Side:なのは


ルナ達の活躍で、襲撃を掛けて来たグレンデル一家は此れで全員確保と――思った以上に楽な仕事だったね。
だけど、だからと言って今回の一件が終わった訳じゃない……まだ、サイファーがフッケバインの構成員と戦闘を続けているみたいだからね……?

「ルナはグレンデルの護送の為にヘリにか……なら此処は私が動いた方が良さそうだね?
 冥沙、星奈、雷華、ゆうり、此処を任せても良い?私はサイファーの援護に向かうから。」

「是非もないぞナノハ。此処は我等に任せ、あの眼帯女に加勢して、襲撃に便乗してきたアホを撃滅してやるが良い!」

「寧ろ、フッケバインに貴女と言う最強の存在を教えて差し上げる良い機会ですよナノハ。
 一切の手加減などせず、サイファーと共に貴女の真の強さを、フッケバインに刻み込んであげて下さい――白夜の王に、敵は存在し得ないと。」

「すこ〜るだっけ?僕アイツ嫌いだからてってーてきにふるぼっこにしてOK!寧ろボッコボコにしちゃえナノハ!!」

「此処は私達に任せて下さい、簡単にはやられませんから。」


この意気なら大丈夫そうだね?
なら、こっちは皆に任せるよ……私は、この襲撃に乗じてやって来たのを倒してくるから。

まぁ、サイファーの実力を考えれば態々私が出張る事もないんだけど――でも、より効率よく効果的に相手を確保するには必要な一手だからね。


さてと、サイファーと戦ってる身の程知らずに、白夜の王から素敵なプレゼントをあげるとしようかな……













魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force24
『姉妹の戦い、手加減は無用』











Side:サイファー


如何した愚妹よ?私を倒すんじゃなかったのか?
随分と息巻いていたが、蓋を開ければ、お前は戦闘が始まってから、この方一度も私に決定的な一撃を与える事が出来なかった……興醒めだな。

確かに前よりは、多少強くなったようだが其れだけだ。
覚悟も信念もない貴様の剣はあまりにも軽い……それこそ、この試作型兵装で楽に対処できる程度の強さしか有して居ないんだよ貴様は。

確かに幼少期の貴様は『天才』であったかもしれないだろうが、才能の上に胡坐をかいていたような奴と、死線を越えて来た私とでは質が違う!!
如何に生まれつき強い力を、優れた頭脳を持っていても、其れを鍛えずにいたら、其れは只の大馬鹿者だ。

「つまりスコール、貴様は只の大馬鹿者なんだよ。
 生まれ持った才能の上に胡坐をかいて自己研鑽を怠り、自分以外の者は見下す……こんな事をするのが妹だと思うと悲しくなるな。」

「黙れ姉さん!!……お前如き、私がリミッター解除をすれば……!!」


私に勝てるか?――ならばやってみると良い。
お前がリミッターを解除したところで、私の上になると言う事は絶対的にあり得ない事だからな?


「その言葉、後悔するなよ姉さん?」

「誰も後悔などせん。
 寧ろ少しは歯応えが無いと面白くないのでな?さっさとリミッターとやらを解除してみるが良い、終わるまでは攻撃しないでおいてやる。」

「その油断が命取りだと教えてやる!リアクト・オン!!!」


――ズバァァァァァァァァァァ!!!


!?自分で腕を斬り落としただと?
エクリプスドライバーが、己のディバイダーを起動する場合に己の身体を傷付ける必要があるのは知っているが、精々斬り裂くか刺し貫くかの筈。
其れをコイツは腕そのものを斬り落としただと?……自滅ではないようだが――成程、其れがお前の言う『リミッター解除』と言う訳か。


「正解だよ姉さん。
 ゼロの少年の様にリアクトプラグを持っているならば兎も角、そうでない者は如何してもリアクトする際の自傷行為が不可欠になってしまうんだ。
 まぁ、限りなく不死に近い私達には如何と言う事はないが、其れでも精々表面を斬り裂くか、掌を刺し貫く程度で完全に斬り落としたりはせん。
 だが、私は自らの腕を完全に斬り落とすと言うリアクト方法によって、更なる力を得る事が出来た――其れがこの姿だ!!」


全身が金属化したような見た目だな?差し詰め『メタル・スコール』と言ったところか?
確かに以前戦った時には、リアクトしてもこの状態にはなって居なかったからな……だが、今更本気になって間に合うのか?


