Side:ルナ


さて、少なくともカート達の自壊ユニットが作動した事は、ヴァンデインの方でも把握してる思うが……連中はどう出て来ると思う?


「普通に考えれば、会社自体は恐慌状態だろうね。
 自分達の悪事の一端が管理局に知られ、更に黒幕の存在までばれた訳だから、一般社員は右往左往の大慌てで、自己保身に躍起ってとこ?」

「だが、件のハーディス・ヴァンデインはまるで慌てていないと言うところだろうな。
 恐らく、奴にからすれば、グレンデルのひよっ子共が、自壊ユニットを何とかした上で自分の事を白状するなど、多分予想しているだろうからな?
 其れを踏まえると、いけしゃあしゃあと、この包囲網の中に現れるんじゃないか?其れこそ、捕まる事を前提にな。」


あぁ、多分そう成るだろうよ。
ハーディス・ヴァンデインの逮捕そのものは、恐らく大した苦も無く出来る筈だが――奴が一体何を考えてるかが、最大の問題だろうね。

此れはあくまでも私の予想なんだが、6年前の大規模テロ事件の時に、キスティにエクリプスの力を渡したのは、多分ヴァンデインだろうからな。
其れを踏まえると、ヴァンデインは可成り深い部分でエクリプスを扱う事が出来ると見て間違いない………一筋縄でいく相手じゃないかもしれん。


「お前が其処まで言うとは……用心するに越した事はなさそうだ。」

「確かに、エクリプスを自由に扱えるなら、面倒な事この上ないからね……」


そう言う事だ。
何にしても、奴は遠からずここに現れるだろうから、気を抜かずに対応しなくてはな――――













魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force26
『力の在処:The Power!』











で、現場で待つ事約10分……フェイトとティアナの乗る車に誘導される形で、ヴァンデインの車がやってきた。
ふむ、表向きには『車両課の取り締まり』を装って路肩に誘導した訳か?……確かに、此れなら問答無用で車両を誘導する事も可能な訳だね。

既に正式な逮捕令状は降りてる訳だから、この場で逮捕するのは容易な訳だが――なんだ、アイツの余裕っぷりは?


普通は自分が此れから逮捕されるとなれば、最後の抵抗をするか、諦めて捕まるかだが……コイツの顔に張り付いた不気味な笑みは何なんだ?
幾ら、この展開を予想して居たにしても、余りにも落ち着きすぎている……



「『エクリプス事件』における違法研究と、大規模犯罪教唆の容疑で、貴方を逮捕します。」

「加えて、貴方自身にも感染の疑いがあります。
 ですが安心してください、空と陸で局の職員と、民間協力機関のメンバーが貴方を見守っています。
 仮に、貴方に発作が発生しても非常時救護が可能な態勢で待機して居ますので。」

「成程……此れは此れは、物は言い様だとは良く言ったモノです。――ですが……」


む?……させんぞ、ヴァンデイン!!


――バキィィィン!!!


「おや?」

「……ティアナに強烈な殺気を叩きつけて、死のイメージを誘発させる心算だったのだろうが、少しばかり甘かったな?
 貴様の殺気は、私の殺気で相殺させて貰ったよ……まぁ、余りにも急だったので、完全相殺とは行かなかった様ではあるけれどね………」

大丈夫か、ティアナ?


「あ……はい。大丈夫でs「うおりゃ〜〜〜〜〜!!」――はぁ!?」


――めっきゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!


「ぶふ!?」


「雷華ーーーー!貴様、行き成り何をしておるか〜〜〜!!
 何処の世界に、容疑者逮捕の現場で、行き成り容疑者を殴り付ける弩阿呆が居るか〜〜〜〜!!下手したら大問題であろうが、この大虚け!」

「だって、物凄く怖かったんだもーーーん!!
 その変人眉毛が、とーまが持ってるような剣で、僕の事をズバーってぶった切って、血が出て死んじゃうかと思ったんだもーーーーん!!!」


……相殺しても、感受性の強い雷華には『死のイメージ』が誘発されてしまったか。
尤も、だからと言って『怖かったから』との理由で、相手をブッ飛ばすのは雷華くらいのモノだろうと思うんだけれどね。


「うむ……流石に痛かったのですが……」

「其れについては謝罪するが、そもそもお前が殺気など出さなければこうはならなかった事を忘れるなよ?
 と、言うかだな?アイツは見た目は大人だが、頭脳と精神は極めて純粋な子供のままなんだ――そんな純粋な子供に殺気を向けるな阿呆。」

「殺気とは遺憾ですが、其れは失礼しました。」


しかしだ、雷華が手を出してしまったとは言え、私達の様な『民間協力者』には兎も角、ティアナへの殺気は拙いんじゃないのか、Mr.ヴァンデイン?
公務員への威嚇行為は、立派に公務執行妨害が適応される事を知らない訳じゃないだろう?


