Side:ルナ
大体予想はしていたが、流石にラプター強奪の可能性ありとなれば相当な厳戒態勢だな?
上空には私以外の白夜の面々にフェイトとヴィータ、地上には私とサイファーに将とアインスがスタンバイしている。
此れだけでも充分だが、更にティアナとエリオとキャロ、其れにトーマ達見習い3人組も居るとなると相当に層の厚い戦力なのは間違いない。
本局の方には、いざと言う時の為にはやて嬢に美由希、そしてナカジマ姉妹がスタンバイしているしね。
加えてバックアップにはジェイルとウーノにクアットロ、其れにシャマルをはじめとした管理局の精鋭が揃っているから、大概の事には対処できる。
尤も、強奪の可能性ありと言う事はトーマ達には此れから伝えるのだが――
『あの、スイマセン今良いですか?』
「……トーマか、如何かしたか?」
『今、フッケバインのスコールから通信が入って『ラプターがグレンデル一家に強奪される』って聞いて。
其れで、スコールもこっちに向かってるって……下手したら三つ巴の戦いになるんじゃないかと思って連絡したんですけど……』
矢張りフッケバインの方からトーマに接触して来たか……情報を流し、あわよくばトーマを自分達の方に傾けようと言う魂胆が見え見えだがな。
だが、生憎とトーマはお前達に惑わされる事はあり得んさ――自分を利用しようとしてる連中に尻尾を振ってやる必要はないと教えてやったしね。
「それで私に通信を入れて来た訳か、良い判断だトーマ。
そうなると、お前の元にフッケバインとグレンデル一家の双方が現れる可能性があるな……良し、私とサイファーが其方に向かおう。」
『はい、お願いします!』
と、言う訳だから此方の事を頼めるか将、アインス?
「あぁ、構わない。」
「エクリプスドライバーとの戦いとなれば、私達よりもお前達が行った方が良いだろうからな。」
そう言う事だ。
さてと、行くか!此れだけの戦力を前に、来るなら来いフッケバインにグレンデル一家……襲撃をかけてきた事を心底後悔させてやるとしよう!
魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force22
『Maraud?So how was it done!』
Side:トーマ
ふぃ〜〜〜〜……フッケバインから通信が入った時には如何しようかと思ったけど、ルナさんに指示を仰いだのは正解だったな。
ルナさんとサイファーがこっちに来てくれるなら頼もしい事この上ないし、マダマダ駆け出しの俺が居ても多分何とかなるだろうと思うしね。
『スマン、今度は此方からいいか?』
「「「うわっ!?」」」
シ、シグナム隊長!?如何したんですか?
『ルナとサイファーがそちらに向かったのは良いのだが、此方の広域バックアップが不足してな?
あの二人がそちらに行けば戦力的には充分だろう?可能ならば、アイシスに此方の広域バックアップに回って欲しいのだが……』
「えっと、現場に於いては所属隊に関係なく動かねばならない事も有るってのは分かってるんですけど、その良いんですか?
一応アタシってば、八神部隊長からトーマとリリィのお目付け役を直々に命じられてるんですけど……勝手に持ち場離れて大丈夫ですかね?」
『現場での判断は何よりも優先される事だ。
お前が持ち場を離れても、ルナとサイファーが到着すれば委細問題なかろう?』
「それも……そうですね。
了解!アイシス・イーグレット、此れより八神シグナム一尉及び、八神リインフォース・アインス補佐官の広域バックアップに回ります!」
向こうのバックアップか……気を付けてねアイシス?
「だ〜いじょうぶ!あくまで私の仕事は広域バックアップだから、無茶はしないって。
其れよりも、トーマとリリィの方こそ気を付けなよ?フッケバインに、正体不明のグレンデル一家とか妙ちきりんな連中が来る訳なんだから。
そう言う連中にとってゼロ・ドライバーのトーマと、希少なリアクターであるリリィは本気で喉から手が出るほど欲しい存在だってのを忘れないで。」
「うん、分かってる!」
俺も分かってるから大丈夫。
フッケの連中が俺達を助けたのだって、俺を――もっと言うならゼロの力が欲しかっただけの事だから、別に恩義は感じてないし。
グレンデルとか言う奴等にしたって、折角仲良くなったラプター達を奪わせはしないさ!