「間に合うさ……こうなった私の強さは、さっきまでの5倍以上なんだからな!」

「5倍か……ならば、大した事はないな。」


――ガキィィィィン!!!


「そんな……まさか、この状態の私の一撃を、真正面から受けきっただと!?」


自慢気にリミッター解除をしたところ悪いんだがな、本気を出したなのはは今のお前の3倍は強いし、本気を出したルナならば5倍以上強い。
まぁ、六課の若手集団ならば圧倒出来るかも知れんが、その程度では私に勝つ事など出来ん。


「なにぃ!?」

「考えてもみろ、私は今自分のデバイスを使って居る訳ではないんだぞ?
 カレド製の新型、其れもその試作機を使っているにも拘らず、本気を出したお前をこうして圧倒している……其の意味位は馬鹿でも分かるだろ?」

「そんな馬鹿な……!!」


最古のエクリプスドライバーを舐めるなよ愚妹が。
私は、只感染歴が長いだけじゃなく、日々なのは達との鍛錬を欠かしては居ないのだぞ?――エクリプスに頼り切りの貴様に負ける道理はない!

「如何した?リミッターを解除すれば私に勝てるのだろう?
 遊んでないで早く倒してしまった方が良いんじゃないのか?グレンデルの連中は全員確保したらしいから、今度はお前がターゲットになるぞ?」

「クソ、クソ、クソォォォォォォ!!
 何故だ姉さん!其れだけの力を持ちながら、なぜあんなに温い考えの奴等と一緒に居る!エクリプスは所詮世界を殺す毒にしかならんのだぞ!」


阿呆。だから貴様は愚妹だと言うのだ。
毒と薬は表裏一体と言う言葉を知らんのか?

例えば猛毒のチョウセンアサガオやトリカブトも、精製の仕方によっては、極めて有効な麻酔として機能する。
青酸カリは銅の錆落としに使えるし、フッ素は歯を保護する。青カビの成分から抗生物質が生まれたなどは有名な話だろうが。

エクリプスだって同じだ。
確かに強烈な破壊と殺戮の衝動は、世界を壊す猛毒と言えるだろうが、私やなのはの様に、其れを完全に克服できているとしたら如何だ?

其れはもう毒ではない。
寧ろ、限りなく不死に近い身体を人々の為に役立てる――そう、例えば普通ならば命の危険が伴う災害救助などに当たれるのではないか?


「そんな事は夢物語だ!
 エクリプスを完全に制御出来た者など、此れから先に現れはしない……ならば、エクリプスで世界を支配するのが一番だ!そうだろう姉さん!!」

「……やれやれ、まさか雷華以上の阿呆が居るとは思わなかったよ。
 いや、あの子の場合は理論的思考が出来ないだけで、直観力は優れていると言うべきだが、貴様は真正の阿呆だよスコール。
 所詮貴様は、エクリプスの破壊と殺戮の衝動を自ら受け入れ、そして其れを理由に、自分自身の加虐的な欲望を満足させているに過ぎん。」

今までは、実妹と言う事で多少大目に見て来たが、其れも此処までだ。
貴様等を野放しにしておいたら、間違いなく面倒な火種になりかねんのでな?――今此処で完全に鎮火してやるぞ。


――ドン!ドン!ドン!!



「あが!……此れは、合金のニードル!?」

「AECコート済みのな――まぁ、エクリプスドライバーにとっては『銀の銃弾』と言ったところだが、思いのほか効くだろう?」

「左腕の其れは、只のシールドじゃなかったのか…!!」


此処まで小型化するのは苦労したらしいがな。
だが、苦労の甲斐はあったと言うべきだろうな?矢張り、略ノーモーションから放てる飛び道具と言うのは中々に優秀なモノだからね。


「舐めるな!!ディバイド!!!」


――バキィン!!ザシュゥゥゥゥゥ!!!


