Side:ルナ


やれやれ、退院して即模擬戦とは、アインスは中々にバトルマニアなのか?
私は其処までではないと思うんだが、例え同じ存在であっても世界が違えば本質も異なって来ると言う事なんだろう――私とアインスは別者、か。


「ルナとアインスは別者だと思うよ?二人とも『リインフォース』ではあるけど、片や白夜の騎士で、片や夜天の騎士だからかね。
 まぁ、アインスの方もルナには及ばなくとも激烈チートのバグキャラなのは否定できないから、退院直後に模擬戦しても誰も驚かないと思うかな。」

「……否定できんのが悲しい部分が有るな。」

まぁ、アイツは魔導殺しとも互角に渡り合えるだけの力があるし、敵の撃破を最優先にしていたらあの時だって勝っていた筈だからね。
何にしても、ジェイルの魔導殺し対策は着々と進んでいるから、六課のメンバーのデバイスの対EC機構も難なく開発され実装されるのだろうな。

其れに先駆けてのトレーニング兼、魔導殺しとの戦いのシュミレートと考えれば、この模擬戦もまた悪いモノではないさ。――って、ん?


「あ、ルナさん!なのは叔母さん、こんにちわ!!」


ヴィヴィオ、其れにクリスも……こんにちわ、元気そうだね?


「はい♪」

「如何したの?姉さんに用事かな?」

「はい、お母さんにお届け物を。あと、トーマ達に会いに。」


そうか。
美由希もトーマ達も訓練場だ。丁度今、トーマはアインスと模擬戦の真っ最中だからな、美由希の用事がてら見て行くと良いさ。













魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force20
『先ずは模擬戦だ!全力全壊だ!』











Side:トーマ


ぐぬ……でぇりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


――ガキィィィン!!


クソ……アインスさんには全く攻撃が通らない――魔導殺しのディバイダーを使ってるって言うのにこうなるとは……ドンだけだよアインスさんて!
っきしょーー、勝ちに行くぜとかほざいてた俺を打ん殴りてぇ!!まさか、ここまで実力差があるとは思ってもみなかったぜ。



「銀十字!」

「とと…やるですねリリィ!!」



「爆破系と来たか……成程、腕は悪くねぇな。」

「寧ろ今のを喰らって、殆ど無傷なアギトさんが不思議なんですけど……」


リリィとアイシスも善戦してるけど、ツヴァイさんとアギトさんが本気を出したら、その瞬間に速攻で沈められるのは間違いないだろうな。
俺達の力を見るって言う事で、適当に手加減して貰ってるから俺達は瞬殺されずに済んでるだけの事――如何ともしがたい実力差だよな此れは。



――ガキィィィン!!



「荒削りではあるが筋は良いな?――成程、鍛えれば超一流の使い手になりそうだ。」

「あ……ありがとうございます!!」

だけど、俺達が六課の人達に買われてるっていうのは間違いない……だったら、其れに応えてなんぼだ!!まだまだ負けないぜ俺達は!!
うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!!



――バキン!!



「剣筋も悪くないし、その気迫も見事――全ては此れからのトレーニング次第と言ったところか。
 ふむ、君単体での力の程は大体理解した……次はリアクト状態と言う物を見せて貰っても良いだろうか?」


あ、はい!!リリィ、少し力を貸して!!

ったく、模擬戦のレベル超えてるだろ此れ!?レベル10程度の実力で、レベル99の敵に挑む気分だぜ、冗談抜きで!!
如何足掻いても勝てる気が全くしないけど、せめて一発くらいはデカいのブチかまさないと、男の子として格好が付かない――だよねスゥちゃん!