何より、ルナさんとサイファーが来てくれるんだ、何が来ても如何にかなる、そうだろ?
「まぁ、ルナさんが居れば大概の事は何とかなるからね〜〜〜流石は無敵のチートキャラ。
でも、トーマの意思がハッキリしてるのを聞いて安心した!フッケの馬鹿に恩義でも感じてたら面倒だと思ってたけど、此れなら大丈夫だね。」
「あぁ、大丈夫!」
「んじゃ、行って来る!こっち任せた!!」
「任された!!」
「行ってらっしゃい。」
行ったか……と、警戒体制維持!――よし、今のところ異常なし!
このまま何もなく終わってくれればいいんだけど、多分そうはならないんだろうな……
スコールの言ってた事とは別に、俺の中のエクリプスが、ゼロ因子が教えてくれる……エクリプスドライバーが近づいてる事を――!!
「ラプター、警戒態勢!敵性反応を感じ取った!直ぐに戦闘に移行出来るように待機してて!!」
『『『了解。』』』
其れからリリィ、戦闘に備えてリアクト頼む!
「うん!リアクトエンゲージ……」
「モード黒騎士!!」
《リアクト完了!》
OK、此れなら何時戦闘になっても大丈夫だ!てかドンドン近づいて来てる……100m、50m……来た!!
――ドォォォォォォォォォォォォン!!
「イヤッハーーーーー!!元気か一般庶民共!グレンデル一家首領『カート・グレンデル』此処に参上!!
俺様は何れこの街の王になる男!サイン貰っとくなら今の内だぜぇ!?」
「いや、自信満々に言ってるところ悪いけど、アンタの野望微妙に規模が小さいよ!?其れから、アホ全開だぜアンタ……」
現れたのが此れって……しかもグレンデル一家の首領?コイツが!?
見た目で判断するのは良くないって言っても、ゴメン、如何見ても俺にはコイツが犯罪集団の首領を務める器があるとは思えねぇぇぇぇぇ!
如何考えてもアホだろコイツ!?てか確認不要だろ絶対に!?
「ケケケ……デカい野望を成し遂げるには、先ずは小さな野望を確実に成就するのが大事ってな?
だからよぉ……貰うぜそのラプター!!大人しくしてりゃ痛い思いはしないで済むぜ?さぁ、如何するゼロの坊やよぉ!!」
「決まってんだろ……テメェをぶっ倒してラプターを護り抜く。
仮に俺がテメェをぶちのめせなくても、最強レベルの人達がこっちに向かってんだ、始まるから詰んでるぜお前?」
っと、意識しないと如何にもエクリプスの凶暴性に引っ張られて口調が荒くなっちゃうな――こんなのをノーヴェ姉に聞かれたら……う、怖いな……
「大きく出たじゃねぇの?だけど、吠える犬は弱いって言うぜ?」
「かも知れないけど、生憎とアンタには何も感じないんだ……脅威も何も感じない――そっちこそ、俺を舐めてると痛い目を見るぜ?」
俺はフェイトさんや雷華さんみたいな超高速移動は出来ないけど、代わりにドゥーエさんから習った特殊な足運びがある。
其れを駆使したら……さぁ、如何だ?
――ヴォン……
「!?ぶ、分身だと!?……ちぃ、思った以上に出来るみてぇだなゼロの坊や!」
「生憎と、俺達を鍛えてくれてる先生達は次元世界最強レベルの人達なんでね……否が応でもレベルアップできるんだよ!
其れに今の様子だと、アンタは俺の事を舐めてたな?……確かにアンタと比べりゃ戦闘経験は少ないだろうが、だからって舐めんじゃねぇ!!」
――グン!!