「其れは心外。私は、只突然の事に気が昂ってしまっただけです。私は別に何も……」

「ティアナ。」

「あ……はい!
 22時35分、エクリプス事件の容疑者として、ハーディス・ヴァンデイン氏を逮捕!!」


これ以上は喋らせない……か。良い判断だ。
しかし、私の殺気で相殺しても可成りの殺気を感じたと言うのは、矢張り素人ではないだろうね?それに、この状況での人を食った様な態度もな。


「この状況でアレだけの殺気を出してくると言うのは、果たして自信があるのか、それとも只の馬鹿か……」

「或は、全てが彼の計画道理であるのかのいずれかでしょう。
 ともあれ、心臓に悪い捕り物でしたが、此れにて一段落です。彼を逮捕した事で、エクリプスに関する彼是も僅かに一歩前進する事でしょう。」

「彼を逮捕した事で動く人達も居るだろうからね。
 ヴァンデインコーポレーション然り、野良感染者然り……そして、恐らくはフッケバインも動く筈だよ。」


だろうな。
だが、ヴァンデインコーポレーションや野良感染者は兎も角、フッケバインが動けば必ず戦いになるのは容易に想像が出来る……その時は――


「容赦しないで撃滅する。
 彼等は、エクリプスの破壊衝動を抑え込んでると思ってるけど、アレは『極端に薄めてる』だけ、私達の様にエクリプスの完全制御は出来てない。」

「態々来てくれるなら、飛んで火にいる夏の虫だからな?
 ククククク……自らを凶鳥等と名乗って粋がっている馬鹿共に、身の程を教えてやれば良い――そう言う事だろう、王様よ?」

「その通りだ、分かっているではないかサイファーよ。」


マッタク持ってその通りだが、サイファーと冥沙は悪役モード全開だな!?
いやまぁ、私達『ホワイトナイツリベリオン』は、どちらかと言えばダークヒーロー系だから別に良いんだが……いやぁ、悪役面が似合うなお前達…


「「褒め言葉と受け取っておく!!」」


左様か……そう言えば、あの子は大丈夫かな?私とサイファーが保護したリアクトプラグの少女『ロサ』は?
ジェイルが、精密検査を行って、破損個所その他諸々を修復して居る筈だが……そろそろ全快した頃だろうから、会いに行ってみるか。








――――――








Side:なのは


と、言う訳でジェイルのラボに来た訳なんだけど、件のロサの状態は如何かなジェイル?


「君から敬称なしで呼ばれるのは、何とも新鮮だね?
 うん、彼女の状態は極めて良好だよ。破損も軽微だったし、リアクトプラグとしての機能も生きているからリリィ君と一緒にトーマ君と組んでも良い。
 唯一問題点を上げるとすれば、彼女はリリィ君と違って精神が未発達と言うか、言うなれば子供と言った感じがするね?
 それと、此れまで『道具』として扱われてきたせいか、感情の起伏が極めて少ない……其れこそ星奈君以上に感情の起伏が無い感じだよ。
 まぁ、第三者が見て取れないだけで、彼女自身は確りとした喜怒哀楽を持っているんだけれど、それを表に巧く出せないみたいだね。」


そうなんだ……気分は悪い所はない、ロサ?


「大丈夫……寧ろ、直して貰ったら調子が良い……ありがとう。」(へにゃ)

「「「「「「「!!!!」」」」」」」


「だが、表に出せない分、この様に時折見せる『へにゃ』っとした笑顔の破壊力が、なのは君の集束砲レベルの破壊力なんだけれどね?
 因みに、それを喰らってクアットロは現在進行形で、其処で屍になって居るよ。」

「あの笑顔は……あの笑顔の美少女と、なのはお姉さまとルナお姉さまを……ぐへへへ……うへへへへへ……き、キマシタワーーーーー!!!」



「……相変わらず腐ってるな、主に脳味噌が。
 いっその事、アイツは頭切り落として、生ゴミとして埋めた方が良いんじゃないか?」

「其れをやったらやったで、アイツを埋めた場所から、アイツの顔の謎の人面草が生えてきそうで怖い。」


もぞもぞと増殖する、クアットロ顔の人面草……何このホラー?すっごく嫌だね此れは。

えと、それでロサはもう大丈夫なんだよね?


「あぁ、大丈夫さ。今の彼女は、完全なリアクトプラグとして機能しているからね。――六課の面々と顔合わせしても大丈夫さ。」

「そう……じゃあロサ、私達と一緒に行こうか?
 ルナとサイファーが保護した後で、一度管理局には来てるけど、今度は貴女の仲間を紹介するから。」

「仲間……?……うん、分かった。」


素直だね?聞き分けの良い子は好きだよ。

だけど楽しみだね?
ジェイルの言うように、この子がトーマの2人目のリアクトプラグになって、そしてリリィと共に同時にリアクトしたらトーマはドレだけ強くなるんだろう?


ゼロ因子適合者のトーマと、リアクトプラグの4thと6thであるリリィとロサ……若しかしたら、この3人がフッケバインに対する切り札になるのかもね。








――――――








Side:トーマ


ヴァンデイン逮捕の翌日、六課メンバーの全員が隊長室に集められたんだけど、何かあるのかな?アイシス、何か聞いてる?