――――――








No Side


「アインスさん、特に後遺症もなくて良かった。」

「うん、そうだね。」


激しさを増す模擬戦(と果たして呼んでいいかは極めて謎だが)を見ながら、ヴィヴィオはアインスに後遺症がなくて良かったと喜んでいる。
彼女の母である美由希もまた、同じ気持ちであるようだ。


「何なら、ヴィヴィオも模擬戦に乱入しちゃう?♪」

「良いですねぇ?行っちゃう、クリス?」

「ダメだよ、お邪魔になるからね?」

「てへへ、冗談だよお母さん。終わるまで大人しく見てますって。トーマ達には差し入れも買って来てるしね。」


シャマルの冗談に、乗り気なヴィヴィオを美由希が諌めるが、其処は冗談と分かっていての事だろう。
其れでも困ったような笑顔を浮かべながら言う美由希と、満面の笑顔で『冗談だ』と言うヴィヴィオは、親子として中々巧く付き合えているようだ。


「あ、アインスとツヴァイちゃんが……」

そんな中で試合は動く。



――ユニゾンイン。リインフォース・アインスinリインフォース・ツヴァイ



「どえぇぇぇぇ!?何ユニゾンしてんだよ!!
 アインスとツヴァイがユニゾンとか、マジでヤベェし訓練施設吹っ飛ばす心算かオイ!!!」

「そう言うなアギト、手加減はするし融合騎同士の師弟対決でもあるんだから。
 それにだな、ツヴァイとユニゾンした私であっても、祝福の月光状態になったルナには多分勝つ事は出来ないぞ?アイツは本気でチートすぎる。」

お姉ちゃんが言っても説得力は皆無ですけどねぇ……


アインスがツヴァイとユニゾンし、その力を凄まじいレベルで上昇させたのだ。
リリィとリアクトしたトーマの力の上昇値も侮れないモノではあるが、アインスの其れは桁違い。……其れをも上回るルナの力は推して知るべきだ。


師匠とアインス秘書官、凄い迫力――

「あぁ、でも其れでも本気を出したルナさんには及ばないって……ドンだけなんだよルナさんて!?
 暴走した俺は互角にやりってたみたいだけど、そんなの全然想像出来ねぇ……理性がぶっ飛んでるって相当に怖い事だよな……割とマジで。」


其れに戦慄するトーマだが、だからと言って今更ギブアップなど出来ない。
何より此処で退いては男が廃るし、己が姉と慕うスバルやノーヴェの『男の子なら絶対に逃げるな』と言う教えにも反する――だから退かない。


「行くぞ!!」

「リリィ、アレで行く!!」

うん!!


だからこそ己の今出せる全力を持ってして応える。


イミテーションとして呼び出した、アインスのレヴァンティンがシュランゲフォルムになり、更にその刀身に真紅の炎を纏う。
一方のトーマも、ディバイダーに全ての力を注ぎ込み、銃剣の刀身が赤黒い輝きを放つ。


煌龍!!

クリムゾンスラッシュ!!!



――バガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアン!!!



互いに最大級の一撃は、どちらも一歩も退かず、飽和状態となったエネルギーが爆発を起こすが、此れで決まった訳ではない。
爆煙が晴れた其処には、多少の掠り傷はあれど全然健在なアインスとトーマの姿が!しかも、二人とも更なる攻撃の態勢に入っている。


「ナイトメア………」

「シルバー………」




「あ、あら?流石にちょっと危険?」

「あ、大丈夫です。」


更なる攻撃に危機を感じたシャマルだが、ヴィヴィオが言うには如何やら大丈夫ならしい。
美由希もまた笑顔で居る事から、大丈夫なのは間違いないだろう。



ハウル!!

ハンマー!!



で、又しても大爆発発生!!
果たしてこのぶつかり合いを見た人間の何人が、この戦いを『模擬戦』であると認識できるか、果てしなく謎である。模擬戦の定義を再確認したい。


「あ、あぶねぇ……本気で訓練施設吹っ飛ばす気かアンタは!?
 自分が、嘗ては封印指定受けてたロストロギアだって言う事忘れんなっつーの!!」

「あぁ……スマナイ。」




「お互い、本気のガチで撃ちあうのは無しって事じゃなかったっけ?」

「ご、御免、つい……」


だが、二度目の激突はアギトとアイシスが夫々フォローに回った事で事無きを得たようだ。
アギトはバリアで、アイシスは爆薬を爆破させた爆風で、攻撃を防ぎきったらしい――特にアイシスの爆薬を扱う才能は天才的と言って良いだろう。


