絶対の存在で成り立ってる縦割りの社会なのに、グレンデル一家は其れがない…ギャングとは言い難いよ。
どっちかって言うと、明確な組織の序列のない、『不良の集まり』って言った方が正確じゃないかな?
「言われてみれば確かに…」
「そういやそっちの方があってるかもなぁ?コイツは盲点だったぜ!!」
「感心してんじゃねぇアホヘッド!!」
本当に仲が良いんだね……
「ま、ガキの頃からの付き合いだからな。……と、クインの我儘とは別に、俺個人の頼みってのも有るんだが、聞いてもらっても良いかい?」
「あまり無茶な事じゃなければ聞くけど、何かな?」
「いや、俺達のホームの付近で捜査をするのは構わないんだが、エクリプス感染者の事は、あんまし手荒く扱わないでやって欲しんだよ。
俺達もそうなんだが、成り上がる為には力が必要だったが、デカい力は一朝一夕で手に入るもんじゃねぇだろ?
そんな中で、ヴァンデインのとっつぁんが投げてよこしたエクリプスウィルスは魅力的なモンだったから、ついつい飛びついちまったって訳さ。
俺等は、成り上がりたかっただけでエクリプスドライバーになりたかった訳じゃねぇ……そこら辺を斟酌してやって欲しんだわ、俺としてはよ。」
分かってるよ……話し合いで通じるなら其れに越した事は無いし、大人しく投降するなら何もしないからね。
でも、此方の話に耳を傾けず、交戦の意思を示した場合にはその限りじゃない――その時は、此方も武力をもって対応せざるを得ないからね………
「そん時はその時さ……口で言って分からない奴は殴って分からせるしかねぇ……だろ?」
「確かに言えてるね。」
面白いねカート……いっその事、ホワイトナイツリベリオンに身を寄せてみる?
あそこはダークヒーローの総本山とも言える場所だから、彼方達が来ても全く問題ない――寧ろ、歓迎する感じかな?
「……考えとくわ。」
来たかったら何時でも言ってね?私的には全然OKだから。
――で、姉さん、クインに同行するのは任せても良いかな?私は、本局の方に戻ろうかと思うんだ。
「別に構わないけど、本局に戻ってどうするの?やる事別にないでしょ?」
「何となく、本局の方で何かありそうな気がするんだよ……ヴァンデインが本局に護送される事にもなってるしね。
護送中のヴァンデインが襲われるかもしれないし、本局に護送を完了したヴァンデインを狙う輩だって居るかも知れない……だから、ね?」
「OK、そう言う事なら分かったわ。
なのはの勘は良く当たるし、状況を鑑みれば、本局の方にフッケバインとかが襲撃をかける可能性もゼロじゃないからね……そっちは任せるわ。」
任されたよ姉さん。
さてと……私の勘は現実となるか否か……願わくば、勘が外れて何もないと良いんだけれど、多分そうは成らないだろうなぁ……
――――――
Side:サイファー
現在、ヴァンデインの護送を行ってる訳だが……こうして、向かい合わせに座ってるだけでも、コイツの得体の知れなさをヒシヒシと感じるな……
無力で善良な市民を気取ってはいるが、やろうと思えばコイツ一人で、管理局の武装小隊を壊滅させる事など造作もなかろうな――
さっきの収容施設で、コイツがフッケバインの連中とドンパチやらかしたのは間違いないだろうが、奴等を相手にして無傷と言うのは異常過ぎる――
――つまり、コイツにはフッケバインの連中の攻撃はまるで効かなかったと言う事だろうからな……
「おやおや、そんなに怖い顔で見られると、些か萎縮してしまうのですが……?」
「ほざくなインテリ眉毛……私の視線で怯む程度の肝っ玉ではないだろう貴様は。
と言うかだな、その貼り付けたような笑顔で白々しいセリフを吐くな、本気でブッ飛ばしたくなるからな。」
「其れは何とも恐ろしい、気を付けましょう。」
ち、喰えない奴だ……このタヌキめ。
だが、貴様が余裕ぶった態度を続けられるのはそう長くはないと心に命じておけ――近いうちに、貴様には然るべき裁きが下されるだろうからな。
「善良な市民を裁く必要はないと思うんですがねぇ…?」
「白々しい事は言うなと言っただろうインテリ眉毛。
私が気付かないとでも思って居るのか?――私達と同じ『血の臭い』のする貴様の本性に?」
だとしたらお笑いだがな?