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?……な〜〜〜んてな?
思った以上にやるみたいだが、動きが素直すぎるぜゼロの坊や?幾ら力が強くても、動きが読めりゃ何の脅威にもならねぇってんだよ!」
「!?」
ぐ……な、何だコイツ!?も、物凄く力が強い……は、外せない!!
でも、焦るな……馬鹿力を誇る奴への対策だって教えて貰ったんだ――そう、確か……怪力を誇る相手に組みつかれた時は……関節を狙え!
――ガキィィィン!!
「おぉ?」
「筋肉を付けられない関節は、エクリプスドライバーであっても克服できない弱点!其処を攻撃すれば、必ず力が一瞬抜けるんだ!」
「な〜〜る……意外と勉強してんなぁ?
だ・け・ど、相手が増えたらどうよ?其れも、視認できない攻撃を放つ奴が増えたら、さて如何する?クイン!!」
「…頸椎……」
――バシュッ!!
新手!?……てか、結構距離が離れてるのに斬られた!?刀は届いてないのに!!
『魔力刃でも有りません……エクリプスの病化能力か、ディバイダーの性能と推測。』
やっぱりか!!
……ちぃ、流石に俺とラプターで、エクリプスドライバー二人を相手にするのはキツイな――でも、だからって退けるか!
ラプター達を、お前達に奪われてたまるかよ!!喰らいやがれ!クリムゾォォォォォォォン……スラァァァァァァッシュ!!
「カッカッカ、威勢がいいなゼロの坊や!
だが、圧倒的に経験不足だ。そんなんじゃ俺達には――」
「俺達には、何だ?」
「!?」
――バガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
「スマンなトーマ、少しばかり遅くなった。」
「だが、良く持ち堪えてくれた。」
ルナさん、サイファー!
いや、良いタイミング!コイツ等が勝ちを確信した瞬間に来てくれたのは大きいよ!……コイツは、形勢逆転だなグレンデル一家!!
――――――
Side:ルナ
到着してみれば、既に戦闘が始まっていたか――まぁ、此方に来る途中で爆破音を聞いただけに、襲撃が来た事は予想していたけれどな。
だが、トーマとリリィも相当に頑張ったみたいでラプターへの致命的な被害はゼロ……うん、良くやったな。
と、言いたい所だが如何やら招かれざる客は他にも居るらしい……出てきたらどうだフッケバイン?
「気付いてたのか?」
「巧く気配は消していたみたいだが、エクリプス特有の凶暴性が消しきれていない。
トーマの様な感染してからの日が比較的浅い者ならば兎も角、感染歴が十年になる私には寧ろ『気付いてください』と言っているようなものさ。」
「まぁ、その結果で出て来たのがお前と言うのは何ともやる気のなくなる話ではあるがな。」
「相変わらず口が悪いな姉さん?こうして再び合い見えたんだ、楽しくやろうじゃないか。
其れにだ、其処のひよっことアホの襲撃も、私がトーマに教えてやったから分かった事だろ?感謝の言葉くらいあっても良いんじゃないのか?」
アホか、お前に教えられずとも連中の襲撃計画などとっくに掴んでいた、クアットロの情報網を舐めるなよ?
お前のした事は、私達が伝えるよりも早くトーマ達に襲撃の事を知らせただけだ――と言うか、只の搬入で此処まで厳戒態勢を敷く筈ないだろう。
「故に感謝も何もする必要はない。
お前も其処のアホや金髪少女同様、ラプター搬入の現場に現れた只の危険人物に過ぎん――そっちは任せて良いかサイファー?」
「あぁ、元より愚妹は私が相手をしてやる心算だったからな。
しかし、この間アレだけコテンパンにやられておきながら、また私の前に現れるその神経は理解出来んよ……学習能力がないのか?」
確認不要だろうな。まぁ、今回も圧倒的な実力差を示してやれば良い。
武器の方こそカレドヴルフ製のAEC装備試作機だが、其れでもお前なら余裕で行けるだろうし、序に実働データも採れて一石二鳥だろう?