「あは、アギトとアイシスがフォローしてくれた!」

「うん、フォローに関してはアイシスにも及第点を付けてあげられるかな。」


絶妙なタイミングでのフォローに対し、美由希もアイシスの能力の高さに驚きつつ評価を上げているようだ。
ともあれ、これ以上模擬戦を続ける意味はもうないだろう。


「此処までにしよう。
 私の現場復帰の為の準備運動にもなったし、君達の実力を知る事も出来たからね――鍛えれば相当なモノだ、精進を怠らないようにね?」

「はい!ありがとうございました!」

「した!!」


模擬戦の結果だけを言うなら、灰色決着のドローゲーム。
だが、この模擬戦で、トーマ、リリィ、アイシスの三人が得た物は決して小さくはない――間違いなく、成長の糧になった事だろう。








――――――








Side:スカリエッティ


ククク………クハハハハハハハハ!!いやはや、何か手掛かりでもないかとヴァンデイン・コーポレーションとやらを探ってみたら、これ程とはね。
あぁ、正義のマッドサイエンティストを自称する私だが、その上で敢えて言おう――狂っているな。

エクリプスウィルスには、確かに次世代を担うクリーンなエネルギーとなる可能性がある、其れは認めよう。
だが、もしそれだけであるならば基礎理論を確立したリオン君は己の存在を偽ってでも世間に公表しただろう。何よりも人の役に立つのだから。


しかし彼は其れをしなかった――と言う事はつまり、エクリプスにはメリット以上の危険性が秘められていると言う事に他ならない。


ハーディス・ヴァンデイン君は、自分ならば其れを如何にか出来ると思っているようだが、其れは過信を超えた傲慢に過ぎない愚かな思想だ。
誰がドレだけ頑張ろうと、なのは君とルナ君とサイファー君以上にエクリプスの力を扱えるものなど居ない、ゼロの少年は別格としてもね。



だが、そんな事とは別に、私は君が気に入らないよハーディス・ヴァンデイン君。


「ドクター、如何なされました?何と言うか、表現するのが難しい表情を浮かべて居ましたが。」

「いや、何でもないよウーノ――敢えて言うなら、犠牲を払う咎も、其れによって生じる業を背負う覚悟もない馬鹿に心底腹が立ってね。
 己の目指す物に向かって突き進み狂うのは大いに結構だが、己が狂う為の代償を払わずにと言うのは、些か認める事は出来そうにないよ。」

故に、私は君を倒すためにあらゆる手段を講じよう。


己が目的の為に狂うのは大いに結構。
だが、狂った果てに生じた犠牲や代償を払い、そして背負う気も覚悟もないのならばその道を選ぶべきではない。


我等ホワイトナイツリベリオンも、そして特務六課の諸君も己が背負うべき業は背負って生きて行く覚悟はとっくに決めているからねぇ?
だが、ハーディス・ヴァンデイン君、君にその覚悟が果たしてあるのかな?


君は命を奪う覚悟はあるようだが、命を差し出す覚悟はないんじゃないのかな?――其れでは所詮は二流止まりに過ぎんさ。
命を奪うなら、命を差し出す覚悟をせよ――其れを無くして命のやり取りをしてはならないって言うのは、裏の世界では常識なんだがねぇ……


まぁ、良い。
近い内に君には六課から逮捕が言い渡されるだろう――そして、その先に待つのは白夜の王と月の祝福による断罪なのは間違いない。



何よりも、私の友が確立した理論で儲けを得ようなどと考えている君を許す心算は毛頭ないからねぇ?精々破滅の時を待つが良いさ。



あの世で見て居てくれたまえよリオン君。君が残した遺産の負の部分は私達で払ってみせる。
なに、君の『娘二人』が居るのだから、必ず巧く行くさ――何より、此れ位しか私には君に手向ける花代わりになるモノはないからねぇ?



精々『正義のマッドサイエンティスト』としての本領を発揮させて貰おうじゃないか――此れから先の未来の為にね。














 To Be Continued…