ちぃ……バリアを砕いて、攻撃してくるくらいは出来るか……随分と派手に脇腹を切ってくれたモノだ。
だが甘い!!


――ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!


「あぐ……れ、連射だと!?」


何時誰が、合金ニードルは連射出来ないなどと言った?
確かにニードルの質量は重いが、其れを高速で撃ち出す事くらいはスカリエッティの手に掛かれば朝飯前だ――己の考えの浅さを呪うんだな。

そして此れで終わりだ。
白夜の聖王が誇る、最強無比にして絶対の直射砲を受けきれるなら受けきって見せるが良い!――喰らえ…ディバインバスター!!!



――ドゴォォォォォォォォォォォォォン!!



「むおわぁぁぁぁぁあ!!
 直射砲……だが、この位ならば!!」

「如何にかできると思って居るか?」

「!!?
 そ、そんな馬鹿な!!砲撃は続いているのに何故!!!」






「視野が狭いね?途中から砲撃の色が変わって居る事には気付かなかったのかな?」

「き、貴様は!!


つまりはそう言う事だ。
私がディバインバスターを放った直後になのはが此方に来てくれてな?……砲撃をなのはに任せて、私はお前に特攻を仕掛けさせて貰ったのさ。


覚悟は良いなスコール?
Hope at least. The thing you can do is only that!!(せめて祈れ、貴様に出来るのは其れだけだからな!!)

「此れで……終わりだ!!!」



――ドガバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!








――――――









Side:なのは


サイファーの最大の斬撃……此れは決まったかな?
私のバスターもあったし、少なくともフッケバインの構成員程度が耐えられる代物じゃない筈なんだけど……如何なったサイファー?


「逃げ足の速い奴だ……爆発の粉塵に紛れて逃げたらしい。
 尤も、相当に急いでいたのか、私に斬り落とされた右腕は残していったようだがな。」


片腕を犠牲にして逃げたか……言うなら其れは、片腕を犠牲にしなきゃサイファーからは逃げられなかったって事なんだろうけどね。
だけど、スコールは取り逃がしたとしても、この右腕は貴重なサンプルである事は間違いないよ?――取り敢えず此れは確保しておこうか。



それにしても、戦闘そのものはサイファーが終始圧倒していたけど、一瞬の隙を突いて腕一本を犠牲に逃げ果せるとは……流石に予想外だった。

凶鳥フッケバイン……案外、油断できない相手かも知れないね。




だけど、取り敢えず本来の目的である『グレンデル一家の捕縛』は成功した訳だし、皆と合流しようか?



「だな……阿呆な愚妹の相手をするのは、いささか疲れたよ……」

「お疲れ様サイファー……貴方のお蔭で、貴重なサンプルを手に入れることが出来たよ。」

「そう言って貰えると疲れも吹き飛ぶが――今回の一件、恐らくこれは『序章』に過ぎんぞ?……多分な。」


うん……多分そうだと思う。
今回の一件はあくまでも『序章』……開幕の合図に他ならないとは思ってる――だけど其れだけに、疑問や疑念は尽きない……其れに…ね。


けど只一つ言える事は、恐らく近い内に大きな戦いが起こる……エクリプスを巡っての戦いがね。








――――――








Side:???


ウム、グレンデルは思った以上の活躍を見せてくれたみたいだね?

此れは此れからのビジネスのプラスになる事は間違いないだろう・・・・・・矢張りエクリプスは次代のエネルギーだと言う事か。


まぁ、今回の一件で六課の諸君も動くだろうが、全ては私の思惑通りだからね?――適当に逮捕される用意くらいはしておいた方が良いかもね。




精々頑張ってくれよ愚民共……エクリプスの力で世界を統一するのは他でもないこの私だと言う事を努々忘れない事だね。













 To Be Continued…