「確かに……此れの実働データと、エクリプスへの有効性を試すには丁度良い相手かも知れんな。
場所を変えるぞスコール、私とやり合う度胸があるなら付いて来い。――私に恐れを成して、尻尾を巻いて逃げると言うのならば止めんがな。」
「舐めるなよ姉さん……この間の屈辱を倍にして返してやる!!」
――バシュン!!
場所を変えるのは結構だが、派手にやり過ぎて街を壊さないようにな。
さて、待たせたね――って、バンダナの奴は何処に行った?彼がグレンデル一家の首領ではなかったのかな?
「お前達が話してる間に首領は他のトラックで搬入されるラプターを狙いに行った。」
「成程。だがまぁ、其れもまた徒労に終わるだろうから特に問題はないな?寧ろ此処で投降しておいた方が良かったと後悔するだろうよ。
始まる前からお前達は詰んでいるんだグレンデル一家。喧嘩吹っかける相手を間違えたんだよお前達はな。」
「間違ってなんていない。
ホワイトナイツリベリオン最強と言われている『高町リインフォース・ルナ』……戦歴や感染歴がどれだけ長いか知らないけど、良い気になるな。」
別に良い気になどなって居ないが、此れで3回目だぞ?
「……会話になってない、何の数字だ?」
お前の様な未熟者など会話するにも値せんよ。
其れよりも、言いたい事が有るならばかかって来い。相応の力を示せば話に応じてやらん事もないが……お前程度では無理だろうな、絶対に。
「その余裕を斬り捨てる……頸椎!!」
「リリィ、視界設定、エネルギー推移モード!!」
《うん!》
――ガキィィィン!!
咄嗟に『見る』事を選択したのは良い判断だトーマ。――そして、矢張りこの程度か。
そこそこ良い一撃だったが、其れで私の首を落とそうなど100年早い。――其れは其れとして、今のは見えたかトーマ?
「うん!剣先から粒子みたいなのを発生させて刀身を伸ばしてた!」
正解。
粒子斬撃や噴出剣何て呼び方をする、まぁ其れなりに高度な技だ。
《えと、ルナさんも同じ事をした?》
あぁ、私は月影から放ったが、慣れれば指先から撃つ事も出来る。片手が空くトーマ達には向いている技かもしれないね。
まぁ、此れに関しては私よりもサイファーの方が上手いから、身に付けるなら彼女に教わると良い。
「何れにせよ、未知の相手には視界モードの切り替えが必須だ。
不可視攻撃の看破に、攻撃能力の質――戦いに於いて大事なのは、先ず『見る』事であり、其処から相手の力量を見極める事だ。」
「は、はい!!」
良い返事だが、最大限ぶっちゃけるとコイツ程度なら私が本気を出したらコンマ5秒で瞬殺だぞ?
実戦経験を積む意味でやってみるかトーマとリリィで?もしもの場合はちゃんとフォローしてやるから。
「ば、馬鹿にするなー!!
私はひよこでもなければ弱くもない!!私は……グレンデル一家の『特攻』クイン・ガーランドだ!!
首領とロロは凄く強いって褒めてくれたんだ!!……フッケバインもゼロもホワイトナイツリベリオンも纏めてぶっ殺す!!」
やれやれ、この程度の挑発でキレると沸点が低すぎるな。
ディバイダーを解放したと言う事は、其れがお前の本気なのだろうが――敢えて言おう、その程度で私に挑むなど自殺行為だとな!
何よりも、剣閃が見える程度の居合いを放っている時点で貴様の実力など高が知れている。
「殺す……!」
「やってみろ未熟者のひよっこが。」
そして知るが良い――絶対強者の強さと言うモノをね。
さぁ、掛かって来るが良い。圧倒的な実力差と言うモノをその身に刻み込んでやる!其れこそ『月を見るたびに思い出す』くらいに徹底的にな!!
To Be Continued… 
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