「え〜〜っと、八神司令が言うには『新しい六課メンバー』の紹介だったかな?
 なんでも、扱い的にはアタシ達と同様に『見習い』らしんだけど……此れってつまり、アタシ達に後輩が出来るって事だよね!?そうだよね!?」

「いや……まぁ、そうかも知んないけど、少し落ち着こうよアイシス!
 幾ら後輩だって言っても、俺達より出来る人じゃないって限らないし、先ずは会ってから……ね?OK?」

「まぁ、そうなんだけどさ。」



「さて、皆揃ってるな?今日集まって貰ったんは、他でもない六課の新たなメンバーを皆に紹介する為や。
 とは言っても、この子は最近保護した子やから、立場的にはトーマ達と一緒の『見習い』になるんやけどね……取り敢えず、おいで。」


んで、八神司令が始まりの辞を述べると共に、新人さんを室内に招いて―――って、此れマジ?
俺達の前に現れたのは、翡翠色の髪と、赤味がかった色の瞳の女の子……色の差異を除けば、リリィその物である女の子が居た…此れは一体?


「ほな、自己紹介しよか?」

「リアクトプラグ・シュトロゼック6th……ロサ・シュトロゼックです……宜しくお願いいます。」


シュトロゼックって事は、リリィの妹さん!?……そうなの、リリィ!!!


「わ、私も分からないよトーマ。
 私は隔離されてたから、他のシュトロゼックシリーズがどうなったかとかは全然知らないの……ゴメンね?」


いや、リリィは悪くないから。
てか、リアクトプラグってリリィ以外にも存在してたんだ……その事の方に俺は驚きだよ!

けど、この子は俺達の新たな仲間なんだから、歓迎は当然てね。
宜しくロサ、俺はトーマ・アヴェニール。何の因果かエクリプスの、其れもゼロ因子適合者ってのになっちゃったんだけど、仲良くやろうよ?


「アタシはアイシス・イーグレット、宜しくね。
 ん〜〜〜〜……君の服も私がコーディネートしてあげようか?管理局の制服は兎も角、プライベートでの私服は必要だと思うんだよね〜〜〜?」


相変わらずだなぁ、アイシスは。まぁ確かにコーディネートスキルは凄いけどさ。


「初めまして、リアクトプラグ・シュトロゼック4thの、リリィ・シュトロゼックです。宜しくお願いしますねロサ♪」

「4th?……と言う事は、私よりも製造ナンバーは上――つまり、リリィは私のお姉さん?」

「言われてみれば……そうなるのかな?」


でもって、まさかのリリィに妹フラグ!?
いや、其れ自体は良いんだけど、君はリアクトプラグなんだよね?誰のリアクトプラグなの?ルナさん?なのはさん?其れともサイファー?


「……貴方。」

「そっか〜〜、俺か〜〜〜〜……って、ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇい!!!
 何処をどうしたらそうなる!?俺には既にリリィが居るんだよ!?その状態で、新たなリアクトプラグって、流石に飽和状態だっての!!!
 これ以上俺にどうしろって言うの!?アクセルシンクロか!?それともダブルチューニングで新たな高みを目指せって!?無茶振りだぁぁぁぁ!」

「頑張れ少年、此れが君の運命だ。」


ルナさーん!サラッと怖い事言わないで!?


「覚悟を決めろ……他の誰でもない、此れはお前の物語だ!!……尤も、主役は私となのはだがな。


俺の物語なのに、主役はアンタ等って理不尽だ!不条理だ!!断固異議を申し立てる!!
却下されるって分かってても申し立てるぜこの野郎!

はぁ、はぁ……まぁ、暴走するのは此れ位にして……本当に、俺が君のリアクト相手で良いの?
こう言っちゃんだけど、俺はマダマダ未熟者だし、リアクトするならルナさんやなのはさん、其れかサイファーの方が良いと思うよ?割と本気で。


「かも知れないけど、私は貴方が良い。
 リリィ姉さんが選んだ貴方の事を、私はもっと知りたい……だから、私は貴方の2機目のリアクトプラグになりたい……ダメ、トーマ?」


……其処まで言われたらダメだなんて言えないよ。
だけど一つだけ訂正だロサ……2機目じゃない、君は『2人目』だ……自分を道具や機械の様に数えるのは良くないよ。


「2人目……分かった。
 改めて、此れから宜しくねトーマ、リリィ姉さん。其れと、アイシス。」

「うん、宜しくねロサ。」

「宜しくねロサ!貴女の服も、近い内にこのアイシスさんがコーディネートしてあげるからね〜〜♪」


何処までもデザイナー魂一直線なのねアイシスは……いや、良いけどさ。
だけど、改めまして宜しくだロサ――君のリアクト相手として恥じないように俺も頑張るから、一緒に強くなろう。…強くなきゃ、我儘も通せないしな。


リリィ共々、此れから頼むぜロサ!














 To Be Continued…