まぁ、貴様がどれだけ誤魔化そうと、そんなモノは私達にはあまり意味のない物だ……最終的には月の祝福が全てを吹き飛ばすだろうからな。
精々、踊るが良いさヴァンデイン。
最終的に、貴様に待って居るのは煉獄への片道切符だけだからな?――今の内に、思い切り粋がっているが良いさ。
だが、ドレだけ粋がった所で、貴様の未来には『破滅』しかないぞ?
如何にフッケバインを圧倒するだけの力を持っていたとしても、ルナとなのはの力は更にその上を行くからな?……力の差を知ると良いさ。
――――――
Side:ルナ
よし、今のところ心臓の輸送は順調だな。
この調子なら、あと20分もあれば本局の方に到着するだろうが――矢張り、厄介事って言うのが起きるのはお約束であるようだな。
「フェイハァーーーーーーーーー!!」
「覇ぁ!!」
――ガキィィィィィン!!!
「「ルナさん!?」」
慌てるな……この程度は如何と言う事は無い――が、此処に来て現れたか『野良感染者』が!
恐らくは、現在運んでる、エクリプスドライバーの心臓に惹かれてやって来たんだろうが、生憎と此れは持ち出し禁止品だから譲る事は出来んぞ?
「寄越せ……其れを寄越せ!!」
「そう言われて『はいどうぞ』と差し出すと思ってか?
貴様等が、一次感染者の心臓を欲しがるのは、其れを取り込んで己も疑似的な一次感染者になる為だろうが、其れをさせる筈がないだろう。
と言うかだな、態々襲撃を懸けて来るとか馬鹿かお前?
より安全かつ確実に行くならば、心臓が本局に運び込まれた瞬間を狙うべきだ――其処は、最も警備が厚く、そして脆い場所でもあるからな。」
まぁ、其れはこの際如何でも良い事だ。
トーマ、止まらずにこのままエンジンを吹かして突っ走れ!!――この弩阿呆の相手は私がする。
「――了解ですルナさん!!俺達の任務は心臓の輸送であって、野良感染者との戦闘じゃない――此処はお願いします、ルナさん!!」
大船に乗った心算で居ろ。
我等に仇成す物は、其れが何であろうとも斬り捨てるのみだ――私達に襲撃を仕掛けた事を、精々後悔するが良いさ。
――――――
Side:美由希
さてと、クインの案内でやって来たこの街なんだけど、思った以上にスラム街と化してるなぁ?
不労者や孤児は当たり前みたいな劣悪な環境で……其れでも生きてこれたんだから、グレンデル一家の生命力は高いって事だわ。
まぁ、其れは兎も角として、近くから何か感じるかなクイン?
「……少なくとも半径100m以内にはエクリプスドライバーは存在してねぇ。居るのは、単体でぶらついてるチンピラ共だけ。
ドイツもこいつも、アタシ等が逮捕された事実だけで、此れを好機とばかりに成り上がろうとしてる阿呆共だ……」
其処まで分かれば十分だよ。
引き続き、警戒だけは劣らないでね?――クイン、貴女がこの作戦の要なんだから。
「う……頑張る。」
よしよし、素直な子は大好きだよ。
さてと、半スラム街と化したここで、一体どれだけの情報を得る事が出来るのかな……不安は尽きないけどね……やる以上は、トコトンやるだけ!!
だから、クインは聞き込みを行ってくれるかな?――危なそうな場合には手を出すから、出来る限りの情報を集めてほしいんだ?
「約束だから、やるべき事はやる……だけどバックアップは怠るなよ。」
了解です♪
如何やら、エクリプスとの戦いも、可成り佳境に入って来たのかもしれないわ――其れでも私達は絶対に負けないよ。
白夜の聖王と月の祝福が揃った時、其処にはきっと何も残らない……何がどうなろうとも、最終的にはルナとなのはが何とかするだろうからね……
私は私に出来る事をやるだけ――さぁ、来るなら来なさいエクリプスドライバー!
敵対する気が満々だと言うなら手加減しないで、一刀の元に塵に返してあげるからね――!!
To Be Continued… 
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